更新日:2016/12/21 Wed 23:06:04


銀河連合が信頼を失う恐怖


銀河連合やセイヴァネスロードの危機管理が甘く、テロ組織に先手を打たれて破壊行為を許してしまう。
保守的な対応を取るあまり、新興の星間連合に後れを取る。
物語を描くのにはどうしても何らかのイレギュラーや番狂わせが必要であり、その手法としてはありがちである。

もちろん、銀河連合ともなれば長大な経験値からくる信頼がある。
ちょっとやそっとではその信頼はびくともしない可能性が高いだろう。
一部の勢力が不信を募らせたとしても、それごく一部にとどまっている限りは、銀河連合の持つ圧倒的な力でもって押し潰すことが可能となりえる。

ただし、その信頼は無制限ではない。
銀河連合に何百万年もの歴史があるのだと言っても、宇宙進出10万年以内の開発者勢力にはその内実や実力は想像すらつかないだろう。
また、銀河連合なら他の銀河連合かヴァーツでも連れてこない限り絶対無敵という訳でもない。
GDW世界設定自体、アトラス銀河連合と言う100万年以上の歴史を持つ共同体がタイランタ銀河連邦に「出し抜かれて押し込まれる」と言うエピソードを世界観の主軸においているくらいである(爆)。
何らかの形で生まれた隙を開発者勢力に出し抜かれでもすれば、歴史があるなどと言う信頼は簡単に揺らいでしまうのである。


他方で、この信頼は簡単に揺らいでしまっては困るものである。



少し世界を狭くして、日本で警察や司法が信頼を失い、警察はもう犯罪を取り締まってくれないと市民に思われてしまったと仮定してみよう。

市民は警察が自分たちを守らないなら、自分たちで身を守ろうと考え始めかねない。
結果として、リンチが横行する。
リンチは、人間社会ではしばしば冤罪や不公正・過剰な処罰の原因になっている。
中世の凄惨な魔女狩りも、キリスト教会が主導したものは少なく、多くは民衆裁判によるリンチであったと言われているのだ。

また、被害者として守られるべき人たちも、警察に通報しても意味がないと考えるようになる。
結果、事態が悪化するまでどんどん抱え込んでしまい、取り返しがつかなくなってからやっと警察が事態を把握する。
あるいは闇から闇へ葬られ、警察が事態を把握できないまま終わる。
現代でもしばしば起こる現象だが、それは「いざとなってもどうせ警察は守ってくれない」という意識の裏返しでもあるのだ。

それだけではない。
警察が信頼を失うということは、悪意を持って犯罪を犯そうとする者たちに「チャンスだ」と思われるということでもある。
そうすれば犯罪(しかも、悪意のある犯罪)が増えかねない。
警察は、限られた予算の中で、犯罪の数がほどほどだからこそ対処できるのに、犯罪が増えていけば警察がどんなに頑張っても対処しようがない。

警察が対処できない犯罪が増え、結果として市民は余計に警察への信頼を失い、結果として犯罪がまた増えていく。 
恐るべき悪循環である。

なお、ここで大事なのは「本当に取り締まっていないかどうか」ではなく、「市民に取り締まっていないと思われている」ということである。
どれだけ警察が頑張っていても、取り締まりをきちんとやらないと思われれば、結局市民はリンチを始めたり、通報しなかったり、悪党にチャンスだと思われてしまう。

警察が身を正すためにも市民の批判を受けいれることは大切である。
だが、やみくもに批判して警察への信頼その物を失わせるならば、それはかえって犯罪者に協力し、国民を危険に晒すことにもなりかねない。
治安維持と称して公権力批判を封じるのは白銀も悪しき言論弾圧だと考えるが、かつて行われた批判封じはそういった意味で必要性があったということは、忘れてはいけないだろう。





閑話休題。


警察が信頼を失うとこうなるということは、銀河社会と銀河連合・セイヴァネスロードでも同様にあてはまることであろう。

星間連合が信頼を失うならば、傘下の惑星は自己防衛のためには強力な軍備を整えることが必要になり、緊張が高まるし経済的にも疲弊する。
星間連合が間に入って話し合いの席を設けてくれればこそ平和的に解決できることが、解決できなくなり力による解決を図るしかなくなる。
星間連合がにらみを利かせていればこそ起きない大規模テロが起きることで、他のテロリストが「自分たちもやれるのではないか」と考えだし、一斉に蜂起する。

銀河連合もセイヴァネスロードも、全てを管理しきることができるほどチートな組織という設定はされていないので、銀河中のテロリストが一斉に立ち上がるような事態になればそれを完全に鎮圧することには相当長い時間とその間の犠牲を払う必要がある。
正面戦争すれば、銀河連合やセイヴァネスロードが勝つこと自体は簡単であろう。
だが、それまでに多くの被害を出すことは不可避である。

そうすると、銀河社会において、星間連合やセイヴァネスロードの信頼を保つということは、セイヴァネスロードや星間連合が実際に保有する軍備をしっかりさせるのと同等、いやそれ以上に重要な安全保障の方法なのだ。
セイヴァネスロードや銀河連合がほぼ力を持たない張子の虎であったとしても、セイヴァネスロードがいれば大丈夫という「虚像」があるだけでも、当面の平和は十分確保できるのである。(もちろん一旦ことが起こったときにえらいことになるので、力が不要という訳ではない)

そう考えると、銀河連合やセイヴァネスロードは常に市民や他の連合に対しての信頼保持に心を砕く、と言うことが容易に理解できるはずである。

もちろん、安全性を犠牲にするような対応は、確かに時にはやむを得ない場合もある。
セイヴァネスロードですら力に限りがある以上、力の配分をする中で「どこかを見殺しにしなければならない」と言う事態は考えられる。
結果として裏目に出てしまい、信頼をなくすことも考えられる。
情報を安易に公開するならばテロリストを始めとする悪意ある者に情報を与えることにもなりかねず、有事に対処するためにはやむを得ず秘密主義となりその分信頼が失われるということもあり得るだろう。

だが、信頼を失うリスクを全く考えることがない、ましてや感動演出などのために信頼を失うリスクを無視するのは、銀河連合やセイヴァネスロードとしての使命を放り出している。

当然、そんな組織は銀河社会の上層部を担うにふさわしくはないのである。




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最終更新:2016年12月21日 23:06