立ち止まるヒマなんかないさ ◆L9juq0uMuo


「つまりそのピエロとフェイスレスってお爺さんは乗ってるって事か」
早朝の繁華街を歩きながら、武藤カズキ、綾崎ハヤテ、泉こなたの三人はそれぞれ情報交換をしていた。
「ああ、ピエロの格好をした女の人は今一確信が持てないけど、フェイスレスの方は確実に乗ってる」
高笑いを浮かべる老人と、闇に消えた道化師がカズキの脳裏に浮かび上がる。
「俺が会ったのはその二人だけだから、悪いけど二人の探してる人達は見てないんだ」
カズキは心底申し訳なさそうに頭を垂れる。
「そんなに気に病まないでください。僕達が探している人達も、きっとカズキさんみたいな人達と一緒にいると思います」
そうは言っても、ハヤテの不安は尽きなかった。
最初にホールでメイドの少女の首輪が爆発した時に飛び出した白い服の男性や、カズキの仲間であるC・ブラボー、そして津村斗貴子のように、この殺し合いに乗らず、かつ何の力も持たない人を助けて回ってる人も少なくはないだろう。
しかし、拳王や勇次郎と呼ばれていた人間のような危険な人種も相当数参加している筈である。いや、このような殺し合いの場なのだからそのような人種の方が多いかもしれない。
ハヤテの恩人である三千院ナギや友人であるヒナギクや同僚のマリア、同行者のこなたの友人は非力な少女なのである。そのような人種に襲われたらひとたまりもないだろう。
もし、お嬢様に何かあったら―、ハヤテの脳裏にピエロの投げる無数のナイフに貫かれたナギの姿が浮かび、慌ててそれを脳内から掻き消した。
「しかし、錬金術に人造人間か、まさか本当に存在しているとは思わなかったなー」
まるで、新しい玩具を見つけた子供のようにこなたははしゃいでいる。
「ああ、俺も信じられなかったさ。でも現に実在していた。ニュースで見ただろうけど銀成市の集団失踪事件や世界各国で動物が倒れる事件も原因はそれなんだ」
そのカズキの発言にハヤテとこなたは不思議そうに首をかしげる。
「銀成市の集団失踪事件に世界各国で動物が倒れる事件?そんなニュースありましたっけ?」
「うーん、私はあまりニュースは見ないけど、そんな事件があったら、かがみかつかさ辺りが言ってるだろうし、第一、そんな不思議な事件があったら私も覚えている筈だけど……」
二人の発言にカズキが戸惑う。カズキは件の事件のニュースを見ている。しかも片方には街頭インタビューで自分も出ていた。それを二人は知らないと言うのである。
「……と言うか僕の知る限り、埼玉県に銀成市という場所自体が無かった筈ですが……」
ハヤテとこなたの発言にカズキの顔が驚愕に染まる。
「そんな筈はない!実際俺は銀成市にある銀成学園の高校二年生で、俺や俺の友達は銀成市で暮らしているんだ!」
「ぼ、僕も武藤さんが嘘をついているなんて事は思っていません。ただ、少なくとも僕の知る限り、埼玉には銀成市という場所は……」
銀成市という一つの町の存在から生じたお互いのズレにカズキとハヤテは混乱する。その時、話し合いに参加せず、ある一点を見ていたこなたが口を開いた。
「ねえ、カズキ。カズキの知り合いの蝶野……この名簿でいう蝶野攻爵、パピヨンって奴は黒いぴっちりした服に蝶々の仮面をつけてるんだよね?」
「え?あ、ああ……」
「それってあんなの?」
こなたが指差す方向をカズキとハヤテが見る。するとそこには、悠々と道路を歩く一人の影。その姿は黒いぴっちりとした服に蝶々の仮面。そしてそれに追従するピンク色の小さい物体。
「蝶野……?それにあれは……」
「おお!やっぱりカズキンじゃねーか!」
嬉しそうにそのピンク色の物体、エンゼル御前が一足先にカズキの前にやってくる。
「やっぱり御前様か!あれ、でも桜花先輩は……」
「やぁ武藤。元気そうで何よりだ」
御前に一足遅れて、パピヨンがカズキの前に立つ。
「ま、俺との決着はまだついていないんだ。こんなところでくたばってもらっても困るんだがな」
そのパピヨンの発言にカズキは怪訝な表情を浮かべる。
「決着……?決着はもうつけた筈だ。俺が月から帰ってきた直後に」
カズキの発言に今度はパピヨンが眉を顰める。
「月から帰ってきた?何の話だ?」
「おいおい、何言ってるんだよパッピー。カズキンの言うとおり決着はもう着いたじゃねーか」
エンゼル御前の発言を聞き、パピヨンは少し考え込む。
「……どうやら俺とお前達の間で何か食い違いが起きているようだな。核鉄に関しても不可解な点がある。少し話をしたいんだがいいか?」
「俺は別に構わないけど……」
そう言うとカズキは先程まで蚊帳の外だった二人へと視線を向ける。
「僕は構いませんよ、僕の方からも聞きたい事はありますし」
「うん、私も別に構わないよ」
快く返事をしてくれた二人にカズキが頭を下げ、礼を言った後、カズキ達はハヤテ、こなたの簡単な自己紹介をすませ、近くの喫茶店へと入っていった。
普段ならば静かな曲が流れ、ゆったりとやすらぎが支配しているであろうその空間は、静寂だけが支配していた。
そして一つのテーブルに各々が座り、情報整理が始まった
「まずは、二、三質問に答えてもらい、俺とお前の食い違いから解消するとしよう。と、いっても、これはお前が言っている事が正しいのなら、すんなりと解けそうではあるがな」
背もたれに寄りかかりながら、パピヨンが続ける
「お前の知っている俺は、お前の頼みを聞き、ヴィクターとの決戦の前に、人口冬眠専用のフラスコを完成させたか?」
「……ああ、そして俺は斗貴子さんといっしょにヴィクターに白い核鉄を埋め込んだ。でも白い核鉄一つじゃヴィクターを完全に戻す事はできなくて、俺は一人でヴィクターを月へて連れて行った。最後はヴィクターの協力もあって地球に戻れたけどな」
「そしてその後、俺との決着をつけた。と言う事か」
その後、パピヨンは、蝶野邸での自分とカズキの戦いの過程から結末、そして再殺部隊との戦いの経緯について質問する。
「ふむ、どうやら食い違いがあるのは人口冬眠専用フラスコが完成した後から、と言うことになるか……」
うんうんと、パピヨンは一人で納得する。
「あくまで仮定ではあるが、ここにいる俺とお前は、この殺し合いの場に違う時間から呼び出された可能性がある」
「違う時間だって?」
「ああ、俺はヴィクターとの決戦時に、気づいたらここにいた。つまり、俺はお前の言う結末を体験はしていないと言う事だ。
お前の性格、そして御前の発言からしてもお前が嘘をついている可能性はほとんど0。
ならば残る可能性は記憶操作をされているか、お前と御前が俺が知るより未来の世界から連れてこられたか、だ」
「未来から連れて来られた?そんな……」
その時、カズキの脳裏に先ほどのハヤテとの会話が浮かび上がる。
「どうやら、お前も心当たりがあるらしいな」
「実は……」
カズキは、銀成市で起きた一連の事件、そして銀成市自体がハヤテとこなたの記憶に存在していない事をパピヨンに伝える。
「銀成市が存在しない、か……ならば更に可能性が高くなった。いや、俺がさっき言った仮定を上回る結果になるかもしれん」
そう言いながらパピヨンはハヤテとこなたの方を向く。
「そっちのこなたとかいう女に着いてはどこにでもいる一市民である事から俺達の知っている世界との差異はわからんが、そこのハヤテとかいう女の使えている三千院家、それは俺達の知る世界に存在しない」
その発言にハヤテが目を見開く。
「で、でも僕は確かに……」
ハヤテが何事か言おうとするのを、パピヨンが遮る。
「これでも俺は人間の頃はそこそこの名家の出なんでな。お前の言う三千院家が実在していたら俺が知らない筈は無い。つまり―」
「ハヤテの世界と、カズキ達の世界は別々に存在する可能性があり、この殺し合いの主催者はその別々の世界及び時間軸から私たちをこの場に呼び出した。ってこと?」
パピヨンの言葉を引き継ぎ発言したこなたに一同の視線が集まる。
「……その通り、中々頭が回るじゃないか」
「いやー、想像力はそれなりに豊かなもので」
意外そうに自分を見るパピヨンにこなたは頭をぽりぽりと掻きながら答える。
こなたは一般人の感性とは少しズレている。しかし、ズレているからこそ、その常識的には考えられない結論にいち早くとたどり着き、すんなりと受け入れたのだった。
「まあその女が言った事だとあそこに呼び寄せられた多種多様な参加者や今までの食い違いも辻褄が合う。もっとも記憶操作されているという可能性もまだ残ってはいるが、な。
拳王やら勇次郎やらいう奴や俺をあの場に呼び出し、この変な首輪を作る技術力を持っているんだ。記憶操作くらい訳はないだろう」
パピヨンがそう言って、ひとまずその議論には一応の決着は着いた。
「しかし、にわかには信じられねーよなー」
ふよふよとパピヨンの周囲を浮かぶエンゼル御前を見て、カズキは御前と遭遇した時に感じた疑問が再び浮かび上がった。
「蝶野、御前様がいるって事は桜花先輩もどこかにいるのか?」
「いや、あいつは参加していない。どうやら核鉄にも何らかの制限がかかっていて、アナザータイプができなくなっている。つまり武装錬金は固定されているらしい。
ちなみこれは俺が工業団地で会ったちっこい女から貰いうけた。先に行っておくが殺しちゃいないし怪我も負わせていないから安心しろ」
「ちっこい女……」
パピヨンの言う『ちっこい女』、ハヤテの脳裏に否が応にも自分の主人の姿が浮かぶ。
「すいません蝶野さん!その女の人って……」
そこまで言ってハヤテの言葉は、敵意を込めてこちらを睨むパピヨンにより中断させられる。濁りきったドブ川のような目が怒りの感情を露にしている。
「……一つ忠告しおく。俺をその名で呼んでいいのは武藤だけだ、例外は無い」
「蝶野!!」
カズキが嗜めるように叫ぶと、ジロリ、とカズキを一瞥した後、溜息を吐き、パピヨンの表情が通常のそれへと戻る。
「で、何が聞きたい?」
ハヤテは先ほどの剣幕に気圧されながらも、おずおずと尋ねる。
「そのちっこい女の子はナギって呼ばれてませんでしたか?」
その問いにパピヨンは自分の記憶を掘り起こす。
「確か、一緒にいたジョジョとかいう奴にそう呼ばれていたな」
「本当ですか!?」
探していた主の情報にハヤテは思わず身を乗り出した。その後ろでカズキの顔が段々と深刻な物になっていく。
「……蝶野、工業団地って言ったよな」
「ああ、言ったが、どうかしたか?」
カズキは「そうか」とだけ呟いて自分のデイパックを担ぐ。
「悪い皆、ちょっと行ってくる」
カズキは知っている、あの道化師が消えた場所を、そしてその先に見えた工業団地を。
「あそこには乗ってるかもしれない奴がいる。だから手遅れにならない内に助けに行く。蝶野、その間二人を……」
「NON、嫌だね」
カズキの頼みを最後まで聞かずに、パピヨンは指で×を作りカズキの頼みを断る。
「おいパッピー!そんな事言ってる場合じゃ……」
エンゼル御前の抗議を無視し、パピヨンが続ける。
「俺がそんな事を頼まれてYESというと思ったか武藤。こういうときはギブ・アンド・テイクだ。違うか?」
「……わかった。で、条件はなんだ?」
逡巡の後、首を縦に振ったカズキに、パピヨンは満面の笑顔で答える。
「俺がニアデスハピネスを手に入れ次第、俺と戦え。そうすればお前の頼みも受けよう。お前は決着をつけただろうが、俺はまだつけてはいないんでな」
「……わかった。それで二人を守ってくれるんだな?」
まっすぐ自分を見つめるカズキにパピヨンの顔は更に喜色を強める。
「交渉成立、だな」
「ま、待ってください」
大声と共にハヤテが立ち上がる。
「僕も、僕も連れて行ってください!」
キッ、とハヤテがカズキを見据える。
「駄目だ、ハヤテはこなたとここで他の知り合いが来るのを待つんだ」
女の子をあんな危険な場所には連れて行けない。そう思いカズキは強く反対する。
「大丈夫です。これでも鍛えてますし、武器も扱えます、足手まといにはなりません。それに……」
ハヤテが一呼吸着く、改めてカズキを見つめ、続ける。
「お嬢様は僕の命の恩人です。だから、何があろうと僕はお嬢様をお守りしなければいけないんです」
自分を見るハヤテの目を見てカズキは気づく。ハヤテも自分やブラボー、斗貴子さんと同じ強い信念の持ち主だと。しばらくの間睨み合いが続き、そして、カズキが折れた。
「……わかった。でも危なくなったら逃げてくれ。それさえ守ってくれれば何も言わないよ」
「あ、ありがとうございます!」
深々とお辞儀をした後、ハヤテはこなたへと向き直る。
「すみません、こなたさん。こなたさんのお友達も探さなきゃいけないのに……」
「んー、まぁハヤテの大事な人の命がかかってるならしょうがないよ。それにかがみ達も人の多いこことかを目指してるかもしれないから大丈夫」
申し訳なさそうにしょげるハヤテの肩をこなたがぽんぽん、と叩いて元気つける。
そして、カズキとハヤテは自分のデイパックを担ぎ、喫茶店を出た。
「蝶野、こなたの事、頼んだぞ」
「お前こそ死ぬなよ、武藤」
「じゃあこなたさん、パピヨンさん、行ってきます」
「ん、そっちも気をつけて」
それぞれ思い思いに別れの言葉を述べ、カズキとハヤテは出発した。
「そう言えば色々あって言い忘れたんだけどさ」
二人を見送った後、思い出したように手をぽむ、と打ち、こなたがパピヨンを見る。
「何だ?」
「いや、会った時から思ってたんだけど随分といかした格好だなーって、どこで売ってるの?」
しげしげと興味深そうにパピヨンを見るこなたに対し、パピヨンは上機嫌な笑みを浮かべる。
「何だ。随分と話のわかる参加者もいたもんだな。だが生憎とこれは一蝶羅でな」
この二人はやはりどこかズレていた。


【D-3 喫茶店/1日目/早朝】
【パピヨン@武装錬金】
[状態]:全身に軽い打撲、口に血の跡、中度の疲労、ごきげん
[装備]:エンゼル御前@武装錬金
[道具]:支給品一式、週刊少年ジャンプ@銀魂、んまい棒@銀魂、綾崎ハヤテの女装時の服@ハヤテのごとく
[思考・状況]
1:武藤達が戻ってくるまでここで待機。こなたを守る
2:核鉄の謎を解く
3:二アデスハピネスを手に入れ、戻ってきた武藤と決着を着ける
[備考]
※エンゼル御前は、使用者から十メートル以上離れられません。
それ以上離れると、自動的に核鉄に戻ります。
※参戦時期はヴィクター戦、カズキに白い核鉄を渡した直後です

【D-3 喫茶店/1日目/早朝】
【泉こなた@らき☆すた】
[状態]:ごきげん
[装備]:猫草inランドセル@ジョジョの奇妙な冒険
[道具]:支給品一式、フレイム・ボール@ゼロの使い魔(紙状態)
[思考・状況]
1:エレガントな衣装だなぁ
2:パピヨンといっしょに二人の帰りを待つ
3:かがみ、つかさ、みゆきを探して携帯を借りて家に電話
[備考]
※猫草の『ストレイ・キャット』は、他の参加者のスタンドと同様に制限を受けているものと思われます


【D-3 道路/1日目/早朝】
【綾崎ハヤテ@ハヤテのごとく!】
[状態]健康。女装。
[装備].454カスール カスタムオート(7/7)@HELLSING
[道具]支給品一式、執事服一式 13mm爆裂鉄鋼弾(35発)、ニードルナイフ(15本)@北斗の拳
[思考・状況]
1:ナギを見つけ合流する
2:ナギ、マリア、ヒナギクを一刻も早く探し出し合流する
3:出来るだけ多くの人を助けたい


【D-3 道路/1日目/早朝】
【武藤カズキ@武装錬金】
[状態]健康
[装備]サンライトハート@武装錬金 
[道具]支給品一式 水分4/5  音響手榴弾・催涙手榴弾・黄燐手榴弾
[思考・状況]
基本:みんなを守ってみせる
1: ナギと見つけ合流する
2: ハヤテを守る
3: 道化師の正体が気になるけど……
4: フェイスレスの約束を守る
5:勝君とエレオノールに会ってみたい
[備考]
※ハヤテの女装には気づいていません。

[共通備考]
※以下の事に気がつきました。
※参加者は違う世界、違う時間から何らかの方法で拉致されてきたか、記憶を操作されている。


061:偽りの共闘 投下順 063:三千院ナギと素直じゃない仲間
061:偽りの共闘 時系列順 063:三千院ナギと素直じゃない仲間
034:変態!!俺? パピヨン 090:パピ☆すた
048:主のために♪ 泉こなた 090:パピ☆すた
048:主のために♪ 綾崎ハヤテ 086:漫画キャラバトルロワイアル特別編『SAGA』
048:主のために♪ 武藤カズキ 086:漫画キャラバトルロワイアル特別編『SAGA』