とある魔術の禁書目録 自作ss保管庫

Part2

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とある学校の執事喫茶


「まあ、馬子にも衣装というし、とりあえず見た目は悪くないわ。上条当麻。」
吹寄が満足そうに言う。
言われて自分の格好を見直した。黒のタキシード一式を纏っている。
しわ等はない。上から下まできちっとした格好だ。
髪型がいつものままなので多少そこだけ浮いている気もする。
しかしこの格好はなんかものすごく恥ずかしい。服にはないのに眉間にはしわがよってく。
「じゃあ、一通りやるわよ。」
店に入ってきた吹寄に一礼し、を席にエスコートする。吹寄が椅子の隣に立ったのを見計らって、椅子を引く。
そこに吹寄が座る。メニューを開いて渡し、注文を受け一礼し、バックヤードに戻る。

開店直前の作業確認として吹寄をお客として最後の練習を行う。
とりあえず一通りこなしたところで、こまごまとチェックがはいる。
「紅茶の入れ方が雑だ。机にあるベルを鳴らしてから来る。遅いだのもうすこしすばやくかつゆったりと歩く。」
高校生にそこまですごいものを求めてられても困るのだが、吹寄の委員長体質に妥協はない。
どうやら、別のクラスにも喫茶店をしているクラスがあるらしく、対抗意識を燃やしているようだ。
説教されている上条の後ろでは土御門が姫神をお客として接客の練習中だった。
いつものアロハシャツでなくタキシードをきちっと着ている。
髪の毛もいつもの髪型ではない。なんとオールバックだ。サングラスもしていない。
ぶっちゃけイケメンだ。いつもそのカッコでいいんじゃないかというほどに。
妹のプロデュースだからやる気満々のようだ。
ちなみに順番待ちボードに名前を書くと~~お嬢様と呼ばれる。男は旦那様統一。
「野郎の名前なんてよんでられまへんがな」
と青髪ピアスがいったからだが。その青髪ピアスは
『こんな変態執事はいやだ』
と乙女な女性陣の痛恨の一言で裏方行き。
「うう、僕も女の子に愛を囁きたかった……」
世界三台テノールもびっくりの野太いボイスで囁く愛に身震いしつつ接客の手順を読み直す。
ぶっちゃけ難しい。ポイントはお客に何もさせないこと、とでかでかと蛍光ペンで書いてある。
そのほか注意事項と接客の対応例がかなりびっしりと書かれている。
(まあ何とかなるかな。一応あんだけ舞夏にたたきこまれたしな。)

そんなこんなでとある学校の執事喫茶祭が始まる。

「ここね……」
早速目的のクラスへと到着した。まだ早めの時間なのに短いながらも列が出来ている。
友達連れや、カップルが目に付くが、中には自分と同じように一人で来ている女の子もいる。
(普通の喫茶店として食事するだけ、うんうん。ついでにあの馬鹿をからかって、そして明日の予定を聞かないと……)
自分にガッツポーズ。
後二人で自分の番に回ってくる、そのとき、扉の横においてある注意書きが目に入った。
『店内での写真撮影はご遠慮ください。また、騒がしいと思われる行為もご遠慮願います』
ちょっとだけへこんだ御坂美琴だった。

次のお嬢様を案内して、一息ついたときに、軽く辺りを見回してみる。
注意書きが効いているのか、お客が全員学生の割りに店内は意外とまったりとしていた。
女性が多いのは予想通りなのか?
まあ、その女性の大半は土御門イケメンバージョンに夢中なせいもある。
時折自分のほうをちらちらと見ている人もいるが、土御門と見比べられてるんだろう。
(ま、本日は午後から自由時間だし、あと2~3人接客したら交代か。何とかうまく出来たな)、
うん、うんと自分なりに満足していると扉からガランガランと多少重い音が響く。
次のお嬢様のご来店のようだ。
わざわざ引き戸の入り口を扉に改造したというこだわりの入り口から見たことある顔が入ってきた。
「……はぁ」
お嬢様に見えない本物のお嬢様だ。上条の不幸センサーがビリビリ反応した。

(アイツの教室かあ。うわ、なんか緊張する)
一人でファミレスに入ることくらいなんともないのに、アイツがいつもいる空間だと思うとなにやらくすぐったい。
店内をぐるっと見回すと目的のツンツン頭と目が合った。
そのツンツン頭執事バージョンは『わー、不幸だー』という顔をしていた。ムカッときた。
(何よその顔は。私が来るのがそんなにいやなわけ?)
そのまま睨み付けていたら、ため息をついてこちらに向かってきた。
「お帰りなさいませ、美琴お嬢様」
丁寧な言葉遣いと綺麗な一礼をする上条に思わず噴出した。

御坂を席へと案内していると、声をかけてきた。
「い、意外と似合ってるわね、アンタ」
なんだか微妙に引きつった笑みで言われても、からかわれてるようにしか思えない。
顔も微妙に赤いのは笑いでもこらえているのか?
「クラスの出し物だからビリビリとかは勘弁してくれよ。」
顔を近づけてこっそりと耳打ちすると御坂は顔をもっと赤くして空中に目を泳がせている。
「大丈夫よ。美琴せんせーだってそれくらい心得てるわよ。」
「ほんとか?」
疑わしそうに言い返してみる。御坂は少しむっとした顔で
「ほんとよ。見てなさい。吠え面かかせてあげるわ」
いまだにちょっと疑いの目を向けてみるが、ここで時間をとるわけにもいかないので
ここは御坂を信用してみることにした。

「……あれは本当に御坂なのか。」
思わず呟く。御坂はすごかった。
なんだか本にしか出てこないような本物のお嬢様の振る舞いをしていた。
自販機に回し蹴りを入れるいつもの常盤台の制服なのに、別のものに見える。
優雅に紅茶を飲み、ベルを鳴らすのも流れるようによどみないその動作は気品を感じさせる。
吹寄が憧れのまなざしを向けている。
他のお客さんもちらちらと御坂を盗み見している。そしてその後動作を真似ている人もいるくらいだ。
上条も例外でなく、一度ベルを鳴らしている動作がなにか別の世界の出来事に見えてしまっていて、
それが自分を呼んでいることと認識できなかったくらいだ。
ものすごい緊張しながら紅茶を入れるとやわらかい微笑で
「ありがとう。」
といわれた。本当に心臓が飛び出すかと思った。
手が空くとつい御坂のほうを見てしまう。
(常盤台のお嬢様……か……)
御坂の知らない一面を見た気がしてなぜか少し寂しい気がした。

その常盤台のお嬢様も実はちらちらと上条を盗み見していた。
いつもの学生服でなく、フォーマルな格好をしているアイツはずいぶんイメージが違う。
(ちゃんとしてれば見た目だって悪くないのに。あれ?でも見た目もいいとまた女の子に囲まれるんじゃ……)
複雑な感情が沸き立つ。
見渡すと、自分と同じようにちらちらとアイツを見ているお客がいる。
どうも自分と同じ臭いがする。
(むうぅ、アイツはほんといつも何してるのよ。)
その子に紅茶を入れ、にこやかに微笑むあいつの顔が目に入る。
ちょっと頭にきたのでその席から離れたタイミングを見計らってベルを鳴らしてみた。
仕方なさそうな、だけどちょっとだけ嬉しそうな表情を一瞬だけ浮かべ、こちらへとやってくる。うん。それでよろしい。
しかし、ベルで呼べば向こうからアイツが来てくれて、紅茶を入れてくれたり、自分の世話をしてくれる。
いつもはこっちから突っかからないと相手にもしてもらえないのに。
(な、なんか楽しいかも)
どうやら意外とはまっているらしい。

紅茶などの準備をしている簡易なキッチンで上条のクラスメートは会議を行っていた。
ホールにいる土御門、上条を除いてここにいるほぼ全員が集まっている。
青髪ピアスは放心している。どうも目の前の現実が受け入れられないらしい。
ときおりぶつくさ呟いてる声が聞こえるが、この上条会議では役にたたなそうなので無視。
「司会は私、吹寄制理。議題は上条当麻と常盤台のお嬢様についてです。忌憚なき意見をお願いします。」
「どう見ても怪しいです。」
「あの子、どう見ても上条君気にしてるよね。ちらちら見てるし。」
「というか、彼女あの超電磁砲じゃ?」
「え!?レベル5もカミやん病の被害者?もはや新手のウィルスじゃないのか?」
「上条も気にしてるみたいだぞ。やっぱりちらちらみてる。」
「あ、お互い目があった。あ、高速で二人ともそっぽ向いた。」
「え?目と目で通じ合ってるの?」
「クラスの出し物でいちゃいちゃするとわ……」
どこからどう見てもお嬢様の彼女とクラスの三馬鹿の一人とはさすがにつりあわない気がするのだが、
相手はあの上条。何が起こっても不思議ではない。
とりあえず
「「「「ブチ殺し確定ね」」」」
全会一致で会議は滞りなく終了した。

御坂が相変わらずとてつもないお嬢様雰囲気を出している。
そのまま机に座らせておけば絵画としても通用するんじゃないかというくらい。
(うう、今日の御坂さんはおかしくないですか。)
俺の知ってる御坂がこんなに可愛いはずがない。
いつもはもっとビリビリして怒って騒いで追っかけてきて。
そんな御坂が好きなのに。
(って俺何考えてるんだ!?)
頭を振って今の考えを振り払う。その際、ふと時計が目に入る。
「あ、もうこんな時間か。見送りしないと。」
よく見ると御坂が入ってきてからもう一時間近くが経過していた。
だが、これはあくまでクラスの出し物である。一人に長時間いられても困るので、時間制限がある。
ゆっくりと席に近づき、
「美琴お嬢様。お出かけのお時間ですが。」
と御坂に告げる。すると御坂はこちらをみつめ、目を少し細めて片手を空中に置いた。
その動作も優雅で、自然とその手をとった。
その手に体重を乗せて優雅に御坂が立ち上がる。
いつもとまったく違う本物のお嬢様をしている彼女にどぎまぎする。
声も出せないまま出口へと案内する。扉を開けると御坂が店の外にでて、そして

上条の手を思いっきり引っ張って店の外へと引きずり出した。

「ふふーん。どうよ美琴せんせーのお嬢様っぷりわ。」
両手を腰に当ててふんぞり返るような姿勢だ。さっきまでの深窓のお嬢様はどこへやら。
いつもの知ってる御坂がそこにいた。
「……いつの間にか御坂妹と入れ替わってたわけじゃかったんだなってあぶねえっ!」
言い終わる前に電撃が飛んできた。本当にいつもの御坂だ。
「あのねぇ。アンタはアタシのことどういう目で見てるのよっ!」
「あーいや……いつも追いかけっこばっかりしているイメージしかなくてな……はははっ。」
もう一発飛んでくる電撃も打ち消して、先ほどのお嬢様を思い出す。
名門お嬢様学校常盤台中学。その認識を改めて実感した。
だけどいつも自分を電撃撒き散らしながら追いかけてくる常盤台のお嬢様を思い出し笑みがこぼれる。
時折雷撃が混じるのが少し怖いがいつものやり取りが楽しいと思える。
「……何がおかしいのよ。」
「いや、なんでもない。っと、そろそろさすがに戻らないと。気合入れてがんばってくるぜ。」
話を無理やり切り上げ、部屋に戻ろうとすると、御坂があせったように声をかけてくる。
「あ、待ちなさい!ちょっと!!」
またなーと言う声を残して扉を開け、教室に戻る。

「あのー、皆さんなぜこちらを睨み付けてるのでしょうか。」
先頭には腕組みした吹寄制理。後ろには土御門と青髪ピアス。そして魔法のステッキことスタンガンを構えた姫神。
後ろはクラスメート。お店のほうは大丈夫なのか不安になるくらい人数が来ている。
「上条当麻!まさか中学生にまで手を出しているとは。しかもあんな完璧なお嬢様相手になにをやった!白状しろ!」
どうも吹寄はお怒りのようだ。おでこDXになってるし。そのおでこに青筋浮いてるし。
「にゃー、カミやん……この前の夜、フラグなんてないって言ったのはだれだっけかにゃー。」
土御門、言葉使いは軽いままだが目つきが半端ではないぞ。てかサングラスないから本当に怖いんですけど。
「あの中学生、夏休み最後にカミやんに抱きついた女の子だよな!そうだよな!ほ、ほんとに付き合ってたのか!?」
青髪ピアス、関西弁忘れてるぞ。
「君の性根はすこし矯正すべき。この魔法のステッキで。」
姫神さん。一昔前のヤンキーみたいです。
じりじりと詰め寄るクラスメート。
うん、とりあえず逃げよう。
くるりと後ろを振り返ると扉を開けて全力疾走を開始する。
「まてー!」
うん、あれだ。とりあえず今回は声に出そう。
「不幸だーっ!」

「はぁ……」
軽くため息をく。明日は予定を空けてあるのだ。思い切ってアイツを誘うつもりだった。
黒子は3日目に一日いっしょにいてやることで何とか説得した。
本当はさっき教室から連れ出したタイミングで明日の予定を聞いてみるつもりだったのだが。
(いつものノリになっちゃったからなあ……)
しかも、それが楽しかった自分もいる。お嬢様はやっぱり性に合わない。
そして思い出したようにかばんを開ける。そこからカメラを出した。
アイツをからかうフリでもしながら写真を撮りたかったのだが、
お店の中では写真撮影は禁止。さすがに迷惑をかけてまで撮ることは出来ない。
「アイツの写真取れないかなあ……できればいっしょに」
家においてあるペア契約のときにもらった写真立てを思い出す。
と、そこまで考えてはっとする。
「い、いやあのカッコをとっておけばからかうのに使えると思うのよね。うんうん。」
自分で自分に意味不明の言い訳をしてみる。顔に熱を感じるのはきっと気のせいだ。うん。
「御坂ー。誰をからかうつもりなんだー?」
突然自分にかけられた声にぎょっとして振り返ると土御門舞夏がそこにいた。
「つ、土御門?なんでここに?」
「ここに兄貴がいてなー。ついでにこの店のケーキやら店内をプロデュースしたのは私だぞー。」
えっへん、と舞夏が胸を張る。
「で、誰と写真を取りたいんだー。私が撮ってやってもいいぞー。プロデューサー権限でー。」
舞夏の言葉にうっと声が詰まる。
写真は撮ってほしいが舞夏にアイツの写真を撮って、と言ってもいいのだろうか。
しかし、それを察したのか舞夏は
「誰の写真を撮るのかはちゃんと秘密にしておくぞー。」
その言葉を聴いた御坂は少し黙った後、カメラを土御門に差し出した。そして小さな声で頼もうとする。
「えっと……その……かみ」
「不幸だー!」

とりあえず教室から飛び出してみたら御坂が目に入った。
「なんでそこにいるんだー!?」
自分は逃げ切れても御坂がつかまったら意味ないのではないか?
ならばとその手をつかむ。
「えっ!?ちょ、ちょっとまってー!」
事情がつかめていなさそうな御坂をそのまま連れ出す。
何かいってるけどとりあえず無視!

「アレー、御坂ー?」
舞夏がちょっと首をかしげなら呟く。手元にカメラを持ったまま。
御坂の声がドップラー効果を残して遠ざかっていく。
その舞夏の前を兄貴を含めた何人かの人間が追っていく。
みんな鬼の形相だ。
とりあえず面白そうなのでついていくことにした。

結構な距離を走り、校舎の外にでて、いつもの自販機の前まで走りきった。
「な、なんで逃げてるのよ!」
「いや、うちのクラスのやつらは……」
と言いかけて思った。
『うちのクラスのやつらは御坂をおれの彼女と勘違いしている。』
こんなことを言えば目の前のお嬢様からドンだけの電撃が降ってくるかわからない。
うーん、困ったな。
腕組をしようとして気づく。まだ御坂の手を握ったままだった。
「っと、わりい、痛くなかったか?」
手を離すと御坂があっと小さな声を出した。
「う、ううん。大丈夫。」
なんだかもじもじしている。今日の御坂はいつもといろいろ違うなあ。
違うといえば
「そういえば、お前本当にお嬢様してたな。びっくりしたよ。」
御坂は髪を書き上げながらちょっと得意そうに言った。
「まあね。一応学校でも礼儀作法の授業はあるしね。」
やっぱり、そういうことも出来るのか。
でもいつもの活発な御坂がやっぱり……
「どうしたのよ。突然黙っちゃって。」
「いや、お嬢様よりもやっぱりいつのもの御坂のほうが好きだな。と思って……」
あれ?待った。私こと上条さんはなんかとんでもないことを口走ってませんか?
もう後の祭りであった。目の前にはりんごもびっくりなほど真っ赤な御坂が。
「へ?アンタ?好きってなにいって!?」
彼女のまわりからバチバチと空気の破裂する音がする。
「漏電してる!漏電してるから!」
あせって右手を伸ばし、御坂に駆け寄る。
そこで、巻き起こるかみじょーわーるど。
漏電によって自販機からジュースが吐き出されていた。そしてそれにつまずいた。
それでも何とか御坂の肩を右手でつかんだのだが
勢いが止まらず、そのまま御坂の頬にキスをしてしまった。
「!?!?!???」
御坂の目がぐるんぐるんまわっている。そして
「ふにゃー」
ぷしゅーっと音を立てた。

御坂美琴は目を覚ました。突然の出来事に頭がついていかなくて気を失ったらしい。
ボーっとする瞳が徐々に焦点が合ってきた。
「お目覚めですか?お嬢様。」
はっとすると目の前にアイツの顔があった。
「って!?」
意識がはっきりとしてきたところで気づいた。どうやら膝枕をされているらしい。
またまた真っ赤になる。
「おいおい。また気を失うのは勘弁してくれよ。」
アイツがちょっと嫌そうにいう。
「……アンタのせいじゃない。」
自分の頬に手を伸ばしてみる。相手も気づいたらしく
「あれは忘れると健康に良いと上条さんは思います!」
罰の悪そうな顔をしてそっぽを向く。
はあ、とため息をついてから頬を軽くなでてみる。
むう……ほっぺだったのがよかったような惜しかったような……。
とりあえず、体を起こそうとする。
だが、頭を抑えられ、膝枕に固定させられる。ちょっと硬い膝の上に後頭部がこつんとあたる。
「もう少し休んどけ。もうどうせ、今日はなんもできねーよ。」
上条の頭越しに見える空はもう星がちらちらと見えてきていた。
コイツには少し悪いことをした。結局今日は膝枕で自由時間をつぶしたのだから。
なんかしてやろうかな、と思っているとまた頭をなでられた。
「まあ、今日はちょっと変わったお前が見れて楽しかったからよしとするさ。」
頭をなでられて少しくすぐったい。
そうか、今日はもう終わりなのか……そうだ。明日のことを言っておかないと。
決心して話しかける。
(明日暇ならいっしょに回ろう!)
言葉が出なかった。
(落ち着け私!?)
一度つばを飲み込み、深呼吸する。
よし、今度は声がでそうだ。
「暇そうなアンタのために、明日アタシがいっしょに回ってあげても良いわよ!」
(だめだー!なんでここで上から目線ー!?)
心の中で頭を抱える。だが、返事は思いがけずすぐ帰ってきた。
「ああ、良いぜ。どうせ暇だったしな。誰かと回れるならそのほうが面白いしな。」
クラスのやつとは明日遊ぶのは危険そうだしなあと呟いていたが。
「え、ええ美琴せんせーに任せなさい!」
(う、うまくいった!?えー!?)
なんだかまた顔が赤くなった。

(明日はコイツと一端覧祭か)
今日のお嬢様か、いつものビリビリか。
はたまたまだ知らない御坂美琴が出てくるのか。
いつものビリビリとなら面白そうだな。
まあ、もし知らない御坂が出てきても、そのときはさらに相手のことをよく知ったんだと思えば良いさ。
自然と笑顔がこぼれてくる。
(あー、そうか。俺コイツのことをもっと知りたいんだ。いろいろと。)
昼間にふと思ったことを思い出す。そのときに思ったこととは少し違うことも確信して
(俺はコイツのこと、好きなんだなあ……)

膝の上で気持ちよさそうにしている御坂を上条はじっと見つめていた。

明日の予定をきめたりしているとすっかりあたりが遅くなり、御坂を寮の近くまで送ることにした。
自分の横を歩く常盤台のお嬢様をちらりと見る。
好きだということを意識したら、なんだかむずがゆくなってきた。
それでも、時間は経つし、歩けば目的地へと到着する。
少し名残惜しいが、明日がある。……言ってみるか。
「じゃあ、また明日な。美琴」
「うん、また明日ね。……あれ!?」
後ろで御坂が何か言ってるが、聞こえない。振り向くことも出来ない。
この暗がりでも顔が赤いのがばれる気がするから。

御坂美琴は部屋に戻って枕を抱きかかえながらごろごろと転がっていた。
(最後の言葉……聞きまちがえじゃないわよね)
名前を呼ばれていた。間違いなく。
(うう、私も名前を呼ぶ絶好のタイミングだったんじゃないかなあ。)
まあ、明日タイミングを見て、こちらからも呼んでやろう。うん。これが目標。それに
(また明日、か。)
そういえばアイツとこういう挨拶で別れるのって初めてだったんじゃ?
いつもはうやむやだったりするし、翌日いっしょに会うなんて約束をすることはなかった。
(ふふっ、明日か。楽しみだな。明日はいっぱい写真……ってカメラー!)
唐突に起き上がる。土御門舞夏に連絡を取って、今のうちに回収しなければ!
勢いよく扉を開けると
「おっーっす。御坂ー」
探し人が目の前にいた。
「ちゃんと写真撮っておいたぞー。ありがたく思えー。」
と、カメラを差し出してくる。
「あ、ありがと。今日は変なことに巻き込んじゃってごめん。」
「いやいやー楽しかったぞー。いろいろとなー。じゃまたなー。」
舞夏はなんだかご機嫌で帰っていった。
とにもかくにも、とりあえず手元に戻ってきたカメラ。これで明日も安心。
とりあえず、故障していないかだけは確認しようとし、電源を入れると
「あれ?」
撮影モードでなく、写真閲覧モードになっている。
しかもなぜか写真が録画されているようだ。
舞夏が勝手に使ったのかな?とおもって取り合えず、適当に一枚を再生してみると
「!?!?」
そこにはアイツの膝枕の上で横になっている自分の姿が!
ふと思い出す。そういえば舞夏は
『楽しかったぞー』
『ちゃんと写真を撮っておいたぞー』
「……~~~っ!!!」
見られてた。公園での出来事。まさか、まさか!
結構な枚数の膝枕の写真の次に、それはあった。
唇でこそないものの、正真正銘のキスシーン。
しかも自分の顔が正面で上条が横からとコマーシャルで使われそうなアングルで。
「つ、土御門ー!」
探し人の姿はもう見えない。その代わりに、今会うと一番危険な人物が視界に入る。
「ああ、お姉さま!わたくしの帰りを部屋の前で待っていてくれるなんて!」
白井黒子がそのままの勢いで飛んできた。
「く、黒子!今はだめ!ちょっと待ってーーーーー!」

常盤台中学女子寮はエースと変態により今夜も騒がしかった。


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