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本質 ◆X7hJKGoxpY氏


(なんなんだよ……これっ……!)
有り得ない――これは、悪い夢なのではないか。
この舞台に立ってから、何度そのように考えただろう。
普通に考えれば有り得ない。有って良い事では無い。
川松良平にはそう思えて仕方がなかった。
(覚めてくれ……これが悪夢ならっ……)
彼はただひたすらにそれだけを願う。
無論、悪夢では無い。まごうことなき現実。良平にもそれはわかっている。
しかし、彼はいつ死ぬやもしれぬ現実を目の前にして容易に動ける程強い人間ではなかった。
結局、良平に出来ることは現実から目を逸らし、祈ることだけ。
その後ろ向きな気持ちは、良平の集中力を欠かす。
結果として、彼は背後から迫る死の影に気付くことが出来なかった。


「おい、あんた……」
「ひいっ……だ、誰だっ、近づくんじゃねえっ」
突如声を掛けられ、良平は支給品のスタンガンを落とした。
慌ててスタンガンを拾い、身構える。
それを見て男はニヤリと笑った。
「そないに焦んなや。あんたに危害を加える気なんぞあらへんさかい」
「し、信じられるかっ!」
「そない言われても信じてもらわんことには話が進まへんのや。
わいはあんたみたいな奴を探しとったんやから」
「はあっ……?」
男の言葉に良平は顔を強張らせる。

「どういうことだよっ……それっ……」
「せやから焦んなて。そやな、まず自己紹介しよか……わいは船井。
取り敢えずお近づきのしるしとして、一本吸わんか……わいの支給品や」
「え?あ、ああ……」
そういうと、船井は良平にタバコを一本とマッチを寄越した。
良平は躊躇いがちにタバコをくわえ、火をつける。
「あんたみたいな奴を探しとった、ちゅうんは別にたいした意味やあらへん……
わいには、あんたの様にまず近づいても安全な奴が必要やった……
あんたに最初に出会えたんは幸運としか言いようが無いな」
「俺が安全……?なんでそんなことが分かるんだよっ……!」
タバコの煙を吐きながら、良平は余裕無く聞く。
船井はククク、と少し笑い、良平の問いに答えた。
「影からあんたのこと見とったんやけど……あんた、ビビっとったやろ……」
「…………」
「その武器……不用意に接近せえへんかったらまず安全な代物や。
ビビっとる人間が攻撃に使えるもんやない……」
成る程、船井の言う通りである。
スタンガンを構えたとしても、相手に近づいて攻撃するとなると足がすくんで難しいだろう。
自分の身を守ることに重点を置きすぎて、自ら動くことを放棄していた。
下手な相手に狙われていたら、もう死んでいたかもしれない。
だが――

「あんた……怖く無かったのか……?」
「ん?」
「だから……リスクだってあるだろっ……俺の罠かもしれない……怖く無かったのかって……」
「……そらしゃあないやろ……多少のリスクは……。
でも、動かんことにはいずれ死ぬ。それこそハイリスクローリターンって奴や……」
ごく冷静に船井は話を続ける。
「ここから生き残るには……ええか………要領良う動いていかなあかん。
……身体能力ももちろん重要かもしれん……。
せやけどほんまに必要なんは頭っ……!それがこのギャンブルの本質っ………!」
「…………」
――この男は正しい。
良平はそう思った。
自ら行動し、他人を出し抜ける人間でなければこの地で生き残るのは厳しい。
少なくともただ臆し、ただ隠れる人間に勝機はないだろう。
こうして気付いた今では分かる。
己は愚かであったと――
「確かにあんたの言う通りだ……」
良平はタバコを大きく吸い、その火を消した。
「あんたのお陰で気付けた」
「さよか。そいつは良かった」
船井はニッと笑う。

「……ところでさ」
「ん?」
「あんた、用があったんだろ………その用ってなんだ」
「ああ、それはやな――」


 * * *


数分後。
船井は良平の支給品を漁っていた。
良平の息は既にもう、無い。
良平の支給品を概ね確認し、自分のバッグに詰め込むと、船井はタバコを見てニヤリと笑った。
「効果が出るまで約十分ってとこやな………。
………すまんなぁ……言うたやろ…………要領良うないと生き残られへんって………」



【D-5/森/真昼】
【船井譲次】
 [状態]:健康
 [道具]:毒付きタバコ(残り19本) マッチ スタンガン 支給品一式×2
 [所持金]:2000万円
 [思考]:生還する

【川松良平 死亡】
【残り 44人】


000:序章 ~狂宴~ 投下順 002:勇と金
006:「I」の悲劇 時系列順 002:勇と金
初登場 船井譲次 036:






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