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【前提】
  • 本編8話相当時点でイヤボーン暴走シモン(14)にダイガンザンチョップを喰らった公務さんinエンキドゥは、吹っ飛ばされた拍子に時空間の壁をぶち破って27年後の世界へ放り出されてしまいました。
  • 墜落地点で瀕死の状態になっていたところをいつも通り放浪中のおやっさんシモン(41)に拾われて応急手当を受け一命は取り留めた公務さんでしたが、身体的ショックにより記憶の大半を一時的に喪失している状態です。
  • 右も左も解らない状態ながらも命の恩人への感謝と元々のオヤジ趣味からおやっさんにころっと懐いてしまった公務さん。たまに恩返しのつもりなのか、負傷も癒えきっていない体でトビタヌキを狩って来たりなどと色々無茶をします。
  • そして本日、ついに最終手段の「受けた恩は体で返す」を実行せんと決意も固くおやっさんの寝床に潜り込んできた公務さんの首尾や如何に。

【ご注意】
  • 3Pルートへは分岐しません。

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「いいのか、本当に?」
 問う声に、こくりと小さく、無言で頷いた彼女は身をすり寄せるようにして俺の胸にもたれ掛かってきた。
 布地は厚く丈夫だが、ぴったりと体の線に貼り付くようなデザインの軍服はその向こうにある彼女の肌の下に、とくとくと忙しない速度で刻まれている鼓動を包み隠さず伝えてくる。
「無理はしなくてもいいんだぞ? 礼なんて、本調子になってからの後回しでも全然構わないんだからな」
「……ち、がう……」
 蚊の鳴くような音量だが、思いの外にしっかりとした意志の通されている声。
 ぼそぼそと目元に掛かった金髪の間から、挑み掛かるような視線がじっと見上げて来ている。
「れ、礼とかじゃなくて、私が、お前を、その………欲しい、んだ……」
 頬どころか、耳の先まで真っ赤に染めて微かに震える声を絞り出し、最後の方では恥ずかしさに耐えきれないとでもいうように顔全体を伏せてしまう。
「こんなくたびれたおっさんが欲しいだなんて、王都のお嬢さんは物好きだな」
 それが本気なのだとは解っていても、敢えて冗談めかして受け答えれば更に顔は俯いてしまい、おそらく精一杯縮こめられているのだろう肩が小刻みに震え出した。
「わ…私とでは、いや、獣人とは嫌なのだったら、そう、言うといい………」
 隠しようもなく水気を含んだ声。顔は角度的にちらりとも見えないが、眼に涙を溜めているだろうことは想像に難くない。
「…嫌じゃないから困ってるんだがなあ、お前はまだ怪我人だから無理はさせたくないし」
 ぼそりと正直なところを呟くと、目の前の項垂れ頭ががばっと跳ね上がり、いっぱいに開かれた金色の眼で正面から真っ直ぐに射抜かれた。やっぱり目尻の縁は少し赤い。
「本当か……? 本当なら、触れてくれ…きっと、体が治ったらお前とは一緒にいられなくなるような気がするんだ…だから」
 ぎゅっ、と獣人の大きく強い腕が首に回って抱きつかれる。途切れた言葉の最後は、吐息に変わるか変わらないかほどの小さく掠れた声で耳元に囁かれた。
「…だから…わたしを、奪ってくれ」

 >>>

 ゆっくりと押し付けるように重ね合わされた唇を、角度を変えながら軽く啄む。
 ぎこちなくその動きに応えてくる不慣れさが、何とも微笑ましくて、罪悪感すら覚えそうになる。
 ずっと先のこいつとは何度も交わした行為だが、今ここにいる彼女にとっては初めてのことなのだ。人間とここまで深く触れ合う事も、下手をしたらこういった男と女の行為自体も。
「んん…っ、ウ……!」
 舌を出してそろりと唇を舐めれば、口をきっちり閉じているせいでくぐもった声が驚いたように跳ねた。
 なんとか性急にならないよう心がけながら、引き結ばれた唇を開かせるべく舌先で合わせ目をじっくりとなぞり、穏やかにノックするよう突付き、時折下唇を咥えるみたいにして軽く吸い立てる。
 そうこうするうちに段々と呼吸が乱れ始め、すっかりと唾液に濡れて艶やかな赤味を濃くした唇は誘うように薄く開いて、はぁ、と熱っぽい吐息をこぼした。
 自分も短く息を継ぎ、その隙間が閉じない内にぐっと舌をねじ込み口腔内を侵略する。
 腕の中に収まった体がびくりと怯えて身じろぐのには気付かないふりで、唇の内側と上下の歯茎をゆっくりと舌先で愛撫すればきつく食いしばられていた歯列もじきに解け、鋭い牙の奥まで侵入を許してしまう。
「んぅ! っ……ふぁ…」
 温かく柔らかい舌を絡め取るようにして捕まえ、吸い上げると彼女の全身がぞくぞくと震えた。
 薄く目を開ければ、近すぎてピントが合わないほどの距離で固く閉じられた瞼がひくつき、淡く金色にけぶる睫毛の端からそこに溜まっていた水滴がころりと落ちる。

 ひどく弱々しい、苦しげで細い呼吸音が耳を打って、ふと我に返ってみればがっつかないようという己への戒めはどこへやら、あまりにもしつこく咥内を貪ったせいで彼女は少しぐったりとしてしまっているようだった。
 慌てて口を離せば彼女が嚥下しきれなかった唾液が口の端から顎まで線を描き、やや焦点の合っていない金色の目がぼうっとした様子で見上げてくる。
「…ああ、大丈夫か?」
 自分でも相当間が抜けていると思える質問に、呆然と頷いて彼女はまた小さく口を開いた。
 赤く腫れたような唇がてらりと濡れた艶を帯び、その隙間から白い牙と桃色の舌が覗くのがひどく扇情的に映る。
 まだ息が整わないのか声は無く、唇の動きだけが俺の問いに応えて言葉の形を作って見せた。
(もっと、ほしい)

 普段の彼女を知っている分、信じられないほどの直截な求めに、つい喰らい付くように抱き寄せてしまってから肩にも怪我を負っているのだったと思い出し、無神経にも強く掴んでいた上腕から急いで手を離す。
 だが、一旦密着した体の距離はなぜか離れない。
 俺の背中に回っている腕にぎゅっと力が籠められたかと思うと、再び強く、唇が押し付け合わされた。
 ちろ、と唇に触れる濡れた感触。今度は彼女の側からおずおずと舌を差し出して、深い口付けをねだっている。
 年甲斐もなく逸る意識を宥めつつ、出来るだけゆっくりとに彼女の唇を啄ばみ、舌を食んだ。
 する事の無くなった両手は大きな傷のある場所を避けながら体の輪郭をなぞり、服の上からその下にある柔らかい部分を探り当てるように這い回る。
 唾液の混ぜ合わされる水音と、それに紛れる荒い呼吸とが耳の中に鳴り響いてやけに喧しい。
 他の物音は殆ど耳に届かず、まるで世界から二人だけ切り離されているような錯覚。

「は…ぁ……っ、ん……」
 か細い声を漏らしてヴィラルの体が震えた、それが合図だったかのように執拗に絡み合わされていた舌が解け、粘度を増した唾液を細く引いて離れる。
 かくんと糸が切れたかのように後ろへ倒れようとする上体を引き留め、改めて顔を見合わせれば薄っすらと開かれた金色の眼はすっかり熱に潤んで、何ごとかを待ち望む気配を湛えて俺を見上げていた。
「……いいのか、本当に」
 所々破れてはいるが、ひとまず本来の役目を放棄してはいない軍服の前を閉じるファスナーに指を掛け、先程と同じ言葉を問いかける。
 返されるものも同じ、無言の頷き。
 無言のまま、俺の手の上から爪が鋭く大きな手が小さな金具を摘まみ、一気に引き下ろす。
 真っ直ぐに開かれて、露わになる白い肌と白い包帯。今更ながら、それに触れることは何かひどい罪悪なのではないかと思わされてしまうほどの細さと痛々しさが目に飛び込んでくる。
「一度そうなっちまったら、後戻りは出来ねえんだぞ」
 しかし、そう言いながらも俺の手は着々と服をはだけて膝の上に座り込んだ女をどんどんと無防備な姿へ変えていく。何一つ抵抗せず、されるがままの彼女の体の表面には、もはや所々に血の滲んだ包帯しか残っていない。
「……お前のものになれるなら、もう、どこにも戻らない……」
 頬を染め、目を伏せて呟く言葉を少し複雑な気持ちで耳にする。
 時間というものが、多少は歪んでもいつかは復元される強靭なものだと言うのなら、彼女はきっと遠からず元の時間へ戻ってしまう筈だ。おそらく俺のことも忘れるだろう、そうでなければ昔の記憶との辻褄が合わない。
 あの時間の彼女の中に、人間は――まだ、あの人ただ一人しかいなかったのだから。

 だが、それでも。
「本当に、もらっちまうからな?」
 今だけ、俺のものにする。
 この先忘れてしまうことになったとしても構わない。
 いつか、この捻れた因果が解かれたその時、思い出すのかもしれないしそうじゃないのかもしれない。
 だけどそんなことには関係なく、他のいつ、でもなくどこ、でもない、今、目の前にいる彼女が欲しいという堪えようもない衝動に、躊躇わず従うことにする。


 髪を撫で、瞼の上に軽く口付ければヴィラルはくすぐったそうに少し身を捩った。
 唇はゆっくりと顔のおもてを辿り、目尻に、頬に、鼻の頭に、それから口元に触れるだけのキスを落としていく。
 そこから更に下へ降りて、首筋に、鎖骨に、今のところはまだささやかな膨らみでしかない胸の上へ。
 肩口と鳩尾のすぐ上に大きな傷があるため上半身は幾重にも包帯を巻き付けられていて、それが結果的に無傷の小ぶりな乳房をくびり出す形になっているのが改めて見ると随分と倒錯的でいやらしい。
 あ、いや違うな、いやらしいのは怪我人を見てそんな事を考える俺の方か。
「っ、あ……」
 そんな取り留めのない思考のままに、包帯から取り残されている胸の頂点を片方口に含めば、悲鳴にもなりきらない声を漏らした彼女の手が戸惑ったように俺の首に縋る。
 止めたいのか、促したいのか、おそらく自分でも混乱しているのだろう当惑をいい事に、唇で挟んだ小さな尖りを軽く吸い立て、舌先で突付き転がす。もう片方も指先で摘んで紙縒りでも作るように捻ればあっという間に血の色を集めて鮮やかに染まり、中途半端に硬くて柔らかい感触を返してきた。
「ぁ…っ! ふぁ…っ、ん…ぅ……ゃあ…っっ!!」
 俄かに高い声を上げ、本気で逃げ出したそうに身じろぐのを抱き締め、というか押さえ込みつつもう少しばかり胸を苛める。
 大きさは多少違ってもここが弱いのはやはり将来の彼女と同じ存在だからなのか、片側を口中で、もう片側を人差し指と親指で翻弄しているだけで全身は気の毒なくらいびくびくと踊り跳ね、俺の膝を跨いでいる腰は落ち着かない様子でもじもじと揺れていた。
「………っ、ぁう……」
 そろそろ頃合かというところで、ひときわ強く吸い上げてから解放すれば、腕の中でずっと緊張し続けていた体はぐにゃりと脱力し、大きく息をつく。薄い胸を上下させる呼吸は憐れみを誘うほどに浅く乱れ、半開きの唇が頼りなく震えている。
 涙を浮かせてとろんと潤む目元に口付けながら、背を抱いていた手を滑り落として、さっきからじれったそうに捩られ続けている腰の辺りを軽く撫でた。

 ゆるゆると、小さく突き出された尻へ円を描くよう掌を這わせ、次第に指先をその先の翳りへと忍び込ませていく。
「ひぅっ!?」
 既にしっとり湿されていた草むらを分け、露を含んだ花弁に触れれば驚いたような声が耳元で上がり、俺の肩にしがみ付く手がぎゅっと緊張する。
 ぬめる体液を助けに、入口を一通り弄った指はごくスムーズに彼女の中へ。
 ゆっくりと動かして内側の解れ具合を確かめ、特に問題はないと見て取るやもう一本数を増やす。
 二本の指を揃え、時折開きつつ手首から先を回すようにして中を掻き混ぜ、まだ狭い隘路を慎重に拓く。
 指先が、鉤型に曲げた関節が熱く蕩ける柔襞を擦るたび、小さく声を上げる彼女の腰は俺の手の上でびくびくと跳ね、縋る手指は震えて爪の先が肩に食い込んだ。
「……ッ、ぅ…く……」
 更に指を増やしたところで辛そうに顔を歪めた彼女の気を散らすため、もう片方の手を前から滑り込ませて陰核を弄る。数度指の腹で撫でただけでぷくりと立ち上がったそれを少し強く抓めば、覿面に上がる声のトーンが変わって艶を帯び始めた。
 卑猥に響く粘った水音とあえかな嬌声が俺の劣情を、そして彼女自身を煽り立て、追い上げていく。
 自然と抜き挿しのペースを速めた指が内側の僅かにざらっとした部分を掻いた途端、驚くほどに締め付けを増した粘膜がぎちぎちと指を食んで。
「ぁ、あぁっ…ふ………っ、ゃ、ぁ…ああぁッ!!」
 一際甲高く鳴いて背を引き攣らせた彼女の、わななきひくつく秘部から引き抜いた指には白く濁った粘液がどろりと絡み付いて、互いの間に細く糸を引いた。

「…大丈夫か?」
 俺の肩口に突っ伏してしまった顔を覗き込み、訊ねてみてもすぐには答えが返らない。
 絶頂に伴う軽い酩酊状態に陥っているのだろう、心ここに在らずといった表情。初めてだというのにあまりの感度の良さに少々心配になってくる。
 これ以上先を続けることで傷付いた体にひどい負担を強いるのではないか、そんな今更な懸念はしかし、ふいにしがみつく力を強めてきた彼女自身によって断ち切られた。
「…だ…い、じょ……ぶ………」
 精一杯押し出される声が、やけに甘さの籠もった吐息でひゅうひゅうと掠れる。
 背中に回された腕も、押し付けられてくる胸も膝の上でもぞりと揺れる腰も、首筋に押し当てられた頬もどこもかしこも燃え出しそうなほどに熱い。
「……でも…そ、その…からだが、おかしいんだ……さわられた所が、すごく疼いて……もっとさわってほしくて、頭がおかしくなりそうで………」
 目には混乱と羞恥のもたらすのだろう涙を浮かべ、率直な分どこか幼い口調でたどたどしく行為の続行を求める様子に、瞬間、眼の奥が真っ赤に染まってしまいそうなほど頭に血が上る。
 負傷を気遣う意識も、性愛に関して何も知らない女をこれから汚すのだという罪悪感も片隅に追いやられ、ただ自分の服の前をくつろげる手の動きが若造のようにがつがつと余裕のないものであることを頭のどこかでぼんやり滑稽に思った。
「もっと触ったら、余計におかしくなるかもしれないぞ」
 緩んだ衣服の間からまろび出す、我ながら凶悪な大きさと形状のソレを不思議そうな顔でまじまじと見つめていたヴィラルが急にはっと気が付いた様子で、自分の下半身へ視線を落とす。
「……これ、………こ、こに…?」
「そうだ」
 僅か、怖じた風に後ろへ逃げそうになった体を捕まえ、両手で尻を掴み上げるようにして腰を引き寄せる。
 俺の肩に寄りかかるよう密着させられた上体から、ひたりと入口へあてがった切っ先の硬さに身を震わせる怯えも、心拍を速める緊張も全て、はっきりとこちらへ伝わってくる。
「嫌か」
 嫌だと応えられても止める気など無いくせに、わざわざと問う自分の小狡さが厭わしい。
 彼女が未知の恐怖とそしてほんの僅かな期待に顔を強張らせながらもゆっくりと首肯するのを半ば予期していて、敢えて選択権を与えた風を装うなど、ただの自己満足もいいところだというのに。
「あ…ううん、平気だ……来て…くれ……」
 震える声で、それでも健気に招く彼女の内へと先端を侵入させる。
 本当は寝かせてしてやった方が負担は少ないのだろうが、生憎彼女の上半身の前後左右には洩れなく大きな傷があってどの向きで押し付けるにもしのびない。
 となると胡座をかいた自分の上に向かい合わせて彼女を座らせる体勢でするしかないのだが、初めてがこれでは結構辛いだろう。

「……っ…ぁ、ああ……はいっ、て…くる………」
 先端の太い部分をじわじわと埋め込まれつつある彼女の苦しげな呼吸。
 浅く吸って、吐いて、必死に体の力を逃がそうと努力している様子に言い様の無いいじらしさと、それを遥かに上回る征服欲が胸の内に育つ。
「ふ…っ、ぅ……ん、く…っ! は……っあ……!!」
 ぬるりと温かい襞に肉を食まれて、その心地良さに彼女の腰を支える手から力が抜けそうになった。
 それと同時に、狭道の途中でぐっと微かな抵抗に出会った感触。
 もうほんの少し手の力を抜けば、彼女の腰は自分の体重に引っ張られるままに下がる。その勢いでぷつりと糸の切られたような儚い手応えが、まっさらな女の中に俺の存在が刻み込まれたのだということを教えてきた。
「────────っ!!」
 反らされた喉がひくりと震えて、声のない悲鳴が上がる。
「こら、無理に我慢するな…」
 厄介なことに、生来の兵士として教育されてきた彼女は快楽には全くと言っていいほど耐性がないくせして、痛みには頑固に耐えてしまうきらいがある。
 今もそうだ、強く歯を噛み締めて呻き声ひとつ外に漏らすまいとしているのが見て取れる。
 それでもしかし、瘧のように全身を引き攣らせる様と、太股の内側をひとすじ伝う鮮血とで辛いのだろうと言うことはありありと解ってしまう。
「…我慢しなくていい、中が馴れるまで動かさないから……」
 宥めるように腰周りをさすりながら耳元に囁けば、笛の如くか細い息が唇から洩れて、目尻からは涙がぽろぽろとこぼれ出した。
「………、……………」
「辛くしてすまんな。もう少し辛抱してくれ」
 声を上げずに泣き出した彼女の頭をわしわしと撫で、顔中に何度となく口付けを散らす。
 傷のない部分を探して肌を撫で、時折尻や乳房を軽く揉んでやっている内、がちがちに強張っていた全身にも次第と弛緩が訪れる。
 不慣れな狭さで俺の分身をぎりりと喰い締めていた内側は幾度か繰り返される呼吸の内に柔らかさを取り戻し、挿れられたモノの形に添うようひたひたと包み込んできた。
「は……ぁ、っ……」
 ゆるゆると吐き出された息が、ふいにそれまでにない色を滲ませて揺れる。
 正面から覗き込めば、涙の膜が張った瞳の中にも熱に浮かされたような光がちらついて、とろんとした眼差しを返してくる。
「……良くなってきたか?」
 わざわざ訊いてみれば、緩慢な瞬きが二、三度繰り返された目には僅かに焦点が戻り、頬はますます染まって耳の先や首筋までも淡い血色に彩られた。
「…わ、わから、ない……でも、からだのなか…いっぱいで、あつく、て……」
 呼吸が定まらず、ふわふわと上ずった声が彼女の中で快楽の芽が開きつつある事を教えている。
 真上から掛かる自分の体重で、望まざるとに関わらず最奥まで呑み込まされたものを持て余しているのか、時折体を小さく捩ってはその度に潤んだ粘膜で俺の欲を撫で回し、自らもその都度刺激を受けているらしく微かに甘さの混じった声をこぼす。
「動いて、いいか」
 震えながらも小さく頷く彼女へ首に腕を回して掴まっているよう促し、尻臀を両側から掬い上げるようにして浮かせた体から半ば程まで己を引き抜く。耳元で息を呑む音。
 完全に抜け出しそうになる間際で腕の力を緩め、再び最奥まで抉り込めば、甲高く声が上がって白い肢体が撓んだ。
「ひ…ゃんっ! んぁ、あ……ゃあっ、ぁん!!」
 数度突き上げただけで完全に正体を無くしてしまった様子の彼女は揺さぶられるままにがくがくと上体を踊らせ、あられもなく鳴く。
 白い肌は上気して全体に淡く染まり、噴き出す汗に濡れた包帯にはどこかの傷が開いたのか新たな血が滲み出していて、汗と淫液のそれに混じって鉄の匂いが鼻を突いた。
 あまり長引かせるべきではないという考えと、いつまでも貪っていたいという思いが理性と欲の両側に分かれて思考を引き裂く。
 ゆっくりと抽送を繰り返すごとに彼女の内側はぬめりを増し、しかし粘膜は逆に締め付けを強めて、潤滑と抵抗が半ば拮抗するようにしてこちらの快楽へと変わる。

 自分ばかりが快くなる事への後ろめたさから、努めて彼女の体を丹念に解きほぐす。
 これまでに何度も重ねた経験を基に覿面にそれを引きずり出せるポイントを探り、手で、唇で、硬さを増すばかりの雄で、体の外から内から彼女を暴き立てる。
「…っ、ぁ、あぁ……あ――――っ! あぁああア!!」
 怒張した肉の先端が体内のとある一点を引っ掻くよう揺さぶれば、悲痛な、というのが最も近いだろうか、喉も破れんばかりに声を上げた彼女の体が折れてしまいそうな程に反り返った。
 震える両手は必死に俺の腕を掴んで縋りつき、俺自身を咥え込んだ場所はきゅうっと収縮して食いちぎられそうなほどの圧迫を与えてくる。
 びくびくと跳ねる背を撫で、抱き寄せれば涙と汗でぐしゃぐしゃに濡れた顔が胸元に押し当てられた。
「し…も……シモ、ン……! シモン……!!」
 荒れる呼吸に撚れた声が何度も俺の名前を呼ぶ。こちらも同じだけ呼び返す。
 強くしがみついてくる腕に求められるだけ、その体を抱き寄せる腕に力を籠める。
 熱く絡みつき、奥へ奥へと誘う粘膜に乞われるまま、彼女の中を激しく抉る。
 ぎりぎりと、腰椎が引き絞られるような感覚に襲われる。

 ふいに、頭の中を何かが通り抜けるような開放感――逆らわず身を任せた。
 一際大きく耳の中に響く、自分の心臓が脈打つ音と彼女の高く啼く声。
 己が弾ける感触と共に、彼女の中に欲を放つ。

 か細い声と呼吸を吐ききった体からはくたりと力が抜け、支えに回した腕へ重みが預けられた。
 密着した肌から伝わる、小刻みな痙攣と早鐘を打つ鼓動を僅かも逃すまいと抱き寄せながら、約束を刻み込むように、きつく閉じられた瞼の上に唇を押し当てる。
「…いつか、全部思い出す事があったら…また俺んとこに来いよ」
 その時はたぶん、同じだけの時間を重ねた同士として対等に向かい合えるはずだ。
 何の貸し借りも、傷もなく。
「………………っ、ん……」
 おそらく意味するところは通じていないのだろうが、意識が落ちる寸前の高揚に呑み込まれながらも彼女は小さく頷いたように見えた。

 >>>

 あれから程なくして、現れたときと同じくらい唐突に彼女は俺の前から姿を消した。
 おそらく元の時間と場所へ回帰したのに違いない。今度はちゃんと獣人の味方に回収され、傷を癒して再びあの頃の俺たちの前に現れ、何度も戦いを繰り返し――そして俺に名前を尋ねる筈だ。
 彼女はその名に何か思うところがあっただろうか? それとも完全に忘れていただろうか?
 まあ、あの時点で人間と僅かな間でも情を交わした記憶があればもっと反応が違った筈だから、やはりきっと後者なのだろうが。


「ん?」
 フードの中からひょこりと顔を出したブータが、何かに気付いたのか注意を促すよう俺の顔に頭をこすり付け、一声鳴く。
 一瞬遅れて今度は俺でも分かる、遠くから高速で移動する何かが、矢のような勢いで近付いてくる気配。
「―――――――…も……――――――――……ぉおおおぉおおおおおお――――――ん!!」
 すさまじいドップラー効果の掛かった声は俺の知っている、そして半ば予想していた相手のそれで。
 トビダマの稼動音もけたたましく飛来し、俺の目の前で見えない壁にでもぶつかったかの如く急停止したガンドックの上で、地上の埃っぽい風に散々なぶられたせいか些かぼさぼさと乱れて見える長い金の髪が翻った。
「……よう、久しぶり。上陸休暇には少し早いんじゃなかったか?」
 ぜいぜいと肩で息をするように体を揺らしたヴィラルは、心なしかふらついた足取りでガンドックのステップから数十センチ下の地面にとん、と降り立つ。目元を覆うゴーグルと頭頂から流れ落ちる髪で隠されてその顔はよく見えないが、多分耳の先まで真っ赤になっている、んだと思う。
「……い、今は宇宙軍は暇だから、ま、前倒しの申請…通った…………」
 そう律儀に答える声と同じくらいヨロヨロとしている足元が心配で手を差し出すと、反射的にそれを取ろうとした彼女の手がいきなり電流にでも触れたみたいな調子で引っ込められた。
 そのまま慌てて退がろうとする体を少々強引に引き寄せれば、今度は逆らわずに全身がぽすんと腕の中に収まる。
「いつもは俺が訪ねていく方なのに、今日は逆なんだな。…っていうか、よく俺のいる場所解ったな?」
 抱き締めた細い体からは、早鐘のように打っている心臓の鼓動が伝わってくる。
 おずおずと背中に回された大きな手がぎゅっと力を込めて抱き返してくる感触。目元に掛かった髪の毛を梳いて除けてやれば、俺の肩口に埋められた顔は思った通り首筋までほんわりと染まっている。
 小さな足が反対の肩を蹴る感触に、足元に視線を移せばブータが「邪魔者は消えますよ」と言わんばかりにちょろりと物陰へ入り込むのが見えた。いつもながら変に気の回る奴だ、ブタモグラなのに。
「………周りの…風景、を…思い、出した、から………」
 目を伏せてぼそぼそと呟く彼女をもう一度抱き締め、いつかそうしてやったようにぽんぽんと肩を叩いて耳元へ囁く。
「…おかえり」