カセットデッキとカセットテープの歴史・性能・デザインを徹底解説。
オープンリールであった録音テープを扱いやすくするため、テープとリールをケースに封入した規格が数多く発表された。 その中で、フィリップス社が、1962年に開発したオーディオ用磁気記録テープ媒体の規格 コンパクトカセットを互換性厳守を条件に基本特許を無償公開したため、多くのメーカーの参入して標準規格となったのである。 1966年7月には日立マクセル(現・マクセル)が日本で初の国産コンパクトカセットテープを発売している(ちなみに競合メーカーの東京電気化学工業(現・TDK)は同年9月、ソニーは同年12月にそれぞれ発売開始)。
テープ幅は3.81mmで、A/B各面を、テープ終端になった時点で裏返して使用する。毎秒4.75cmの走行速度を保つ構造になっている。
このA/B各面に、モノラル時には1トラック/1チャンネル、ステレオ時には2トラック/2チャンネルが割り当てられる。 モノラルの1トラックに、ステレオの場合は左右チャンネルが録音されるため、ステレオ録音のテープでもモノラルのデッキで再生可能である。
Cに両面の総収録時間を付けて表示される。長時間録音になるほどベースフィルムが薄くなるため耐久性は悪化する。
初期はテープの性能から会議録音など業務用のメディアとされ、語学学習などに活用されていた。
1970年代以降、性能が向上し、音楽メディアとして広く普及、録音媒体としてレコードのダビング、放送番組を録音するエアチェックに活用された。 音楽用途が求められるにつれ、周波数特性やダイナミックレンジの拡大を目的に、さまざまな種類のテープが開発された。
(TypeII) 1970年にBASFが、米メモレックス等より二酸化クロム磁性体採用の高性能タイプ発売し、 1972年に3M、TypeI音楽専用タイプにコバルトドープ酸化鉄を採用した"HE"を発売した。 1975年にTDKよりコバルト被着酸化鉄を採用したクロムポジションのSAを発売、各社も追随しTypeIIの主流になる。
(TypeIII) まだテープの性能の低かった1973年にソニーより、二酸化クロムとγ酸化鉄の二層塗布して両者の長所を生かした、
フェリクロームFe-Crが開発された。 Type IIIは基本的に下層に中低域用のγ-ヘマタイト、上層に高域用の二酸化クロムを塗布するが、
他に上層をコバルト被着酸化鉄にしたDENON/DX5、特性の異なるコバルト被着酸化鉄の二層塗布とするものが存在した。
だが、製造過程に由来するコスト高と対応機器の少なさ、更にメタルテープ登場で存在意義が薄れ、廃れている。
Type I には当初から用いられるγ酸化鉄γFe2O3、高級タイプに用いられた、特性の異なるγ酸化鉄を二層塗布した、富士写真フイルム/Fx-Duo,DENON/初期DX3,DX4、 四酸化鉄マグネタイトFe3O4のTDK/ED、最初はType Iに用いられたものに、コバルトドープ酸化鉄のScotch/HighEnergyやコバルト被着酸化鉄のmaxell/UD-XLがある。
Type IIでは、代名詞ともなった二酸化クロームCrO2が主流だったが、公害問題廃れ、 コバルトドープ酸化鉄のScotch/Master70,DENON/初期DX7等を経て、殆どがコバルト被着酸化鉄磁性体CoFe2O4のTDK/SA,maxell/XL II。
1970年代後期から高級タイプTDK/AD-X,maxell/XLI-Sの、
1980年代中期以降は普及タイプ富士写真フイルム=AXIA/PS-I,太陽誘電=That's/RXにも多用された。
70年代中頃に、一般的なLPアルバムを収録するのに丁度良いC-45が発売されたが、 片面の収録時間が22.5分と中途半端なため、1970年代後期にはC-46へ置き換わった。
70年代中期に富士フイルムが初採用したC-80、DENONのC-50及びC-42、 ナガオカ産業による各時間に5分の余裕を持たせた+5minシリーズが現れた。
1978年 3Mより鉄合金磁性体によるメタルテープ発売(TypeIV)
Type IVはいわゆるメタルα-Feとコバルトなどの合金だが、 このメタル磁性体が極めて高出力な特性を買われて80年代にTypeIIへの転用が図られ、 主に高級タイプのTDK/HX,DENON/DX8に用いられ、低音域のパワー不足を大幅に向上させた。
1979年 ソニーより、ポータブルカセットプレイヤーウォークマンが発売
1970年代後期に、TDKのC-54、ソニーが音楽ジャンルに的を絞った収録時間C-54、C-74、C-84などが、 この頃までに出揃っている。
1980年初期には、パソコンの記憶メディアとして広く利用され、専用の製品も発売されていた
1981年にCDが発売され、音楽ソフトの主流がレコードからCDに移行していった 80年代後期に、CDの収録時間に対応するため、ラインナップが爆発的に増加した。
Type Iでは80年代に入って開発された無空孔ノンポアレス酸化鉄のTDK/AR,maxell/UDI及びそのコバルト被着タイプがある。
コバルトドープ酸化鉄やコバルト被着酸化鉄は後にType IIの主流になったもの。
1983年 太陽誘電より、鉄合金磁性体をTypeIIに転用した"EM"発売。 1983年 日立マクセルより、無空孔酸化鉄のTypeI、"UDI"発売。
1984年 松下電器より、コバルト蒸着式テープオングロームカセット発売。 松下電器がオングロームで投入した蒸着テープは、通常の塗布層の上に更に金属コバルトを蒸着させるTypeIII的な製品だった。 低域~中高域のテープ特性の大部分は下の塗布層に由来しており、上の蒸着層は超高域のみを担当するために高域特性を大幅に改善した。 製造コストの高騰から短命に終わったが、この技術が後のビデオカメラ用テープの技術として開花する。
ソニーの CDixを皮切りに、TDKのCDing、マクセルのCDカプセル、アクシアのJ'z等、
各社CD**と銘打った多様な収録時間15種程度を持つ音楽専用シリーズが一般化する。
走行安定性の向上という観点から大径形のハブは、 ハイポジ中級クラス以上とメタルテープで採用されていた時代が長くあり、 80年代中期に流行したオープンリール状のハブを持つリールタイプでは、 リール側面を固定するためハブ中心部が大径となり、C-60のテープ厚ではC-52が収納限界となった。
バリエーションは、1980年代末から1990年代前期までが最も多彩であった。
Type IIでは80年代末、コバルト酸化鉄の代わりにマグネタイトを核に用いmaxell/XL II-S,UD IIに採用した。 1989年 マグネタイト核晶のコバルト被着酸化鉄を、日立マクセルや日本コロムビアがオーディオテープに採用。
1984年に、ティアックによってオーカセが開発された。コンパクトカセットのリールを磁気テープごと脱着式にし、 オープンリールとリール部交換式カセットとしたもので、リール・テープ単体の低価格を売りに商品化された。 リール・ホルダーなど、多様な展開を行っていた。
この時期にC-50、C-54、C-74、C-80といった収録時間が一般化していき、 更にCD対応のためC-64,C-70といった様々なラインナップが現れる。
ソニーではハイポジCDixIIでC-50からC-80までは全て5分刻みの収録時間 C-50、55、60、65、 70、75、80、他にC-20、40、46、90として、 ほぼ全てのCDの収録時間に対応可能となった。
長くC-46/60/90のみを堅持していた高級タイプメタルポジションにも、 C-54、74といった中間帯、C-100~C-110といった超長時間タイプがラインナップされた。
SANYO、National、TEAC等がC-46の2倍ということでC-9を採用した。 80年代末期に発売されたCDシングルの総収録時間に対応したC-20、C-22といった短時間タイプもラインナップされた。 That'sがハブの小径化によってC-90テープ厚で限界のC-108の収録時間を達成した。
CDなどのデジタルオーディオが普及し、 80年代末には、音声データをデジタルで記録・再生できるDATが誕生した。
90年代、コンパクトカセットとの再生互換性を持たせた、デジタルコンパクトカセット(DCC)が フィリップスとパナソニックとの共同開発で誕生した。
C-150は最後期の90年代に発売された超長時間タイプで、用途は会議録音用などであった。
ソニー開発の、ランダムアクセスにより容易に選曲できるミニディスクの、再生時間の長時間・大容量化が進み、 ユーザーはMDへ移行するようになっていった。
携帯プレーヤーをカーオーディオで聞くユーザーの間では、FMトランスミッターに比べて 電波干渉を受けにくいという観点から、高品質なカセットデッキが再評価されつつある。
TYPE II/ハイポジション,クロム
TYPE III/フェリクロム
TYPE IV/メタル