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操作 ◆wZ6EU.1NSA氏


話の折り合いのついたカイジと沙織の二人は連れ立って声のした方へ向かっている。

だが沙織は先程のあれが果たして本当に女の悲鳴であったのか怪しく感じ始めている。
二人同時に耳にしているのだから流石に空耳という事はあるまい。
しかし、風の音であるとか金属の軋む音であるとか、その可能性がないこともない。
沙織はその事を伝えようとカイジに声を掛ける。
「ねえ、カイジくん…」
それを遮るように。


衣を裂くような女の悲鳴が辺りに響き渡った。


「美心っ…!!」
「ちょっとカイジくん…!?」

カイジは沙織が止める間もなく走り出していた。
(待ってよっ…私を置いていかないでっ…!)
沙織は必死になってカイジを追いかける。
(何を考えているのだ、あの男は)
沙織の心に怒りが噴き上がる。
――私は一人になってしまっては生きていけないというのに――

走りながらカイジは忙しなく辺りを見回す。
この一帯は土産物の売店やら飲食店が細々と建ち並んでいて見通しが良くない。
おまけに、これらの店舗に先程の悲鳴が反響してしまっていて音源の確定も難しい。
「くそっ…!」
カイジが焦り苛立っているのは明らかだった。

それでもカイジは疾走を止めず、やがて広場へ出た。
やや遅れて息を切らせた沙織も広場へ到着する。
生垣があり、地面はタイル張りになっている。

何かを発見したらしいカイジはしゃがみ込み、右の人差し指で地を撫でた。
カイジの表情がみるみる険しくなる。
荒れた鼓動と呼吸も多少収まった沙織もカイジの異常に気付いて駆け寄る。

空を模したタイル。
その白い雲の部分に、僅かに黄色味を帯びた赤い汚れが広がっている。
沙織は息を呑む。
「…血だわ…」
塗料や飲料水の類には出すことの出来ない、血液特有の赤。
「ちくしょうっ…!一体何があったっていうんだ…!」
その時。


『聞けっ……!ここに一千万ある……!!得たくば、奪いに来いっ……!!』


「な…なんなのよ、今の…」
しかし沙織が動揺したは一瞬。
すぐにあることに気付き戦慄を覚える。
今の宣言の音源はそれ程遠くない。アトラクションゾーン内であることは間違いないだろう。
恐怖と焦燥が沙織の背を駆け上がる。
一刻も早く離れなくては我が身が危ない。
ここは――危険だ。

「行きましょうカイジくん…!」
「しかし…」
知人のものかもしれない血液がカイジの判断を鈍らせているようだった。

「いい加減にしてっ…!」そんなカイジの態度に、沙織は怒鳴りつけたい衝動をどうにか飲み込む。
冷静になるのだ。感情的になる事…それは今の自分に一番あってはならない事。そう、自分に言い聞かせる。
内輪もめなどしていれば確実に死ぬ。沙織は暗愚な女ではない。

そう、今すべきことはヒステリックに怒鳴り散らす事ではないのだ。

沙織は未だしゃがみ込んだままのカイジの正面に回りこみ、膝を着く。
カイジの両肩に手を掛け、真正面からその瞳を捉える。
二人の男女の顔と顔の距離は近い。
カイジは僅かに動揺する。その隙を突くように沙織は言葉を発する。低く、ゆっくりとした口調で。
「カイジくんは美心さんのことが心配なのね…。それはとてもよく分かるわ。
でもよく考えて…。この血液が美心さんのものとは限らないでしょう?
もしそうであっても、これは致死量の血液ではない。むしろ大した出血じゃないわ。
勿論、最悪の事態も考えられる。もしそうなら――」
そこで一旦言葉を区切るが目は逸らさない。

「――あなたにはどうする事もできない」
断じるように毅然と、しかし冷酷さを滲ませないよう細心の注意を払う。
「だけどねカイジくん…、」
ここで沙織は少し声のトーンを上げ、笑顔を作る。
「望みは充分にあるわ。
美心さんは無事逃げおおせたのかもしれないでしょう。血液の量は然程多くはないし、引き摺ったような跡も無い。
ならばその可能性は高いんじゃないかしら」
そう言ってカイジの左手をきゅっと握る。
「美心さんと合流して彼女を守ってあげたいと、そう思うのなら今は生き延びる事を第一に考えてっ…!」

本心から言えば、美心という女の無事などどうでも良い。
寧ろ死んでいてくれた方が好都合なのだ。
だが、そんなことはおくびにも出さない。
飽くまで演じるのは善意の第三者。

そして沙織の演技は功を奏したらしい。

「そうだな…」
す、とカイジは立ち上がる。
「取り敢えず一旦アトラクションゾーンから出よう。
今のでどんな奴が集まってくるか分からない。恐らく寄ってくるのは金か殺しを望む危険人物。
ここは…危険だ。声がしたのとは反対側…東口から行くことにしよう…」
「そうね…カイジくんの言う通りだわ…」
沙織も立ち上がる。

主導権はカイジにある――そう彼に思わせるのが肝要なのだ。
だが実際には、無自覚の内にカイジの行動は沙織の望む方向へ操られつつある。
沙織の口からはここが危険であるとも、ここから離脱するべきだとも一言も発せられてはいないのだ。

二人が東へ向かおうとした少しばかり歩いたところで沙織はカイジの腕を掴んだ。
「田中さん…?」
「しっ…!あそこ見て…。生垣の向こう…」
カイジは目を凝らす。

そこにいたのは青年。
白い短髪がちらちらと木々の向こうで揺れている。
「あいつは…“赤木しげる”…」




日は西に傾きつつある。
独りになった平山は急に心細くなる。
スタッフルームを出るまでは確かにあったと思われた希望は歩を進める毎に萎えしぼんでゆく。

平山は支給品である参加者名簿に連ねられた名前と、利根川から渡されたメモの内容を反芻する。
それらの文面を彼は一言一句違わずに記憶していた。

〈兵頭和也〉に遭遇したところで、もし彼がこの殺し合いに乗っていたら…?
〈遠藤〉や〈一条〉に遭遇したところで、人を殺すのは嫌だ。勿論殺されるのも御免だが。
〈伊藤開司〉との遭遇が運良く叶ったところで、彼が説得に応じて協力してくれる保証などない。

頭がくらくらする。
それは出血により軽い貧血状態に陥っているせいか。
若しくは極度の緊張状態から来る精神疲労のせいか。

俯くと装着された金属――己が操り人形であることの証――が目に入った。
会場で首輪を爆破された少年の最期が蘇る。
それは平山の脳内にまるで連続写真のように鮮明に再生された。

……オレは死ぬのか…あの山口という少年のように…
……利根川がほんの僅かな力を指先に込めるだけで…


「うっ…!」
平山はその場に蹲り嘔吐した。



【C-4/アトラクションゾーン/夕方】
【伊藤開司】
 [状態]:健康
 [道具]:ボウガン ボウガンの矢(残り十本) 支給品一式
 [所持金]:1000万円
 [思考]:仲間を集め、このギャンブルを潰す 森田鉄雄を捜す
     赤木しげる、有賀研二、一条、神威勝広、神威秀峰、利根川幸雄、兵藤和也、平井銀二、吉住邦男に警戒
※平山の存在に気付いていますがアカギだと思っています

【田中沙織】
 [状態]:健康 精神不安定
 [道具]:参加者名簿 支給品一式
 [所持金]:1000万円
 [思考]:足手纏いになるものは殺す 死に強い嫌悪感 森田鉄雄を捜す
     赤木しげる、有賀研二、一条、神威勝広、神威秀峰、利根川幸雄、兵藤和也、平井銀二、吉住邦男に警戒
※平山の存在に気付いていますがアカギだと思っています

【平山幸雄】
 [状態]:嘔吐 左肩に銃創 首輪越しにEカードの耳用針具を装着中
 [道具]:参加者名簿 不明支給品0~2(確認済み) 通常支給品
 [所持金]:1000万円
 [思考]:カイジを捜す 利根川に会いにいく 引き続き利根川の命令には従うが、逃れる術も積極的に探る
※ひろゆきと21時にアトラクションゾーン事務所で落ち合う約束をしました。
※カイジ、沙織の存在に気付いていません


048:思惑 投下順 050:混乱
048:思惑 時系列順 050:混乱
038:駆け引き 伊藤開司 051:仮定
038:駆け引き 田中沙織 051:仮定
043:道標 平山幸雄 051:仮定






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