信じられない話  ◆DO.TxVZRzg



「だから、私はその人に並行世界の話をするのって危険だと思うんだよなぁ……
きっと殺人者になっちゃうよ」

 泉こなたは才賀勝に、信じられない事を話しかけてきた。
 エレオノール、つまりしろがねが本当の危険人物になる可能性を持っていると。
 その理由は、勝にとって気付かない盲点とも言える理由だった。

    第114話  信じられない話

 今喫茶店には三人の少年少女がいる。
 まるで、コンサートの終わった会場のように、喫茶店には静けさだけが流れていた。
 そんな中、一人の少年が神妙な面持ちで、2人の人間に話しかけようとしている。

(本当に、どうかしてる。僕の頭はおかしくなっちゃった……)

 その少年才賀勝は、明らかな緊張を感じていた。
 これから彼は初対面の2人に異常な話をしなければならない。

(僕は今、鳴海兄ちゃんとしろがね、僕の三人が、それぞれ別の時代から連れてこられたと思っている。
こんな事を話したら、きっと笑われるだろうな。時間跳躍なんて、SFの世界でしか見たことがない。
机の中から狸のロボットが出てきて、こんにちわなんて物語としては優れてるけど現実で言ったら、ただの『おかしい人』だ。
けれど、この考えこそが僕たちの現状を説明する唯一の解なんだ……だけど……)

 目の前にいる男女を、再び見つめてみる。
 男の方は黒ずくめの全身タイツに身を包み、顔には蝶の仮面という異様な格好。
 本人の発言もあり、本当に人間ではないと思えてくる。
 恐らく並行世界が存在するのなら、彼はそこから来た人間だろう。その世界では正装なのだろうか。
 そしてもう一人、女の子。こちらは勝から見て、ごく普通の外見をしている。
 年のころは掴みにくいが、喫茶店に彼女のものと思われるランドセルがあったことから、自分と同じ小学生だろう。
 この子は勝のことを君付けで呼んで、ちょっとお姉さんぶっているみたいだ。
 外見から判断すれば、彼らは特におかしな思考をするタイプには思えない。
 いや、パピヨンは勝の常識で言えばおかしいのだが、人間ではないと言っていたので、
他の人間と同じように外見からでは判断できないと思っただけなのだが。
 ともかくも、彼はが異常思考を受け入れるという証拠はどこにもない。
 そんな彼らに、この話をどうやって説明したらいいものか……

 勝は額に汗を感じつつ、それでも勇気を振り絞って口を開く。

「これから、ちょっとおかしな話をするけど……とても、重要な話だから聞いて欲しいんです」
「ひょっとして、私たちが違う世界から連れてこられたとか、そんな話?」
「そ、それだよ。って、どうしてそれを知ってるの……。い、異世界なんだよ、SFみたいな話なのに」
「いやぁ、想像力には自信があるもんで」
 嘘だろ。
 なんで普通の小学生がそんな事当たり前みたいに気付いてるんだ。
 いや、小学生だからか。疑う事さえ知らない年齢だというのか。

「で、でもいくらなんでも信じられないって思わない? だって……だってさ」
「それだけじゃなくて、同じ世界の人も違う時期から連れて来られてるみたいなんだよ。ロマンチックだよねぇ」
「ロマンチックって……そんな問題じゃないでしょ! 僕たちの身の回りで絶対に有り得ないことが起きてるってのに」

 甘いなぁ、といった表情を女の子泉こなたは浮かべている。

「勝くん、世の中には科学では説明のつかない事が実際にあるんだよ」
「それにしたって限度があるよ。大体、異世界からきたって事よりも、もっと考えられることだってあるでしょ」

 あべこべである。
 先ほどまで、勝は時間跳躍説や並行世界間移動説を唱えようと思っていたのに、驚きすぎて今は逆の事を言っている。

「もっと考えられる事とは、例えば記憶操作や嘘、演技といった可能性か? それなら既に考えてある。
無論、今の段階ではどの可能性も否定できないと言った程度だがな」

 蝶仮面の男パピヨンは冷静に勝の発言を補う。
 どうやら、この2人はきわめて常識的に物事を考え、それでもなお極めて非常識な結論を信じているようだ。

「そ、そんな……だからって……」
「貴様は妙な話をしてくれるんじゃなかったのか。今さら、俺たちにとってこの程度の事のどこがおかしいと言うんだ。
貴様も見ただろ、この世界の異常さを。開始から10時間以上、誰も入ってこない街。
体積を無視して支給品を押し込める紙。そして、得体の知れないスタンド使い。
お前はこれだけ並べられて、まだ常識的思考に縛り付けられているのか?」

 そんな事はない。自分だって同じことを考えていたから、それは違う。
 少々驚いただけだ。

「ご、ごめん……少し驚かされちゃって。こんな事考える人、僕しかいないって思ってた」
「この状況では全く不思議な発想じゃない。遅かれ早かれ、誰もが気付く事だ」
「ん、パピヨンの言うとおりだね」
「でだ、お前はこの話がしたかったのか? あのふざけた道化女の話をするんじゃなかったのか?」

 ふざけた道化女……
 確かにあの態度では、そう思われても仕方がない。
 しかも、その状況を作り出したのは、勝が吐いた苦し紛れの嘘なのだ。
 そもそも、自分が最初から真実に気付いていれば、あんな嘘を吐く必要はなかった。
 つくづく自分はおろかな人間だと再認識させられた。

「どうした? 俺のほうからは聞きたいことが山ほどあるんだぞ」
「い、今からするよ」

 勝は大きく深呼吸して、加藤鳴海としろがねと出会った日のことを話し始めた。

「僕の名前はもう言ったけど才賀勝。そして、さっきの道化師女性は才賀エレオノール、僕は彼女の事をしろがねって呼んでました。
僕としろがね、そして加藤鳴海兄ちゃんの三人は一軒のサーカスで知り合いました」
「あの女が、サーカスで働いていたというわけか。そして、お前は観客、そんなところか?」
「そうじゃありません。僕はあの時、180億円の相続金をもらったばかりで、悪い人に狙われてたんです。
しろがねと兄ちゃんは、その人たちから僕を守ってくれました。出会った日も、僕に襲い掛かってくる人形を撃退してくれたんです」
「凄いねぇ……漫画のネタに使えそう」

 こなたちゃんの言うとおりだ。
 僕の歩んできた人生は漫画や小説にそのままなっても、全く違和感がない。

「その人形とやらは、どんな奴だ?」
「赤木さんが乗っていた人形がその一つです。グリモルディって言って僕を襲ってきた人たちが使った物の一つです」
「なるほど、赤木はその人形を支給されたというわけか」

 勝はその後、ゆっくり落ち着きながらしろがねや鳴海と自分の関係について語っていった。
 しろがねが自分を守ってくれる理由。
 鳴海が患ったゾナハ病という名の人災。
 全てを裏で操る黒幕フェイスレスの策謀。
 それだけじゃない、仲町サーカス団の友達の話だって全部話した。

「ふむ。一応、お前の素性については分かったわけか。だが、解せんな。
とすると、あの女エレオノールと『今の』お前の関係はどうなっている?」

 そう、それが最も重要な話だ。
 今の彼女と自分の関係こそ、これからこの場所で生き延びるために解決必須な問題である。

「しろがね、つまりエレオノールは僕に出会う前の時から、この世界に連れてこられたんです。
だから僕の事をほとんど知らないままで……」
「ほとんど? 全くじゃないの」
「うん、しろがねは元々僕を守るようにおじいさん……いや、フェイスレスに命令されてたんだ。
だから、彼女は僕の特徴を知ってたんだよ」

 より正確に言えば、才賀正二の葬式の時に、2人はすれ違っている。
 そのため、エレオノールは勝の特徴を知っているだけではなく、実際に見ているのだが、
そのことは勝の知らないことである。

「とすると、あの女はお前を守る命令を受けていて、かつ、お前本人は知らない。
そんな状態で来たと言うことだな?」
「そうなります。そして、彼女は僕を見ても僕だと信じられず、偽者だと思ってしまったんです」
「なぜだ? お前の特徴は知らされていたんだろ」
「僕が繰り人形を使ってしまったんです。実は僕に支給されたアイテムも赤木さんと同じ繰り人形で。
それを使っているところを、しろがねに見られました。人形繰りの技術はしろがねと出会ってから身に着けたものだし、
とても難しいものだから、しろがねはそれが出来る僕を本物だって信じられなかったんです」
「難しい? 赤木の奴は簡単に扱っていたように見えたがな」
「あの人の事は初めて会ったので分かりません。ただ、10本の懸糸で操る人形は並みの腕で使えるものじゃないはずですよ」
「……なるほどな。概ねの事情は理解した。
すると、今のお前は、エレオノールの誤解を解くために動いている、とそういうわけだな?」
「えぇ、そうです」

 エレオノールは、今でこそあんな性格をしているけれど、その実態はとても優しい女性だ。
 クールにしている姿が格好よくて、それでいて、慌てふためく姿がとても可愛らしい女性だ。
 彼女が勝の知る彼女に戻ってくれれば、とても心安らぐ頼りがいのある仲間が出来るんだ。

「だが、誤解を解くのは難しそうだな……」
「パピヨンさん自身が言ったじゃないですか。遅かれ早かれ誰もが気付く事だって。
だから、しろがねも並行世界や時間跳躍のことに、そのうち気付くと思うんです」
「うーん……勝くん、そうすると困った事になるんじゃないかな」

 こなたちゃんが、信じられないことを口にする。
 困った事になる? だって、しろがねが元に戻ってくれるんだよ。
 今の少し危険なしろがねが、安全な人になってくれるんだよ。それって歓迎できる事じゃないか。

「泉の言うとおりだな。そのエレオノールという女は元々冷血だったのだろう?
そして、その時から連れてこられた。貴様の知る存在とは根本から違う。
まさか貴様、真実を話せばエレオノールが自分の知る存在に変わってくれるなんて思ってた訳じゃないよな?」
「そ、それは……でも、冷血だったのは悪い奴に騙されてたからであって、本当はやさしくていい人なんだよ」
「それは優しくなる理由があったからだろう? 人間に戻りたいという欲望が仮初の優しさ作っていたんじゃないのか?」

 確かに、しろがねは勝と出会った当初、打算のために優しかったと聞く。
 けれど、勝やサーカス団の皆と一緒にいるうちに、彼女の心は変わって行ったんだ。
 鳴海兄ちゃんと勝の2人が与えたものは、しろがねの心を少しずつ人間に近づけていったんだ。
 だから、大丈夫しろがねはきっと人間に戻る。

「それは大丈夫です。少しずつ、僕や鳴海兄ちゃんで彼女を変えられると思います」
「だが、その加藤鳴海もお前のことを知らない……少し楽観的過ぎるんじゃないか」
「鳴海兄ちゃんは、単なる記憶喪失で僕たちのことを忘れているだけです。
記憶が戻ればきっとしろがねを優しくしてくれると思います」

 だから大丈夫。
 僕たち三人はまた一緒になれる。

「うーん、それでも私は危ないと思うけどなぁ……」
「大丈夫だって、こなたちゃん。しろがねは本当に優しい人だから」

 そういう勝に泉こなたは信じられない事を口にした。

「でもね……」

 こなたは勝とパピヨンに、しろがねの危険性を説明する。
 その話は並行世界や時間移動という概念ならではの盲点を孕んだものだった。

「だから、私はその人に並行世界の話をするのって危険だと思うんだよなぁ……
きっと殺人者になっちゃうよ」

 嘘だろ……
 嘘だって言ってよ。しろがねには真実を話しても、優しくなってもらえないっていうの?
 それどころか、余計危険になっちゃうなんて、そんなの信じたくないよ。

 ねぇ、嘘だって言って。


【D-3喫茶店内/1日目 昼】
【パピヨン@武装錬金】
[状態]:全身に軽い打撲、口に血の跡、小程度の疲労、
[装備]:核鉄(エンゼル御前)@武装錬金
[道具]:支給品一式、猫草inランドセル@ジョジョの奇妙な冒険
[思考・状況]
基本:首輪を外し元の世界で武藤カズキと決着をつける。
1:こなたの話を聞く。
2:エレオノールを警戒しておく。
3:核鉄の謎を解く
4:二アデスハピネスを手に入れる。
5:赤木、エレオノール、鳴海、承太郎、ハヤテ、カズキ、ナギを喫茶店で待つ
[備考]
※エンゼル御前は、使用者から十メートル以上離れられません。
それ以上離れると、自動的に核鉄に戻ります。
※参戦時期はヴィクター戦、カズキに白い核鉄を渡した直後です
※スタンド、矢の存在に興味を持っています。
※猫草の『ストレイ・キャット』は、他の参加者のスタンドと
同様に制限を受けているものと思われます
※エレオノール、鳴海に不信感(度合いはエレオノール>鳴海)

【泉こなた@らき☆すた】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:支給品一式、フレイム・ボール@ゼロの使い魔(紙状態)んまい棒@銀魂、
綾崎ハヤテの女装時の服@ハヤテのごとく
[思考・状況]
基本:みんなで力を合わせ首輪を外し脱出 。
1:エレオノールの危険性と並行世界の盲点について説明する。
2:赤木、エレオノール、鳴海、承太郎、ハヤテ、カズキ、ナギを喫茶店で待つ
3:かがみ、つかさ、みゆきを探して携帯を借りて家に電話
※ こなたの思考は次の書き手さんに任せます。
※ また、彼女は勝から勝の知る限りの「からくりサーカス」知識を取得している可能性があります。

【才賀勝@からくりサーカス】
[状態]:両足の脹脛に一つずつ切り傷。軽傷のため行動に支障なし。
[装備]:なし
[道具]:支給品一式、書き込んだ名簿、携帯電話(電話帳機能にアミバの番号あり)
[思考・状況]
基本:殺し合いには乗らない
1:しろがねの誤解を解く。
2:乗っていない人を探して味方にする。
3:フェイスレスには最大限注意を払う。
4:みんなで脱出する。
5:こなたの話を聞く。
[備考]
※勝は鳴海が自分のことを覚えていないということを感じましたが、同姓同名の別人ではないと思っています。


113:大切なもの――SOLDIER DREAM―― 投下順 115:LOVEサバイバー
113:大切なもの――SOLDIER DREAM―― 時系列順 116:運命の車輪(ホイール・オブ・フォーチュン)
113:大切なもの――SOLDIER DREAM―― 泉こなた 118:未来の僕。過去のあなた。
113:大切なもの――SOLDIER DREAM―― 才賀勝 118:未来の僕。過去のあなた。
113:大切なもの――SOLDIER DREAM―― パピヨン 118:未来の僕。過去のあなた。