1スレ>>734


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「たあ~~っ!!」
「のぅわああああああああ!!??」
ここはオツキミ山……の崖。
時間はだいたい夜……中の2時くらい。
俺は相棒のイワークに抱き抱えられ、何故か崖を下り落ちていた。
「えへへっ♪ 楽しいね? ますたー♪」
「あががが……楽し……いわけねえええええええ!!!!」


事の初めはだいたい六時間前。夕食が終わったくらいの話である。
人様の倍以上たらふくメシをかきこんだ後、イワークはTVの前にぺたんと座り込んで
なにやらスポーツ番組を見ていた。
「ねえ、ますたー。これ、どうなの?」
「ああん?」
イワークの持ちやすい頭を掴んでどかせてTVを見たところ、画面にはピカチュウが
サーフボードに乗って気持ちよさそうにサーフィンを楽しんでいた。
「ああ……ピカチュウは見ていて癒されるよなあ……」
邪な笑いを浮かべながら俺がそう呟くと、イワークはむすっとした顔をした。
「違うよー! そうじゃないよ!」
「あん?んじゃ、どういうこった?」
「この『サーフィン』っていうやつ! 楽しいの?」
さっき怒ったと思ったら、もう目をキラキラさせて回答を待つコイツが居る。
(……ったく。まるで子供だな……)
「ねえ、どうなのー?」
きゃあきゃあと声を上げるイワークを煩わしく思い、俺は適当に答えた。
「あー、楽しいんじゃね? 要は海面を滑るやつだからな」
「そーなんだ……やっぱ楽しいんだ……」
再び画面を見て、惚けるようにため息をつくイワーク。だが……
「お前、泳げたっけ?」
「う”っ……」
まあそりゃそうだろう。どうやったって岩属性が海で浮かぶ姿なんか想像できやしない。
「で、でも頑張れば……っ!」
「頑張ってそれが出来れば話は早いんだがなあ」
「うう……」
さっきとは一転してしょぼくれるイワーク。……なんか俺が悪者のような気がしてきた。
「……ちっ。 まああれだ、もしやるってんなら俺も付き合うぞ」
「……うん……」
それを慰めだと気付いたのか、しょげた返事を寄越してそれっきりうつむいてしまった。
(まったく、なんでこう喜怒哀楽が激しいのかねえ)


それからしばらく経った深夜12時。俺が今から寝ようかというその瞬間。
ソイツはいきなり部屋に飛び込んできた。
「まあああすたあああああああああ!!!!」
「あ”あん!!??」
「聞いてくださいよますたー!! わたし、閃いたんですよう!!」
「うっせえ!! 俺は今から寝るところなんだ!! っていうか俺の部屋に無断で入ってくるなと何度も―――」
「あのですねあのですね、要はサーフィンって……」
(始まっちまった……)
俺はウンザリしながらそこそこにイワークの話を聞き流す。こうなったらコイツは人の
話を聞きゃあしない。よく言えば一途で一直線。悪く言えば視野が狭いってことなんだが……。
「……というわけなのですよ!!!!」
「ほうほう、で?」
すると、ろくすっぽ聞いてなかった俺の手をいきなり掴むイワーク。
「オツキミ山で、サーフィンです!!!!」
「……………………は?」
イワークは掴んだ手をそのまま窓へと俺を引き摺り、窓を開けるや否や背に俺を乗せて
闇夜へと飛び出した!―――
「いえええええええええい!!!!!!!」
「ちょ……おま……うわああああああああ!!!!」

そしてサーフィン(コイツ曰く)を十二分に(片方だけが)楽しんだ俺たちは、月光の照らす山頂にて
腰を下ろして休憩していた。
……正直、何度死ぬかと思ったか分からない。コイツは岩に潜れるからいいものの、俺は
ぶつかったらつまるところ即死である。
「あのなあ、お前……」
乱れる息を整えて俺が愚痴ろうとすると、
「楽しかったですか? ますたー♪」
先んじて言われてしまった。
そう。コイツは『サーフボード』の役目を演じたのだ。
乗っているのは俺で、つまりコイツは俺が楽しんでいる様を見て、それを見たくてこんな―――
「……ああ、楽しかったよ」
「~~~♪♪」
そう答えた俺を見て更に満面の笑みを浮かべたイワーク。
きっと怒ることができなかったのは、いつもよりコイツを綺麗に見せた月明かりのせいだ。
きっとそうに違いない。


ちなみに。
帰宅してからいきなり何かを思い出してイワークが飛び跳ねた。
「ますたあああああ……。 そういえばわたし、板のほうしかやってませんでしたあ……」
どうやら俺にも『サーフボード』の役目をやらせようとしていたようだった……。
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