とある魔術の禁書目録 自作ss保管庫

Part03

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第2話 誤解


 ここは第7学区にある、とある公園。
 公園、といっても、普段人が足を運ぶことは以外と少なく、ツンツン頭の少年が通ったり、常盤台の制服を着た少女が自販機にキックしに来るくらいだ。
 そんな公園は今日も人気は少なく、今公園内にいるのは、地面に転がっている青髪の少年と、ベンチに座り、息を整える不幸少年だけだ。

「い、痛ってえ…青ピの野郎思い切り殴りやがって…」

 上条は頬をさすり、側にうつぶせの状態で倒れている青ピを見る。
 学校からここまでほぼ全力で走り疲れていたため、なんとか相打ちに持ちこめたものの、かなり怖かった。
 また、相打ちなのに上条だけ意識があるのは、やはり打たれ強いからだろうか。

「それにしても…いったい何がどうなってんだ……」

 息がようやく調ったところで、上条は呟いた。
 いろいろとおかしすぎる。
 吹寄の態度も小萌先生の態度も、普段じゃ絶対にありえない。

「マジで何が起こってるんだ…?まさか魔術………やっぱり魔術か。」

 上条が第一に考えたのは、夏休みの『御使堕し』や、ヴェントの『天罰術式』のような広範囲魔術が発動しているのではないか、ということだった。
 今回は『天罰術式』のように攻撃的なものではないため、『御使堕し』のような偶然発動された魔術の可能性もある。
 だとすれば、どうやって解決するべきか。
 と、上条が解決策を本格的に考え始めていたところへ

「魔術じゃなくて、これのせいじゃないかにゃー?」
「え?土御門?」

 いつのまにか土御門がすぐ側に立っていた。
 彼の手には、上条が飲んだ『あの』増強薬が握られている。

「え……いやいやそりゃねーだろ?また『御使堕し』の時みたいに、広範囲魔術が発動したんじゃないのか?」
「残念ながら今、学園都市内で魔術は使われていないぜい。」
「え、マジ?」
「ああマジぜよ。まあ間違いなくこの『増強剤』が原因だろうな。」

 吹寄と小萌がおかしくなった原因は、魔術ではなく土御門の薬。
 ありえなくもないが、上条には疑問があった。

「いや待てよ。もしその薬が原因だとしたら、朝から吹寄と小萌先生はおかしくなってたはずだろ?なのに変化があったのは、3限目が終わった後からだったぞ?」
「…朝はまだ薬が効ききってなかったからじゃないか?」
「効ききってなかった?」
「ああ。上やん、3限目が終わった後に体調が治っただろ?それは多分、薬が完全に効いたからだと思うんだにゃー。」
「………」

 そう言われてみると、つじつまが合わないことはない。
 だが本当なのだろうか、と考える上条に対し、土御門が言う。

「だから、この薬が上やんの『フラグ体質』を増強しちまったんだにゃー。だから吹寄も小萌先生も、おかしくなったはずぜよ。」
「『フラグ体質』が強化された?それってどういうことだ?」
「……はぁ…」

 上条の言葉に土御門は大きなため息をついた。
 『これだから鈍感は困る』とか思っていることを、上条は知らない。
 そして土御門は上条にとんでもない事実を言い放つ。

「つまりだな、周りにいる女子はみんな、上やんのことを好きになっちまうってことだにゃー。」
「な、なんやってぇ!!!」
「うおっ!」

 土御門の台詞に反応したのは、上条ではなく青髪ピアスだった。
 上条と相打ちになり地面に転がっていたはずだったが、いつの間にか2人の前に立っていた。
 しかも何やらやたら興奮している。

「つ、つ、つまりそれを飲めば、ボクも上やんみたいにモテモテになれるんやな!!」
「いやそれは違う「ツッチー!!早くそれボクによこすんや!!」にゃー……」

 土御門の話を全く聞かずに青ピは小瓶を奪い取り、迷うこと無く怪しい液体を一気に飲み干した。

「「あ……」」

 止める間もなかった。
 青ピは一体どうなるのか、2人は呆然と見つめていると

「んん……?おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!!!!!!!!!!」

 青ピは急に大声を発した。
 ビビる上条と、唖然とする土御門。
 そして何か覚醒したっぽい青ピは、両手をわなわなさせ、自らの身体に何か変化を感じているようだ。

「こ、こ、こ、これは……」
「「これは…?」」

 上条と土御門はおそるおそる尋ねた。
 すると青ピは


「で、できる!今ならなんでもできる気がするで!!待っとるんや女の子たちぃ
ぃぃぃぃぃいいいいい!!」
「え、ちょっと待て……って、はやっ!!…もうあんなとことまで…」

 上条が静止しようとするも、公園から勢い良く走り出していった青ピは、もうすでに遥か彼方に小さな点として見えるくらいだった。
 最早わけがわからない上条は、全ての元凶である土御門に尋ねることしかできない。

「おい土御門……何がどうなってんだ?」
「……多分青ピは上やんと違って『変態』が増強されてしまったんだにゃー。」
「変態が増強って…ていうか、なんで俺と違ってすぐ効果が出たんだ?」
「ああ。それなら上やんが苦しんでるのを見て、なんとなく中身を薄めておいたから効きが早かったんだと思うんだにゃー。……まあアンチスキルもいることだし青ピは放っておくぜよ。」
「放っとくな!!お前の責任なんだから今すぐ追えよ!!」
「いやー、俺は『増強剤』について詳しく調べるため、一度寮に戻らなきゃいけないにゃー。だから追うなら上やんが追ってくれ。」

 完全にめんどくさいことを押しつけている。
 だが、薬の詳細は上条も知りたいので、ここは了承するしかない。

「わかったよ…俺が探す。でもその前に一つ聞きたいことがあるんだけど。」
「ん?なんだ?」
「お前がさっき言った『女子がみんな俺のことを好きになる』っていうのが本当なら、なんで吹寄と小萌先生にだけがあんな態度になったんだ?」

 最もな疑問である。
 上条に対しての態度が変わったのはあの2人だけで、姫神もクラスや学校内の女子も、変化はなかった。
 土御門は手を口に当て、少しだけ考える素振りを見せた後

「それは……わからないぜよ。とりあえず俺は寮に戻っていろいろ調べるから、それまで青ピでも探して待ってるんだにゃー。」

 そう言い残して、土御門は公園から去っていった。
 残された上条は“ああ、俺って本当に不幸なんだなー。”とか思い、深いため息をついた。

「…しょうがない、青ピでも探す……ん?」

 ここで上条はあることに気づいた。
 暴走した青ピは街中にいる女の子の元へ向かったはずだ。
 そして今日は学園都市中の学校が3限目で授業が終わるため、街には学校を終え買い物をしたり友達と遊ぶ学生たちで溢れているのは間違いない。
 つまりそれは――――――

「ま、ま、ま、マズい!!!御坂が危ない!!御坂が青ピに襲われる!!」

 学校を終え、おそらく街にいるであろう美琴にも危害が及ぶ可能性があるということ。
 それを思いついた上条の顔は急激に青ざめた。

(ヤバい、それはヤバいぞ。御坂はあれだけ可愛いんだから、青ピの標的にされる可能性は高いよな。御坂が強いのはわかってるけど、万が一覚醒した青ピに何かされたら……)

 もうお分かりかと思うがこの上条、美琴のことが大好きであった。
 これは『増強剤』の影響ではない。
 ここ数ヶ月の間に彼女の可愛さに惚れ込み、本気で付き合いたいと思っている。
 もっと詳しくどれくらい好きかというと、好き過ぎるあまり、美琴以外の女子の遊んだり、2人きりになることを嫌うくらいだ。
 そして、この『女子と2人きりになることを嫌う』というのが、吹寄や小萌の家に行くことがきできない理由であり、『増強剤』を喜んで飲んだのも、美琴にモテたいという一心からであった。
 ちなみに上条が美琴を好きだという事実は誰も知らない。情報通である土御門ですら知らないのだ。

「あ、青ピ!青ピを探さなねーと!えーとアイツどっちに走って行ったっけ?こっちの方向だったような…いや待て、御坂を探した方がいいんじゃないか?そうだ!御坂をメインに探しつつ、青ピも探そう!!」

 予定変更。
 青ピを探すより、大好きな美琴を探した方がテンションが上がる。
 よって美琴を見つけるため、街へ向かって走り出そうとしたのだが

「そうと決まれば早速……って、電話すればいいじゃん。」

 これぞ文明の力。
 電話をするということは、美琴と確実に会うことができる上、先行して声も聞ける。
 上条は意気揚々とポケットから携帯電話を取り出した。

「…ん?……で、電池が切れてる…どんだけ俺不幸なんだよ…」

 作戦失敗。文明の力にも弱点はあった。
 結局、美琴がどこにいるかわからない状態で、探さなければならなくなってしまった。
 と、思いきや

「あれ?アンタ何してんの?」
「え?」

 ふいに背後から聞こえてきたのは聞いたことのある声。
 上条が振り返ってみると…

「あー……結標か…」

 立っていたのは美琴ではなくレベル4のテレポーター、結標淡希だ。
 上半身には胸にさらしを巻くだけという、露出率の高い服装の彼女はズボンのポケットに手を入れた状態でこちらを見ている。
 上条が思ったことは

(…御坂だったらよかったのに……)

 聞こえた声で美琴ではないことくらいわかってはいたが、落胆の色は大きい。
 すると結標は上条が少し大きめのため息をついたからか詰め寄ってきた。

「ちょっとなんなのよその反応は?なんかムカついたわよ?」
「わ、悪かった悪かった!じゃ、俺御坂探さねぇといけねえから!」

 これ以上この場にいると、何かめんどくさいことになりそうだったので、上条は美琴を探すために走り出す。
 が、

「だから待てっての。」
「うぉう!?」

 腕組みをした結標が道を塞ぐように目の前にテレポートしてきた。

「な、なんだよ……なんか用か?」
「……アイツ…ていうか御坂を探してるの?」
「え、ああ、まあな。だから俺は急いで「御坂の居場所なら知ってるわよ?」る……」
「だから案内してあげようか?」

 予想外のところから助けの手が差し伸べられた。
 まさに女神が降臨したと上条は思った……が

(いや…ちょっと言い過ぎたな…俺の女神は御坂だけだから結標は……救世主だな。)

 まさに美琴バカである。
 独りでにうんうんとうなずく上条に、結標が少し呆れながら声をかける。

「で?どうすんの?」
「あ、ぜひともお願いします!結標様!!」
「はいはいっと。」

 こうして上条は結標と並んで歩き始めた。
 美琴以外の女子と2人きりになることを嫌う上条だが、美琴に会うためなら我慢できる。

(御坂に会えるのか…ヤベ、テンション上がってきた。)

 上条はわくわくしながら、街へと向かう―――


 ♢ ♢ ♢


「映画だ映画だー!ってミサカはミサカは嬉しさのあまり飛び跳ねてみたりっ!!」

 と、とあるマンションの室内で無邪気にはしゃぐのは、打ち止め(ラストオーダー)だ。
 本当に嬉しいらしく、言葉通りソファの上でぴょんぴょんと飛び跳ねる少女に、目つきの悪い白髪の少年が言う。

「おい、部屋ン中ではしゃぐンじゃねェよ!埃が舞うだろうが!!」

 彼の名は一方通行。学園都市最強の能力者であり、打ち止めの保護者であった。
 この日、2人は映画を見に行く約束をしており、今まさに出かけるところだ。
 喜びを抑えられない打ち止めは、

「だってもう楽しみで楽しみでしょうがないんだもん!ってミサカはミサカは嬉しいという感情を押さえきれないから全身を使って表現してみたり!!」
「わかったから少し落ち着け。じゃあ、俺らは行って来るから留守番頼むぞォ。」

 と、一方通行が声をかける先にいるのは2人の女性。
 “了解”と言うかのように、イスに座ったまま無言で右手を挙げたのは、芳川桔梗。相変わらずの無職である。
 そしてもう一人、ソファに寝転がって雑誌を読んでいた、た少女はニヤリと笑って

「はいはーい。ミサカたちに気にせずデート楽しんできてね☆」

 その台詞は悪意丸出し、もちろん番外個体(ミサカワースト)から飛び出た台詞だ。
 しかし、当然ながら一方通行にデートなどという考えがあるはずもなく、“デートじゃねェよ”と、ストレートにつっこもうとしたところへ

「うん!この人とのデート楽しんでくるね!ってミサカはミs」
「だから違うって言ってンだろ!!」

 一方通行は思わず叫んだ。
 そしてその後もしばらくデートだ、ちげェよ、と騒ぎながらも打ち止めと一方通行は黄泉川のマンションを後にした。


 ♢ ♢ ♢


 上条と結標が並んで歩くこと約15分。

「着いたわ。ここよ。」
「ここか!!」

 上条が結標に連れてこられた場所は、街中に位置する大きめの広場だった。
 この広場には移動式のアイスクリーム屋があり、今日は午前中に多くの学校が終わるためか、店にも広場にも、高校生や中学生による多くの人だかりができている。
 だが…

「……御坂いないじゃん。」

 肝心の美琴が見当たらない。
 公園内を一通り探してみたのだが、目に映るのはただの学生ばかり。
 どこをどう探しても、やはり美琴が見つかることは無かった。

「いないってことは、移動したのか……くっそどこ行ったんだよ…早くしないと御坂の貞操が危ないってのに…」

 上条はもちろん美琴がレベル5だということを忘れてはいない。
 普通に考えれば青ピなど秒札できる。
 だがもし、万が一暴走した青ピによって何かされたら、それを考えるといてもたってもいられなくなる。

(とにかく第7学区中を探すか。御坂が真っすぐ寮に帰ってる可能性は低しい、コンビニとかにいるのか?)

 携帯の電池が切れている今、とにかく美琴がいそうな場所を虱潰しに探すしかない。

「ありがとな結標、こっからは俺1人で探す「はいアイス。」から……?」

 結標は上条の言葉を遮ると同時に、バニラ味のアイスクリームを手渡してきた。
 どうやら上条が美琴を探している間に買ってきたようだ。
 とりあえず受け取ったことは受け取ったのだが、

「え、いや、なんで……?」
「なんでってアイスクリーム屋に来たんだから買ったんだけど……何?私が買ったアイスが食べられないって言うの?」
「いやそういうわけじゃ「あー!!!」ない……」

 また上条の言葉は遮られた。
 誰だよ大声出して、などと上条は思わない。
 なぜならば、上条はこの声が誰の声か知っているのだから。

「御坂!!」

 今、一番会いたい相手、御坂美琴だ。
 上条は喜びを露にしながら振り返ったのだが

「……あれ?」

 急に上条の顔からは笑顔が消え、自然と一歩後ずさった。
 振り返ったところに立っているのは、茶色い髪の毛、ヘアピンで止められた前髪、常盤台の制服、ちょっぴり漏れている電気、間違いなく美琴だ。
 にもかかわらず、上条が後ずさったのは

「あの……なんで機嫌悪そうなんでせうか…?」
「はぁ?機嫌?別に悪くないわよ?」

 と、美琴は言うもののあきらかに悪い。だって帯電しているし。
 額の辺りからパチパチと電気が漏れだしている。
 しかし上条には美琴が怒っている原因が全くわからない。

(な、なんで?やっぱり俺が何かしたのか?でも……名前呼んで振り返っただけだよな…)

 上条が少しビビり、一歩後ずさると美琴は怒ったような口調で

「それでアンタ、なんでこんなところにいるわけ?しかも結標なんかと2人で。」

 ここで1つ説明しておこう。上条は美琴のことが大好きだ。好きで好きで仕方がない。
 いずれは結婚して子どもは3人くらいほしいと思っている。
 だが、上条は人を好きになることをになっても、鈍感さは一切治っていないのだ。
 普通なら美琴が機嫌が悪い原因は、『結標と一緒にいることに嫉妬しているから』、とわかるはずなのだが、鈍感な上条にわかるわけもなく、美琴に結標と一緒にいる理由を説明しようとした。

「ああ、結標と一緒にいるのは「デートだからよ。」……そうそうデート……はい?」

 上条の言葉を遮ったのは結標。
 『御坂を一緒に探してもらってたんだ。』と言うつもりが、結標によって言い換えられたのだ。
 それを聞いた美琴は驚愕の表情を見せている。

「はぁ!?え、え?何?どういうこと?デートってアンタ達……付き合ってたの……?」

 美琴の顔色はどんどん悪くなり、先ほどまでの元気がウソのように大人しくなってしまった。
 そんな美琴を見た上条の顔も青くなる。

「いや違う!誤解だ誤解!!おい結標、なんでそんなこと言い出すんだ……あ」


 慌てて誤解を解こうとしている途中に上条は思い出した、『あの』薬のことを。
 今まで結標に何の変化も見られなかったので気にしていなかったが、よくよく考えてみれば、結標も『増強剤』の影響を受けている可能性が十分にあるのだ。

(まさか結標もあの薬の影響で俺に惚れて……ってそれはともかくまずは誤解を解かねーと。)

 影響されているなら、結標の状態はヤバい。
 しかしそれ以上に美琴に『結標と付き合っている』と誤解されているほうがヤバいのだ。
 上条は大慌てで美琴の誤解を解こうとしたのだが、結標がそれを許さなかった。

「そう付き合ってんのよ!だからアンタはとっとと消えときなさい。」

 そう言って結標は、魂が抜けたかのように呆然と立ち尽くしている美琴に近づき、肩に手を置いたかと思うと、

「じゃあね。もう私たちの邪魔しないでくれる?」
「あ―――」

 美琴の肩に手を置き、能力を使いどこかに飛ばしてしまった。
 上条も右手を伸ばし、止めようとしたものの、全く間に合わなかった。

「御坂…ッ!……これはまずいんじゃ……」

 非常事態発生。
 美琴にあらぬ誤解を招いてしまった。
 今結標は美琴を飛ばす前に、はっきりと『付き合っている』と美琴に告げていた。
 ということは、結標と付き合っていると美琴に勘違いされたことは間違いない。

「やっべ……早く御坂を探して誤解を解かねーと……」

 今までは青ピから守るために探していたが、今度は別の理由で美琴を探さなくてはならなくなった。 
 とにかく一刻も早く見つけ出し、誤解を解きたい上条なのだが

「どこに飛ばされたんだろ…」

 美琴が飛ばされた場所がわからない。
 近くなのか、それとも遠くなのか、それがわかるのは美琴をテレポートさせた本人である結標のみ。
 ということは、聞くしか無い。

「あのー…結標さん。」
「何?あ、これからどこへ行くかの相談?私としてはまず買い物に行きたいんだけど。」
「いや、そうじゃなくてだな。御坂をどこに飛ばしたのか聞こうと思って。」

 この時上条は気づいていなかった。
 『結標に美琴の場所を尋ねる』という行動が、激しく間違った行動だということを。

「あ、あれ?結標…?なんか……怒ってる?」

 目の前の結標から黒いオーラが見える。
 表情からは笑顔が消え、眉間にしわが寄っている。

「あ、あはは……じゃあ上条さんはもう行くから。ま、またな!!」

 上条は逃げ出した。
 ヤバい。
 絶対ヤバい。
 もう間違いなく、結標は自分対して怒りの感情を持っている。
 このままだと何をされるかわからないと考えた上条は、多くの学生の間をすり抜け広場を飛び出した。

「やっべー…絶対結標怒ってたよ…でもなんで怒ってたんだ?」

 本当に理由がわからない。
 自分の行動に問題があったのだ、それとも台詞だろうか。
 理由を考えようとするも、走りながらではまともに考えることができないし、今はそれどころではない。
 とにかく美琴を探し出し、誤解を解かなければならない。

「よし、結標は追いかけてきてないみたいだし……このまま探すか。」

 結標から離れることに成功した上条は、街中を走る足を止めることなく、美琴を探し始めた。
 しかし忘れてはならない。
 結標は学園都市の中で、最も優れたの『テレポーター』だということを。

「ん…?」

 走っている上条は背後に何かの気配を感じ、サッと後ろを振り返ると

「うおっ!結標!?」

 明らかに今までとは違う、怒気を丸出しにした表情の結標が、走る上条のすぐ後ろへテレポートを繰り返し追いかけてきていた。
 そして結標は叫ぶ。

「アンタね…私から離れられると思ってんの!!?」
「ええ!?て、ていうかなんでキレてるんだよ!!」

 だがその答えは結標から返ってはこなかった。

 結標は走る上条の後ろへ、ただひたすらテレポートを繰り返す。
 周りには多くの人がいるのだが、そんなことおかまい無しだ。
 こうして上条と結標との奇妙なペアで、壮絶なる追いかけっこが始まってしまった―――







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