信じるこの道を進むだけさ ◆7jHdbxmvfI


黒い学生服とその下には真っ赤なアンダーシャツ。
逆立った髪と鋭い目つき、そして心に秘めたものは真っ直ぐな正義。
男、武藤カズキ16歳。
青汁を好む錬金の戦士は、ただ一人街を走り続けていた。

「くそっ、どうして誰もいないんだっ!」

思わず声を吐き出す。吐き出された声は夜の街に響き渡る。
カズキから出されたその声はどこかが荒い。そしてその原因はただ一つ。
先ほど戦ったフェイスレスのことである。
あの男は人を殺すことに抵抗は無かった。したがって、弱い人を見つければ容赦なく殺す。
カズキはフェイスレスのような人間から一人でも多くの人を助ける為に、走り回り人を探した。
そして散々走り回り約一時間。探した結果は誰も見つからない。
それだけに焦りは募る。

「急がないと、斗貴子さんやブラボーとも早く合流して……」

自分に気合を入れる言葉を言い終わる直前、カズキは背後に嫌な感じを覚え、急いで後ろを振り向く。
すると目の前には一本のナイフが迫っていた。

「くっ!?」

驚きと焦りで頭が真っ白になりながらも、幾度も戦闘を経験した事による本能で体を捻り、ナイフを紙一重で避ける。
そしてナイフが飛んできた方向に目を向けると、そこには道化師が居た。

「……オマエが投げたのか?」

カズキは心を落ち着かせながら問いかける。

「………」

しかし返答は得られない。
道化師は返答の代わりと言わんばかりに、ナイフを二本持つと全速力で接近してくる。

「くそっ、武装錬金!!」

自らが戦うことを意味する言葉を叫ぶ。
道化師の武器に対抗すべく、カズキは突撃槍、サンライトハートを構え攻撃に備える。

「!?」

突如として現れた武器に、道化師は驚き瞬時に突進をやめる。そして若干突進の勢いを残したまま、二本のナイフを投げつける。
勢いがあり、距離は先ほどより短い、鋭利なナイフがカズキに向かい高速で飛んでいく。

「はあっ!」

サンライトハートの先端でナイフを払い落とす。
わずかにでもタイミングがずれていたら、ナイフは落ちることなく直進してカズキを貫く。
しかし、そうはならない。
幾度もの死線を乗り越えたカズキにとって、いくら早くとも真っ直ぐ飛ぶだけのナイフを払い落とす事は難しい事ではない。
サンライトハートにより払い落とされたナイフはそのままカズキの足下、舗装されたアスファルトへと落ちていく。
そして乾いた音が二度、路上に響き渡る。

「どうしてだっ!どうして殺し合いに乗るんだよっ!」

叫ぶ。それは絶叫にも似ていた。悲痛な叫び。
ここに来て遭遇した二人はどちらも相手は殺し合いに乗っていた。
ここにいる人物はほとんどが殺し合いに乗っているのかもしれない。
憤りや哀しみのような感情がカズキの中でぐるぐると混ざり合う。

「…………」

しかし道化師は答えない。
カズキの言葉は道化師の心には届かない。

「……なあっオマエは誰か知らないか?斗貴子さんかブラボーか蝶野。知ってたら教えてくれ」

カズキはせめて知人の情報を持っていないか問いかける。
必死で説得の言葉を紡ぐ。

「…………………」

やはり道化師は答えない。
無言のまま、更にナイフを二本構える。
じりじりとカズキに向かい近寄っていく。接近して確実に、回避も迎撃もさせる暇を与えず心臓を貫く為に。

「……なら勝君かエレオノールって人は知らないかっ?オレ約束したんだよ、二人を守るって」

最後の問いかけを行う。
この問いにも無言であれば説得は難しく、交戦は避けられない。
サンライトハートを強く握りながら出した言葉だった。

「?」

だが、この一言に道化師の動きは止まる。
そして――

「……本当に……」

――初めて言葉を出す。
感情がこもっていない、淡々とした言葉。でもそれは今までにない反応でもあった。
その反応の変化をカズキは逃さずに――

「えっ?あっ、ああ。絶対だ。オレは一人でも多くの人を守るんだ。だからっ……」

仲間になろう

そう紡ぐはずだった言葉は出る事が無い。
道化師は後ろに跳び、宙を舞い、そのまま闇夜へと消えていく。
それをカズキはただ、見つめるしかなかった。

「……どうして逃げたんだろ?勝君とエレオノールの知り合い?女性の声だったけど……一体?……」

そして、気付けば完全に視界から消え去り、追うことは出来ない。故に正体も真意も知る術も無い。
カズキは突如として表れ、そして消えていった道化師の行動に、心に何か引っかかるものを感じていた。

 ……追うのは無理か。どうする。ここからなら駅が近いからそこから繁華街にでも……そうだな。繁華街なら人も居るはず。

「……よしっ、行くぞっ!」

顔を両手で軽く叩き渇を入れ、カズキは行動を再開する。
駅へ向かい、カズキは走る。


【C-2 大通り 1日目 黎明】

【武藤カズキ@武装錬金】
{状態}健康
{装備}サンライトハート@武装錬金 
(道具)支給品一式 水分4/5  音響手榴弾・催涙手榴弾・黄燐手榴弾
{思考}
基本:弱い人達を守る
1: 道化師の正体が気になるけど……
2: 仲間を探す。(とりあえずS-2駅に向かい、それから電車で繁華街へ向かう)
3: フェイスレスの約束を守る
4: 勝君とエレオノールに会ってみたい

「どういうこと?」

しろがねは相手が追ってきていないことを確認し、ビルの陰に隠れ一息を付いて考え始める。

 相手は確かに坊ちゃまと私の名前を……どうして?でも……あの目には嘘はなかった。
 それなら……先ほどの二人同様に今はまだ手を出す必要はない。
 でもどういうこと?私が出会った相手は三人とも乗っていない?予想以上に積極的な人間は少ない?
 それなら少し考えを改める必要がある。
 殺し合いに乗っている人物を優先的に殺す。乗っていなければ……状況次第では放置した方がいいのかもしれない。
 ここで私が出来ることは、お坊ちゃまの危険を少しでも減らすことぐらいなのだから。

「……お坊ちゃま、待っていてください。私が……必ず!」

決意を固め、しろがねは更に北へ歩き出す。

【B-2 東部 1日目 黎明】

【才賀しろがね(エレオノール)@からくりサーカス】
[状態]:健康
[装備]:ピエロの衣装&メイク@からくりサーカス、ヴィルマの投げナイフ@からくりサーカス(残り13本)
[道具]:青汁DX@武装錬金
[思考・状況]
基本:勝の安全を確保する
1:勝を優勝させるため皆殺し(殺し合いに乗っている人間を最優先)
2:強力な武器が欲しい・現在北上中
3:花山、斗貴子、カズキに関しては襲うのは保留
4:100%勝を傷つけないと確信が持てた人間に関してのみ、殺すことを保留する。

二人は知らない。
自分を先ほど襲った人間は、自分が探すべき人の居場所を知っていた事を。
自分が先ほど襲った人間は、自分を愛する男から、自分の名前を聞いていた事を。
不思議な縁は一度交わり、そして分かれた。
これが何を意味するのかは、今は未だ分からない


036:The Great Deceiver (邦題:偉大な詐欺師) 投下順 038:拳の雨降って地固まる
036:The Great Deceiver (邦題:偉大な詐欺師) 時系列順 038:拳の雨降って地固まる
010:甘さを捨てろ 武藤カズキ 048:主のために♪
009:銀の道化師と痕面 才賀しろがね 061:偽りの共闘