気に入らない奴ほど、コンビネーションの相性はいい  ◆WXWUmT8KJE



 薬の匂いが鼻孔を刺激し、重い瞼をゆっくりと開く。
 彼の怜悧な瞳に縁取る長いまつげが震え、周囲を見渡す。面長な輪郭に鼻筋がまっすぐ通っており、彼の美貌をいっそう際立たせた。
 怪我で多少見苦しくなっているとはいえ、バックにバラを散らすという少女漫画特有の表現技法を使いかねないほど、彼の顔は整っていた。
 腰まで届く髪を揺らし、ホーリー部隊の制服で包まれたしなやかな肢体をベッドの中で動かす。
(手当てがされている)
 マーティン=ジグマール、設定年齢19歳、蟹座のB型、美形は身体の状態を確かめた。
 痛みはまだ残っているが、戦闘が行えるほどには回復している。並ではない回復力、伊達にホーリー部隊の隊長をやっていたわけではない。
 ジグマールは周りを見渡してここが病院であることは気づいた。たしか支給された地図にも載っていたはず。
 そこまで考え、ジグマールは一つの結論に辿り着く。
(誰かが私を保護したのか)
 でなければ、ジグマールの意識は永遠に閉じたままだ。もちろん、本当に危険ならギャラン=ドゥが助けてくれるはずだが。
 少なくとも、他人に危害を加えるような精神状態を持たない相手である可能性が高い。
 ならば、自分を助けたこの集団にどれほど『価値』があるのか、ジグマールは見極めるつもりだ。
 この美貌が効果あるのか、自分を助けた人物が戦闘力あるのか、確かめねばならない。
 もし取り入ることができ、セラスのように戦闘能力があれば駒として扱えばいい。
 無力な存在なら価値はない。支給品だけ奪って始末すればいい。
 生き残れるのが一人だけなら、自分とギャラン=ドゥだけが生き残ればいいと考える。
 さっそくジグマールは行動を開始しようと、上半身を起こす。
 タイミングよく病室のドアが開き、ジグマールは入り口へと視線を向ける。
 入ってきたのはメイド服に身を包む、落ち着きのある美人。おそらくは二十歳前後と当たりをつけた。
 余談だが、このときジグマールが年齢について口に出さなかったのは正解である。
 彼女はまだ十代であるが、よくその落ち着きから年上に見らるため、その手の話題には敏感なのだ。
 そして、彼女の傍にいる子供。その子供は眼鏡をかけ、蝶ネクタイを首元に携えて、無邪気な顔で中へ入ってきた。
 その無邪気な顔は演技なのだが、見た目通りの判断したジグマールは気づかない。
「まあ、目を覚ましたんですか?」
「ええ、あなたが応急手当をしてくれたのですか?」
 ジグマールはキラーンと歯を光らせ、さりげなく美形である事を強調する事を忘れない。
「はい。でもこの子も手伝ってくれたので、たいしたことはしていませんよ」
「いいえ、悪人に襲われて瀕死の状態だった私を助けてくれた。感謝してもしきれません。
おっと、自己紹介が遅れました。私はマーティン=ジグマール。19歳、蟹座のB型ッ!!!」
「いえ、年齢や星座や血液型までは聞いていないのですが……」
 少し困った様子を見せて、彼女も名乗った。ジグマールはマリアと名乗った女性と、コナンという子供にあらためて挨拶をする。
 さて、見た目は無力そうな女性と子供だが、先のセラスのような例もある。慎重に言葉を選んで、状況の説明を求めた。

「なるほど、この場にいるのは会社員の吉良さんとメイドさんのマリアさん、コナンくんにルイズさんなのですね?」
 マリアから話を聞き、この集団を構成するメンバーに戦闘力という点でめぼしい者はいない。
 唯一、首輪を回収に向かった覚悟とか言う少年の戦闘能力は魅力的に思えた。
 素手で病院を揺らす力、最初主催者へ刃向かった男。ジグマールは味方につけるなら、文句の無い逸材だと判断する。
「後坂田さんという人もいるよ」
「おっと、失敬。万事屋などといういかがわしそうな職業が私のイメージ的に最悪なのでね」
 ジグマールはいやだいやだと言わんばかりに首を振るう。
 その様子にコナンが苦笑いをしている。
 彼らはまた濃い人間がやってきたものだという表情をしていたが、ジグマールに空気を読む優しさは皆無だった。
「それじゃ、ゆっくり傷を癒してくださいね。私たちは皆さんにあなたが目を覚ました事を伝えに行きますから。
そうそう、お粥を作ったので食べください」
「ありがとうございます」
 マリアはゆっくりの部分を強調してコナンを連れ、病室を出て行く。ジグマールはその様子を確認し、周囲を見渡す。
 デイバックはこの部屋に放置されている。ジグマールは迂闊な奴らだと思いながら、中身を探る。
 殺人光線銃の代わりになる武器が欲しい。ジグマールの手が硬いものを掴み、輝くような笑みを浮かべる。
 バックには薔薇が咲き乱れている気がした。


 病院の受付ホールの端で、吉良は言い争う二人をぼんやりと見ていた。
 特に理由はない。吉良は今後の方針を固めるべく頭を働かせつつ、余計な体力の消耗を抑えているのだ。
「魔法ね。あれか? イリュージョンとか言って大脱出とか」
(それは魔法じゃない、手品だ)
 吉良は心の内で律儀にツッコミながら、不快な感情を押し殺し銀髪の男、坂田銀時に視線を向けていた。
 銀時は桃色というふざけた色の髪を持つ少女、ルイズとやらの魔法に興味があるらしい。
 らしい、というのは、正直銀時の死んだような瞳から、何に興味があるのか分かりづらいからだ。
 そのすぐ隣で、ルイズは発育の遅れた胸を張っている。
「イリュージョンとか脱出なんてチャチなものじゃないわ。
貴族に相応しい、高貴な力なんだから」
「ほぅ~、すげー。アレですか、やっぱり箱に剣が突き刺さっているのに中の人は無事とか」
「それも大脱出じゃないのか?」
「……あんた、わたしを馬鹿にしているでしょ?」
 ルイズは額に血管を浮かせて拳を震わせている。訂正しておこう。銀時は魔法に興味があるんじゃない。
 ただこの少女をからかっているだけだと、吉良は判断した。そしてそれは間違っていなかった。
「いや、そんなことねえよ。俺も魔法使いよ。
この前ジャンプ買って家に帰ったら、同じのがもう一つあったのよ。
同じジャンプを増やしたんだぜ。まじ魔法使いだって。すごくね?」
「いや、それは前に買っていた事を忘れていただけだろ」
 吉良はあまりにアホな言葉に、ついツッコミをしてしまう。
 だが銀時はどこか期待はずれな表情をしているように見えた。
 今にも、「新八がいればもっといいツッコミが来るのに」と言い出しそうな表情をしている。
「ああ――!! もうっ! そんなに疑うなら見せてやるんだからっ!」
 とうとうルイズが切れ、杖を掲げ始めた。
 眼差しは真剣に椅子へと向け、口からは歌うように呪文らしき言葉を紡いでいる。
 吉良が見ている分には、たしかにそれっぽい雰囲気が出ているが、ファンタジーやメルヘンの世界じゃあるまいし魔法など自分には信じられない。
 せいぜい失敗をどう繕うのか、馬鹿にした視線を向ける。
(だが手はいいな。性格や年齢はともかく、手は充分に成熟している。マリアさんのついでにでも手に入れておくか)
「何やってんの? あれか? 椅子をジャンプにでもしてくれるのか?」
「いい加減ジャンプから離れろ」
 もともとツッコミキャラでもないんだがなと吉良が内心ため息を吐く。
 第一ツッコミなど平穏とは遠く、ストレスがたまる。一応ツッコミはストレスを発散するために存在するのだろうが、その前にストレスがたまるのでは吉良にとって意味がない。
 出来ればこの二人は遠くに『逝って』欲しい。そう考える吉良の視線の先で、ルイズの前の椅子が輝き始めた。 
 銀時が身体を乗り出し、その様を見つめている。
 光が室内に満ちたと思った瞬間、周囲が爆風に包まれ、雷が落ちたような轟音が轟いた。

 もくもくと粉塵が広がり、病院の受付ホールを支配する。
 咳きこみながら吉良は立ち上がり、ルイズがいたであろう地点に視線を向ける。その瞳には警戒心が宿っていた。
 吉良はドドドドドと、自分の血液の流れる音が聞こえてくる錯覚を起こす。
(爆破だと!? あの女、もしやスタンド使いか!?
しかも私の『キラークイーン』と同じく、爆破の能力を持つッ……? だとしたら厄介だ。
同じタイプのスタンドでは、私の能力があの小娘に通用するか怪しい。
己の能力を魔法と勘違いしたのか? くだらんが、やりにくい相手だ。くそッ!?)
 吉良は内心毒づきながら、ルイズがいたであろう場所へと目を向ける。いつでも『キラークイーン』を出せるように準備はできている。
 この煙に紛れてルイズを殺し、爆破させる。爆破できないようなら、銀時になすりつけよう。
 焦りからか、吉良はやや短絡的な判断を下し、地面を蹴る。
 煙の先に人影が見えた。吉良は右腕を構え、絶句する。影は、頭部の部分が膨れ上がって、まるで人間大のキノコのように見えたからだ。
「ふざけんな! 爆発が起きてアフロって、どこのドリフですかぁ!?
ルイズ、てめえ責任とれぇぇ!! これじゃ万事屋銀さんじゃなくてドリフの銀さんだよ! 七時だよ全員集合だよ!」
「う、うるさいわね。ちょっと失敗しただけじゃない」
「どこがちょっとじゃぁぁぁ!!」
 煙が晴れた先には、爆発によって銀髪のアフロを持つ銀時がいた。
 着物は破れ、所々焦げており、いまだに煙が立ち昇っている。向かいにいるルイズも、ブラウスが所々破れて、白い肌が見えている。
 顔は煤けているが、桃色の髪はアフロになっていない。もっとも、熱によって所々はねているが。
(坂田が天然パーマだからアフロになったのか?)
 今ルイズを始末する事を諦めた吉良は、マヌケな感想を持つ。
 こちらに駆けてくる足音が聞こえ、吉良はまたもため息を吐く。
「……また、マリアさんの説教がくるな」
 どこか観念したような声色で呟いた。


 マリアは目の前で正座している三人を見て、こめかみをひくつかせる。
 爆発音が轟き、何か危険なことが起きたのではないかと心配になって駆けつければ、アフロになった銀時とルイズが口論している場面だった。
 吉良を問い詰め、魔法だのなんだのは無視し、マリアはルイズたちが火遊びをしたのだと判断した。止めなかった吉良も同罪である。
「いいですか? 今私たちはとんでもないことに巻き込まれているんですよ。
なのに火遊びなんて……しかもその事を真剣に考えているはずのルイズさんが参加するなんて、何を考えているんですか?」
「だって仕方ないじゃない。こいつが最初に信じないんだもん」
「うるせぇー。お前に強制アフロになった男の気持ちが分かるか?
ただでさえ天然パーマなんだから雨の日はきついのに」
「こら! 人の話はちゃんと聞きなさい!
それに、どっちが先でも関係ないです。喧嘩両成敗」
 それでも二人は睨み合いをやめない。マリアはため息を吐いて、こめかみを押さえる。
 吉良はまたも上の空だし、銀時とルイズは言い争いをやめない。しかも、口論の焦点がずれている気がする。
 まだ子供のコナンが一番マシだと思った。
(それにしても、ルイズさんとナギって、少し似ているわ。
頑固で素直じゃないところが特に。それになんだか声が……ね)
 マリアの頬が少し緩み、ハンカチを取り出してルイズの顔を拭く。
「女の子が顔を汚しちゃ駄目でしょう」
「…………ありがとう」
 多少不機嫌な顔で礼を言う彼女に、ますますナギを重ねる。
 その場がほのかに暖かい空気に包まれた。

 だが、その空気も蹴破られたドアと共に吹き飛んだ。
 現れたのは、マリアが散と共に保護し、吉良が担いだ美形の青年、ジグマールだ。
「ジグマールさん、休んでいてくださいといったのに。もう」
「すいませんね。ですが、急用ができてしまいまして……」
 ジグマールは自信に満ちた声で言い放ち、バズーカを構えた。
 マリアは呆気にとられ目を見開く。
「私は覚悟くんを部下にするために向かうとしよう。君たち……無力な存在に興味はない。
今ここで果てたまえ」
 引き金がひかれ、弾が自分へと向かう。急なことで身体が反応しない。他の皆も似たような状態だ。
 もう目の前にバズーカの弾は迫っていた。
 だが、銀時が風のような速さでマリアを背後で引き、一言告げる。
「武装錬金……」
 銀時は腕を逆袈裟に振る。ソードサムライXが金属のぶつかる甲高い音を発生させる。
 そのままバズーカの弾は病院の壁にぶつかり、轟音を立てて爆発した。
 パラパラと細かい埃が舞い落ちる中、マリアはみんなの怪我がないことを確認してホッとする。
「やっぱ恥ずかしいわ、掛け声なんて」
 銀のアフロを揺らし、銀時がジグマールと対峙する。
 マリアはその様子をただ見ているだけしか出来なかった。


「ほう、なかなか身体の切れがいいな。命乞いするなら情けをかけて仲間にしてやらんこともないぞ?」
「俺に情けをかけるぐらいなら、ご飯にかけとけ」
「この、おバカ様がぁッ!!」
 ジグマールから衝撃波が放たれ、銀時は跳躍して避ける。
 そのままジグマールに向かい、ソードサムライXを振り下ろす。
 だが、ソードサムライXは空を切り、ジグマールは姿を消していく。
「ふふふ……」
「てめえ……今何をした?」
「君みたいないかがわしい男は私の仲間に相応しくない。
君たちもそう思わないか? 少なくとも……私はそう思う」
 再びジグマールが姿を消し、バズーカの引き金が引かれる。
 銀時はとっさに反応し、弾を真っ二つに切り裂く。二つに分かれた弾は後ろで爆発する。
 銀時は後方に爆風を感じながらジグマールを睨みつけた。
「ギントキ、わたしも援護を……」
「いらねーよ。てめえと似た声のチャイナ娘ならともかく、お前じゃあいつにどうしようもねえ。
黙って銀さんの活躍を見ていなさい」
 銀時の目に悔しげに俯くルイズの姿が入る。にやりと笑って背筋を伸ばす。
 やはり目というのはいざという時だけ輝かせるに限る。銀時はジグマールを見据える。
「なら、彼女らにこちらの弾があたったらどうなるか、確かめてみるか?」
「その前にてめえをぶん殴ってやる」
「無理だって。なぜなら私の『人間ワープ』は全宇宙を支配できる能力なのだからな!!」
 銀時は雄たけびを上げて地面を蹴る。袈裟懸けにソードサムライXを凪ぎ、ジグマールを斜めに切り裂こうとする。
 だが、切り裂いたのは受付ホールの椅子のみ。後ろを振り返りマリアたちの様子を伺うが、変化はない。
 そう思った瞬間、
「ゆるゆるだッ!」
 ジグマールの声が聞こえ、銀時の身体に重い衝撃が走り、宙に舞う。
 バズーカの砲身はルイズを狙っている。
「くそッ!」
 銀時がソードサムライXを投げる。だが、そこにジグマールの姿は無い。
「とおもったらこっち。バズーカ砲!!」
 弾がルイズへと発射される。そこへ、庇うようにマリアが前に出た。
 間に合わないことに銀時は歯を食いしばる。
(俺は間に合わないのかッ!)
 銀時は攘夷戦争で多くの仲間を失った事を思い出し、悔しさで身体を震わせた。


「坂田が相手をしている間に避難しますよ。マリアさん」
「ですが吉良さん、ここに坂田さんを一人置いて逃げるなんて……」
「マリアお姉ちゃん、仕方ないよ。この場で戦えるのは坂田さんだけみたいだし……」
 吉良の意見に悔しげな表情を浮かべるコナンが同意する。
 『キラークイーン』ならジグマール相手に負ける気はしないが、スタンド能力者かも知れないルイズの前で使いたくなかった。
 誰にも見えないということが、スタンド能力の優れているところの一つである。
 自分の力は隠しておきたい。
「あんたたちは逃げなさいよ。わたしはギントキを援護してくる」
「無理だよ、ルイズお姉ちゃん」
「わたしは、もうスギムラの時と同じ事を起こさせる気はないんだから!」
 叫ぶルイズを吉良は内心冷ややかに見て、ため息を吐く。
 正直ルイズや銀時が死ぬのは構わない。むしろストレスをもたらす存在が消えるので、願ったり叶ったりだ。
 それに、スタンド使いかもしれないルイズが消えるのは都合がいい。表向き引き止めるふりをして煽ろうかと準備をした時、銀時が吹き飛んだ。
「ゆるゆるだッ!」
 バズーカの砲身はルイズを狙っている。吉良はこれでは自分たちも巻き込まれかねないと、さり気なくマリアと自分を弾の軌道から外す。
「くそッ!」
 銀時の投げたソードサムライXが虚しく空を切り、ジグマールが何度目かのワープを成功させる。
 吉良はその姿を認め、自分とマリアに影響が少ない角度だと判断する。
「と、おもったらこっち。バズーカ砲!!」
 弾が発射された瞬間、マリアが反応してルイズの前に回りこむ。
 勇敢だが、状況を考えてほしいと吉良は舌打ちをする。
 迫る弾が、まるで時間が遅くなったように感じるほど、ゆっくりと迫ってくる錯覚を起こす。
(あれが当たればマリアさんの手も吹き飛ぶ……。あの芸術的な、神が作り出した手がッ!?
くそッ! マリアさんは性格や見た目だけでなく、美しい手の持ち主なのだ。美形め、余計な事をッ!
許しはしない……あの手を失うなど、許しはしない! あの手は私のものだ。私の手なのだッ!)
 そこまで思考していると、吉良が気がついた時にはマリアの前に回りこんでいた。
 目の前の弾は数瞬もすれば直撃する位置まで迫っている。
 美形と自分を遮るのは目の前の椅子。ルイズと自分を遮るのはマリア。吉良はその二つの事実をコンマ一秒にも満たない時間で確認する。
(この位置なら……ルイズにも美形にも……つまり『スタンド使いと思わしき人間』には陰になって、数瞬だが『キラークイーン』を使う機会が出来る。
一瞬でいい、その時に『キラークイーン』の腕であの弾を弾く!!)
 眼前に迫る弾を、吉良は脅威的な集中力で見つめる。しくじることは許されない。
 機会は一瞬でやってくる。

(いまだッ! 『キラークイーン』!!)

 胸元まで迫った弾を、吉良が顕在させたもう一つの腕が弾き、右後方に逸らす。
 あまり派手に吹き飛ばすと疑惑の目が自分に向けられると判断してのことだ。この程度なら外れただけだと主張できる。
 吉良は爆風を身体に感じ、上手くいった事を確認する。マリアに振り向くと、彼女は驚いた表情でこちらを見ていた。
「吉良さん……今の腕は何ですか?」
「……ッ!! マリアさん、あなた見えていたのですか……?」
「僕にも見えたよ。吉良さんからもう一本腕が生えたのが……」
 コナンの言葉に、吉良は更に驚愕する。マリアにコナン、二人は『スタンド使い』とは思えない。
 そうであるなら、今までの行動が不可解すぎる。
(いったいどういうことだ?)
 不可解だが、目撃されたのはしょうがない。あのジグマールを撃退するため身体を向ける。
 奴もまた自分のストレスの原因の一つ。消すことには躊躇しない。
「いったい何をしたのか、私にも見せてくれッ!」
 ジグマールから何度目か分からない引き金が引かれる。吉良は迷わずに叫んだ。
「『キラークイーン』!!」
 告げると同時に、力のビジョンが姿を見せる。二メートルほどもある身長に、桃色のたくましい体躯。
 ドクロと猫を合わせたような顔に、ドクロのアクセサリーを持つ、『キラークイーン』が高速で迫る弾を弾き、右上の天井が爆破される。
 マリアが気になって振り向くと彼女は無事だ。吉良は思わず安堵のため息を吐いた。
 その瞬間、吉良は疑問を持つ。
(何だ…………? この吉良吉影……ひょっとして今この女を心配したのか?
彼女に弾が当たらなかったことに……心からホッとしたのか……?
何だ……この気持ちは?)
「ほう、君もアルター使いだったのかね? 早く言ってくれれば仲間になる機会もあったのに」
 吉良は疑問をしまいこんで目の前の敵を睨みつける。どうやら敵は『スタンド』のことを『アルター』と呼んでいるらしい。
 勝手な命名は気分がよくないが、実は吉良もこの能力が『スタンド』と呼ばれているのを知ったのは最近なので、放っておく。
(私が他人の事を心配するなどと……!
いや、違う!! 私はあの手を守ったのだ。いずれ手に入れる、私の手を!!
この女が無事でホッとしたのはそのことだけのせいだ。ただそれだけ……)
「そのアルター、どれほどの力があるのか見せてもらおう!!」
 ジグマールが姿をかき消し、バズーカの弾が迫る。
 吉良はその弾をただ冷ややかに見つめるのみだ。思えばこの男のせいで手の内を皆に見せざるを得なくなった。
 ここまで運んできた恩も忘れて。吉良は苛立ちを『キラークイーン』の拳に込める。
「しばッ!!」
 吉良は弾を弾き飛ばし、厳しい視線で敵を射抜く。ジグマールは余裕の表情を崩さない。
 吉良は一瞬で間合いを詰め、『キラークイーン』の拳を打ち込む。しかし、当たらない。
「無理だって!」
「くッ!」
 『キラークイーン』の両腕を交差させ、ジグマールの衝撃波を防ぐ。
 その様子をジグマールは見下し、嘲笑している。
「なかなかの力だ。だが、君の『アルター』は近距離で力を発揮するタイプ。
そしてスピードは殴り合いならともかく、接近するほどの移動速度を持たない。
劉鳳の『絶影』のようにはいかんな」
「たしかに私『一人』では追いつけないようだな」
「ふん、観念を……」
 ジグマールは何かに気づき、姿を消す。一瞬遅れて、銀時のソードサムライXが横一文字に薙ぎ払われた。
「やべ、外した」
「もっとよく狙え。せっかく捕まえるチャンスを……」
「まあ、過ぎたことはしょうがねぇ。次ぎ、頼むぜ」
「…………ふん」
 銀時の瞳から、吉良は何を求めているのか察した。たしかに、その手しかない。
 無駄に意思が通じてしまったのに腹が立つが、現状ではしょうがない。再度人間ワープを果たしたジグマールが現れる。
「くらえ! 最後の一発だ!!」
「しばッ!」
 ジグマールに向けて殴り返す。しかし、余裕でジグマールは距離をとってワープを終える。
「無駄だといって……」
「ワープをし『終えたな』」
「なにッ!?」
「おりゃぁ!!」
 銀時がアフロを揺らして弾の前に躍り出る。渾身の力を込めてソードサムライXを振るうのが見える。
 吉良の思ったとおりだ。銀時はこの機会を待っていたのだ。
 病院に甲高い音が反響し、弾がジグマールへと迫る。ジグマールがワープの準備をしているが、間に合わないだろう。
「ぐわぁぁ!」
 ジグマールが爆発に巻き込まれ、ぼろきれのように吹き飛んだ。銀時と目が合うと、笑みを返される。
 吉良はただため息を吐いた。


「さあ、美形。いろいろ話してもらうぞ」
 迫る吉良に、ジグマールは戦慄する。ただの会社員だと聞いていたのに、いまは何年も人を殺してきたような、冷酷な瞳を宿している。
 このままでは殺される。ジグマールは恐怖を抱えたまま、周囲を探る。
「ギントキ、ヨシカゲ、やったのね!」
 だが、ジグマールはニヤリとほくそ笑む。獲物が自ら飛び込んできたのだ。
(神はまだ私を見捨てていなかったようだな!)
 最後の力で身体を起こし、ルイズという少女の手首を捻り上げて拘束する。
「動くなッ! 動けばこの女を鎌で殺すぞ!」
「そんな……ジグマールさん、ルイズさんを離してください!?」
 マリアの言葉にジグマールは気をよくする。このまま逃げ切れる。
 そう確信したが、吉良と銀時は表情を変えなかった。
「やれるならやってみろっての」
「まったくだ」
「何言っているんだ!? こういう時は犯人を刺激するような事を言っちゃ……」
 吉良と銀時が言葉を交わし、コナンが非難する。しかし、二人の目はルイズに向いている。
「「やれ」」
「うっさいわね! 分かっているわよ!」
 そのままルイズがよく分からない言葉を並べ始める。同時に、彼女の身体が光る。
 ヤバイと思った時、ルイズを中心に爆発が起こる。もう一度ジグマールは爆風に吹き飛ばされ、壁に叩きつけられた。
 ギシギシと骨が鳴るのが聞こえ、ジグマールは倒れ伏す。
「な……なんでこんなことに……」
「偉い人が言っていたぜ。何をやったってしくじるもんなのさ。ゲス野郎はなってな」
 にひひといやらしい笑みを浮かべた銀時が、アフロを揺らして告げる。
 そういえば、自分もアフロになっているなと、ジグマールは今更気づいた。


 アフロになったジグマールを、吉良たちは取り囲む。無論、吉良はこの男を生かしておくつもりはない。
 『キラークイーン』の拳をジグマールの腹に狙いを定める。ひっ、という短い呟きがもれているが、構わない。
 しかし、その吉良を止める者がいた。
「吉良さん、ここは抑えてくれ」
「退きたまえ、コナンくん。彼は私たちを殺しに来た。
それはつまり、殺される『覚悟』をもって襲ってきたということだ。なら、彼を殺さねばまた同じ事をするだろう。
そして、次は全員を守れる保証はない。私は皆を守るため、彼を殺す『覚悟』はできている!!」
 もっとも、吉良は自分を守るためだけのつもりだ。だが、表向きにはこの理由が妥当だろう。
 そう思って、話は終わりだとコナンをどかそうとした。しかし、コナンは微動だにしない。
「……駄目だろうが」
「何?」
「覚悟って言葉は身を奮い立たせる言葉なんだよ。
人を殺す理由なんかに使ってんじゃねーよ!」
 コナンの説教に、思わずガキがッ!と、吐き捨てたくなった。
 しかし、そこは大勢の目の前。辛うじて怒りを飲み込む。
 銀時がジグマールに近付く。彼からは自分に近い、血の匂いを感じる。
 敵に回すと厄介だが、この状況なら自分と同じ意見のはずだ。吉良は銀時の発言を待った。
「まあ、しゃあねえって。吉良さんよ、ひとまずこいつを拘束するってことで、勘弁してくれんか?」
「何を馬鹿な事を言っている?」
「俺ァ派手な喧嘩は好きだけど、人殺しだの陰気臭いのは嫌いなの。
今回はこれで手打ちってことでよくね?」
 銀時の言葉にマリアとルイズが同意するような視線を向けてくる。
 吉良としてはストレスを増やすことに同意は出来ない。どうにか上手く言いくるめないかと思考を張り巡らせる。
「お待ちなさぁ~い!!」
「「何ッ!」」
 銀時と吉良が後ろに振り向き、声の主を確認する。
 光の粒子が渦を巻き、人の形を構成していく。
「「キサマ(てめえ)は!!」」
「……俺はマーティン=ジグマールのアルター……」
 長躯に鎧を着込んだようなたくましい身体、髪のような二つの房を持つ、古代ローマの戦士を思わせる存在が、タバコの煙を吹かせていた。
「ギャラン=ドゥ!!」
 ヤマネェェンという不思議な音と共に現れた『アルター』は、吉良の記憶の『スタープラチナ』と少し似ていると思った。
 だが、問題は敵が増えてしまったということだ。
 『キラークイーン』を構えようとする吉良の横を、どこにそんな元気があったのかジグマールがすり抜けて、ギャラン=ドゥに駆け寄る。
「助けてギャラン=ドゥ。あいつらが僕をイジめるよ」
「そうかい……悲しいな。マーティン=ジグマールゥ。つ――――かァ……」
 スゥーッとギャラン=ドゥは息を吸い込み、
「アルターに頼るな!!」
「ひげえええっ!」
 ジグマールの顎にアッパーを打つ。ジグマールは宙を舞い、ギャラン=ドゥの足元に倒れる。
 ギャラン=ドゥはジグマールの頭を踏みにじる。
「使えねえご主人様だな!? あ~~~?」
「ぐえぇぇ、ごめんよぅ。ギャラン=ドゥ……」
 呻くジグマールに一通り満足したのか、荷物のように担ぐ。
 ギャラン=ドゥは背中を向けた。
「逃げられるとでも思っているのか?」
「見逃してやっているんだ。いい子だから、見ているだけにしておきな」
 そういい、ギャラン=ドゥは跳躍して壁を破壊し、姿を消していく。
 悔しいが、今の吉良では対抗できるか怪しい。せめて怪我を癒すべきだ。だが、納得はいかない。
 吉良は忌々しげに見つめ、ストレスの原因が増える一方だと頭を抱えた。

 ジグマールが去り、話は吉良の『キラークイーン』に移る。
 幾らか覚悟していたが、隠していたい事実を話さねばならないのは苦痛だった。
 何より『キラークイーン』がスタンド能力者以外に見えているのが納得いかない。この場がそういう特殊な場所ということなら、一度主催者に文句を言わねばならない。
「……つまり吉良さんは子供のころから『キラークイーン』を呼び出す力があったということですか?」
「ああ。今まで黙っていたのはすまなかった。だが、この能力を明かした者は幼いころから離れることが多くてね。
皆にも言い出しにくかったのだ」
 もちろん、これは吉良の捏造である。常に三位である事を目指し、目立たぬように生きた吉良ではそこまで深く人と関わることはない。
 それに、吉良は先ほどの戦闘で使わなかった能力。第一の爆弾は既に『作動』している。
「へえー、メイジの使い魔みたいな存在ね」
「常に私の傍にいる存在だからね。便利なものさ」
 そういい、吉良はルイズの首を見つめた。『キラークイーン』の右手はルイズの首輪に触れている。
 あとはこの手でスイッチを押すだけだ。だが、今は押さない。
(押すのは覚悟とルイズが再会する時だ。その時二人は再会を喜び、お互い近付くはずだ。
そう、爆破で二人まとめて吹き飛ばせるほどに。そのあと坂田を始末して、マリアさんの手を手に入れよう。
コナンくんを殺すのは最後だ。いざという時、『バイツァ・ダスト』を使えないという事態は困るからな)
 そう考えると、吉良のストレスは少し減ったような気がした。
 唇を持ち上げるか否かの微妙な笑みを浮かべる。
「なあ、マリアさん。治療の時はやっぱりナース服じゃねぇ?
ところで俺いつまでアフロなんだろうな。なあ、吉良さんよ」
 内心知るか!と、吐き捨てて、吉良は何度目か分からないため息を吐いた。
 出来るだけ早く坂田は始末しようと考え、忌々しげに青い空が広がる外を窓から見つめた。

【F-4 病院1F 1日目 昼】
【江戸川コナン@名探偵コナン】
[状態]:健康
[装備]:ヌンチャク@北斗の拳
[道具]:基本支給品、スーパーエイジャ@ジョジョの奇妙な冒険、鷲巣麻雀セット@アカギ
[思考] 基本:仲間を集める。
1:覚悟たちが首輪を持ち帰るまで待つ。
2:灰原哀、服部平次、新八の知り合い(神楽、桂小太郎)と合流する。
3:ゲームからの脱出
4:ジグマールを警戒
[備考1]:メガネ、蝶ネクタイ、シューズは全て何の効力もない普通のグッズを装備しています。
[備考2]:自分達の世界以外の人間が連れてこられていると薄々感づきました。
     これから、証拠を集めて、この仮説を確認しようとしています。

【マリア@ハヤテのごとく!】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:支給品一式、犯人追跡メガネ&発信器×3@名探偵コナン
[思考]基本:殺し合いはしない
1:覚悟たちが首輪を持ち帰るまで待つ。
2:ナギ、ハヤテ、ヒナギクの捜索
3:葉隠覚悟が戻ってきたら、もう少し話をする。
4:範馬勇次郎と金髪の男(ラオウ)を警戒
5:散の事を女装した男だと思っています。
5:ジグマールを警戒
[備考]
※吉良に全く警戒心を抱いてない。依然危機の中。

【坂田銀時@銀魂】
[状態]:全身に中程度の負傷。中程度の疲労。アフロ状態。
[装備]:蝶ネクタイ型変声機@名探偵コナン
[道具]:支給品一式 ソードサムライX@武装錬金(攻撃に使う気はない)
   あるるかん(紙状態)@からくりサーカス ハーミット・パープル(隠者の紫)のDISC(紙状態)@ジョジョの奇妙な冒険
[思考] 基本:このゲームをどうにかする
1:覚悟たちが首輪を持ち帰るまで待つ。
2:神楽を捜す。ついでに桂も
3:ラオウには会いたくない
4:ジグマールを警戒
{備考}
零のことはよく分かっていません
あるるかんとハーミット・パープルのDISCについては説明書をほとんど読んでいません。また読む気もありません。
アフロ状態が次の話まで続くかどうかは他の書き手に任せます。

※ソードサムライX
エネルギーを使う攻撃を吸収し、攻撃に転用します
制限、効果の対象となる攻撃は任せますが、少なくとも「魔法」には効果アリです

【吉良吉影@ジョジョの奇妙な冒険】
[状態]:全身に中程度の負傷。中程度の疲労。下半身が健康すぎる
    『キラークイーン』第一の爆弾起動(ルイズの首輪に)。
[装備]:なし
[道具]:支給品一式
[思考]
基本:普段どおり平穏に過ごす。
1:覚悟とルイズが近寄った瞬間、爆破する。
2:その後、マリアの手を手に入れる。コナンは『パンツァ・ダスト』の為に最後。坂田は優先的に殺す。
3:マーティン=ジグマールを殺す。
4:自身を追うもの、狙うもの、探るものなど自身の『平穏な生活』の妨げになると判断した者は容赦なく『始末』する。
5:できる限り力無き一般人を演じる。
6:自分が殺すまでの間、マリアを傷つけるかもしれない輩も皆殺し。
7:もし脱出できるのであればしたい。マリアの手を手に入れてから。
[備考]
※『バイツァ・ダスト』拾得直後からの参戦です。
※承太郎が殺し合いに参加していることに気づいていません。
※『バイツァ・ダスト』が使用不可能であることに気づいていません。
※覚悟、ルイズ、ジグマールをスタンド使いと認識しています。(吉良はスタンド以外に超人的破壊力を出す方法を知りません)

【ルイズ@ゼロの使い魔】
[状態]:右足に銃創 中程度の疲労 両手に軽度の痺れ 強い決意
    首輪が『キラークイーン』により爆弾にされています。
[装備]:折れた軍刀
[道具]:支給品一式×2 超光戦士シャンゼリオン DVDBOX@ハヤテのごとく?  キュルケの杖
[思考]
基本:スギムラの正義を継ぎ、多くの人を助け首謀者を倒す。
1:覚悟たちが首輪を持ち帰るまで待つ。
2:覚悟が戻ってきたら、スギムラを弔う
3:才人と合流
4:覚悟の怪我が治ったら覚悟とゲームセンターに行く

【F-5 大通り 1日目 昼】
【マーティン・ジグマール@スクライド】
[状態]:全身に負傷大。疲労大。美形状態。ギャラン=ドゥに担がれている状態。アフロ状態。
[装備]:沖田のバズーカ@銀魂(弾切れ) 本部の鎖鎌@グラップラー刃牙 アラミド繊維内蔵ライター@グラップラー刃牙(未開封)
    法儀礼済みボールベアリングのクレイモア地雷(リモコン付き)@HELLSING(未開封)
[道具]:支給品一式
[思考・状況]
基本:生き延びて全宇宙の支配者になる。
1:ギャラン=ドゥに謝る
2:誰かに匿ってもらう(美貌が使えそうなら使う)
[備考]
アフロ状態が次の話まで続くかどうかは他の書き手に任せます。
※人間ワープにけっこうな制限(1~2mほどしか動けない)が掛かっています。
連続ワープは可能ですが、疲労はどんどんと累乗されていきます。
(例、二連続ワープをすれば四回分の疲労、参連続は九回分の疲労)
※ギャラン=ドゥは制限によりジグマールと命運を共にしています。
 そのため、ジグマールを生かしています。


099:明日を生きる君に 投下順 101:極めて近く、限りなく遠い『運命』へ
110:バトルロワイヤルの火薬庫 時系列順 104:以前の彼女
094:仮説 愚地独歩 130:絡み合う思惑、散る命
094:仮説 シェリス・アジャーニ 130:絡み合う思惑、散る命
094:仮説 平賀才人 130:絡み合う思惑、散る命
094:仮説 葉隠散 119:吉良吉影の発見
094:仮説 村雨良 130:絡み合う思惑、散る命
094:仮説 村雨良 109:ギャラン=ドゥ ジグマールのバトルロワイアル