試作機(乗り物)
一般性能要求(要点)
 試作機は航空、低軌道宇宙での戦闘を考慮した試作戦闘機である。大型のスクラムジェットエンジンを一発装備し、着脱不能の大型増加燃料タンクを本体に滑らかに接続した。
 武装はレーザーと、ガンポッドである。大気内限定でミサイルも装備した。
大きさは30mを越える巨人機である。



試作機設定案

序論



この試作機が巨人機となったのはいくつかの理由があった。現在のNWにおける対空戦力は、その多くを地上からの対空火力に頼っている。しかしそれでは低軌道宇宙をふくむ高高度への対応が難しい。その現状を憂いて開発されることになった機体ではあったが、これまでに航空戦力が小規模でしかなかったことが災いし、十分な技量を持つパイロットの数が少なかった。そのため、通常のサイズの戦闘機では対空戦闘を行うのに十分な戦力を保持することが難しかった。そこで考案されたのが単機あたりの戦力の増強である。しかしながら単機戦力の増強といっても、限度がある。例えば、搭載するミサイルの数はウェポンベイと翼のパイロンをフルに活用してもせいぜい十発と少し。どうしても機体サイズの問題が出てくる。そこで考案されたのがいっそ大型にしてしまえばいいのではないか、ということだ。大型にすればその分兵相当裁量が増えるし、大型の分劣ってしまう速力は大きな推力を持つエンジンを用いれば解決できるし、逆に大型だから大きなエンジンも搭載できるために従来の機体より速度を上げることができる。このような考えに沿って、開発は始められた。




本論


本機の開発において、想定された運用法は、宇宙空間であれば大型機ゆえに搭載できる大型レーダーによって敵を先に発見し、強力なエンジンによって高速で接近、攻撃を行うという奇襲を主体としたものである。一方で、大気内であれば遠距離ミサイルにより敵編隊を散らし、大推力エンジンを生かした速度により敵に接近し、短距離ミサイルにより拡散した敵を各個撃破、そして二派の攻撃である程度数を減らした敵機編隊をドッグファイトで攻撃、殲滅する、というものであった。そのため、本機に求められた性能は、1.高高速戦闘に耐えうる速力 2.低軌道宇宙に上がり、そこで戦闘をするのに十分な航続距離
、 3.強固、若しくは数で勝る敵集団を少数機で撃破しうる火力 4.高度な索敵、及び他の索敵媒体との高度なデータリンク能力、5.小回りのきく小型機とドッグファイトで渡り合える機動力 となったのである。

1.高高速戦闘に耐えうる速力

まず問題にされたのは、開発案の当初から出ていた、速度の問題である。これは、スクラムジェットエンジンの導入によって解決された。このエンジンを用いることで理論上最高でマッハ12まで加速でき、また、機体が大型であるためにエンジン自体のサイズも許容範囲が大きく、安全性、性能共に高いエンジンを用いることが可能となった。スクラムジェットエンジンを使用するに当たっては初期加速が必要になるが、使い捨ての分離式ロケットエンジンを用いることで戦闘時の重量を抑えつつ、十分な初期加速を得ることに成功した。また、大きな角度の後退翼を持つことで空気抵抗を軽減し、速度を上げることに成功した。


2.低軌道宇宙に上がり、そこで戦闘をするのに十分な航続距離

この問題はコンフォーマルタンクによって解決された。コンフォーマルタンクとは、翼の上面の付け根と胴体に沿って装着された燃料タンクである。通常の航空機用の増槽では翼下パイロンを占領してしまい、大火力の維持という最大の目標に反する上、空気抵抗が増すために速度面にも影響が出る。つまり、この機体に要求された性能を阻害してしまう惧れが大きかったのだ。コンフォーマルタンクでは滑らかの形状、つまり空気抵抗が余り増加せず、さらにはパイロンに装着されるのではない為、パイロン全てに兵装を装着できる。以上のことから、コンフォーマルタンクの導入が決定された。


3.強固、若しくは数で勝る敵集団を少数機で撃破しうる火力

この試作機の兵装としてあげられたものは以下の通りである。

1)レーザーの装備
2)ガンポットの装備
3)大気内戦闘用のミサイルの装備


1)レーザーは、弾速が遅い機関砲に代わり、低軌道宇宙における高速機動戦闘に対応するために装備された。大気圏内における戦闘も本機の目的のひとつであるため、大気圏内における減衰が少ないフッ化水素レーザーが用いられている。そのため、後述するガンポットの役割は限定的なものとなっている。レーザーは機首に一門固定式で装着されているが、これは複数つけると消費電力が増大し、機体の制御に支障が出る可能性が出てしまうため、複数つけることがそのリスクに見合う効果を上げられるかが疑問であり、また旋回式にした場合は対応範囲は広がるものの命中率が低下してしまうという理由によるものである。

2)ガンポットはレーザーの項で述べたように、その役割は限定されたものとなっている。ガンポットは旋回式銃架、12.7mm機関銃と弾倉、照準用レーダー、制御コンピューターで構成されている。コンピューターによって制御され、レーダーと連動し、自動で接近してくる敵機・ミサイルを撃破するようになっている。機首と機尾に一基ずつ装備している。小口径機銃をもちいているのは敵機を撃墜する為の装備ではなく、あくまでも牽制する為の装備であるからであることと、高速度戦闘においては相対速度が大きくなる為に小口径でも十分な威力が得られると考えられたからである。このガンポットによって、短距離ミサイル発射後のドッグファイトにおいて、目標とした敵機以外の接近を妨げることができるようになり、操縦者が目標に集中しやすい環境を作り上げることに成功した。

3)前述したように本機の大気圏内における戦術では、二種類のミサイルを用いる。短距離ミサイルと遠距離ミサイルである。原則として本機は翼下パイロンに遠距離ミサイル3発ずつ、胴体下パイロンに同じく遠距離ミサイルを4発、そして胴体内のウェポンベイに短距離ミサイルを10発、合計20発を装備する。以下はそれらのミサイルの性能概要である。

短距離ミサイル
誘導方式 赤外線画像誘導
射程距離 10km
解説
より多くのミサイルを運搬する為に射程距離を犠牲にして小型化を行っている。誘導方式である赤外線画像誘導は画像で照準するために欺瞞に強く、またシーカーの冷却が不要になり、発射タイミングを逃しにくくなった。推力変更装置の搭載により、高い機動性を持つ。また、後に記述するHMD,JHMCSとのくみあわせにより、真正面以外の敵機を攻撃するオフボアサイト能力を獲得している。

遠距離ミサイル
誘導方式 アクティブレーダーホーミング
射程距離 250キロメートル
解説 
こちらは遠距離からの奇襲要素を強める為に長い射程距離を持つ。誘導方式はミサイル自身にレーダー発信機、受信機が内蔵され、発射母機の誘導を受けずに目標を追尾、攻撃できるアクティブレーダーホーミングを採用している。この方式を採用したことで、多目的同時攻撃能力が付与されている。そのため、最高で10目標まで同時攻撃できる。


4.高度な索敵、及び他の索敵媒体との高度なデータリンク能力

本機の捜索方法はレーダーと赤外線の二種類である。本機には機首と機尾にひとつずつ、2つのフェイズドアレイ式の大型レーダーが搭載されている。これは四方をレーダーで索敵するための措置で、これにより先制発見、先制攻撃の実現が目指された。機首、機尾ともに性能は同じで、機尾のレーダーはスクラムジェットエンジンの上に置かれるように内蔵されている。このレーダーは遠距離捜索、遠距離戦闘、接近戦闘、格闘戦の4つのモードを持っていて、手動で切り替えることが出来る他、敵機との距離により自動で切り替わるように設定することもできる。また、赤外線による捜索は、IRST(InfraRed Search and Track)という装置によるもので、これは機首と機尾にそれぞれ一基ずつ、二基が内臓されている。これはIRSTが前方の赤外線しか捉えることが出来ないため、より広い領域を探知できるようにする為の措置である。このIRSTの探知距離は50キロに及ぶが、IRSTでは相対角度しかわからない、つまり敵機との距離や敵機の速度がわからないため、レーザー測距装置を用いてそれらを算出する。レーザー測距装置はIRSTシステムに組み込まれており、20km程度の視程を持つ。これらの機能は奇襲などのレーダーが使いにくい環境や、高度なステルス機能を持つ敵に対処するために非常に有効であるといえる。
一方で高度なデータリンクの装備により、他の味方機のレーダーと情報を高いレベルで交換できるようになった。この結果、実質的な捜索範囲を広めることに成功した。このデータリンクシステムは通常の無線回線以外にレーザー回線を用いており、ECM(Electric Counter Measure 電子対抗手段)を受けても被害を最低限におさめられるようになっている。これらの強力な捜索手段、高度なデータリンクシステムの装備の結果、本機はAEW(Airborn Early Warning 早期警戒機)の役割を果たすこともできるようになり、本機の運用の幅を広めることにつながっている。

5.小回りのきく小型機とドッグファイトで渡り合える機動力

本機の特色として、CCV(Cntrol Configured Vehicle)と呼ばれる概念を導入していることが挙げられる。これは、機体の設計をわざと不安定にし、且つ機体制御にコンピューターによる補助を加えることで機体の安定性を維持しつつ運動性を向上させるものであり、本機では尾翼がない、という事がまず目に付く。これを行うために、本機はフライ・バイ・ライトを導入しており、これは操縦棹等の操作量を光ファイバーを通じて伝達するというシステムで、パイロットの負担低減にもつながっている。また、三次元推力変更装置を装備することで非推力変更装置機では考えられないような機動を行うことが可能になっている。この結果として小さい半径での宙返りなど、小回りがきくようになっていて、目標とする小型機と渡り合える機動力を得ることに成功している。

以上の性能を実現するに当たって、本機のコクピットと電子装備は以下の様になった。

1)コクピット

本機は一人で操縦することも可能であるが、原則的には二人乗りであり、コクピットはタンデム複座(前後ろに座席がある)となっている。二人乗りであるのは遠距離攻撃の際に兵装を操作をし、またナビゲートをする要員を載せるためで、前席パイロット、後席武器操作及びナビゲート要員となっている。また、前述したAEWとしての任務を主目的として飛行する際には後席に管制官としての訓練を受けた者が乗ることになっている。さて、本機のコクピットはグラスコクピット化がおこなわれ、情報はひとつのタッチパネル式大型ディスプレイをいくつかのウィンドウに分割して表示されるようになっており、パイロットの負担低下に貢献している。また、HMD(Head Mounted Display)とJHMCS(Jointed Helmet Mounted Cueing System)のくみあわせにより、敵機を正面に捕らえずにHMDを敵機の方向に合わせるだけでロックオン、発射することが出来る。また、ミサイルのロックオン以外にも、従来ならばHUD(Head Up Display)に投射されるような航行情報などもHMDに投影されるようになっている。このことで情報表示の一元化が進み、パイロットの負担低下につながっている。
また、本機は高速での機動を想定しているため、極めて高いGがかかる事が想定される。そのためパイロットは専用のインナースーツを着用し。またヘルメットをとおして常に意識レベルをモニターすることでブラックアウトなどの起こる可能性を低下させている。
また、操縦棹はHOTAS(Hand On Trottle And Stick:操縦棹やスロットルレバーから手を離さなくてもレーダーや兵器の操作が可能であるという概念)を導入しており、迅速な操縦が可能になっている。操縦棹はサイドスティッック方式である。サイドスティック方式の弱点として片腕が負傷した場合操縦できなくなるというものがあるが、これは宇宙空間において片腕を負傷し、かつ機体が無事であるという状態が想定しにくいため、本機では省スペースが可能のサイドスティック方式が用いられている。 


2)電子戦

本機は前述のような強力なレーダーを装備すると同時に、ECM(Electic COuter Measure)、ECCM(Electric Counter Counter Measure)といった電子戦手段を持つ。ECMはジャミングを行い敵機のレーダーを使用不可能にする、というものであり、共に内蔵するESM(Electic Support Measure:レーダーなどを探知、解析する装置)によって敵のレーダーの周波数などを解析し、ECMで妨害する、という手順をとる。ECCMはレーダ自体に存在するものであり、複数の周波数を同時に用いることで敵ECMに対抗している。また、フレア・チャフ散布装置を内蔵しており、敵ミサイルに照準された場合に用いられる。


以上のような機能を搭載した結果、機首からミサイルを積む胴体に向けて幅が広くなっていき、そして機尾はエンジンが一基だけのため胴体よりまた細くなる。そして主翼は大きな後退翼を持ち、機体サイズに比べ小さい。尾翼は前述の通りない。このような外見を持つようになった。


終りに

本機は設計どおりの性能を発揮した。しかし、結局操縦に高い技能を必要とすることや、コストパフォーマンスとの比較の結果、量産化はされなかった。開発者はその知らせを聞いた後、こう言ったという。
「量産はされず・・・こいつはいつまでも孤独というわけか。だが、英雄とはいつも孤独なものだ。」