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扉を開けた部屋は少し誇りっぽく、そういえば争議の時依頼一度も中に入っていないことに気づいた。 机の上や本棚、床の一部にまで書類が大量に置かれている。 しかし、 「…意外と綺麗」 それが率直な感想だった。 というのも、部屋の中には大きなごみや汚れはなく、紙もさりげなくまとめられ配置されている。 そういえば彼女は汚い部屋が嫌いだったことを思い出した。いつも私の部屋を覗いては顔をしかめ文句を垂らしていたのも。 彼女…私の母はついこの間亡くなった。死因は不明。 おそらくとても強い魔術系統の攻撃か呪いを受けたと見られている、そう母の知人が言っていた。 母はフリーの情報屋<ジャーナリスト>だったせいか顔が広い。葬儀の時顔を出してくれた人もほとんどが仕事関係か旧友だったようだ。 そんな事を考えながらも私は少しずつ資料をまとめ、整理していく。 この部屋を使う人はもういないのだし、早いうちに片付けなくてはいけない。 手早く荷物をまとめてしまおうと机に触れた、その時だった。 「…何、これ?」 ごつっとした感触に違和感を覚えうかがい見れば、書類の間になにか埋もれているようだ。 ひっぱりだしてじっと眺める。 なんとなく掘り出したそれは、思わず魅入ってしまう程とても綺麗な鍵だった。 金属でできたそれは少し黒ずんでいて、相当古いものだと伺える。 取っ手の先端には本物なのか黒水晶の石がはめこまれていてとても神秘的だ。 しかし、こんなもの前から部屋にあっただろうか?いや、最近どこからか入手してきたのかもしれない。 足元に紙が落ちている。どうやら鍵を手に取ったとき、上にかぶさっていた内の1枚がはずみで舞ったのだろう、これも一緒に片付けてしまわなければと拾った。 なんとなく紙面に目を落とせば、内容は丁度先ほどの鍵について書かれたもののようだ。 意外である、この鍵に何かあるのだろうか? ふと湧いた好奇心で、資料を読み進めてみる。 -この鍵は神殿周辺で発見された。 神殿には開くことのできない扉が多数存在しており、そのうちの一つを開錠できると考えられる。 なお、使われている金属は古代高山に含まれていた鉱物を特別加工したものと見られ詳しい事は未だ分かっていない。 神殿内部の調査は魔物の出現と開錠不可な扉が多い事から現在休止中である- 神殿、とはあそこのことだとうか? まず最初に頭に浮かんだのはその事だった。 港からそう遠くない島には、いつからあるのか古い神殿が建っている。 "邪神"を治めていると云われているせいか雰囲気はいつも薄暗く、魔物も住み着いているため地元の大人でさえ滅多なことがない限り中に入ることはない。 もしこの鍵があの神殿のものならば、母はあの中へ入ったということだろうか? ――記憶がフラッシュバックする。 母の死体、異様な現場、謎の死因。 この事に何か関係があるのだろうか?いやそもそも、母は神殿なんて興味ないタイプの人間なのに。 何故こんな資料が? 「おーい!マーテル!」 自分の名前を呼ぶ声でハッと私は顔を上げた。 声のする方向を見れば、よく知った顔が二つ窓の外に見える。 私の親友達が少し怒った顔で……っ!? 「っあぁー!?」 そうだそうだった忘れていた。 二人とはこの後友人の見舞いへ行く予定だったのに、考え込んでいた所為ですっかり忘れてしまっていた。 時計を見れば約束の時刻を軽く過ぎ去っている。二人が怒るのも無理はない。 咄嗟に鍵を握り締めたまま、私は母の部屋を飛び出した。
扉を開けた部屋は少し誇りっぽく、そういえば争議の時依頼一度も中に入っていないことに気づいた。 机の上や本棚、床の一部にまで書類が大量に置かれている。 しかし、 「…意外と綺麗」 それが率直な感想だった。 というのも、部屋の中には大きなごみや汚れはなく、紙もさりげなくまとめられ配置されている。 そういえば彼女は汚い部屋が嫌いだったことを思い出した。いつも私の部屋を覗いては顔をしかめ文句を垂らしていたのも。 彼女…私の母はついこの間亡くなった。死因は不明。 おそらくとても強い魔術系統の攻撃か呪いを受けたと見られている、そう母の知人が言っていた。 母はフリーの情報屋<ジャーナリスト>だったせいか顔が広い。葬儀の時顔を出してくれた人もほとんどが仕事関係か旧友だったようだ。 そんな事を考えながらも私は少しずつ資料をまとめ、整理していく。 この部屋を使う人はもういないのだし、早いうちに片付けなくてはいけない。 手早く荷物をまとめてしまおうと机に触れた、その時だった。 「…何、これ?」 ごつっとした感触に違和感を覚えうかがい見れば、書類の間になにか埋もれているようだ。 ひっぱりだしてじっと眺める。 なんとなく掘り出したそれは、思わず魅入ってしまう程とても綺麗な鍵だった。 金属でできたそれは少し黒ずんでいて、相当古いものだと伺える。 取っ手の先端には本物なのか黒水晶の石がはめこまれていてとても神秘的だ。 しかし、こんなもの前から部屋にあっただろうか?いや、最近どこからか入手してきたのかもしれない。 足元に紙が落ちている。どうやら鍵を手に取ったとき、上にかぶさっていた内の1枚がはずみで舞ったのだろう、これも一緒に片付けてしまわなければと拾った。 なんとなく紙面に目を落とせば、内容は丁度先ほどの鍵について書かれたもののようだ。 意外である、この鍵に何かあるのだろうか? ふと湧いた好奇心で、資料を読み進めてみる。 -この鍵は神殿周辺で発見された。 神殿には開くことのできない扉が多数存在しており、そのうちの一つを開錠できると考えられる。 なお、使われている金属は古代高山に含まれていた鉱物を特別加工したものと見られ詳しい事は未だ分かっていない。 神殿内部の調査は魔物の出現と開錠不可な扉が多い事から現在休止中である- 神殿、とはあそこのことだとうか? まず最初に頭に浮かんだのはその事だった。 港からそう遠くない島には、いつからあるのか古い神殿が建っている。 "邪神"を治めていると云われているせいか雰囲気はいつも薄暗く、魔物も住み着いているため地元の大人でさえ滅多なことがない限り中に入ることはない。 もしこの鍵があの神殿のものならば、母はあの中へ入ったということだろうか? ――記憶がフラッシュバックする。 母の死体、異様な現場、謎の死因。 この事に何か関係があるのだろうか?いやそもそも、母は神殿なんて興味ないタイプの人間なのに。 何故こんな資料が? 「おーい!マーテル!」 自分の名前を呼ぶ声でハッと私は顔を上げた。 声のする方向を見れば、よく知った顔が二つ窓の外に見える。 私の親友達が少し怒った顔で……っ!? 「っあぁー!?」 そうだそうだった忘れていた。 二人とはこの後友人の見舞いへ行く予定だったのに、考え込んでいた所為ですっかり忘れてしまっていた。 時計を見れば約束の時刻を軽く過ぎ去っている。二人が怒るのも無理はない。 咄嗟に鍵を握り締めたまま、私は母の部屋を飛び出した。  

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