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※ペットヴィラ子とはまた別の多元宇宙で、エロパロ板の頃に出ていたニア姫の騎士Ver.です。
※色んな意味で痛いのでご注意下さい。

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「……何だ、それは」
 薄暗く、設えはそれなりに上等だというのに不思議と殺風景な印象の拭えない部屋の一隅で、金色の髪と眼をした女は自分が腰を下ろしているベッドの傍らへと放られたその布切れを、あたかも汚らわしいものでも見るような目で一瞥した。
「お前のドレスだ。これを着て今夜、食事に付き合えよ」
 そう言って不遜に口の端を吊り上げた黒衣の男は、犬に玩具でも放ってやるような調子を隠そうともせずに女を見下ろす。
 少し長めの前髪が目元に影を落として、若く精悍なはずの顔立ちにどこか荒んだような印象を与えている様子を見上げた女の脳裏に、かつてこの男と初めてまみえた──その時はまだ、少年と呼ぶのが相応しい年頃だったが──時期の記憶がふいにちらついた。
 あの頃とはもはや、何もかもが変わってしまっている。
 小柄で些か気弱そうで、常にもう一人の男の背後に隠れがちだった子供もいつの間にかすっかりと背が伸び、引き締まった体躯は細身だが鋼線を束ねて造られたような逞しさを誇示している。かつては真っ直ぐに前を行く男の背を追っていたはずの目は深い穴のように昏い虚無を満たし、唇に乗るのは常に嘲笑めいて薄い、それでいて血に飢えた獣よりもなお獰猛な笑み。
 そして自分は、人間掃討軍の士官として、一人の戦士としてこの男と向かい合っていた筈のこの身は今や敗残の虜囚でしかない。被征服者として、征服者であるこの男の足元に這うばかりの惨めな犬だ。

「どうした、今日は随分と吠えないじゃないか。また下らないことでも考えてるのか?」
「……いったい、どんな茶番を用意しているのかと思ったまでだ」
 この男が自分をそんな、客人のように遇する理由などあるはずがない。おそらくまた何か、暇塞ぎの碌でもない趣向を用意しているに違いないのだ。
 が、次に男が口にした言葉は色々と身構えていた良からぬ事態の想定を更に上回るものだった。
「…茶番とはひどいな。ニアがどうしてもと言うから仕方なく、なんだが」
「ニア…姫様が……!?」
 この艦──そう、ここはこの男が主として君臨する超巨大宇宙戦闘艦の腹に抱えられた居住区画だ──にただ一人存在する同国人にして自分本来の主筋、かつての主君であり獣人たちの創造主でもあった螺旋王の愛娘、ニア姫。
 国が滅び、王も、同胞も失った兵士には唯一の拠り所である姫が、いったい何を?
「正確には順序が逆だったかな。ニアを夕食に誘ったら断られたんで、折角のセッティングを無駄にするのも勿体ないしヴィラルと二人っきりで飯でも食うかって言ったら、なら自分も出席すると申し出られたわけだ、お姫様自らな」
 俺がお前をいじめるとでも思われてるのかな、随分と信用がない、などと冗談めかして言う男の声に、情けなさの余り思わず噛みしめた牙がぎしりと鳴った。
 あの時、落城するテッペリンの中で唯独り命を拾った獣人の兵として、人間共の手に捕らえられた王女を護ることだけが王や同胞に報いるただ一つの道と思えばこそ、抵抗を放棄して敵に頭を垂れ、共に虜囚の身となったというのに。
 だが実際にはどうだ、自分は彼女の足枷にしかなっていない。
 王から賜った不死の体で姫を護る剣となり、盾となる筈が、この男の元では死なぬ臣下など彼女を永久と苦しめるだけのものでしかない。命が一度だけなら切り札と出来るのも一度だけで、死んでしまえばそれ以上の取り引き材料とはならないのだろうが、何度殺しても生き返る、しかしその際の苦痛だけは普通にあるときては心優しい姫に対して幾らでも人質に出来ようというものだ。
 いっそ、獣人の痛苦など我が身に代えられぬと切り捨ててくれた方が気が楽なのに。

「く…、卑劣な、真似を………あ…ぐッ!?」
 言葉の途中で左肩を襲った灼熱感の正体を、半瞬遅れて目で捉え、頭で理解する。
 自分の左肩を白刃が貫いて、その勢いで倒れ込んだベッドに縫い止めていた。
 黒いブーツに包まれた爪先が胸から右肩を踏みつけるようにして抑えつけ、左肩に突き立てられた刀を握る手が傷口を更に拡げるよう、刃を動かし玩ぶ。
「がっ、ぁ、ああぁあアアアあぁあああアア!!!」
 激痛のあまり、喉を破らんばかりの叫びが口から漏れるがそんなものは男の憐憫を買うどころか、昏い嗜虐心を煽る役にしか立たない。
「卑劣か…卑劣だと? ケダモノ風情が随分とご大層な口を叩くじゃないか」
 投げつけられる声が僅かに上擦り、肩を抉る刃に、上体を踏みにじる足に、更に力が籠められた。
 許容量を超えた痛みに脳神経は痛覚、視覚、聴覚へとノイズを送り込み、一時的に肩の激痛も、のし掛かるようにして見下ろしてくる姿も、嘲り揶揄う声も紗が掛けられたように遠く感じられる。しかしただ二つ、暴れた拍子に自らの歯で傷付けた口腔内で感じる血液の味と、服の肩とその下のシーツを染めてじわりと拡がる鉄の匂いばかりが未だ鮮明に脳裏を刺激し続けていた。
「文句があるならロージェノムを恨めよ、何をさせるつもりだったのか知らないが、手前ぇの臣下を死ぬことも出来ない体に作り変えたクソ親父を」
 目から光の失われた女の顔を覗き込み、軽く頬を叩いて奇妙に優しげな声音で囁いた男は不意に身を退き、突き刺していた刀を引き抜いた。不死身の超再生力により見る間に塞がって行く傷口には目もくれず、そのままベッドのシーツや女の衣服で刃先に付いた血脂を拭う。
 薄暗い室内の照明を弾いた白刃はきらりと翻って、未だ荒い呼吸にうち震える女の喉元からハイカラーの中にその先端を滑り込ませ、次の瞬間、ざくりという手応えと共に服の前を喉襟から股下まで切り裂いた。

 服も、ベルトも、下着をも切り開いた刃は鎖骨の下や腹部を多少引っ掻きはしたものの、体の傷はすぐに閉じ合わされる。だが当然の事ながら服は戻らず、一直線に切られた布地は自重で次第と開いて内に隠されていた素肌を露呈させた。
 兵士として僅かの弛みも無く鍛えられていながらも女性らしく円やかな曲線を描くボディラインが、そして不死の体と作り変えられる前に刻み込まれ、従って今もなお消えない凄惨な傷跡を何条も残しながらもいっそうの対照を得てより白く柔らかく強調される肌が、浮き上がるよう室内の照明の下に曝け出される。
「…っ! な、に…を……する……!?」
 痛みから解放されて一息をついた次の瞬間、自分の姿を再認識した女が狼狽の叫びを上げた。
 慌てて身を起こそうとするところを再度突き倒してベッドに沈めた黒衣の男は逆手に握った刀を振りかぶり、狙い澄まして女の頭の僅か上に突き立てる。
「くっ、どうする…気だ……」
宙で泳いでいた女の両手の、袖口部分の比較的固い生地を器用に左右共突き通した刀は頭上に掲げられた両腕を昆虫標本の如くベッドへ磔にし、即席の拘束具と化した。
「いつまで経っても飼い主に対する口の利き方を憶えないようなケダモノ女には、躾が必要だろう?」

「あ………! や……め…っ…!!」
 拒否の言葉を吐く間も、身を捩って逃れようとする間もなく服──だったものの残骸──を取り払った男の手が、邪魔する物の無くなった肌の上を這う。
 愛撫というのも憚られるほどの乱暴さで女の体を暴き立てる掌は、身じろぐたびにたゆたゆと揺れる白い乳房を両手に鷲掴み、荒々しく捏ね回しては皮膚の薄い先端を指先で強く抓み、引きちぎらんばかりに捻り上げた。
「ぃあッ! ァ、ひ……いぎぃッ!!」
「…ハ、歴戦の兵士の割にはいつもみっともない声出すよな、お前。そんなに胸で感じるのか?」
 嘲る言葉の合間にも胸を責め立てる手は一向に止まらず、押し潰しそうなくらい力を籠めたかと思えば不意にやわやわと緩く揉んだり、再び絞り上げるよう掴んだり、鮮やかに色付きしこり始めた突起に爪先を食い込ませたり指先で弾いたりと暴虐の限りを尽くす。
 うっすらと汗を浮かべ始めた白い肌の上には次々と淡紅色の鬱血痕が散り、その端から超再生によって薄れ消えはするものの、執拗に嬲り立てる手はそれでも追い付かないほどに蹂躙の痕を刻み込み続けて行く。
「…ぁ………くぅ…っ……」
 少し伸びた爪で引っかかれた肌に、蚯蚓腫れの線が何条か走ってはすぐに消える。がくがくと体が揺れ、ベッドへ縫い止められた手首はその度に刀の刃に当たって傷付くがそれも癒える。
 どんなに手荒く扱っても壊れない女に気を遣う必要など無いのだとばかり、男が彼女に与える仕打ちは常に手酷いものだった。
「…………ッ!」
 乳首の頂点にねろりと熱い舌が這わされた感触に息を呑むような悲鳴が上がる。
 それだけならば快楽を与えられると思い違えそうなものだが、この後に続く行為はこれまでの経験によって十中八九解っていた。
 ぎり、と本当に噛み千切ってしまいそうなほど力を籠めてそこへ歯が立てられる。過敏さを増した神経に激痛が走り、滲み出た血液が乳房の曲面に沿ってつうっと筋を描く。
「あゥッ! …ふ、……ぅ………」
 すぐに傷は塞がるとはいえそれで痛みを感じないわけではない。堪えきれずに目尻から溢れた涙が目元や蟀谷までを濡らす。
 だが、零れ出したものは血や涙ばかりではなかった。
「………」
 声には出さず、しかし明らかに嘲弄を含んだ気配。
 股間に押し当てられ、軽く体重を掛けるようにしてそこを圧迫していた男の膝がぬるりとした感触で僅かに滑る。それは勿論向こうにも伝わっていて、男はゆるく膝を前後させるようにして摩擦係数の低下を論う。
「血が出るくらい噛まれて濡らすなんて、おかしな女だな」
 如何なる行為にどんな反応が返るかをすっかり承知の上で度々女の体を玩び、殊更に辱めるやり口に何か一言なりと反論してやりたくとも、既に体も頭も持ち主の制御下から離れかかって何もできはしない。ただ、男がなおも膝を動かすたびに粘った水音が微かに立つことに、涙と汗に塗れた頬はいっそうと朱を刷いて艶やかに色付く。

 組み敷いていた体から力が抜け、完全に抵抗する気力を失ったのを確認すると男は身体を退き、ゆっくりと見せつけるような仕草でベルトを解いて下肢を覆う着衣をくつろげた。
 布の間から引き出された雄は手でひと扱きしただけで勃ち上がり、これから女へ更なる恥辱を与えるための刑具としての威容を明らかにする。
「そんな目をしたくらいで誤魔化せると思ってんのか? 欲しいんだろ、これが」
 それが精一杯の、表情だけでの反抗など意に介する様子もなく、男の手を添えられた肉竿の先端は露を含んだ秘唇を焦らすように数度ほどなぞり、やおらその身を粘膜のクレヴァスへ沈め始めた。
「ん…っ! …っく…ァ、ひぁあ、あアぁあぁッ!!」
 ぷつりと、僅かな抵抗も空しく男の屹立をねじ込まれた女の秘所は破瓜の血を流す。
 不死身の再生力を持つ肉体は常に、その処置が施された時点での原状へと回復しようとする。むろん処女膜とて例外ではなく、何度奪われようと、どれだけ汚されようと一旦引き抜かれれば未通の状態へと戻ってしまう。
「はは…っ、相変わらず初めてなんだな、お前のここ」
 これまでにそれを幾度も奪い、内部を犯し、獣欲の捌け口としておきながら男は改めて言葉で嬲るように確認させ、指先に拭い取った純潔の証を白い下腹になすり付けた。
 さしたる前戯も馴らしも無しに侵入されたため、まだ狭く潤みきっていない牝穴を気遣いの感じられない抽送で前後に擦り立てながら、女の体が快楽よりも苦痛により反応して悶え、叫び、のたうつのを楽しんでいるかのように腰を動かして嘲笑う。
「何度突っ込んでも処女だとか、幾らやっても孕む心配がないとか……お前をこんな風に作った奴は頭おかしいよな……それともお前、自分で兵士だって信じ込んでるだけで本当はこういう用途の玩具だったりするんじゃないか?」
「あっ、ち、ちが…っ、嘘……だっ、そ、んな………あ、ひぁう!」
 強引に体の中を掻き混ぜられながら耳元で囁かれる言葉の刃は、何度同じものを突き立てられても変わらず心に血を流させた。
 女の肉体とプライドをともに傷付けながら蹂躙する男の動きも、言葉も、あたかも仇を叩きのめすような残酷さを滲ませて次第と激しさを増していく。
「違わないだろ、乱暴にされても嫌がるふりだけで、ぐちゃぐちゃに濡らして奥まで咥え込んでるくせに。せいぜい体で男を愉しませるくらいの役にしか立たない牝犬じゃないか。今も俺に詰られながら意地汚く締め付けてるよな? とんだ変態だ、お前」
「違ぁ…っ、あぅ……くそ…っ、貴、様…、殺して…っ、やる………!!」
 血を吐くような叫びを上げ、涙の膜が張った目を強いて見開き、自分を犯す男を正面から見上げる。
 一瞬の沈黙を置いて視線を絡め返してくるその目が、嗜虐と蔑みと怒りと、なんとも名状しがたい感情の渦を内に孕んでいることに気が付かされ、怯んだところで思い出したように振り上げられた男の平手が頬を打った。
 乾いた音が響いて、痛い、よりも熱い、とでも言うべき感覚が皮膚を走る。
「やってみろよ、できるものならな」
 両の膝裏を押さえられ、肩に膝頭が付くほど折り曲げられた体を容赦なく抉られながら、女の口から上がる声はそれでも次第と湿って艶を帯び始める。苦痛も、屈辱も、相手への怒りも恐怖も巻き込んだ感覚のうねりが意識も体も呑み込み、快楽へと転化されて正気を奪う。
「ひ…っ、ぃ……ん、んんっ、んぅ、あ、ああっ! はぁ、あっ!!」
「どうした、俺を殺すんじゃないのか? それとも涎垂らして悦がるのに忙しくてそれどころじゃないか」
 腰が叩き付けられる乾いた音と性器の中を滅茶苦茶に掻き回される水音、自分の上げるみっともない声と男の嘲る言葉。全てが混ざり合って嵐のように鼓膜を叩く。濡れた粘膜を嬲る熱い肉杭が、肌の表面を苛める手指が、胸や耳元を掠めていく荒い吐息が肉体の境界線を侵して崩し、跡形もなく解体されてしまいそうな錯覚。
「あー、っ……は、ひぃ……ぃああ………ぁ……」
「もっといい声で鳴けよ、牝犬」
 尻臀を平手で叩かれる、ちりっと焼け付くような痛みが意識の端に点る。
 もう一発打たれて思わず裏返った声が上がり、背がしなった。
 生理的な反応なのか、きゅうっと収縮した内壁に咥え込んだ男の形を改めて思い知らされ、全身がびくびくとわななく。
「うぁ…、っあ、はぁん!」
 既に堪えることを忘れた意識は容易に甘えた悲鳴を唇に乗せ、過負荷に喘ぐ身体は腰をくねらせて内側の圧迫を逃がそうとした。
 その様を見下ろす男の目がいっそう昏く、満足げな色を湛えた事ももはや意識に上らず、きつく締まった肉洞を何度も何度も穿たれる快楽に女は身も世もなく悶えて泣きじゃくる。刀を抜いて自由にされたことにも気付いていない両手は己の血に染まったシーツを掴んで縋り、振り乱された金色の髪が涙と涎に塗れた顔に、汗ばむ背や首筋に貼り付き室内の照明を鈍く弾く。

 腰椎の下辺りに育った疼きが下半身に回りきり、絶頂の波が何もかもを攫っていくかと思われた刹那──いきなり男は動きを止め、女の中から自身を引き抜いた。
 ずるり、と未だ充分に硬い肉の起伏が入口付近に引っかかりながら出て行く感触に短く声が上がって、そして急に訪れた喪失感に戸惑う表情が男を見上げ、窺うような視線が投げられる。
「どうした? 止めて欲しかったんだろ」
 達しきる直前でお預けを喰らわされた淫欲が、女の身の内をぐずぐずと苛んでいることを知りながら男はわざとらしく言い放った。
 結末の解りきった戯れに、見上げる貌を失望と怒りが一瞬彩り、しかし次の瞬間、その眼の奥で矜持と肉欲を左右に掛けた秤が屈辱に塗れた答えを出す。
「……ね、が…………す……」
「聞こえるように言えよ」
 重ねて恥辱を強いる言葉に女の表情が歪む。
 しかしそれよりも強い本能に衝き動かされた身体は震えながらも姿勢を変え、シーツの上へ四つ這いに伏せて腰だけを高々と上げる格好で、自らの恥部を掲げてよく見えるよう晒した姿で。
「お願い、…しま…す……わ…たしの……なか、へ……くださ……い…」
 己を辱める言葉を口にした。

 淫らに堕ちたその姿を、薄い笑いを貼り付かせた表情で眺める男は確かに己の前を怒張させているはずの欲に急かされる風でもなく、むしろ悠々とした様子で女の哀願を嬲ってみせる。
「どこに、何が欲しいって?」
 如何に虚勢を取り繕ったところで、一度でも屈服することを覚えた心と体は容易く己を裏切り、何度でもこの男の前に膝を折る。
 これまでにどれだけの痛苦と恥辱、絶望を与えられてきたのか数えることも、考えることすら厭わしい。
 なのに、自分の指は唯々と股間に滑り込んで淫蜜にそぼ濡れた秘裂を左右に押し開き、ここに男の欲望を咥えさせろと言葉で求め、腰を振って陵辱を乞う、滑稽な見せ物を演じさせられる。
 その痴態に、嘲弄の色を隠しもしない笑い声が投げつけられ、尻肌の表面を軽く撫でた掌が更にもう一発の平手を見舞った。
「…変態の牝犬らしい、いい格好だな」

 ──ああ、厭だ、厭だ。
 歪んだ支配欲を満たしたのだろう、相手の低い笑い声も、ご褒美だとばかりに再びねじ込まれてくる肉の熱さも。
 僅かの間にまた閉じていたのか、もう一度散らされる破瓜の痛みも、そして自分の口から上がる喜悦を含んだ嬌声も。

 獣のように這いつくばった格好で犯されながら、それでも肉欲を貪って悦んでいる惨めな女が斜めになった姿見の端に映っている。
 背後から腰を突き入れている男の表情は暗く落ちかかった前髪に隠れてよく見えないが、犬に向ける嘲笑を収めた後はもう何も面白いことなど無いとばかりの仏頂面に違いない。
 今までずっとそうだった。これからも──いったい、いつまでこんな地獄が続くのだろう?

 死ぬまで?
 ――死ねぬこの身にそんな救いは訪れない。
 ではこの男が死ぬまでか? それとも姫が?

 いっそ、何かの事故でこの艦ごと白熱の恒星にでも墜ちてしまえば。
 捻れた宿縁も、取り戻せない過去も、行き場を失った心も何もかも全て、劫火に灼かれて跡形もなく失せてしまえばいい。

 ぐるぐると出口の無い迷路へ落ち込んだ思考は、背後から叩き付けられる律動と、身を内側から燻り焦がす快楽とに染め上げられて次第に鈍り、混濁し。
 衝動を満たしきった男が吐き出す最後の熱に灼き切られるようにして、一瞬の闇に沈んだ。

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 熱いシャワーを浴びて部屋の中へと戻れば、入口のすぐ側にぬっと突っ立っている人影が目に入った。

「返事がないので勝手に失礼しました。艦長からこれを渡し忘れていたと」
 ぞんざいにバスローブを羽織っただけの裸の女にも頓着した様子無く、あの艦長の下で副官を務めているという男──見た目には獣人としか思えない姿だが、テッペリンでも他のどこの戦線でもこの男のようなタイプの兵を見かけた憶えはヴィラルには無かった──は片手に乗る大きさの化粧箱を差し出した。
 受け取って蓋を開けてみれば、艶消しを施した金色の装身具がビロードの台座にしっとり納まっている。
 会食の席に着けてこいとでも言うのだろうか、確かに先程渡された衣装と似合いそうな色味だ。

 乾きたての髪を掻き上げながらベッドに近付き、初めにそこへ投げ出された状態のまま放置されていたドレスを拾い上げてみる。
 獣人の、大きく爪の鋭い手の中でいやに小さく頼りなげに見えるそれは、血のように深い赤色の上等なベルベットで仕立てられたイヴニングだった。
 体に当ててみればおそらく誂え向きなのだろう、ボディラインに張り付くようなデザインのドレスは胸元が広く開けられ、裾から切れ込んでいるスリットもおそらく太股が露わになるほどの深さまでで、要するにこれは纏った者を貴婦人というよりは娼婦の如き出で立ちに見せる意図を持たされているのに違いない。ドレスと共にあった下着類や長手袋に至っては殆どが柔らかな光沢を持つ黒のサテンシルクで揃えられ、そういった演出をいよいよ確固たるものにする働きしかないのは明らかだ。
「……卑しい慰み者には相応の衣装、か」
 もはや憤ったり嘆いたりするほどの気力も湧いてこないままに、投げ与えられた下着を一枚、また一枚と身に纏う。
 件の副官は未だドアの側に直立したままだったが、向こうが婢女の裸になど興味はないとばかりに表情の一つも動かさずにいる以上、こちらもいちいち恥ずかしがってやる義理はない。

「背中を留めましょうか」
 不意に置物のような男が口を開く。
 一瞬何のことかと不思議に思い、たった今袖を通したドレスの背面を閉じてやろうと提案されたのだと言うことに思い当たる。
 別段、自分でするのに苦労するというほどのものではないのだが、頼んでもいないのに手を貸すと言ってきたのなら借りてやれ、と半ば自棄のような心持ちで黙って背を向けた。
 暫しの間、ファスナーが滑る微かな音と衣擦れしか聞こえない。
 背後に自分より頭一つ分ほど長身の男が立っているというのに、いやに気配は薄かった。
 長い指の先が小さな留め具を掛け、ファスナーの引き手を抓んで閉じた動作程度は感じ取れるにせよ。
「首飾りもこちらに」
 促されるまま化粧箱から取り上げたそれを、振り返りもせずに背後の男に渡す。
 片手が首の前を過ぎって艶を消した金細工の一端を取り、ゆっくり項の辺りへと回った。素肌に金属の巻き付く、ひやりとした感触が些か疎ましい。

 首の後ろでかちり、小さな音と共に留め具を填められ、喉から大きく開いた胸元までを彩った装身具はそれなりに豪奢な趣と言っても差し支えなかったが、しかしどこか首輪とそれに付けた鎖を思わせもする。
 いや、実際にそれと大した違いはないのだろう。
 所詮この女は肉の慰みになる程度の役にしか立たない飼い犬なのだと、誰の目にも判るような標しを纏わされて引き立てられていく趣向というわけだ。憎い人間の男と、その部下たちと、本来の主たる姫の前に。
 吐き気がしそうな屈辱に抗いもせず従う自分を、半ば我が身の外側から眺めるような心地で、ただひたすら無様だと思った。

 陰鬱な溜息を肺腑の底から吐き出し、おざなりに髪を梳った櫛を鏡の前に置けばそれが合図だったかのように背後につくねんと佇んでいた男が無言で手を差し出す。
 こちらも無言でその手を取って立ち、背筋を伸ばした姿勢で自室を後にする。

 そう、せいぜい見かけだけでも毅然と、己の意志で会食の席に参じたのだと見えるように。
 願わくば姫が、惨めな臣下を慮って心を痛める事などないように。


 喉元で揺れる金の鎖が、なけなしの矜持に縋る犬を嘲笑うかのようにちり、と涼やかな音を立てた。