更新日 : 2017/05/20 Sat 23:48:17


銀河社会における伝統の位置づけ



 先日のチャットで、少し話題になったのが銀河社会における伝統の位置づけであった。

 伝統とは、信仰、風習、制度、思想、学問、芸術などの様々な分野において、 古くからのしきたり・様式・傾向、血筋、などの有形無形の系統を受け伝えることらしい。
 では、なぜ伝統と言うものが発生し、伝統である時点でひとまず正当なものとして考えられ、受け伝えることが重視されるのだろうか。



 白銀は、 伝統と言うのは人間の思考に限界があることが原因で発生するもの と考えている。

 伝統なんかにこだわらず、そのときそのときで評価すべきものを考える。「臨機応変」であり、使いこなせるならば素晴らしいことである。
 しかし、それでは、考えるたびに間違ったこと・筋の通らないことを考えてしまったり、人と違う答えを出して周囲を混乱させてしまったり、人間が個人ではなく種族・社会として得てきた経験的な知識を生かすことが出来なくなってしまう。
 一個人が独力で他人から教わることすらなく得られる知識などはたかが知れている。考える時間だって、一つのことを何日もずっと考えてなどいられない。
 うんうん悩むうちに堂々巡り、なんてことは誰にも経験があるはずだ。

 それならば、他人の考え方や流派などを学ぶことで知識や優れた技能などを得て、その上に思考を完成させる。そうすることで、人類は場合によっては更なる深い世界に思考を飛躍させ、優れた知を得ていく。
 そこに伝統と言うものが生まれる。


 しかし、 伝統に対して単なる個人の思い付きを越えた科学的検証や他の伝統との比較などが入ってくると、否応なく状況は変わってくる。
 社会的な知識は大まかなものになるし、科学的な知見などからすればバカバカしいとしか言いようのないもの、改良の余地があるものが出て来ることは避けられない。
 最初の方向性から間違ってしまったため、歴史の積み重ねは盛大な間違った方向への積み重ねだった、と言う可能性も考えられる。

 また、伝統が出てきたことについては何らかの背景がある。
 そういった背景となる事情が時代の変化などによって変わってしまえば、伝統の持つ経験的な知識も「状況が違ってしまった以上は、単なる間違いでしかない」と言うことも考えられる。

 しかしながら、一旦正当と考えられてしまったために、科学的・統計的に誤りだったことが発覚したり、背景となる状況が変わったにも拘らず、伝統と言う言葉だけで科学的に正当な在り方が排除されてしまうということが起こる。
 いわゆる「悪しき伝統」と言う現象である。


 白銀のこうした伝統観からすると、銀河社会における伝統と言うのも難しい問題をはらんでくる。
 銀河社会である以上、現実の人類社会よりはるかに解明されている要素は多いであろう。
 惑星内で発展した種族が宇宙社会に出るならば、当然開発者として人類よりはるかに完成された理性と科学的な見識を有している。
 伝統についても、 そういった科学的な知識から検証されることを受け容れ、更にはその検証の結果を受け容れるのでなければ、開発者としての理性を白銀は疑ってしまう。
 要は「間違いが証明されたにも関わらず認めたくない」と固執する姿勢に他ならず、そのような思想では種族内の対立を危機値以下に抑えられる安定した理性を持つことは難しいと考えるからだ。


 ただし、 銀河社会において伝統が不要なものとして位置づけられることはない、とも考えている。
 なぜなら、開発者と言えど銀河社会の全てを科学的に解明することは不可能だと考えられるからだ。
 見たことのない生物や種族・現象に対してどのように対応していくのか。
 監視者ですら、全てを研究して理解できる訳ではなく、また研究したとしても結果の全てを他に伝えられる訳でもない。
 従って、「全てが科学的に科学的に解明・検証される」ということはあり得ない。 残っている不確定要素に伝統は確実に存続し続ける。
 当然その新たな伝統には種族的な特性が反映されている場合が考えられるため、そこに種族のアイデンティティも反映されることになるだろう。

 また、宇宙進出に伴い、個体や種族の直面する世界は桁違いに広がっていく、と言うことも忘れてはならない。
  科学的に解明されたジャンルは技術の発展に伴って増え、更に知性の発達によってそれを受け入れるだけの知性が発生することから、その点では伝統は縮小する。
 だが、 宇宙進出に伴って向き合う世界自体が知性や技術の発達による縮小では追いつかないほどに巨大であり、更にそれを支える科学は銀河社会全体でも完全でない。

 そして、完全でないからと言って思考を放棄することもできない。
 そこで伝統と言う考え方の下で向き合うべきものは、個人的にはむしろ拡大するように思うのだ。




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