奥行きの操作は真正面から見てはいけません ◆1qmjaShGfE



大男と別れた後、覚悟とルイズの二人は病院を目指して西へと向かった。
そこで二人は放送を聞く事となる。
幸い二人の以前からの知人は誰一人呼ばれる事は無かったが、それでも杉村の名が呼ばれた時は、二人共神妙な表情になった。
既に陽はのぼり、今までとは比べ物にならないほど歩きやすくなった林道を進む二人。
そして林道を抜けると、そこには覚悟にとってもルイズにとっても見た事の無い景色が広がっていた。
「へ~、こんなに綺麗にしてある街があったんだ」
魔法が発達しているとはいえ、科学的な文明レベルが中世と同程度である世界から来たルイズはその小奇麗にまとまった街並みに感心する。
「この街には災害の後さえ見られない、外敵も存在しないのだろう。素晴らしい事だ」
廃墟だらけの世界から来た覚悟もやはり、居住性を優先して作られた建物群を見て感嘆の息を漏らす。
二人は道路を歩きながら興味深げに辺りをきょろきょろと見回す。
「カクゴ! あのケーキの店すっごい綺麗よ!」
食事の後なので、腹が減っているという事でも無いのだろうが、ショーウィンドウに映る色彩豊かなケーキ達に見入っているルイズ。
覚悟は苦笑しながらも足を止め、ルイズがまた歩き始めるまでそれを待っている。
「カクゴ! 見て見て! あのネコの絵可愛い!」
今度はペットショップの入り口に描かれたイラストに夢中になる。
ちょっとした漫画のような描き方がしてあったのが、ルイズの気に入ったらしい。
少し場を弁えない浮かれようであったが、覚悟はそんなルイズを咎める事はしなかった。
何故なら、ルイズが新しい何かを見つけた時、まず覚悟にその目新しさや面白さを伝えてくれていたからだ。
杉村の事で落ち込みがちな自分を盛り上げながらも、覚悟の事も気にかけているのだろう。
そう思うと、彼女の行動があまりに健気で、おいそれと文句なぞ言い出しにくかったのだ。
ニヒルな顔をしたネコのイラストを見ながらおかしそうに笑う彼女を見て、覚悟もやはり同じように笑っていたのだった。
そんなにぎやかな道中、二人はとにかく騒がしい建物の前に立っていた。
「カクゴ、ここ何?」
何処からか陽気な音楽が流れ、ガラス張りの壁の前にある大きな箱には過剰な程に電飾がまぶされている。
覚悟はガラス張りの壁の上に付いている赤い光を見た後、すっとその壁の前に立つ。
するとその壁が開き、中から更に大きな音楽が聞こえてきた。
「凄い! 今どうやったのカクゴ!?」
驚くルイズに、覚悟も感心しながら答えた。
「前に立つと開く仕掛けだ。ここはおそらく噂に聞いたゲームセンターという場所ではないだろうか」
「げーむせんたー?」
首をかしげるルイズに覚悟は真面目ぶったまま言う。
「遊技場の一種だが、実は私も入った事は無い」
特にそれ以上興味も惹かれないので、振り向いて病院を目指そうとする覚悟は、ちょうど真後ろに居た期待に目を輝かせているルイズと目が合ってしまった。
「…………」
ルイズの全身から入りたいオーラが滲み出している。
それでもそれを口にしないのは、覚悟を病院に連れていく事が先決とわかっているからだろう。覚悟自身もそう思っている。
しかし、このきらきらと輝く瞳にはさしもの覚悟も抗しきれなかった。
「もし、良ければ少し中を見ていかないか?」
「いいの!?」
案の定すぐに飛びついてくるルイズ。
「怪我や疲労を癒すのみが休息にあらず。遊戯にて心を癒すもまた休息なり」
そう言って微笑む覚悟に、ルイズは花が開いたように笑う。
「そうよね! 流石に覚悟は良い事言うわ!」
すぐに店内に飛び込んで行くルイズ。
ころころと変わるルイズの表情、それは覚悟の理解を超えていたが、不思議と不快感は無いのだった。

しばらくの間は物珍しそうに店内を歩き回っては動く画面に驚いたり怒ったり笑ったり文句を言ったりしていたのだが、内の一つのゲームにルイズは釘付けとなった。
UFOキャッチャーという正式名称を二人共が知らないのだが、ルイズはその透明なケースの中にあるぬいぐるみがいたく気に入った模様。
ルイズは端を引っ張ってみたり、筐体を揺らしてみたりするのだが、どうにも人形は取れそうにない。
その間に覚悟は店のカウンターの奥から、コインを数十枚取ってくる。
「ルイズさん、これはこのコインを入れてゲームをやって手に入れる物のようだ」
「そうなの? じゃあそれやってみてよ」
覚悟がゲーム機にコインを入れると、ゲーム機から音楽が鳴り響き、ボタンの一つが点滅を繰り返す。
「わっ! わっ! 凄いカクゴ! 当たりみたいよ!」
「ふむ、だが……これからどうやったものか……」
点滅しているボタンをえいっとばかりに押す覚悟。
UFOキャッチャー上部のクレーンが僅かに動いた後、その場に止まり、今度は隣のボタンが点滅し始める。
「次は……これか?」
またもえいっと押すと、クレーンはその場に留まったまま真下へと降りていき、アームを大きく広げる。
「すごいすごいすごい! あの手が人形を取るみたいよ!」
ルイズは興奮の極みだ。そしてかくいう覚悟もクレーンの動きを微動だにせず見守っている。
そして、クレーンは人形に手を伸ばすも、掴み取る事は出来ずにその場に持ち上がり、一度端の穴の上まで来てアームを開いた後、最初の位置へと戻って行った。
ルイズはすぐに端の穴と通じていると思われる筐体外部の穴に手を入れて確認する。
「カクゴ! あの手に人形を掴ませさえすればここから取れるわ!」
覚悟も少し真剣な顔でクレーンを睨みつける。
「なるほど、そういう仕掛けか。よし、なら次こそは……」
「あー! ダメ! 次は私の番なの!」

二十分後、覚悟はその目を鋭く輝かせる。
「ふっ、見切った」
不敵な笑みを浮かべるルイズ。
「ふふん、謎は解けたわね。そう! ボタンをずーっと押し続けていればこの手は奥まで動き続ける!」
「そうして狙いの場所へと手を動かし……」
「あの重心の大きい胴体を掴ませれば私達の勝ちよ!」
次の順番はルイズである。
慎重に狙いを定めて、目指すうさぎの人形へとクレーンを移動させる。
「おおっ、見事な移動だルイズさん!」
「まだまだよ……後は狙い通り手が降りてきてくれれば……」
アームはまっすぐにうさぎの上へと降りていき、僅かに傾いていたうさぎの胴回りを綺麗に掴み取る。
そのまま上へと登っていくアーム、うさぎは掴んだままである。
二人は固唾を飲んでその動きを見守る。
うさぎは、移動するアームの中で少しづつ、少しづつ傾いていく。
知らず拳に力が入る。
後数cmという所、そこでうさぎは完全にバランスを崩す。
『あっ!?』
同時に声をあげる二人、しかし、二人の想いが通じたのか、尚もアームはうさぎを乗せたままである。
そしてゴールである穴の上、静かにその手を開くアーム。
一瞬、人形にくくりつけてあった紐がアームに引っかかるが、すぐにそれも外れ、うさぎの人形は穴へと吸い込まれていった。
「やったーーーーーーーー!!」
喜びの余り覚悟に飛びつくルイズ。
覚悟も難事を成し遂げた達成感からか、自然にルイズを抱きとめていた。
「やったやったカクゴ!」
「ああ、ようやくやり遂げた!」
そこまで言って、二人はお互いの顔がものすごーく近くにある事に気付いた。
「へ? ……きゃっ」
「あ……っと、すまない」
慌てて離れる二人。
お互い赤くなりながらそっぽを向く。
「ル、ルイズさん。人形を取らないのか?」
「そ、そうね。そうするわ」
少しぎくしゃくした動きでうさぎの人形を穴から取り出すルイズ。
それを手にすると、直前の達成感を思い出し、恥ずかしいのも忘れてまた笑みを見せる。
「ほらっ、見てカクゴ。可愛いわよ」
この子の喜怒哀楽の唐突さには本当に驚かされる。
だが、それ以上に驚くのは、いざ戦いになった時のあの勇敢さを備えた上で、なおこの女性らしさ、愛らしさを持つ事である。
自らを殺す事を旨とする零式防衛術を学んだ覚悟とは対照的な存在であった。
逆十時学園に入学してすぐに出会った少女、堀江罪子さん。
入学初日にこの場所へと連れて来られた為、さして面識があるわけではないが、その芯の強さが似ている、と感じていた。
『存外に俺は女性に弱いのやもしれんな』
自嘲気味にそんな事を考えていたのが良くなかったのかもしれない。
「ほら、今度はカクゴの番よ。コツは掴んだんだし、ここのぬいぐるみぜーんぶ取っちゃうんだから」
ルイズはそう言って覚悟の手を引く。
それは少し気を抜いていたせいであろう、今まで意志の力で封じ込めていた痛みに対する反応が、僅かに漏れてしまった。
「痛っ」
それも一瞬の事。注意深く覚悟を見ていなければ気付かない小さい声であったが、ルイズはそれを聞き逃さなかった。
「あっ……」
すぐに覚悟から手を離すと、満開の桜のような笑みに蔭りが挿す。
覚悟は何事も無かったかのようにルイズの反応に不思議そうな顔をしてみせるが、既に遅かった。
「ごめん。カクゴ怪我人なのに……私ばっかりはしゃいじゃって……」

結局その後すぐにゲームセンターを出て病院へと向かった。
ルイズは完全に落ち込んでしまい、覚悟が声をかけても生返事ばかりである。
確かに怪我人を連れて遊戯に興じるなぞ、もっての他であるのだが、覚悟があの時間を楽しんでいたこともまた事実である。
それをどう伝えてもルイズは信じようとはしなかった。
ルイズに合わせて苦しいのに我慢していた、そう言ってきかないのである。
なので、覚悟は方向性を変える事にしてみた。
「ルイズさん」
「……何?」
「俺が怪我を治したら、また二人でゲームセンターに行かないか?」
ルイズは探るように覚悟を見る。
「今度は色々な気兼ね無しに、ゲームを楽しんでみたい。そうは思わないか?」
覚悟の歩み寄りにも、ルイズは遠慮がちである。
「思うけど……でも……」
「なら、そうしよう。次は俺が先に取ってみせるぞ」
散との決着を着けなければならない身、必勝を期せぬ身である以上その戦いの後に何かを約束する事は出来ない。
だが、その前に少しでも彼女が喜ぶ何かをしてあげられるのなら、そうしてあげたいと思ったのだ。
ルイズに覚悟の決意が伝わった訳ではない。
だが、そう言ってくれる覚悟の気持ちが嬉しくて、ルイズは少し無理をしながら笑って答えた。
「そうね、約束よ。貴方の怪我が治ったら、またゲームセンターに行きましょう」
「ああ、約束だ」
こんな他愛も無い話なのに、真剣な顔で頷く覚悟がおかしくてルイズは噴出してしまった。
「破ったら承知しないんだからね」
「戦士に二言は無い」
やっぱり真剣な顔の覚悟が、ルイズには、少しおかしくて、そして少しだけかっこよく見えたのだった。


【G-3 西部 1日目 朝】
【葉隠覚悟@覚悟のススメ】
[状態]:全身に重度の火傷 胴体部分に銃撃による重度のダメージ 全身に打撲(どれも致命傷ではない) 強い決意
[装備]:滝のライダースーツ@仮面ライダーSPIRITS 
[道具]:ハルコンネン(爆裂鉄鋼焼夷弾、残弾5発、劣化ウラン弾、残弾6発)@HELLSING
[思考]
基本:牙無き人の剣となる。 この戦いの首謀者を必ず倒す。
1:病院に向かいルイズの言うとおり治療を受ける。
2:ルイズを守り、スギムラを弔う。
3:いずれ巨漢の男(ラオウ)の力になりたい
4:怪我が治ったらルイズとゲームセンターに行く
[備考]原作一巻第一話、逆十時学園入学初日より参戦

【ルイズ@ゼロの使い魔】
[状態]:右足に銃創 中程度の疲労 両手に軽度の痺れ 強い決意
[装備]:折れた軍刀
[道具]:支給品一式×3 超光戦士シャンゼリオン DVDBOX@ハヤテのごとく?  キュルケの杖
[思考]
基本:スギムラの正義を継ぎ、多くの人を助け首謀者を倒す。
1:病院に向かいカクゴを治療する。
2:スギムラを弔う
3:才人と合流
4:覚悟の怪我が治ったら覚悟とゲームセンターに行く


079:Blue sky 投下順 081:第一印象がいい殺人鬼にロクな奴はいない
079:Blue sky 時系列順 081:第一印象がいい殺人鬼にロクな奴はいない
070:覚悟とルイズと大男 葉隠覚悟 094:仮説
070:覚悟とルイズと大男 ルイズ 094:仮説