とある魔術の禁書目録 自作ss保管庫

Part057

最終更新:

匿名ユーザー

- view
だれでも歓迎! 編集



第3部 第17話 第四章(2)


9月27日(日)中部欧州標準時(夏時間) 午前7時30分 
パリの北東25KM シャルル・ドゴール国際空港

私と当麻は、学園都市を正午に定刻通り出発し、約9700KMを約2時間の
フライトののち、現地時間の午前7時に到着する。
(時差7時間)

秋も深まったせいか、ようやく日が昇ったばかりで、しかもまだ夏の気配が残っている
学園都市からきた私達には晩秋の気配する感じる陽気だ。

学園都市発行の外交官用パスポートの威力でごく簡単な検査で入国手続は終わり、VIP
出口から、足早にタクシー乗り場へ向かう。

予め予約した送迎タクシーを見つけ、当麻をそこまで誘導する。たった49ユーロで大型バンでホテルまで運んでくれる。
(まあ以外に物価の高いパリの割には安いわね)

私は、当麻と後部座席に乗り、運転手に行先を念押しし、バンは動き始める

フランス語の表記が珍しいのか、それとも私がフランス語を喋るのに感心しているのか
当麻がお上りさんのようにきょろきょろしている。

「美琴はすごいな・・」
「え?」
「当たり前のようにフランス語喋っているのがさ・」
「まあ常盤台では、授業は英語、第2外国語までは最低の教養だからね」

当麻は、驚いたような顔をする
「へ・・俺の学校じゃ日本語さえ怪しい奴が多いのにな」
「当麻それは・・自慢することではないわよ」
(まったく・・こいつは・・だけど・・まあ些細な問題ね本質的には)

「へいへい美琴先生」
「茶化さないの、まあでも・・これつければ会話は分かるわよ」
私は、当麻がまったくフランス語ができないことを思い出し、それをカバーする装置をカバンから取り出す

「あ・・これね・・英語とフランス語を日本語へ翻訳してくれるイヤリングね」
「まだ試作品のレベルだけどね」

「へ・・すごいな」
「まだ、ネイティブから見るといまひとつらしいけど実用性の点では問題ないわね」

「AIか・・」
「そうそれが今回の会議の主題」
車窓からパリ郊外の副都心ラ・デファンスの超高層ビルをながめながら
私には当麻に語り掛ける

街並みが郊外から都市のそれに代わり、絵葉書のような大都市が広がる
「そろそろパリ市か?」
「ええ」

外周高速道路を超え、パリ市に入る。モンマルトルの丘を越え、どこかの旅番組で
見たことがあるパリ中心部に入る。
「ホテルは?」
「インターコンチネンタル・パリ・ル・グランよ」

「へえ・・高そうだな、でなんでそこ?」
「会議場もそこだから」
「なるほど」
「中心部だから観光にもいいわよ」
「ルーブルなんかも歩いていけるわ」

当麻は、パリの中心部をお上りさんのようにきょろきょろ見回す。
学び舎の園というパリの模型のような街を見慣れていた私にはさほど
珍しくない風景だが、当麻にはよほど物珍しいのだろう。

「さあそろそろかな」

渋滞もなく空港から40分、目的地のホテルへついたようだ

タクシーはホテルのエントランスへ停車し、私は当麻を促し外へ出る。
「なかなかいいホテルでしょ」
「ああ、本当街の中だな」

「荷物おいたら少し観光しようか、今日は行事ないし」
「ああ」

チェックインを終え、荷物を部屋に置き、エントランスへ出る。
WEBで予約したタクシーが到着していることを確認する。

「じゃ・・お上りさんツアーでもしましょうか?」
「どこへ?」

「まずはベルサイユよね・・」
当麻がバカにしたような顔をする、どうせ言いたいこと分かっている
「まあいいじゃないの、定番も大事よ」
私は何か言いたそうな当麻の口を封じる。
「じゃ、いくわよ」
私は当麻をタクシーの後部座席に乗せ、憧れのベルサイユへ向かう。

・・・・・・・・・

中部欧州標準時(夏時間)9時 パリ近郊ベルサイユ

「ついたわね」
「へえ・・写真通りだな」

「まあ、そうね観光の目的の一つは記憶の確認作業だからね」
「まあ庭園にトリアノン宮殿もあるけど、全部回る時間もないわ」
「さっさと回りましょう」

日曜日のせいだろうか、柔らかな晩秋の日差しが降り注ぐ中、入館
待ちの観客でごった返している
「随分混んでいるな・・」
「日曜日だからね・・」

スマートフォンで自撮り撮影をする、中国人やターバンを巻いたインド系のご婦人
などそこに世界の縮図のような風景が広がっている。
18世紀の啓蒙主義が作り出した幾何学模様の庭園と、雑多な人々がそこに「近代」という
姿を形づくる。

「へえ?さすが世界一の観光地フランスは違うね・・」
「ふふ・・さっきは馬鹿にしてたじゃない?いいでしょベルサイユ」

「まあ、予想通りだけどな、でもそこで空気を吸うのはいいわ」
私は恋人繋ぎをしながら、会議用の黒のタイトミニスカートと7CMのハイヒールの
履き具合を確かめながら当麻の腕をつかみ、ベルサイユ宮殿の庭を観覧する。
陽光に白のブラウスと黒のジャケットが映える。

「へえ・・まるでルイ16世になった気分だな」
私は頭を抱える、よりによってその言葉の選択はないだろう?
コンコルド広場でギロチン処刑されたその人を選ぶか?デート中に
「縁起でもないわね、末路は知っているでしょ?」

「え?有名な王だよな?」
「フランス革命で処刑されたね」
(一般常識がないのは罪ね・・まったく)

「え?」
「まったく・・中学生でも、ここはルイ14世と言うでしょうに、太陽王と呼ばれた」

「ああそうか・・でもベルばらだと確かルイ16世が王だったじゃん」
私は少々おかしくなる。
当麻が大昔のアニメを、しかも少女向けを知っていた事実に
「へえ?当麻がベルサイユのばら知っているんだ?」

「意外か?」
「まあでもいいわ・・今度ベルばらの話を教えてあげるわね」
当麻が明らかに嫌そうな顔をするが私は敢えて無視する。
私がさらに名作ベルサイユのばらをのツボを語ろうとするが肌に異様な雰囲気を感じ
小声に切り替える
「ん?」
「ねえ・・なんか嫌な感じがする」
「嫌な?」

「人の精神を誘導するような、微弱のエネルギーを感じる」
「人払いの術式か?」

「おそらくね」
「どうする?」
「まあ、攻撃する気なら攻撃するでしょ」
「多分・・そのうち」
さっきまでごったがえしていた、庭園がまるで最初から誰も
いなかったように無人になる。

何秒かの静寂の地突然爆音が響き渡る

そこへ軍用ヘリらしきものが忽然と出現する。

ご丁寧にミサイルまで備え付けている。バルカン砲もぴったりと私と
当麻を狙っている。
「へえ・・」
(私を殺すには力不足もいいとこだけど)
私は舌打ちをする。あれを落とすことはさほど労力は要しない。
(だけど・・私を狙ったテロとなると会議そのものがおしゃかになる)
(仕方ない・・)
私は頭で最善解を練り上げ、即実施する。

・・・・・・・・・・・・

9時40分

ヘリは突然方向を変え、どこかへ飛び去り、人払いの術式は解除されたのか
元のにぎやかな観光地の風景を取り戻す。

当麻が驚いた顔で私を見つめる
「一体何が・・」
「え?制御装置をハッキングして無理やり遠隔操縦で移動させているわ」
「はあ?」
「外の軍用ヘリの運行プログラムの解析なんて余裕よ」
「まあ、今頃はドーバー海峡へ向かっているんじゃないの?」
私は、冗談めかして言う。
実際には学園都市のパリ近郊の協力都市へ向かっているはずだ
(まあ、捕虜よね・・背後関係を調べる必要があるし)

「いやそれより」
当麻の言葉を遮り結論を先に言う。
「決まっているじゃない相手は私の邪魔をして、会議をぶち壊すつもりよ」
「おそらく、短期な私がヘリをぶち落とすことを期待してね」

当麻の頭にはてなマークが浮かぶのを苦笑いしながら眺める。
「はああ・・?」

「フランス軍のヘリを公然と学園都市の超能力者がフランス領内で撃墜した」

「さてCNNやBBCやアンテナ2などのマスコミから私はどういわれるかしらね・・」
「学園都市のモンスターが民主国家を破壊する?なんてさ・・」
「十字教系のマスコミがここぞとばかり私や学園都市を責め立てる」
「膨大な力を振舞う悪魔が学園都市で世界征服を狙っているとね」

「いやだからって・・」
「学園都市なんて当麻は知らないかもしれないけど外では胡散臭く見られているのよ」
「その超能力者1位、しょせん外では正当防衛なんて言い訳は通用しない」

「鼻から成功するなんて思っていないでしょ・・」
「いわゆる自爆テロ。最初から私に撃ち落とされることを前提に行動している」

「はあ?そうか?」
「まあそうゆうこと」

「でどうする」
「別にいいんじゃない?何をおきてないし」
当麻は苦笑する。
「はあ・・美琴は気楽だな・・」

「別にいいんじゃないの?誰も死ななきゃ」
「まあそれもそうか・・」

「せっかくの観光を続けましょう」

・・・・・・・・・・・

「本当、観光ガイドみたいだな」
順路に従い、入口でもらった日本語の案内図を見ながら、宮殿の観覧を終える
私は当麻の左腕にしがみつきながら、話始める
「まあなかなかでしょ」
「まあね・・」

「気のない返事ね」
「いや・・いつもなく美琴が甘えるから・・どきどきしてさ・・」
「そう?じゃもっと甘えようかな・・」

「いやそれは・・」
「いいじゃない減るもんじゃないし」
周りに見せつけるように左腕にしがみつきながら私は話を続ける

「そろそろ食事しようか?」
「ああ・・」
当麻が顔を少し赤らめているのに気がよくし、私は宮殿内のカフェに入る

「じゃ・・予約済みだから行きましょう」

昼食はサンドイッチとコーヒーを注文する。健康な男子高校生には少なすぎる気もするので3人分注文する。
当麻は、私の顔を感心したように見つめる。私は当麻のその視線に気が付き、当麻を
見つめる。

「美琴はこうゆうこと慣れているな」
「え?カフェのこと?」
「いや、暗殺未遂を何食わぬ顔でやり過ごす。何一つ発生しなかったように」
私は吐き捨てるように言う。私を殺そうとするのはいい。だがそのために、多くの
人間を使い捨てにする魂胆が気に食わない。

「馬鹿らしいじゃない、せっかくベルサイユに来たのにこんなことで邪魔されるなんて」
「それに・・私は常に狙われ続ける・・」
「それを恐れることも、避けることもできない」
「だから当麻だけは私を甘えさせて」
「いいわよね・・」

たった一言、でも一番聞きたい一言、私だけのヒーローがその一言を放つ
「ああ、最後まで何があってもな」
「ありがとう」

絵画のような雰囲気のカフェーで2人はお互いの存在を確かめ合う

・・・・・・・・・・

ベルサイユを午後2時に出立し、あらかじめ予約したタクシーでルーブルへ向かう
定番すぎるほど定番だが、実質1日の自由時間では回るところは限られる

その途中、車窓から反AI・学園都市のデモがあったようだが今更なので
気にはしない。とはいえ、改めて学園都市が歓迎されているだけではないことを
実感する。元々感じていたが、結局話しても理解できないどころか、話せば話すほど
理解できない気さえする。だがそれを諦めるわけにはいかない。

取り止めない、考えにふけるうちに約30分でパリ市中心部へ戻り、セーヌ河沿いのルーブルへ到着する。他に行きたいところは数あれど、ここは外せない

「さあついたはね」
「美琴少し疲れたか?」
少し目をつぶり、考え考え事をしていたので当麻に気を使わせてしまったようだ
「え?ああ少し考え事をね、コンコルド広場で処刑されたルイ16世はどんな気分で処刑
されたのかね・・」
「え?」

「もともとルイ16世は、わりに人気のある開明的な君主だったそうよ」
「三部会の再開や、税制制度の改革、少なくともフランスと言う国家に改革が必要な
事は理解していた。だけど・・アイスランドのラキ火山や浅間山の大噴火に始まる天候不順による飢饉とアメリカ独立戦争支援による財政悪化には勝てなかった」
「結局は、コンコルド広場で処刑される」
「政治はすべて結果責任、言い訳は許されない」

「私も、その世界を志せば、言い訳が許されないことになる」


「それは・・」
「昔、小学校の夏休みの自由研究で、「英仏抗争におけるフランス革命の影響」
なんて論文を書いてね・・」
当麻が目をぱちくりさせる。
「小学生が書くような自由研究か・・それ大学の卒論レベルだろう?」

「え?内容は独創性のかけらものないつまんない内容よ、今見る?」
私は、携帯情報端末を操作し、それを当麻に見せる

「読めないな・・まさかフランス語?」
「ええ・・」
「住む世界が違うな・・」

私はクスクス笑う
「今回の出張で私たちの住む世界の雰囲気に早く当麻にも馴染んでもらいたいわ」
「学会、官界、財界、世界の頂点という世界にね」
「そんな時間はかからないでしょ」
「別に中身なんて理解しなくてもいいわ、将来上に立つ上条当麻は専門家になる必要なんかない。」
「専門家を状況に応じて使いこなせばいい、特に私をこき使えばいい」

当麻は、苦笑いをしながら、私の手をとり、ルーブル美術館へ入る
「姫、お手柔らかにお願いしますよ」
「茶化さないの、でも一緒に頑張りましょう」
私はにこやかに笑う、当麻の暖かい手を握る。
その手が力強く、私は立ち向かう勇気を貰う。
「じゃいこう」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

午後5時 ルーブル中庭

俺は、3時間の詳細なガイド付きの観覧を終え、ガラスのピラミッドの前にいる
「いや美術館がこんなに楽しいとは思わなかったな」
「いや引き出しが多い彼女がいると、見る目が変わるよ」

「へえ?でもモナリザとかハムラビ法典とかなんて知っているでしょ」
「え・・まあそうだけど。でもその背景なんて普通は知らないじゃん」
「知識があるとないで見える風景が変わる。美琴がそれを教えてくれた」
「美琴は教え上手だし、これからもいろいろ教えてほしい」
「ええ喜んで」
秋の柔らかな残照が美琴を照らす。その柔らかな残照の中で赤身に染まった美琴が
本当にうれしいそうに頬を赤らめる。

「じゃ・・そろそろホテルへ戻りましょう」
「ああ」

俺は、美琴の手をつなぎチュイルリー公園を歩く、コンコルド広場のアラベスク、エト
ワールの凱旋門、グランド・アルシュへ続くパリの都市軸を西へ向かう。コンコルド広場まで歩き、そこで待たせているタクシーを拾うつもりだ。

秋の暖かい日差しに心まで温かくなる。好きになった女の子と、恋人繋ぎでパリの街を
歩く、まるで・・新婚旅行みたいだ。
「こうやって当麻と一緒に同じ道をパリで歩けるなんて嘘みたいね」
「ああ」

「でも、まだまだ課題は多いわね」
「え?」
「それは・・」
異変はコンコルド広場についたときにおこった。

それまでそこで普通に日曜日の午後の光景が広がっていたはずだった。
観光客や買い物帰りのパリ市民でごったがえす。

が、広場のオベリスクの脇に場違いなガソリン輸送車が突然停車する・
美琴が手を放し突然右手を前に突き出す。

「やっぱりどこへ行っても退屈しないわね」
「へえ?」
「終わったわよ」
俺には何が起きたか理解できない。タンクローリーから髭もじゃの運転手が慌てふためいて運転席から走り出す。
「警察に通報しておきましょう」

美琴は、あらかじめ連絡先に登録していた、フランス内務省の担当部署へ連絡を入れる。
同時に学園都市の統括理事会の事務局へ連絡する。
「予定通り会議をしなきゃないし」
「起爆装置をマイクロ波で破壊したわ」

「まあ穏便にすましましょう。ただのタンクローリーの故障とね」

「最近、宗教原理主義者はね、ソフトターゲットに、ああゆう産業機材でテロするのよ」

「はあ?」
「タンクローリーを火薬で、パリ中心部でドッカンするつもりだったようよ」
「あのサイズのタンクローリーが爆発すればこの広場だけでなく、パリ中心部が
火の海になる。」
「それをたかが私への嫌がらせとあわよくば、上条当麻を暗殺するつもりで」

美琴の顔が怒りに変わる。周りの被害を考えずに嫌がらせの為に無辜の民の命
をごみくずのように扱う奴らに
俺は、瞬間湯沸かし器のように顔を真っ赤にさせた美琴に抱き着き、怒りを受け止める。
俺は慎重に言葉を選び雷神様をなだめる。
「ここで怒り狂って、パリで暴れれば敵の思うつぼだ」
美琴が癖で放出した莫大な紫電は俺の右手に吸収され消える

我に返った美琴は落ち着きを取りもどす。
「御免、少しテンパった」
「当麻の言う通りよ、私はもっと我慢すべき時は我慢しなきゃない」
「ありがとう」

「じゃ帰ろう」
「ああ」
「今日は甘えさせてくれる」
「美琴のすむまでいくらでもな」
「眠らせないわよ」
「お手柔らかにな」
私は当麻の手を繋ぎタクシーに乗る。パリの夜は長くなりそうだ。
私は、不安な気持ちを当麻にぶつけようと算段する。
明日の会議に響かないようにしなくてはそんなことを思った。

続く









タグ:

+ タグ編集
  • タグ:

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleの プライバシーポリシー利用規約 が適用されます。

目安箱バナー