あなたのカニは、私のカニよ! 第一章「乙女 集結」その2


その差した方向には、なぜか唐草模様のほっかむりとマント(風呂敷?)をつけたよんた王が周囲を必要以上に警戒しながら慎重に歩いていた。

「あれって、よんた様ですよね?」

「確かによんた様だわ。何をしているかはわからないけれど・・・」

そこに「いたで!よんた様や!みんな集まってんか!と叫びながら雷羅 来が走ってくる。

「チッ!もう見つかったか」よんた王は逃げ出そうとする。

「逃がしまへんで」

来は手品を使い、笛を取り出すと思いっきり吹いた。

「ピーッ!」

周囲に澄んだ音が響きわたる。その音を聞きつけたのかどこからともなくみっつの影がおどりでた。

「ここにいたんですか藩王。さぁ仕事の時間ですよ。」かくたは努めて冷静に言った。

「さぁよんた様、城に戻りましょう。」槙は頬をひくつかせている。

「断る!私には新しくオープンしたヨンタ饅専門店に行くという大儀があるのだ!」よんた王は退路を探っている。

「その店が出来てから毎日のように城を抜け出して言ってるやないですか。」裕樹が退路をふさぐ。

「愚か者!まだメニューをすべて制覇しておらんのだ!あと半分残っているのだぞ!」よんた王は大げさな仕草で叫ぶ。

「そんな大人気ないことを言わずに仕事してくださいよ。」槙はにじり寄り距離を縮める。

「自分たちの仕事が進まへんのですよ!」来が目を光らせながらよんた王との距離をつめる。

「私が全メニューを網羅したら、仕事は必ず片付ける。だからそれまでは私抜きで頑張ってくれたまえ。」遊歩道脇の林を見たよんた王のメガネのレンズが光る。

「仕事が終わってからでも、全メニュー制覇できるやないですか。」

「それでは、一番初めに全メニュー制覇の称号がもらえないじゃないか!」

「子供やないんですから、そんなわがままは言わんといてください!」裕樹が叫ぶ。

「これ以上君たちと話すことは無い!さらばだ、諸君!」よんた王は林へと飛び込み、木の枝から枝へと飛び移りながら逃げる。

「逃がしてはなりません!皆さん追いましょう。行き先はわかっていますから、フォーメーションDに移行!来君は私と、裕樹君は槙君と、では行きますよ。もう遠慮はいりません!」かくたが指示をとばす。

「了解や!先生ぇ行くで!」

「はい、裕樹君行きましょう。」

「かくたさん行きましょ!」

四人は2×2に別れて走っていった。

真砂たち三人はしばらく呆然としてから『何だったの』と同時に呟いた。

「今のは見なかったことにしましょう。」

「そうですね。」

「ところで真砂ぇ、誰を誘います?」

「そうねぇ・・・」

と、三人が相談していると「すみません」と声がかかる。

その声に振り向く三人『はい?』三人同時に返事をする。そこには女の子が立っていた。

その女の子は三人同時に振り向いた光景にびっくりしながら『道をお聞きしたいんですけど・・・・・そのお城の寮まではどう行けばよろしいでしょうか?』とたずねた。

「お城の寮?えーと、この道をまっすぐ行って・・・」

真砂は道を教えると女の子にたずねた。

「ところであなた、あまり見ない顔ね。寮に家族でも住んでいるの?」

「いえ、実は・・・」

「真砂姐ぇ!確かこの子は、最近お城に勤めることになった子ですよ!私見たことがあります。」グラジオラスが興奮しながら伝えた。

「あら、そうだったの。ごめんなさいね、勘違いしちゃって・・・私の名前は坂下真砂。で、こっちの首からメモ帳を提げているのがグラジオラス。で、こっちの髪が長いのが支那実ちゃんよ。」

「坂下真砂さんに、グラジオラスさん、支那実さんですね。覚えました。私はフィサリスと申します。最近この国に来ました。これからよろしくお願いします。」

「フィサリスちゃんか、こっちこそよろしくね。」

メモ帳にフィサリスと何度か書いてから「そうだ!真砂姐ぇ、フィサリスちゃんを誘いましょう。」と提案する。

「ナイスアイディアよ。そうしましょう。ところでフィサリスちゃんはヨンタ饅を食べたことがある?」

「ヨンタ饅ですか?一度だけですけど、食べたことがあります。おいしいですよね。」

「今から、そのヨンタ饅を食べにお店へ行くんだけど、どう?一緒に行かない?」

「えーと、誘っていただいたのはとてもありがたいのですが、皆さんのお邪魔をするのは忍びないので・・・・」フィサリスは申し訳なさそうに呟く。

それを聞いたグラジオラスは「大丈夫ですよ。行きましょう。私フィサリスちゃんと仲良くなりたいです。」フィサリスの手をとって歩きだす。

「そうそう、気を使わなくていいよ。フィサリスちゃんの歓迎会もかねて行きましょう。ね?」

「そうですよ、行きましょう。私もフィサリスさんと仲良くなりたいですから。」支那実もフィサリスの手をとって歩きだす。

「よぉし、今日はお姉さんがおごっちゃうぞ。」

フィサリスの心の中が温かいもので満ちあふれ、ほほを濡らした。

「やったぁ、真砂姐ぇのおごりだぁ。・・・・どうしたのフィサリスちゃん?どこか痛いの?」涙を流しているフィサリスをグラジオラスが心配そうに見ている。

「い、いえ、私、うれしくって・・・つい・・・・・ごめんなさい。湿っぽくしちゃって・・・」そういって涙をぬぐった。

「謝らなくていいですよ。これからみんなで楽しかったり、うれしかったりする思い出をつくりましょうね」支那実はほほえんだ。

「よし、それじゃあみんな行こうか。」

四人は仲良く手をつないで歩き出した。


つづく・・・・・・



(文:言 成)