とある魔術の禁書目録 自作ss保管庫

Part004

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クリスマスの奇跡




第04話


12月19日 (月)22時 とある高校 学寮前

あの橋での決死の告白から1時間、冷静になった別の自分は、自分の
状況の困難さに頭を抱えていた。

いや・・・本当はとても幸せなのだ。当麻と手を握りながら当麻の学寮へ向かう。

自分の空回りしがちだった労苦は、意地悪な神様の心すら打ち破ったのか
あの・・驚異的な鈍感男の心を打ち破り、ついに私の思いは届いた。

少なくとも、彼も自分の心を受け止めてくれた。
その事実の重みに、私の心は歓喜のワルツに奏でる。

だが・・正直問題は解決したのだろうか?

私が、ただの恋愛脳に侵された夢見がちな乙女なら、問題は解決した・・そう言ってよいだ
ろう。愛しの彼に想いを伝え、彼はそれを受け入れた。
めでたしめでたし・・だが・・

食蜂に言われたが、私はそんなもので満足するにはあまりに、難儀な性格だ。
はっきり言って守られる女なんてそんな関係なら、私はいらない。

どちらかと言えば、私は守られるより、守りたい性格。頼るより頼られたい性格。
いつもの、黒子、初春さん、佐天さんの4人組でもそう、常盤台でも、学び舎の園でも
はっきり言えば学園都市全体さえも守りたいタイプの性格。

それはたとえ対象が上条当麻でも変わらない。

そんな私にとって、AAAを手放すのは、はっきり言って理屈ではわかっても、感情では
納得できないことだ。

前の何も知らない、私ならそんな疑問すら抱くことはなかっただろう・・

だが、12月以降魔神、上里勢力、アレイスター、木原唯一、天使、etc..が跳梁跋扈
する現実を知り、もはや素のか弱い自分には戻りたくとも戻れない。

誰かを守るには力が必要だ。だが・・それはレベル5では到底足りない。
その現実に打ちひしがれたからこそリスクを承知でAAAに手を出した。

(だけど・・当麻に約束した以上AAAなしで私は上条当麻を守らなければならない)

(それに・・)
もっと大きな問題はイギリス清教、必要悪の教会のシスター魔術の最終兵器 
禁書目録との関係を解決すること・・

故人曰く、言うは易く行うは難しと言う。
そう・・今の私がその状況だ。

2つ解決困難な問題を抱えている。
私は、その2つを、解決しなければ先に進めない。

食蜂なら、洗脳して終わりかもしれない。雲川なら曖昧にして、問題をうやむやにするかも
しれない。だけど・・私は逃げない。不器用かもしれない。だけど、これが私の現実なのだから。

覚悟を決め、当麻とともに学寮へ向かう。

卵かかみつきか、それとも泣き落としか・・私はあのインチキシスターと対峙に
戦場へ向かう。

 ・・・・・・・・

対して広くもない学寮の上条当麻の居室
そこへ3人入るとさすがに狭苦しい。

インデックスが、緊張した趣で当麻の顔を見つめている。
いつもなら冗談めかしたことを言って、その場をごまかす当麻もさすがに今日は
言わない。元々デリカシーに欠けきらいはあるがさすがに、この場がどうゆう場面か
理解しているのだろう。神妙な顔つきをしている。

私は、口が重い当麻に変わり、開口一番直球を投げる。

「ねえ、当麻・・ちゃんと話そう、彼女には知る権利があるわ」
「私から全部話してもいいけど・・結局これは当麻の問題でしょ」
「ああ・・そうだな」
「インデックス・・俺は美琴と恋人として付き合うことにした」

静寂が一帯を支配する。インデックスは何やら考え込んでいるようだ。
嚙みつきも、怒りもせず、ただ佇んでいる。まるで来るべき日が来てしまったかの
ように。

インデックスは、鈍感なはずの上条当麻が御坂美琴をしきりに気にかけることに
はっきり気が付いていた。あの熱波の中でも・・そして、その後のごたごたの
中でも。さらにインデックスは、短髪とよぶ御坂美琴が上条当麻へはっきりと
好意を向けていることに気が付いていた。

そんなインデックスにとって御坂美琴がはっきりと告白し、なおかつ当麻がそれに
応えること自体に意外感はなかった。

だが・・

元々インデックスは、誰とでもすぐに親しくなり、すぐにファースト・ネームを呼ぶ
ほどの人物・・だが例外はある。御坂美琴だけは「短髪」と呼び敵意を隠そうとしない。

いや・・おそらく本能的にわかっていたのだろう。御坂美琴の存在が自分にとって
大事な上条当麻を自分から奪いさる可能性のある存在であることを・・

そんなインデックスにとって・・想定はしていたが、来てほしくない瞬間だった。

少し間をおいてインデックスが口を開く。弱弱しくまるで許しでも請うかのように。
「当麻・・私はここに居ていいの?」

当麻が、言葉を選びつつ口を開く。
「インデックスは・・俺にとっては肉親も同じ・・」
インデックスが当麻の顔を凝視している。インデックスは下手すれば私以上に、この
上条当麻に心身ともに依存していたはずだ。そんな彼女にとって、居場所を失うことは
耐えがたいはず、私は同性として彼女の立場に同情を禁じ得ない。
「俺は、お前が居たい限り、ここに居て欲しい」

インデックスが不安そうに声を発する。
「本当にいいの?」

上条当麻が力強く、語り始める。
「インデックスも美琴もどちらも俺にとっては大事な存在だ」
「美琴と付き合うからお前を放り出すようなことは絶対しない」
「だからお前は安心して暮らしてほしい」

私は、少しの落胆と大きな安堵を心の中でつく
(恋する乙女としては、・・敵に塩を送りたくはないけど・・この子が当麻にとって
切り捨てできない存在であることは事実)
(私は・・当麻を不幸にする選択を選ぶことはできない)
私は、目に意思を籠め当麻を見つめる。
(ふふ・・当麻らしいわね。本当・・そうあってほしいと思う私も大概なお人よしだけど)
「美琴・・これでいいよな」
私ははっきりと意思を当麻へ伝える。
「ええ・・。インデックスも私の家族・・それでいいわ、当麻」

「美琴ありがとう。だからインデックスも家族として一緒にいよう」
戦争と恋愛は手段を選ばないとは言う。
本来なら、私はインデックスを追い落とすべきかもしれない。
だけど、私には、インデックスの当麻への思いを知ってそんな選択を選ぶことはできない。
(私はそんなつまらない女にはなりたくない)

それまで、緊張の糸で重くしずんでいたインデックスが目から涙をこぼしつつ、鼻を赤くしながら笑うという器用なことをしながら、私の顔を眺めつつ、抱き着いてくる。
「とうま・・それからたん・・いやみこと・・これから一緒に生きていくんだよ」

私は、インデックスを抱きかかえる。
「ええ・・インデックス、一緒に家族になりましょう」

当麻が私とインデックスを抱きかかえる。まるで・・最初から家族だったように・・
(収まるところに収まったのかしら・・でも・・まだ問題のすべては解消していない。)

能力者にとって一大事のパーソナルリアリティの再構築が残っているのだから。

 ・・・・・・・・・・・・・・
12月24日(土) 16時:とある高校 再建工事現場

「出来たわね・・」
高尾山系に早すぎる太陽が沈みかけその残照が学園都市を照らす。

私は、あの僧正により全壊した、とある高校の解体・再建工事現場で、自分が設計・施工
した作品の出来栄えを確認していた。

もっとも、元がスタンダートを極めたごく普通の校舎のため再建自体に手間はかからない。
費用もたかだか50億円ほど、常盤台の100分の一にすぎない。

費用は、常盤台の建設工事の剰余金が500億円ほどあったのでそれを流用しても
十分賄えたが、食蜂が親船理事と交渉し、統括理事会の予備費で建設することとなった。

ちょっと前までは、とてもお互いに協力するなんて、それが如何に利益があろうとも
やれなかった。だが、強敵にぶつかり学校存立の緊急事態に、2人で立ち向かう道
を選択し今に至る。

その経験が、ごく自然に私の脳裏に食蜂に依頼するという
選択肢を提示する。はっきり言って統括理事会の根回し関しては食蜂の手腕は見事
としか言いようがない。あっさりと必要な物を分捕ってくる。

(まあ私も少しは成長できたかな・・)
(それに・・)
正直な話、いまだAAAなしで、上条当麻のステージに存在する化け物達に匹敵する
自信はないが、学園都市に散在するAIM拡散力場のリソースを使い自分の演算力
をかさ上げする方法はある程度、効力を発揮し、通常より短時間でこの工事を終える
事が出来た。

(通常なら工期1年、どんなにゼネコンをせかしても3月、それを3日でできたのだから)
(そしてそれをAAAなしで達成できた。小さいけど一歩でも成し遂げる事ができた)

常盤台の私の設置した、機械工学部のメンバーが駆け寄ってくる。
先日の熱波以来私とともに、数々の困難を共にした仲間達。
時に、常盤台再建工事に時は、工期が厳しい中、私とともに数々の難問に立ち向かって
くれた。私の同志達に思いっきり握手をする。
(この子達が献身的に尽くしてくれたか、全部予定どおり終わった)

私は声を一人一人へかける。
「ありがとう。みんなの協力で予定通り終わった」

部員達は私をほめたたえる。
「いえ、御坂様のご指導のおかげです」
私は、大げさな美辞麗句に恐縮する。熱波の時も、常盤台再建の時も私への過剰な過信は
結局収まることはない。
(私は、賞賛を受けるほどの人物じゃない。ほかの人よりほんの少し、電子制御や機械
工学に長けているだけが、それに全部を自分一人でやり遂げたわけでない)
(アイツは、神様のような奴に右手ひとつで立ち向かった・・それと比べれば自分なんて
まだまだだ・・でも・・やっぱり少しでもやり遂げたことがうれしい)

私は、簡単に賞賛の声に答える。
「そうね、でもみんなよく頑張ってくれたわ・・建設工事はこれでおしまいだけど、
機械工学部の部活は継続してもいいわよね」

部員全員が私を見つめる。
(でも・・弱い私は、こうやってみんなと力を合わせてこの街の闇に立ち向かなければ
ならない。そのために常に嗅覚を研ぎ澄まし、自分を研鑽して、みんなの模範になら
なければならない、間違っても傷ついても何度も立ち上がらなければならない)
(だがら・・そのためには)

私は、一歩前へ踏み出す。
「これからも、いろいろあるでしょ、だけど皆と一緒に力を合わせて立ち向かって行こう」
「微力な私に力を貸してほしい、私は何があっても先頭に立って戦う」

部員達が感極まったのか目に涙を浮かべつつ、歓声を上げる。
食蜂がみたら派閥の決起集会に見えるかもしれない。そう・・今になってわかる。

古来より、弱い人間は、群れて外敵に立ち向かった。
その群れは、かならずリーダーを必要とする。少しでも能力のあるものは、弱い者の
先頭に立って外敵に立ち向かう。それが世の中の習わし。そして真理。
だから・・私は皆の先頭にたって戦う。命がけで。

(そんなものではアイツの世界には立てないかもしれない・・だけど)
今の私には、一人で全部を解決する力はないだろう。だけど、駆動鎧や木原の
最先端技術、それを運用する、電子制御に特化した頭脳。

それでひとつひとつ問題に立ち向かっていく。自分のやれる範囲で、自分の手で
掴めるものを掴む。これが私の選択。学校教育では天才だが、世界の頂点にはあと
少し能力の足りない安定戦力の選択。

そして常盤台の、学び舎の園の、ひいてはアイツの住む学園都市を守る。
そして、・・本当に困ったときは、・・みっともなくともアイツに頼る。

私は、右手一つで、世界の頂点に立ち向かい、何度も世界を丸ごと救った男を見つめる。
その男は、私の周りに集まった常盤台生に会釈をしながら、私に向かってくる。
気配を察した部員が道をあけ、当麻は私の目の前に寄り添う。

「当麻・・来てくれたの・・」
「ああ・・だけど・・美琴は凄いな・・大人の会社でも半年はかかるものをわずか3日
で、完璧に完成させるなんて」
「ありがとう。でも私一人の力ではないわ、ここにいるみんなのおかげよ」

「みんな・・あ・・そうだな。美琴は現場監督なんだよな」
「ええ、私が図面や工程表、組み立てや打設用の駆動鎧は作成したけど、それの整備
や運用なここにいる皆の協力がなければできなかった」

「だから、・・当麻には常盤台生みんなも褒めてほしい」

「ああそうだな」
当麻が深々と礼をする。自分の学校を再建したお嬢様軍団に感謝の意を込めて。
部員たちは、あの熱波のさいに私が拾ってきた、謎の男が深々と最敬礼を
したことに好奇の目を向ける。

私は部員に声をかける。
「みんなに報告することがある」

「私はある事件で死を覚悟した。その時、巨大な敵に立ち向かい、私を闇の中から
引き上げてくれたのが、こちらの上条当麻さん」
「上条さんは、私の命の恩人で、私は上条さんに救われました」
お嬢様たちは、私の意外する告白に驚愕の表情を浮かべる。
当麻は当麻で私の突然のカミングアウトに、思考を停止したような唖然とした表情を
見せる。
「美琴・・?」
私は、一気加勢に話を続ける。

「それだけではなく、大覇星祭、9.30事件、第3次世界大戦、東京事変、12月の僧正事件以来の大熱波事件、そのすべてで彼はその身ひとつで、学園都市を守ってきました」
「私には、上条さんのように右手一つで、学園都市を救う能力などありません」

「ですが、こんな微力な私でも、クリスマスの前に何か一つでも恩を返すことが
できるのでないか、そう悩んでいました」
「そんな中で、先日以来皆さんと、一緒に取り組んできた常盤台再建工事」
「私にも、できることがあることに気が付きました」

「常盤台を再建した皆さんにわかるとおり、学校は、学生にとって心のよりどころ
です」
「彼の学校は僧正の無差別攻撃により、崩壊させられました」
「彼は心のよりどころの学校を失い、いまだに別の学校に間借りの身です」
「本来なら学園都市は、恩人である彼の学校を最優先で再建するべきなのに
彼の学校は高位能力者偏重という学園都市の偏った政策によりいまだに正当な扱いを
受けず放置されていました」

振り絞るように話を続ける。

「微力な私にとって、彼への大恩を返す機会はこんなことくらいしかありません」
「私が、今回この学校の再建工事を皆さんとともに始めたのも少しでも大恩ある、
上条さんへ感謝の気持ちを込めた、実施しました」

私は、みんなが話を咀嚼できるように敢えて間をあける。
そして思いをはっきりと告げる。
「本当に多忙な中、私の勝手な思いに、協力してくれてありがとう」

私は深々と部員の前で頭を下げる。

「最後に、私の今の思いをみなさんに伝えます」

「私は、命の恩人、そして学園都市とともに私達全員を救ってくれた上条さんへ
心より感謝します。そしてこの学校は私達から上条さんのへ感謝の気持ち
です。いまこそ上条さんへ感謝の気持ちを伝えましょう」
唖然としていた部員達は、上条当麻を賞賛し、たたえ始める。
ネットやSNSでほぼ完成を聞きつけたほぼすべての常盤台生や教師、そして
とある高校の面々が満場一致で拍手を送る。

(これこそが、私から上条当麻への感謝の気持ち、そして、AAAを手放した私の着地点)
(本当に小さな一歩だろう。だけど・・これこそが、私にとってのクリスマスの奇跡)
(臆病な私が、胸襟を開き、告白し、そして彼の日常を必死に自分の仲間とともに
取り戻した)

彼が、上条当麻が私の手をとりそして、深々と礼をする。
そして訥々と心境を語り始める。

「まず初めに、美琴は思い切り美化したけど・・俺はただのレベル0だ」

「成績もさえない三流学校の平凡な普通の高校生」
「美琴が言った数々の戦績は、決して俺一人の力で成し遂げたものではない」
「ここにいる学園都市の多くの人、とりわけ・・」
俺は美琴の目を見つめる。
「美琴には危ないところを何度も救ってもらった」

「それに、美琴は返しきれない大恩と言った。だが・・僧正以来、いつも美琴は
体を張って、俺の為にそして学園都市の為に戦っていた」
「正直、美琴がそして常盤台の皆さんがここまで必死に俺たちの学校再建に取り組んで
くれたことに言い尽くせないほど感謝している」

「俺は・・まず、常盤台中学の皆さんに心から御礼を申し上げる」

俺は美琴の手をとり、自分の思い人となった少女に感謝を心からはっきりわかるように
しぐさで示す。

「そして12月以来全身全霊学園都市の危機為に勇気を振り絞り、立ち上がった、御坂美琴
へ感謝の意を示しそう」

周囲の、聴衆が万来の拍手で同意を示す。
さらに当麻が話を続ける。

「俺から見て、美琴は紛れもなくヒーローだ」
「俺はそんな美琴を心から・・愛している」

俺は美琴の背中に手を回し、抱擁する。御坂美琴の不器用な、だが真摯な思いは、鈍感
大王の心を貫いて彼女の恋心を認識させた。そして、彼の口からはっきりと明確に思い
を聞けた。集まった、関係者の拍手は鳴りやむことはなく、この小さな奇跡を祝福するようだ。その昂揚した気持ちの中で私は当麻に抱擁されながら滲み出る女としての幸せを
心から満喫する。

私は当麻に精一杯の謝意を締めす。
「当麻・・本当にありがとう」
そして、一息ついて、深々とお辞儀をして感謝を示す。

関係者の拍手は、しばらく止むことはない。
今生まれたカップルの将来を祝福するかのように。そしてそのカップルが、混迷する学園都市を照らす新たな光の象徴であることを示すかのように。

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
12月24日 (土)18時 展望レストラン 特別室

私は、1月の前にあらかじめこの日の為に予約していた特別室に当麻と入室する。
インデックスは、しっかり事情を説明し、納得の上月詠先生と焼肉パーティに
行ってもらった。正直2人には悪いことをしたが、今日だけは当麻と今後を語り
会いたいので、気持ちを伝え相応の費用を負担した上で了解してもらう。

50階の窓の外には、夜景が広がり、東には新宿新都心や東京駅周辺のビル群まで
見える。机の上にはクリスマスケーキと、贅を尽くした料理が運ばれる。

最先端兵器や、駆動鎧、そして生身で10億Vの最大規模の雷に相当する
電力を扱う超能力者であっても、本質は乙女な私、ロマンチックな場所で
告白にあこがれがあった。

「当麻、本当にありがとう」
「美琴・・びっくりしたぞいきなり公の場でカミングアウトして」
「ごめんなさい。でも・・当麻への気持ちを隠すことはできなかった」

「美琴は、まだ僧正の事がトラウマなのか?」

「気にしていないと言えばうそになる。だけど・・いやだからこそ」
私は腹に力を籠める。
「トラウマの元をもとに戻した。」
「そうか・・美琴らしいな。AAAを止めるために俺の学校を再建するとか
やっぱり美琴はスケールが違うよ。俺と違ってな」
一歩を超えて私は素直に、そして正直に答える。
「まずは褒めてくれてありがとう。」
「でも、当麻には全然かなわないわ、世界をまるごと救う当麻には」
私は、アップルサイダーを飲みながら当麻を褒める

「美琴は・・俺に夢見すぎだよ。」
「はっきり言えば俺の右手に」
私は当麻の顔を凝視する。いつにもない真剣なまなざしに心打たれる。
その熱い視線に心を震わせながら言葉を発する。

「当麻はいつも言う。不幸だ・・神の加護さえ打ち消す右手で幸福をも打ち消すと」
「でもね。当麻・・私はその右手に救われたのよ」
「妹も、学園都市も・・いや世界さえも」
私はさらに言葉を続ける
「もちろん・・当麻の右手の限界も知っているわ・・」
「それが無敵でないことも、当麻に多くの不幸をもたらしたことも」
「八竜を当麻の意のままに操ることができないことさえもね」

「私は、当麻と違って、一人で世界を救うことなんかできない」
「だけど、・・自分の周りの世界ぐらいは自分で守る、インデックスも当麻も
守る。いつかは学園都市そのものだって守れるようになる」
「当麻の不幸も私も背負う、一緒に不幸に立ち向かいましょう」

当麻が、嘆息したようにしゃべる
「美琴は・・本当に前向きで強いな・・」

「でも・・無理しなくていい。あ・・美琴に期待しないわけじゃない。もちろん
美琴の能力のすごさや、強さは分かっている。」
「だけど美琴は頑張りすぎる」
「美琴は意思が強すぎるから、どんな強敵でも立ち向かうとする」
「でも・・そんなに頑張りすぎなくてもいい」
「立ち止まって周りを見回して、頼ることも覚えてほしい」

「それに・・」
「御坂美琴とその周りの世界は俺も守る」
「だから・・、自分ひとりだけで立ち向かう必要なんてない。俺のことも頼ってほしい」
当麻は私の顔にそっと軽く唇を頬によせる

私の瞼から涙が零れ落ちる。常盤台の子達の前ではみせない私の涙。
その涙を拭い私は当麻へ声をかける。
「ありがとう、当麻、・・ええ・・私は今回の騒動で自分だけの能力でできないことも
力を対処することを学んだ・・だから当麻の力がいるときはもちろん当麻にも頼る」

「当麻・・」
「美琴・・」
私と当麻は立ち上がり、当麻は両手を腰に回し、しっかりと抱擁する。
耳元で当麻は私に囁く
「何があっても俺は美琴も守る」
私も囁く
「私も、当麻の周りの世界を守る」
「そして・・死ぬときは一緒よ」
そして・・2人の距離が0になり、・・熱い接吻の感覚が私の脳裏を駆け巡る。

紆余曲折の末、相思相愛となった2人。アレイスターの負の遺産の解消はそんな
簡単ではなく、多くの困難が2人を襲うだろう。だが・・どんな困難も・・
上条当麻の熱い心と、御坂美琴の技術で乗り越えるだろう。
これは後に統括理事として辣腕をふるい、学園都市を文字通り科学の世界の中心と
して名声を博す基礎を作った2人のなれそめの始まりにすぎなかった・・



FIN






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