今でも時折思う事がある。

あの日、あの時、あの刹那

私の人生は始まったのではないかと。

あぁ、いや。違うな。

‘私達の人生’が始まったんだ。

―――自惚れでなければ ね。


/ * /


太陽は徐々にその姿を地に隠し

雲が遷す光は丘上を薄紫に染め

春の気配は冬の名残りへ移りゆき

時折、降りてくる北風には

未だ冬の気配がして

丘上に佇む桜木は

まるで春を祈るように微笑して

そっとその身を震わせて

優しく花を風に乗せ、私達を優しく包みこんでいた。


/ * /


黒く大きな瞳だった。

星雲をその身に宿した泉のような、深く澄み潤んだふたつの瞳。

その水面がふるると揺れて、星を湛えた滴が私の頬にひたりと落ちた。

その意外な温かさに私が思わず肩を揺らすと、彼女はぴくりとその身を震わせ、慌てたようにその瞳を暁へと向けた。

空も体も徐々に冷えゆくなかで、ただ彼女の膝にある頭だけが柔らかな香りと共に微かな温かみを保っていた。

この小高い丘陵に人の気配はなく、祭りの喧騒は風に乗って遠く聞こえ、徐々に冷たさを帯び始めた大気と光が私にそっと時を知らせた。


あぁ、そうか――と心の中で呟いて、ゆっくりと息を吸う。

それは深呼吸の必要があったから。

これから起こる事には、起こすことには、心の中の勇気を総動員して挑む必要があったから。

鼻腔をくすぐるような甘い香りがした。

その香りに心の波紋はザワザワと震えるのに、水の下ではどこか安らかであるような、そんな不思議な感覚だった

私はそっと起き上り、彼女と向き合い喋りかける。いつものように。いつもの口調で。

「…怒っているかい?」

俯いた彼女は少しの沈黙のあと言った。顎を上げ、胸を張り。私と同じく少し震える声で。

「ええ。怒っているわ―――その恰好じゃなくて、私に言わなかったなにもかもに。」

そして私を見つめ、その瞳と声を鈴のように震わせ彼女は続けた。

「ねぇ、だからお願い。貴方は貴方なの。紳士じゃなくてもいい。メードでもいい。
―――私の言ってる意味。わかる?わかってくれる?私、は……」

そこまで言ったところで、彼女の言葉は、止まる。


――否


‘止めた’のだ。

私は彼女の唇を塞いだ指をそっと離し、代りに掌でその濡れた頬を包み、そっと涙をぬぐう。

そう

ここから先は、私の言葉だ。

古臭くて、カビの生えたような因習ではあるが、それでも私は私が言うべきだと思ったのだ。

彼女は待っていた。

私のこの言葉を待っていた。

きっと、ずっと――待っていた。

私は間に合ったのだろうか。

きっと、間に合ったんだろうな。ぎりぎりだったけど。

だって、ほら。

不器用にだけど、彼女はいつものように私に微笑んでいてくれる。


――だから、彼女に、この言葉を伝えます。


幾多の星座と舞い散る桜に見守られながら。

それよりもなお美しき彼女の瞳の輝きを見つめながら。

その言葉の、ひとつひとつを、確かめるように。誓うように。


『わたくし、かくたは、貴女の事が。坂下真砂さんが、好きです』



彼女は、真砂はその瞳をいっそう潤ませて、息をのみ、酷く幸せそうに言う。

「あたしは――大人しいお嬢様タイプじゃないわよ?」

「うん。知ってる。それに私は基本紳士だけど、時々メードになる。こんなふうにね。」


――そう、結局のところ


「こう見えて、結構朝とか弱かったりするわよ?血圧低いから」

「丁度いい。実は朝は強いんだ」


――私たち二人は


「怒ったら、また乱射とかするかも」

「その時は命がけで止めるし避けるさ」


――似た者同士だったのだ。その心の在り方が。


「まだ貴方のしらない秘密があるかも」

「これから知っていく楽しみができた。――嫌かい?」


――その上で、互いを認め合った。互いのすべてを受け入れて。


その問いに、真砂はその顔を笑顔と涙でぐしゃぐしゃにして

あぁ、この顔ばかりは他人にはお見せできないな。


――あまたの星と桜の散る中で


そうさ。この表情は私だけのものだ。ほかの誰にも見せてやるものか。


――丘の上の二つの影は


そっと、ひとつに、重なった。



(おわり)










































(この先は本編とは著しくイメージが異なり、あなたのろまんちずむを粉々に打ち砕く恐れがあります。やーんな人はここでページを閉じましょうね。




















そうですか…
















見ると仰るですか。















うん。や、まぁ、いいんだけどね。


はい。


では、どうぞ。


注:時系列の関係で、槙クンがまだ(比較的)まともです。

(オマケ)「祭りは喜劇と悲劇と惨劇と」


其れは二人のラヴ空間から遡ること数時間前の群像劇


/ * /

メード♂の二人



「裕樹さん……、そろそろ、こー、元気出して下さいよ。というか全力で泣かないでくださいよ。化粧が涙で崩れて割とショック映像ですよ」

「あかん。あかん、もうあかん、支那実ちゃんにこの姿みられてもうた…しかも、しかも、なまあたたか~い眼で。28℃くらいで」

(あー、だめだ。この人の精神は既に現実からゲラウェイな感じだ。なんか、っもー適当に丸めこんでスケープゴートにでも使うか…)


「シクシクシク…」


「はいはい、チャチャと行きますよー」


――その頃

かくたさんを担いだ姐さんが去った祭り会場は、飲めや歌えや、食えや食えや食えやの大騒ぎ。割合的に1:1:3:3:3くらい。

む。1余りますね。でもいいや。オマケだし。


――はい。その時のグラジオサスさん。と、やしほさんと、客。

グラ「飲んでまッスカーーーーーーーーーーーーー?」

「「おぉぉぉっぉぉぉ」」

やしほ「食ってますかあーーーーーーーーーーーーーーー!?」

「「もごぉぉぉぉおっぉぉおぉ!!!むぐむぐ」」

なんというか酒が入ると、結構アレな人達である。


――その頃の、藩王と支那実ちゃん。


「あれですね。お祭りってこれだからたのしいなぁ、あ、藩王さまお注ぎしますよ~」

「やー。悪いですねえ。支那実さん。あっ、とっと!?…うん。焼酎のストレートかぁ…うーん。3合くらいあるよね。」

「どうかしましたか?わ、私何かそ、粗相を?」

「や、こー、せめて氷とか…」

と、言いかけて止める。

(いや、悪意は無いのだ。ここで、飲まねば。藩王として、男として…)

藩王――ゴッドスピード。



――その頃の神様(ビリケンさん)と蒼麒さん忠太さん志朗さん。

「この国は、ええ国やなぁ、しばらく居させてもらおうか」

「んあーー、いいんじゃないスか?とりあえず、煙草とかある?珍しいの」

「まいど、どもー。ええのありまっせー」

「あ、僕も何か見せてほしいッス!」

「特撮ものとかない?」

「おおきにー」


―――その頃のフィサリスさんと来さん。

「どしました?なんや、こーうにょーんと暗い顔しはって」

「ん?あー、その、こういうお祭りって初めてで…どうしたものやら」

「ん~ホィ!」

バサバサとフィサリスの足もとから鳩が舞う。

びっくりした感じのフィサリス。

「ケラケラケラ、よかったら、ビックリドッキリな僕のショウの手伝いとかどでっか?セイさんとまた一つやろかと思うてな。ちょうど美人の助手を探してたんや」

フィサリスはそっと顔を綻ばせ

「うーん、いいけど、代わりに目隠しナイフ投げの的になってね♪」

「え゛」

来さん――ゴッド(略



/ * /

うたげも終わり、日も暮れて、丘の上ではロマンスが。

一方ここでは、(社会的)生き残りをかけた逃走劇が


最初の発見者は、帰途につくやしほさんと平安堂御一行様。


「あれれ?タビサさん。あの二人って・・・」


((ギクッ!


「あっ、あーー逃げたーーー。グラジオラスさーーーん!!こっち、こっちーー!!!」


ほろ酔いで、にゃんにゃかな状態で電波良好のグラさんが見たのは


「え?どうしたの~?やしほちゃん。あっ、あっ、アーーーーーーーーッ!」(ポン!)1本目

「か、かぁいい。かぁいいよぉぉぉーーーーーーーーー!!!」(ポン!ポン!)2本。あ、3本たった。


はい。惨劇の始まりですね。


「ままままま、槙さん。ここてで捕まったら最後やで。死ぬ気で走るんやぁ!」

「ヒィ、ヒィ、な、なんでヒールってこんなに走り辛いんだぁー!」


…(なんだなんだ?(ざわざわ

……((メード服の男が逃げてるらしいぞ!

………(((メード服の男を捕まえて写真に撮ったら、何かいいらしいぞ!

…………((((メード服の男を写真に撮って、応募する大会が始まったらしいぞ!

…………(((((優勝したら、よんた饅一年分だってよ!マジ?


嗚呼、かくも恐ろしき伝言ゲームと集団心理。と祭り。


「ハァ、ハァ、ま、巻いたか?」

「……恐らく。」

「ひぇっひぇっひゃ、このババから逃げられると思ったのかのぅ?お若いのぉ」


「か、堪忍や。やっと逃げられたと思うたのに…」


「「「「見つけたぞーーーー!!こっちだーーーーー!」」」


「「「「おおおおおぉおおぉぉおお!!!」」」」」


「激写!激写ボー●(←ゲームの方)」


「な、なんや!?ワシらが何したって、ちょ、フラッシュが!、まぶし!」


「や、ちょ、ね?待って。待って。ちょっと待って。ねえちょっと待ってッて、アーーーーーーー!」


はい。合掌。


END

(文:槙 昌福)