太陽光レーザーと燃料電池によるエネルギーサイクル

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 マグネシウムを燃焼させて水の中に入れると、水中で激しく炎を上げる。この燃焼でマグネシウムは水から酸素を取り込んで酸化マグネシウムとなり、大量の水素が発生する。
この現象を利用すると、水とマグネシウムをエネルギー補給源として発電する、発電効率の非常に高い燃料電池を作ることが出来る。
酸化マグネシウムを還元するには、多量のエネルギーを要するが、近年、太陽光レーザーを使用することでこれを還元する技術が確立され、マグネシウムによるエネルギーサイクルが可能となった。
これによりマグネシウムは自然由来の高効率エネルギー材料と変貌したことになる。

こうした太陽光レーザーと燃料電池によるマグネシウム循環型エネルギーサイクルが東京工業大学の矢部孝教授を中心に研究され、大学ベンチャーである株式会社エレクトラにおいて実用段階に入っている。

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エネルギーサイクルの説明(株式会社エレクトラ)

究極の再生可能エネルギー

 従来は酸化マグネシウムを還元するには多量のエネルギーと触媒が必要になり、マグネシウムを酸化させて水素を得る方法はエネルギー採算が取れないとされていた。しかし太陽光レーザーによる還元方法が開発されたことで、このエネルギーサイクルは太陽熱発電としても非常に高効率な再生可能エネルギーへと生まれ変わった。
使用される太陽光レーザーにも効率向上が施されている。フルネルレンズで集光した太陽光の可視光線の波長を赤外線域にして従来の3倍まで効率を稼いでいる。それによってレーザーの温度を20000℃にまで上げ、触媒無しでのマグネシウムの還元を可能にした。この太陽光レーザーには広大な面積は必要無く、4平方メートルの集光装置で可能で、エネルギー効率が非常に高い状態でエネルギーに変換出来る。(矢部教授によると100%)

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 高効率な燃料電池を発電の基礎に置き、エネルギー源は太陽熱エネルギー。このエネルギーサイクルが成り立つと、無尽蔵な自然エネルギーを利用した類を見ない高効率な発電システムが実現することになる。
従来、水素ガスの精製は、大量のエネルギーが必要なことは元より、そのままでは可燃性のため保存や持ち運ぶのに危険であったり、補給するにも700気圧の高圧ガスではかなりの危険が伴うため、実用化の壁となっていた。
このマグネシウムと太陽光レーザーを利用した燃料電池エネルギーサイクルにより、これらの問題が一気に解決することになる。
基本的な技術開発がほぼ出来上がっている今、十年後には新たなエネルギーとして主軸を占めているかも知れない。

エネルギーサイクル

東京工業大学・矢部孝教授による説明

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