タイトル「藩国会議の風景(戦終わって大ピンチ)」


「先日の出兵は記録的大勝利であるとの発表が、陸軍省より出され、帝都では大規模な戦勝パレードが催される予定です。」
「記録的大勝利…か、記録的であることは、否定しないがな。
 あれを大勝利と言ってしまうのはぽち姫にはむりそうだな。シロ宰相がやっているのか?」
「はい。恐らくぽち姫には、一般向けと同程度の報告のみかと思われます。」
「まあ彼女に知れたら、シロ宰相もだいぶまずい事になりそうだしな。」
「そのシロ宰相の命により、総指揮を取っていたジェントルラット様の治めるジェントルラット藩国へ向け、
 ディンゴコープスと呼ばれる討伐隊が派遣されるそうです。」
「ターゲットは藩王か?」
「藩王を含む全国民が処刑対象、ジェントルラット国は取り潰しになるそうです。」
「ずいぶんひどいな。あのシロ宰相だからな、また何か企んでそうだが…。
 それよりも、その情報、当のジェントルラットは知ってるのか? その前にそんなネタ、どっから持ってきた?」
「この情報は王女親衛隊のバトルメードより、ジェントルラット藩国へもたらされました。
 この報を受け、ジェントルラット藩国では亡命の準備が進められているようです。
 同時に、王女親衛隊バトルメードの数名が、ジェントルラット国へ向かったとも伝えられました。
 この情報は、バトルメード養成所に見学に行っていた当国のメイドが、メイド仲間のよしみで教えてもらったそうです。」
「で、彼らは無事に亡命できそうか?」
「現在の状況だと微妙だと思われます。バトルメード達が間に合ったとして、ディンゴコープスに対抗できるかどうかは分かりません。
 そもそも帝國を抜けたとして、共和国に受け入れ先があるのかも分かりません。」
「受け入れの方は大丈夫なんじゃないか?相手は猫だ。そんなこと気にしないと思うし。
 軍備を持ち出せれば、受け入れてくれるとこはあるだろう。…あ、今のは記録に残すなよ。ばれたら処刑モンだ。」
「心配無用です。王女親衛隊によると、ジェントルラット国のみならず、指揮官クラスはみな討伐対象となっているようです。
 そのほかにも、参謀、偵察部隊のリーダー格には常時監視がつけられるそうです。
 同時に、何らかの不正を働いた者の洗い出しと、処分が行われる模様。
 当国では、今のところ不正は見つかっておりませんが、重箱の隅をつついた結果、何が出るかは分かりませんから。
 それに、藩王は中隊長でしたから、処分対象に含まれているでしょう。」
「…それは、何もせずとも処刑されるから、心配はいらん、ということか?」
「はい。」
「…まったく、宰相ご乱心だな。で、俺たちはこんな所で、会議してる場合じゃないんじゃないか?」
「いえ、何とかするために、会議を開いているんです。」
「それもそうか。どうせなら、ジェントルラットを助けに行ってやりたいんだがな。」
「無理でしょう。当国にI=Dはありませんから。誰も向かえません。」
「そうだった…、じゃあ、俺が隠れる場所を探さないとな。」
「隠れたところで、処分対象から外れるわけではないのですから、一生追われる身になりますよ。」
「…じゃあ、どうしろってんだ?」
「だから、それを考えるために、こうして会議を開いているんです。…人の話聞いてました?藩王。」
「いや、聞いてたけど、狙われてんの俺なんだろ?悠長にしてられねえだろ?」
「我々も全力で藩王を守る方法考えますから、少しは考えてください。」
「はあ…、なーんでこんなことになったかなぁ…。
 第一、俺たち忘れ去られた挙句、置き去りにされたのになぁ。それで責任取れもなにもあったもんじゃないと思うんだが。」
「藩王、それ言っちゃ惨めすぎですよ…。とにかくこのピンチの脱出方法考えましょう。」
「そうなんだが…、あー、納得いかねえ!」

そうして、時間だけが過ぎていき、これといった方法が見つからない彼らであったが、完全に失念していた事実があった。
幸か不幸か、戦場でさえ忘れられていた彼らが、討伐者リスト作成時に覚えておいてもらえるはずはなかったのである。



(文:雷羅 来)