サイアクだあなたは、沈黙したその目にヤラれそう ◆YbPobpq0XY



人生で二度も手を切断したのは、世界広しと言えども私くらいなものでは無いだろうか?
今回もう片方の手も、動脈が切りつけられている……おまけを通り越して出血大サービスだ。
ネクタイで止血する事により失血死は免れるだろうが、この痛みは何回味わってもなれる事は無い……本当に痛い。
だが唇を噛んで泣きたくなるのを必死にこらえる。
今はそれどころでは無いのだ。

河川を見下ろしながら、これからの事を考える。
あの女の死体の処分、これは絶対に行わなければならないな。
あいつ等に発見された所で正当防衛を主張すれば何とかなるかもしれないが、それでもキラー・クイーンの能力がバレる可能性は無視できない……とくにあのコナンと言う小僧だ。
一見するとただのガキだが、あいつの眼を見ると何かイヤな予感がする。
例えば、わたしの能力はおろか、素性や本性も全て暴いてもおかしくないような……。
考えすぎかもしれないと思う、しかし近い過去に何度も煮え湯を飲まされた経験上、子供だからと言って油断はできない。
もしそうなったら……元の世界に戻ってももう二度と平穏は訪れないだろう。
だからこそ一刻も早く探し出し処分するのだ。

川沿いに歩みを進めるが、足に転がっていた何かにつまずき、よろめいてしまう。
足元を見てみると、マリアさんがそのうつろな瞳で私を見つめていた。
ネクタイを絞め付け終えた右手を、マリアさんの頬に走らせる。

「バカな女だ……」

私は結局守りきれなかったのだ。
失ってしまったモノは余りに大きい……彼女の手『だけ』は。

「……でもコッチは『どうでもいい』な」

誰に話すでも無く、淡々と言い切る。

「キラークイーン!」

すでにコイツの首は爆弾にした。
別に深い意味も無いが、何の手も出せずに終わってしまうのも何だしな。
せっかくだから、という程度の話だ。
まぁやらないよりは、やっといた方がスッキリするだろう。

「発動しろォ!」

人差し指の付け根に取り付けられたボタン、そこに親指を添える。

「………………」

……近くでよく見てみると分かる事だが、この人結構老け顔だぞ?
17歳だと言われた、どう考えてもそうは見えない。
なぜ女と言うものは少しでも若く見られようとするのだ。
それにしたってマリアさんの場合は無理がありすぎるだろ。

ゾクリとした悪寒が、突如私の脳天から背中にかけて走った。

慌てて付近を見渡すが誰もいない……。
シアーハートアタックもどこかへ行ってしまったようだ。

何だ今の凄味……いや、今のはそんなものじゃあ無い、『殺気』と言っていいレベルだ。
とにかく、彼女の年齢についてこれ以上言ったら、私は破滅しそうな気がする。

再び私はスイッチに添えた指に力を込めるが……。
年齢の他にも何かが気になる。
このまま吹き飛ばすというのは、心に取っ掛かりを残すな。
うーむ……

「……ん? そうか」

また新たな問題点を見つけてしまった。
マリアさんの後頭部、少しだがクセッ毛があるじゃないか。

…………気になってしょうがないな。
どうせ最後なんだし、直して置くか。

手に唾液をつけて、それを彼女のハネている毛にしみ込ませる。後は手クシだ。

「結構ガンコだな……一応リンスは使ってるんだろうが」

食事の後は歯を磨いておいたが、歯磨き粉が違ったせいか?
口元がスッキリしないな。
病院で調達した物だから、悪いモノでも無いはずだが……。

「…………まぁこんな物でいいな」

ハンカチを取り出しづらいので、不精だがズボンで手を拭った。

「キラークイーン!」

今度こそ、と私は三度目のスイッチを出す。

「……………………………………………………………」

後はコイツを押すだけだ。
少しは溜ったモノもはれるだろう。
だが…………。

「……………………チッ」

態々こんな所でスタンドパワーを使う事もあるまい。
しつこいようだが、早くあの女の死体を見つけて処分しなければならないんだ。
モタモタしているヒマなんて無い。

立ち去ろうとするが、良く分からない、いわゆる後ろ髪を引かれる思いが私を引き止める。
何をやってるんだ私は……これ以上何を気にかけているんだ?

再び振り返ると、彼女はやはり薄く開いた目を私に向けている。

(………………)

少し考えて、私はその瞼をゆっくりと閉ざした。

────クソッたれめ。

「坂田と言ったな」

腐った魚のような目をした、私にとってはストレスの要因にしかならなかった天然パーマの男。
少し前、病院でそいつと二人きりで話したのを思い出したのだ。
死ぬ時はパフェ食いすぎで……か、全く羨ましい。

「クソッ、アイツは…………」

独り言は前から少ない方では無かったが、この状況ではそれがありがたい。
自然と何かに気を紛らわす事ができるのだから。

「あの男は、多分悩みなんて何も無く生きて来たんだろうな……」

何かムカつくが、そういう意味では尊敬できる男かもしれない。
多分あいつはそう簡単には死ぬまいしな、今度会ったらそのノー天気に生きる秘訣でも教えてもらうとしよう。

☆   ☆   ☆

壁に肩を擦りつけながらも、必死に川沿いに進む。
承太郎から逃げる時には夢中で気付かなかったが、体の一部を失ってしまうと、どうも体のバランスが崩れやすくなるようだ。
バリアフリー社会とは言え、当分は苦労しそうだ……。

突然だが、人生には誰でも浮き沈みがあるというのは簡単な事だ。
つまらない事、嬉しい事、結局トータルで半分になるとは良く言う。
そんな寂しい事言うなよと言う感じだが、密かに全勝狙いをするつもりも無い。
では私の現状はどうなんだ?

最悪な時にこそチャンスは訪れる……私のジンクスは上で挙げたそれと似通っている。
ならこの災難はいつまで続くんだ?

『あの女は……どこまで流された?』

進めど進めど、女の死体は見当たらない。
まだ水流に運ばれているのであれば、放っておけば舞台の外にでも放り出されるだろう。
だが、そんなに流れが激しい河川でも無い。
そろそろ追い付いていいはずだ。

もっと探そうにも、これ以上進めば病院に逆戻りだ。
それだけは避けたい。

(まさか……まさか……!)

さっきから一つの予感が頭を離れない。
そう思う要素は何一つ無いのだが、胸騒ぎと言ってもいい。
その予感はどんどん具体的になり、やがて脳に思考という形で現れる。

(あの女……生きてやがるッ!)

最後に、それは確証となっていた。
なぜそう思ったのかは分からない、殆ど本能のようなものかもしれない。
だが間違いは無い。
そうだとすれば、あの女は間違いなく私を狙ってくる。
そこまで考えて私は慌てた。
だったら……だったら私の平穏はどうなる?
またしても追われる事になるのか?

「冗談じゃあない!」

相手も負傷しているだろうが、シアーハートアタックを失った以上、今度襲われたら保障は無い。

第三の爆弾を手に入れて、少しはツキが回ってきたと思ったら……、まるで打ち切り漫画かゲームの選択肢を間違えたように、
こんな殺し合いに巻き込まれ、二度も危機を野放しにする事になり、あげくの果てにマリアを……極めつけはこの右手だ。
こっちの方も応急処置だけはしないと……感染症を起こしかねない。

「チクショウ……」

何で私がこんな目に……。そんな罪深い事をした覚えは無い。
もし……死んだら、私はどこに行くのだろう? 親父のように幽霊となるのだろうか?
天国と地獄があるというならば、マリアさんは確実に天国へ行けるだろう、考えるでも無い。
それとギントキ、気に食わないがヤツもだろうな。

だが……私は………………『もちろん』天国行きだ。
私は平穏に生きてきただけだ、それの何が悪い?
それなのに地獄に落とされるようならば、神という存在はよっぽどのクズと言っていいだろう。
きっと死後は確実な安心が待っている。

だがまだ死ぬつもりは無い。
ソレは文字通り最期の手段だ、最悪な状況だが私は諦めない。
私は信じてやる、こんな最悪でも必ず転機は訪れるはずなんだ……それが私の運命なのだ。

あのクソカスアマは必ず殺す、向こうからやってくるなら好都合だ。
何時でも来い。

「I believe it……待ってやるぞ、稲妻にうたれるような啓示を……!」

幸せは歩いてこない、幼稚園児でも歌える事だ。
だがこちら求めるからには必ず手に入れられる。
彼女が命をかけて守ってくれたこの命だ……手段なんて選んでられない。

「彼女のした事は……マリアさんの、マリアの死は無駄にはしない!」

彼女のためにも私は、必ず安心を手に入れる!
手に入れてやる……誰を殺しても、必ずだッ!
幸せになってやるぞ……。

「フフ……」

私には分かるのだ……。
コレを乗り越えれば、きっと永遠の安心が待っている事が。


【F-4 病院南河川付近 1日目 午後】

【吉良吉影@ジョジョの奇妙な冒険】
[状態]:左手消失、右手首裂傷、胸全体に真一文字の切り傷、出血多量、疲労大
[装備]:千切れた自分の左手
[道具]:支給品一式
[思考]
基本:マリアのため、必ず生き延びる。ゲームに乗る事だってじさない。
1:とりあえず手の応急処置を考える。
2:病院は危険なので戻るに戻れない
3:顔に傷のある女(斗貴子)は襲ってきたら始末、マーティン・ジグマールを殺す。
4:自身を追うもの、狙うもの、探るものなど自身の『平穏な生活』の妨げになると判断した者は容赦なく『始末』する。
5:できる限り力無き一般人を演じる。
6:もし脱出できるのであればしたい。
[備考]
※『バイツァ・ダスト』拾得直後からの参戦です。
※『バイツァ・ダスト』が使用不可能であることに気づいていません。
※覚悟、ルイズ、ジグマール、劉鳳、斗貴子をスタンド使いと認識しています。(吉良はスタンド以外に超人的破壊力を出す方法を知りません)
※川田、ヒナギク、つかさの情報を手にいれました
※左手を失い、シアーハートアタックの解除が不可能になりました。
 吉良が死ぬまで永遠に、熱源を求めて周囲を動き回っています。
 ただし、制限の影響で破壊できる可能性はあります。


140:激突! ラオウ対範馬勇次郎!!        ……特別ゲスト坂田銀時 投下順 142:魔女狩り
140:激突! ラオウ対範馬勇次郎!!        ……特別ゲスト坂田銀時 時系列順 142:魔女狩り
135:ありったけの憎しみを胸に 吉良吉影 155:万事屋銀ちゃんの店仕舞