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らきすた ~闇に降り立った輝星(後編)」(2008/08/16 (土) 21:19:28) の最新版変更点

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**らきすた ~闇に降り立った輝星(後編) ◆6YD2p5BHYs         *    *    * 「さてさて、私が勝ったからには、早速脱いでもらおうかね、アカギくん……♪」 「……クククッ、そうじゃないだろう。その『脱衣ルール』は却下したはずだ……!」 賭けるものが無ければ、ギャンブルは盛り上がらない。失うものが無ければ、真の実力は計れない。 と言っても、この殺し合いの場で金を賭けるのもナンセンス。 こなたが冗談交じりに(それとも本気で?)提案していた脱衣ルールも論外だ。 いつ他の者が現れるか分からぬ状況での脱衣は、流石に悪ふざけが過ぎる。妙な誤解は避けておきたい。 そこで、賭けの対象にしたのが…… 「……ほら、何でも好きなものを持っていけ……!  なんなら、今傷に当てているこの核鉄でも、懐にある投げナイフでもいい……!」 「ん~、流石にそれは悪いしな~。  白紙の本に宝石、それに弾切れのバズーカ……どれにしよっかな~♪」 賭けの対象にしたのは、互いが抱えていた支給品。どちらも数の上では余裕がある。 半荘勝負で順位の高かった方が、低かった方から1品奪ってもいい約束だ。 勝者のこなたは楽しそうにアカギのデイパックを漁り、中の品物を吟味する。 「……じゃ、この靴にしとく。『キック力増強シューズ』……ん~、ちょっと私でもキツいかな?  ま、他に欲しいものもないしさ。とりあえず、これでいいよ」 元々、小学生並みの体格のこなただ。無理をすれば使えないこともなさそうではある。 戦利品を自分のデイパックに詰め替え、こなたはアカギに向き直る。 「で……どうする? もう1戦する? リベンジするかねアカギ君?」 「思うところがあったにせよ、負けっぱなしというのも性分ではない……。  悪くない提案だ……と、言いたいところだが」 こなたの挑発に、アカギはチラリと時計を見る。 窓の外、校庭には誰の姿もない。まだ他の仲間が学校に来る気配はない。 だからもうちょっと遊んでいても構わない、とは言えるのだが。 「これからもう半荘ともなれば、ほぼ確実に次の放送にかかってしまう……。  間違っても、放送を聞き逃すような真似はしたくない……流石にそれは、愚の骨頂……!」 「あーそっか。もうそんな時間なんだ」 時刻は既に深夜近く。遠からず4回目の定期放送が始まる時間。 戯れの勝負の続きをするにせよ、放送が終わってからの方がいいだろう…… そう判断しかけたアカギは、ふと画面の変化に気付く。 「……ところで……何か表示が変わったな……? これはなんだ……?」 「おや、これはどっかの誰かが卓に加わりたい、ってことみたいだね。どうする? 断っとく?」 面子が足りないからこそ、コンピューターで補っていたのだ。 言ってみれば雀荘での数合わせのため、従業員が席に座ったようなもの。 新たな客がたった1人でやってきて、ちょうど勝負が一段落した卓があれば、そりゃ誘導されるだろう。 もちろん、拒む権利はある。望まぬ相手と卓を囲まねばならない義務はない。 さて、どうするか。 新たな面子を加えて勝負に波乱とスリルを織り込むか、それともこなたとの対決を重視するか。 そんなこなたの問い掛けに、アカギは即答せず――ただじっと、新たな参戦希望者の名前を見る。 見覚えのない名前。名簿には載っていない名前。 『Dr.伊藤』。 画面には、その名前だけが表示されていた。         *    *    * 「答えてくれ……繋がってくれっ……頼むからっ……!」 同時刻。 脂汗を流しながら、薄暗い部屋でモニタに向かう1人の男がいた。 伊藤博士。BADANの協力者にして、反抗を夢見る無力な1人。 彼とて、徳川光成を煽ってばかりではない。彼に出来ることを、出来る範囲でやってきている。 例えば、ネット上の主催者側の防壁を「ほんの少しだけ」弱めておいたり。 例えば、一度侵入すれば多くの情報にアクセスできるような、脆弱なシステムを用意しておいたり 例えば、検索すればすぐにヒットする、使い勝手の良いハッキングツールを作って放流しておいたり。 例えば、会場に配置されることになっているPCに、あえてキャッシュを残しておいたり。 いずれも、発覚してもいくらでも誤魔化せる範囲の行動だ。 ほんの僅かな「うっかりミス」、ほんの僅かな「不注意」。 1つ1つを取ってみれば、そう言い逃れできる程度の「手抜き」処置。 ただしそれらが上手く合わさりさえすれば、組織側の様々な情報に手が届くようになっている。 参加者の誰かがハッキングを試み、辿り着いてくれることを願って用意した細い細い抜け穴――! ――だが、どうにも彼は「やり過ぎてしまった」らしい。 せっかく「それ」に気付き辿り着いてくれた参加者は、盗聴に気付いた途端、自らラインを断ち切ってしまった。 あまりの都合の良い展開に、罠である可能性を疑ってしまったらしい。 確かに恐れる気持ちも分かる。これが逆の立場だったなら、伊藤博士もそう考えていたかもしれない。 ともあれ、これで希望の1つが潰えてしまった。 今のところ、どうやら伊藤博士への責任追及の動きは無いらしい。 いやそれ以前に、まだ侵入の事情はバレてないようだ。偽装に手間をかけた甲斐があったというものだ。 しかし、これでもう自分に打てる手はない、後は光成にでも任せるしかないか、と思っていたのだが……。 諦め悪くも可能性を探っているうちに、こうして思いもかけず接点を見つけるが出来てしまった。 流石の伊藤博士も、この殺し合いの場で麻雀に興じる参加者がいるとは予想していなかったのだ。 こうして博士が見つけることができたのも、偶然に近い。 チャット機能のあるこのオンライン雀荘ならば直接参加者と「会話」することも出来る。 その気になれば、彼の知る限りの情報を放出することも出来る。様々な内部情報をリークできる。 特大の好機を目の前に、しかし伊藤博士は逡巡する。この期に及んで躊躇いを覚える。 (でも……ここでこちらの内情を語ってしまっていいのか?! 本当に大丈夫なのか?!) 今現在、こうして麻雀サイトにアクセスしていること自体には問題ない。 ちょうど今、博士は休憩時間に当たっている。 誰かに見つかったとしても、休み時間にちょっと遊ぼうと思っていたんだ、とでも言えばいい。 きっと軽く呆れられて、それで終わりだ。 が……ここで具体的な情報を流してしまうと、話は変わってくる。 その場合、見つかってしまえば申し開きは出来ない。 チャットのログなども残ってしまうだろうし、見つかればほぼ確実に「処分」される。 幸い、今は定期放送の直前。その準備に組織全体が慌しく、博士への注意は向けられていない。 現行犯で捕まる危険はかなり低いと言っていいだろう――だが。 (だが……本当に彼らは気付いてないのか? ハッキングの手引きのことも、気付いていないのか?  もしかしたら、気付いた上で「泳がせている」だけなのでは?) 内部にいる伊藤博士にとっても、BADANというものはその全貌が見えにくい。 特に理解し難いのは、彼らが復活させようとしている『大首領』。そして『暗闇大使』こと『ガモン大佐』。 今こうしている間にも、振り返れば背後に歪んだ笑みのガモンが立っているような気がする。 オカルトじみた『大首領』の神秘の力で、全て見通されてしまっている気がする。 誰もいないと分かっているのに、何度も自分の背中を確かめてしまう。 このまま黙って麻雀ゲームを楽しむだけなら、何の問題もない。言い訳が効く。誤魔化しが効く。 しかし一言でもBADANの内情を語ってしまえば、もう戻れない。 いや、もし何なら自分は「処分」されても構わない。覚悟も出来ているつもりだ。 だが最悪なのは、情報を受け取った参加者までもが処分されてしまう可能性。 そうなったら、自分の犠牲も情報も、全て無駄になる。参加者までも巻き込んでしまう。 伊藤博士は苦悩する。 情報を流すならば定期放送のドサクサ紛れ、つまり今しかない。それは間違いないのだが。   果たして自分たちに、BADANを出し抜けるだけの幸運があるのだろうか?   果たして彼らに、BADANの目を掻い潜れるだけの幸運があるのだろうか? 伊藤博士はギャンブラーではない。だから読めない、「流れ」が見えない、「波」に乗れない。 知性と理性に逆に縛られ、彼は迷い続ける。答えの出ない思考の迷宮で、迷い続ける……。         *    *    * 「……クククッ……! そうか……そう来たか……!」 「???」 アカギは笑う。大きな疑問符を頭の上に浮かべるこなたをよそに、乾いた笑いを微かに漏らす。 画面に表示された『Dr.伊藤』、たったそれだけの名前から、ある程度の状況を把握する。 伊藤なんて名前は、参加者の名簿の中には載っていなかった。 この名前では、根も葉もない偽名ということも無いだろう。 あだ名のようなものなら本名代わりに打ち込む者もいるだろうが、『Dr.伊藤』とはまたあだ名らしくもない。 ハンドルネームの概念も知らぬアカギだが、その目は人間心理の真実を見通している。 この殺し合いとは無縁な外部の人間、という線も薄い。 技術的なことはてんで分からぬアカギだが、まずもってそんな可能性を主催者側が許すはずがない。 それが可能なら、参加者が簡単に助けを求められてしまう。外部からの介入を許してしまう。 主催者側の用意周到さから見ても、こんな所で全くの部外者と偶然繋がる、なんてことはありえない。 つまりは。 この、画面の向こう、どこかで似たような機械に向き合っているはずの『伊藤博士』という人物は…… 参加者でもなく、また、この殺し合いに無縁の人物でもない。 おそらく、主催者側に所属する人間の1人。 その技術力を考えても、主催者側に博士号持ちの人間が居てもおかしくはない。 そして主催者陣営の人間がこうして出てくる理由は、大雑把に考えて3つ。   主催者側の裏切り者、光成のように協力を強制されていた人物か。   あるいは、それを演じようとする主催者側の罠か。   さもなければ、仕事もしないで遊び呆けている、ただの馬鹿か。 (何にせよ……想像すらしていなかったこの展開……!  やはり、泉こなたのツキは、信じられないものがある……! 確実に「流れ」は来ている……!) 3つのうちどれであっても、何らかの情報を引き出せる望みはある。「会話」してみる価値はある。 ここまで具体的な行動に移れずにいたアカギたちだが、一気に飛躍できる可能性がある。 ……とはいえこの流れ、非常に不安定な所に差し掛かっているのも事実。 誰かがどこかでミスをすれば一気に破滅。そんな破局の匂いも漂って来る。 そして、そういった匂いこそ、彼の好む所なわけで。 (ここで知略の限りを尽くしても、勝てないかもしれない……ミスが無くとも、不条理に死ぬかもしれない……。  先ほどのリーチの時のように、選択するまでもなく既に詰んでいる可能性すらある……。  そして負ければ全てを失う……まさに全てを……だが、だからこそ面白い……!  ギャンブルは、狂気の沙汰ほど面白い…………ッ!) 定期放送を目前に控え、アカギはそして、心底楽しそうに唇の端を持ち上げた。 【C-4 学校・コンピューター室/1日目 真夜中】 【赤木しげる@アカギ】 [状態]:脇腹に裂傷、眠気 核鉄で自己治癒中 [装備]:シルバースキン 基本支給品、 ヴィルマの投げナイフ@からくりサーカス (残り9本) [道具]:傷薬、包帯、消毒用アルコール(学校の保健室内で手に入れたもの)  始祖の祈祷書@ゼロの使い魔(水に濡れふやけてます)、  水のルビー@ゼロの使い魔、工具一式、医療具一式 沖田のバズーカ@銀魂(弾切れ) [思考・状況] 基本:対主催・ゲーム転覆を成功させることを最優先 1:オンライン麻雀ゲーム越しに接触してきた『Dr.伊藤』への対処を考える。 2:学校で仲間を待つ。 3:対主催を全員説得できるような、脱出や主催者、首輪について考察する 4:強敵を打ち破る策を考えておく 5:こなたのツキを利用。当面は彼女を守る。 [備考] ※マーティン・ジグマールと情報交換しました。  またエレオノールとジグマールはもう仲間に引き込むのは無理だと思っています。 ※光成を、自分達同様に呼び出されたものであると認識しています。 ※参加者をここに集めた方法は、スタンド・核鉄・人形のいずれかが関係していると思っています。 ※参加者の中に、主催者の天敵がいると思っています(その天敵が死亡している可能性も考慮しています)  そして、マーティン・ジグマールの『人間ワープ』は主催者にとって、重要なにあると認識しました。 ※主催者のアジトは200メートル以内にあると考察しています ※ジグマールは『人間ワープ』、衝撃波以外に能力持っていると考えています ※斗貴子は、主催者側の用意したジョーカーであると認識しています ※三千院ナギは疫病神だと考えています、また彼女の動向に興味があります。 ※川田、ヒナギク、つかさの3人を半ツキの状態にあると考えています。 ※ナギ、ケンシロウと大まかな情報交換をし、鳴海、DIO、キュルケの死を知りました。 ※こなたのこれまでの経緯を、かなり詳しく聞きだしました。こなたに大きなツキがあると見ています。 ※『Dr.伊藤』の正体は主催側の人間だろうと推測しています。 【泉こなた@らき☆すた】 [状態]:軽い打撲 、睡眠中 [装備]:時計型麻酔銃(1/1)、麻酔銃の予備針8本 [道具]:支給品一式、んまい棒@銀魂、フレイム・ボール@ゼロの使い魔(紙状態)、     キック力増強シューズ@名探偵コナン、綾崎ハヤテの女装時の服@ハヤテのごとく [思考・状況] 基本:みんなで力を合わせ、首輪を外し脱出。 1:もう1回、アカギと麻雀をするかどうか、するなら『Dr.伊藤』を加えるかどうか思案中 2:学校で仲間を待つ。 3:独歩、ナギ、ケンシロウが心配。 4:かがみ、つかさを探して携帯を借りて家に電話。 [備考] ※ナギ、独歩、ケンシロウ、アカギ等と大まかな情報交換をしました。  (しかし、つかさ達の事は未だ何も聞いていません) ※キック力増強シューズが足に合うかどうかは不明です。 ※学校の校庭に 消防車@現地調達 が1台停止しています。 ※オリンピア@からくりサーカス が懸糸の切れた状態で消防車の助手席の後ろに座っています。 |208:[[君にこの言葉が届きますように]]|[[投下順>第201話~第250話]]|210:[[Shine On You Crazy Diamond]]| |208:[[君にこの言葉が届きますように]]|[[時系列順>第4回放送までの本編SS]]|210:[[Shine On You Crazy Diamond]]| |208:[[君にこの言葉が届きますように]]|泉こなた|215:[[交差する運命]]| |208:[[君にこの言葉が届きますように]]|赤木しげる|215:[[交差する運命]]| ----
**らきすた ~闇に降り立った輝星(後編) ◆6YD2p5BHYs         *    *    * 「さてさて、私が勝ったからには、早速脱いでもらおうかね、アカギくん……♪」 「……クククッ、そうじゃないだろう。その『脱衣ルール』は却下したはずだ……!」 賭けるものが無ければ、ギャンブルは盛り上がらない。失うものが無ければ、真の実力は計れない。 と言っても、この殺し合いの場で金を賭けるのもナンセンス。 こなたが冗談交じりに(それとも本気で?)提案していた脱衣ルールも論外だ。 いつ他の者が現れるか分からぬ状況での脱衣は、流石に悪ふざけが過ぎる。妙な誤解は避けておきたい。 そこで、賭けの対象にしたのが…… 「……ほら、何でも好きなものを持っていけ……!  なんなら、今傷に当てているこの核鉄でも、懐にある投げナイフでもいい……!」 「ん~、流石にそれは悪いしな~。  白紙の本に宝石、それに弾切れのバズーカ……どれにしよっかな~♪」 賭けの対象にしたのは、互いが抱えていた支給品。どちらも数の上では余裕がある。 半荘勝負で順位の高かった方が、低かった方から1品奪ってもいい約束だ。 勝者のこなたは楽しそうにアカギのデイパックを漁り、中の品物を吟味する。 「……じゃ、この靴にしとく。『キック力増強シューズ』……ん~、ちょっと私でもキツいかな?  ま、他に欲しいものもないしさ。とりあえず、これでいいよ」 元々、小学生並みの体格のこなただ。無理をすれば使えないこともなさそうではある。 戦利品を自分のデイパックに詰め替え、こなたはアカギに向き直る。 「で……どうする? もう1戦する? リベンジするかねアカギ君?」 「思うところがあったにせよ、負けっぱなしというのも性分ではない……。  悪くない提案だ……と、言いたいところだが」 こなたの挑発に、アカギはチラリと時計を見る。 窓の外、校庭には誰の姿もない。まだ他の仲間が学校に来る気配はない。 だからもうちょっと遊んでいても構わない、とは言えるのだが。 「これからもう半荘ともなれば、ほぼ確実に次の放送にかかってしまう……。  間違っても、放送を聞き逃すような真似はしたくない……流石にそれは、愚の骨頂……!」 「あーそっか。もうそんな時間なんだ」 時刻は既に深夜近く。遠からず4回目の定期放送が始まる時間。 戯れの勝負の続きをするにせよ、放送が終わってからの方がいいだろう…… そう判断しかけたアカギは、ふと画面の変化に気付く。 「……ところで……何か表示が変わったな……? これはなんだ……?」 「おや、これはどっかの誰かが卓に加わりたい、ってことみたいだね。どうする? 断っとく?」 面子が足りないからこそ、コンピューターで補っていたのだ。 言ってみれば雀荘での数合わせのため、従業員が席に座ったようなもの。 新たな客がたった1人でやってきて、ちょうど勝負が一段落した卓があれば、そりゃ誘導されるだろう。 もちろん、拒む権利はある。望まぬ相手と卓を囲まねばならない義務はない。 さて、どうするか。 新たな面子を加えて勝負に波乱とスリルを織り込むか、それともこなたとの対決を重視するか。 そんなこなたの問い掛けに、アカギは即答せず――ただじっと、新たな参戦希望者の名前を見る。 見覚えのない名前。名簿には載っていない名前。 『Dr.伊藤』。 画面には、その名前だけが表示されていた。         *    *    * 「答えてくれ……繋がってくれっ……頼むからっ……!」 同時刻。 脂汗を流しながら、薄暗い部屋でモニタに向かう1人の男がいた。 伊藤博士。BADANの協力者にして、反抗を夢見る無力な1人。 彼とて、徳川光成を煽ってばかりではない。彼に出来ることを、出来る範囲でやってきている。 例えば、ネット上の主催者側の防壁を「ほんの少しだけ」弱めておいたり。 例えば、一度侵入すれば多くの情報にアクセスできるような、脆弱なシステムを用意しておいたり 例えば、検索すればすぐにヒットする、使い勝手の良いハッキングツールを作って放流しておいたり。 例えば、会場に配置されることになっているPCに、あえてキャッシュを残しておいたり。 いずれも、発覚してもいくらでも誤魔化せる範囲の行動だ。 ほんの僅かな「うっかりミス」、ほんの僅かな「不注意」。 1つ1つを取ってみれば、そう言い逃れできる程度の「手抜き」処置。 ただしそれらが上手く合わさりさえすれば、組織側の様々な情報に手が届くようになっている。 参加者の誰かがハッキングを試み、辿り着いてくれることを願って用意した細い細い抜け穴――! ――だが、どうにも彼は「やり過ぎてしまった」らしい。 せっかく「それ」に気付き辿り着いてくれた参加者は、盗聴に気付いた途端、自らラインを断ち切ってしまった。 あまりの都合の良い展開に、罠である可能性を疑ってしまったらしい。 確かに恐れる気持ちも分かる。これが逆の立場だったなら、伊藤博士もそう考えていたかもしれない。 ともあれ、これで希望の1つが潰えてしまった。 今のところ、どうやら伊藤博士への責任追及の動きは無いらしい。 いやそれ以前に、まだ侵入の事情はバレてないようだ。偽装に手間をかけた甲斐があったというものだ。 しかし、これでもう自分に打てる手はない、後は光成にでも任せるしかないか、と思っていたのだが……。 諦め悪くも可能性を探っているうちに、こうして思いもかけず接点を見つけるが出来てしまった。 流石の伊藤博士も、この殺し合いの場で麻雀に興じる参加者がいるとは予想していなかったのだ。 こうして博士が見つけることができたのも、偶然に近い。 チャット機能のあるこのオンライン雀荘ならば直接参加者と「会話」することも出来る。 その気になれば、彼の知る限りの情報を放出することも出来る。様々な内部情報をリークできる。 特大の好機を目の前に、しかし伊藤博士は逡巡する。この期に及んで躊躇いを覚える。 (でも……ここでこちらの内情を語ってしまっていいのか?! 本当に大丈夫なのか?!) 今現在、こうして麻雀サイトにアクセスしていること自体には問題ない。 ちょうど今、博士は休憩時間に当たっている。 誰かに見つかったとしても、休み時間にちょっと遊ぼうと思っていたんだ、とでも言えばいい。 きっと軽く呆れられて、それで終わりだ。 が……ここで具体的な情報を流してしまうと、話は変わってくる。 その場合、見つかってしまえば申し開きは出来ない。 チャットのログなども残ってしまうだろうし、見つかればほぼ確実に「処分」される。 幸い、今は定期放送の直前。その準備に組織全体が慌しく、博士への注意は向けられていない。 現行犯で捕まる危険はかなり低いと言っていいだろう――だが。 (だが……本当に彼らは気付いてないのか? ハッキングの手引きのことも、気付いていないのか?  もしかしたら、気付いた上で「泳がせている」だけなのでは?) 内部にいる伊藤博士にとっても、BADANというものはその全貌が見えにくい。 特に理解し難いのは、彼らが復活させようとしている『大首領』。そして『暗闇大使』こと『ガモン大佐』。 今こうしている間にも、振り返れば背後に歪んだ笑みのガモンが立っているような気がする。 オカルトじみた『大首領』の神秘の力で、全て見通されてしまっている気がする。 誰もいないと分かっているのに、何度も自分の背中を確かめてしまう。 このまま黙って麻雀ゲームを楽しむだけなら、何の問題もない。言い訳が効く。誤魔化しが効く。 しかし一言でもBADANの内情を語ってしまえば、もう戻れない。 いや、もし何なら自分は「処分」されても構わない。覚悟も出来ているつもりだ。 だが最悪なのは、情報を受け取った参加者までもが処分されてしまう可能性。 そうなったら、自分の犠牲も情報も、全て無駄になる。参加者までも巻き込んでしまう。 伊藤博士は苦悩する。 情報を流すならば定期放送のドサクサ紛れ、つまり今しかない。それは間違いないのだが。   果たして自分たちに、BADANを出し抜けるだけの幸運があるのだろうか?   果たして彼らに、BADANの目を掻い潜れるだけの幸運があるのだろうか? 伊藤博士はギャンブラーではない。だから読めない、「流れ」が見えない、「波」に乗れない。 知性と理性に逆に縛られ、彼は迷い続ける。答えの出ない思考の迷宮で、迷い続ける……。         *    *    * 「……クククッ……! そうか……そう来たか……!」 「???」 アカギは笑う。大きな疑問符を頭の上に浮かべるこなたをよそに、乾いた笑いを微かに漏らす。 画面に表示された『Dr.伊藤』、たったそれだけの名前から、ある程度の状況を把握する。 伊藤なんて名前は、参加者の名簿の中には載っていなかった。 この名前では、根も葉もない偽名ということも無いだろう。 あだ名のようなものなら本名代わりに打ち込む者もいるだろうが、『Dr.伊藤』とはまたあだ名らしくもない。 ハンドルネームの概念も知らぬアカギだが、その目は人間心理の真実を見通している。 この殺し合いとは無縁な外部の人間、という線も薄い。 技術的なことはてんで分からぬアカギだが、まずもってそんな可能性を主催者側が許すはずがない。 それが可能なら、参加者が簡単に助けを求められてしまう。外部からの介入を許してしまう。 主催者側の用意周到さから見ても、こんな所で全くの部外者と偶然繋がる、なんてことはありえない。 つまりは。 この、画面の向こう、どこかで似たような機械に向き合っているはずの『伊藤博士』という人物は…… 参加者でもなく、また、この殺し合いに無縁の人物でもない。 おそらく、主催者側に所属する人間の1人。 その技術力を考えても、主催者側に博士号持ちの人間が居てもおかしくはない。 そして主催者陣営の人間がこうして出てくる理由は、大雑把に考えて3つ。   主催者側の裏切り者、光成のように協力を強制されていた人物か。   あるいは、それを演じようとする主催者側の罠か。   さもなければ、仕事もしないで遊び呆けている、ただの馬鹿か。 (何にせよ……想像すらしていなかったこの展開……!  やはり、泉こなたのツキは、信じられないものがある……! 確実に「流れ」は来ている……!) 3つのうちどれであっても、何らかの情報を引き出せる望みはある。「会話」してみる価値はある。 ここまで具体的な行動に移れずにいたアカギたちだが、一気に飛躍できる可能性がある。 ……とはいえこの流れ、非常に不安定な所に差し掛かっているのも事実。 誰かがどこかでミスをすれば一気に破滅。そんな破局の匂いも漂って来る。 そして、そういった匂いこそ、彼の好む所なわけで。 (ここで知略の限りを尽くしても、勝てないかもしれない……ミスが無くとも、不条理に死ぬかもしれない……。  先ほどのリーチの時のように、選択するまでもなく既に詰んでいる可能性すらある……。  そして負ければ全てを失う……まさに全てを……だが、だからこそ面白い……!  ギャンブルは、狂気の沙汰ほど面白い…………ッ!) 定期放送を目前に控え、アカギはそして、心底楽しそうに唇の端を持ち上げた。 【C-4 学校・コンピューター室/1日目 真夜中】 【赤木しげる@アカギ】 [状態]:脇腹に裂傷、眠気 核鉄で自己治癒中 [装備]:シルバースキン 基本支給品、 ヴィルマの投げナイフ@からくりサーカス (残り9本) [道具]:傷薬、包帯、消毒用アルコール(学校の保健室内で手に入れたもの)  始祖の祈祷書@ゼロの使い魔(水に濡れふやけてます)、  水のルビー@ゼロの使い魔、工具一式、医療具一式 沖田のバズーカ@銀魂(弾切れ) [思考・状況] 基本:対主催・ゲーム転覆を成功させることを最優先 1:オンライン麻雀ゲーム越しに接触してきた『Dr.伊藤』への対処を考える。 2:学校で仲間を待つ。 3:対主催を全員説得できるような、脱出や主催者、首輪について考察する 4:強敵を打ち破る策を考えておく 5:こなたのツキを利用。当面は彼女を守る。 [備考] ※マーティン・ジグマールと情報交換しました。  またエレオノールとジグマールはもう仲間に引き込むのは無理だと思っています。 ※光成を、自分達同様に呼び出されたものであると認識しています。 ※参加者をここに集めた方法は、スタンド・核鉄・人形のいずれかが関係していると思っています。 ※参加者の中に、主催者の天敵がいると思っています(その天敵が死亡している可能性も考慮しています)  そして、マーティン・ジグマールの『人間ワープ』は主催者にとって、重要なにあると認識しました。 ※主催者のアジトは200メートル以内にあると考察しています ※ジグマールは『人間ワープ』、衝撃波以外に能力持っていると考えています ※斗貴子は、主催者側の用意したジョーカーであると認識しています ※三千院ナギは疫病神だと考えています、また彼女の動向に興味があります。 ※川田、ヒナギク、つかさの3人を半ツキの状態にあると考えています。 ※ナギ、ケンシロウと大まかな情報交換をし、鳴海、DIO、キュルケの死を知りました。 ※こなたのこれまでの経緯を、かなり詳しく聞きだしました。こなたに大きなツキがあると見ています。 ※『Dr.伊藤』の正体は主催側の人間だろうと推測しています。 【泉こなた@らき☆すた】 [状態]:軽い打撲 、睡眠中 [装備]:時計型麻酔銃(1/1)、麻酔銃の予備針8本 [道具]:支給品一式、んまい棒@銀魂、フレイム・ボール@ゼロの使い魔(紙状態)、     キック力増強シューズ@名探偵コナン、綾崎ハヤテの女装時の服@ハヤテのごとく [思考・状況] 基本:みんなで力を合わせ、首輪を外し脱出。 1:もう1回、アカギと麻雀をするかどうか、するなら『Dr.伊藤』を加えるかどうか思案中 2:学校で仲間を待つ。 3:独歩、ナギ、ケンシロウが心配。 4:かがみ、つかさを探して携帯を借りて家に電話。 [備考] ※ナギ、独歩、ケンシロウ、アカギ等と大まかな情報交換をしました。  (しかし、つかさ達の事は未だ何も聞いていません) ※キック力増強シューズが足に合うかどうかは不明です。 ※学校の校庭に 消防車@現地調達 が1台停止しています。 ※オリンピア@からくりサーカス が懸糸の切れた状態で消防車の助手席の後ろに座っています。 [[前編>らきすた ~闇に降り立った輝星]] |208:[[君にこの言葉が届きますように]]|[[投下順>第201話~第250話]]|210:[[Shine On You Crazy Diamond]]| |208:[[君にこの言葉が届きますように]]|[[時系列順>第4回放送までの本編SS]]|210:[[Shine On You Crazy Diamond]]| |208:[[君にこの言葉が届きますように]]|泉こなた|215:[[交差する運命]]| |208:[[君にこの言葉が届きますように]]|赤木しげる|215:[[交差する運命]]| ----

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