「埋葬」(2012/02/20 (月) 23:06:47) の最新版変更点
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**埋葬 ◆6lu8FNGFaw氏
黒沢は美心の亡骸を抱え、暗い森の中を彷徨っていた。
美心を埋葬するのに適した場所を探す為。
胸中にあるのは悲しみ…!ふと気を抜くと、激情が再び体の内で暴れだす…!
「……ウオオオオオ…!」
黒沢は咆哮をあげ、美心を抱いたままその場にうずくまる。
先ほどから何度、こうして悲しみに支配されたか分からない。
後悔…! 圧倒的後悔っ…!
…彼女の傍を離れるなら、何故…、家具の陰やクローゼットの中に美心に隠れるよう言わなかったのか。
そうすればやり過ごせていたかもしれぬ。
自分のほうが先に殺人者と遭遇していたかも知れぬ。そうすれば救えていたっ…!きっと…!
悲しかった。ただ、ただ、悲しかった。
顔を涙と鼻水でぐちょぐちょに濡らしながら、黒沢はひたすら泣いた。
放送で美心の名前が読み上げられたときも、その場に泣き崩れた。
…そうして、しばらく経って激情が収まってくると、黒沢は再び立ち上がり、のそりと歩き出す。
別荘を出てからずっとこの繰り返しだった。
どのくらい歩いただろう。
森の中でふと、鼻につんとくる香り。磯の香り。黒沢は足を速めた。
視界が開けた。
海だ。
海は見えたが数十メートル下…断崖絶壁になっている。
海からの風が頬をなでる。泣き腫らした目に夜風が当たり、ひりひりする。
遠くを見つめる。
島一つ見えやしない。見えなければ、泳いでどこかの島まで逃げ切る、なんて行動も起こす気になれない。
美心の亡骸に目を落とし、思った。
この見晴らしの良い場所に埋葬するなら、せめてもの慰めになるのではないかと。
美心の顔を見つめる…その顔が涙で滲んで揺れた。
黒沢は海から目をそらし、もと来た道を振り返った。
数歩戻ったところに、ふと白いものが光って見えた。
木の根元で点々と白く光って見えたそれは、小さな花だった。
こんな日の当たりにくい場所でも、健気に咲いている。
黒沢は木の根元を掘り返していた。花にはかからぬように気をつけながら、土を掘りだした。
黒沢の持っていた支給品…小さな金属のシャベル。
こんなことに使いたくなかった。こんなことにしか使い道のない…だが、今は有難い支給品。
シャベルが小さいなら数だっ…!その分手を動かせばいいっ…!
黒沢は無心になって堀り続けた。
ようやく、女性を一人埋められるくらいの穴ができた。
地面の窪みに美心をそっと横たえる。
「無念だったろう…!」
黒沢は美心に語りかけた。
「美心さんも…、たぶん何かの目的があって参加していたはず…。
このゲームが殺し合いだなんて、オレと同様、聞かされてなかっただろうが…。
こんなところで死ぬのは…無念だっただろうっ…!」
黒沢は美心の手をとり、語りかけた。美心の指はすっかり冷えきっていた。
大粒の涙が美心の指を濡らす。
ふと考えた。この女性が参加する目的は…何だったのか…?
美心の体に土をかけた。
足のほうから順番にかけていった。だが、顔の周りになると、手が止まる…。
自分を愛してくれた女性…!初めて好きだと言ってくれた相手…!
ようやく土をかけ終え、分厚い手で土を平らにならした。
合掌する。
本当なら親元に帰してあげたいが、叶わぬこと…。不甲斐無い男ですまんっ…!美心さん…!
汗だくになった額を手の甲でぬぐいながら、海のほうに向かって座り込む。
これからどうする…?
美心さん…、いや、美心がいなくなってしまって、心の支えが無くなった…!
ふと、先ほど感じた疑問を思い出す。
何だ…?美心が参加した目的は…?
できれば、美心の無念を晴らしたい…!せめて…!
黒沢は腕を組んで考えた。推理だっ…! 今だけ憑依しろっ…!コナン君…!
黒沢は腕を組んだままうろうろと歩き回った。
が…駄目っ…!
なんにも思いつかないっ…!
道中何を話したんだっけか…。ずっと不安で、ろくに互いのことも話さなかったな…!
もっと色々聞いときゃ良かった…!
オレも…何でもいいから話しときゃ良かった…!穴平のこととか…太郎とか…スーパーカップのこととかっ…!
ふと、美心の持っていた支給品のデイバッグを漁る。
藁をもつかむような思いだった。美心が黒沢を頼っていたように、黒沢もまた、美心の存在を心の支えにしていたのだった。
美心のデイバッグから出てきたものは、通常支給品と、小さなラジカセ。
ラジカセはずいぶん旧式の代物だった。
(おお…今どきカセットテープだっ…)
ふと見ると、中のカセットテープは少しだけ進んでいる。
「?」
そのとき、黒沢に圧倒的閃きっ…!
もしかしたら…!
黒沢は震える指で撒き戻しボタンを押す。
キュルキュルと音が鳴り、音が止んでから再生ボタンを押す。
数秒間の雑音…、その後、小さくか細い声が流れた。美心の声だっ…。
「カイジ君…」
ブチッ
手は停止ボタンを押していた。
え…? え…? え…?
カイジ君…?
黒沢は動揺したのだった。美心の声で別の男の名前が呼ばれたことに。
これが録音されたのはたぶん…公衆便所…。
美心に出会う直前…。オレが強烈な便意を感じ、便所に駆け込む前…。
ゲームが始まったばかり…こんな状況で録音する内容は…きっと重要なメッセージ…!
それも、美心にとって最も重要な人物に対しての…!
そして、その人物はこのゲームに参加しているっ…!
………もしかして、恋b
「いやいやいやっ…!それだけはないっ…!絶対無いっ…!!
美心が二股なんてするはずないっ…!!
もし本当に恋びt…なら、オレのことを好きになった、などというはずがないっ…!!」
黒沢は思わず声を上げていた。
心が美しいから…オレの美心は…!
「つまり…このカイジ君ってのは、兄弟か親戚っ…!
だから美心にとっては重要人物…!身内だから…!
…例えば、幼少の頃生き別れた兄弟…! その兄弟を救うため、美心は勇気を振り絞り、単身ここにやってきたっ…!」
黒沢の中でどんどん話がドラマティックに盛り上がる。
「そうだっ…!大事な身内に残したメッセージなら、届けてやらないとなっ…!
…だが、どうやってカイジ君を探す…?
………………。
身内だとしたら…、美心によく似ているんだろうか、やはり…?」
あのつぶらな目…、立派な鼻…、愛嬌のある、大きな口元…!
そうだっ…!きっとそうに違いないっ…!
「よしっ…探すぞっ…身内のカイジ君を…!
それで必ず…このメッセージを伝えるっ…!
言わば…オレはメッセンジャー! 正義の味方、メッセンジャーっ…!」
………色々な勘違いはあるものの、黒沢は、こうして今後の方針を決めた。
だが今は夜…体を休める…。そして、夜が明けてから行動するっ…!
【B-7/崖沿い/夜】
【黒沢】
[状態]:健康、やや体力消耗
[道具]:不明支給品0~4 支給品一式×2 金属のシャベル 小型ラジカセ
[所持金]:2000万円
[思考]:今は体を休める 美心のメッセージをカイジ君に伝える カイジ君を探す
※メッセージは最初の部分しか聴いていません。
※美心に似ている人物を探そうと考えています。
|071:[[それぞれの試金石(前編)]][[(後編)]]|COLOR(#FFFFFF):BGCOLOR(#a9a9a9):CENTER:[[投下順>本編投下順]]|073:[[悪戯]]|
|071:[[それぞれの試金石(前編)]][[(後編)]]|COLOR(#FFFFFF):BGCOLOR(#a9a9a9):CENTER:[[時系列順>本編時間順]]|073:[[悪戯]]|
|058:[[想い>「想い」]]|COLOR(#FFFFFF):BGCOLOR(#a9a9a9):CENTER:黒沢|083:[[事故]]|
**埋葬 ◆6lu8FNGFaw氏
黒沢は美心の亡骸を抱え、暗い森の中を彷徨っていた。
美心を埋葬するのに適した場所を探す為。
胸中にあるのは悲しみ…!ふと気を抜くと、激情が再び体の内で暴れだす…!
「……ウオオオオオ…!」
黒沢は咆哮をあげ、美心を抱いたままその場にうずくまる。
先ほどから何度、こうして悲しみに支配されたか分からない。
後悔…! 圧倒的後悔っ…!
…彼女の傍を離れるなら、何故…、家具の陰やクローゼットの中に美心に隠れるよう言わなかったのか。
そうすればやり過ごせていたかもしれぬ。
自分のほうが先に殺人者と遭遇していたかも知れぬ。そうすれば救えていたっ…!きっと…!
悲しかった。ただ、ただ、悲しかった。
顔を涙と鼻水でぐちょぐちょに濡らしながら、黒沢はひたすら泣いた。
放送で美心の名前が読み上げられたときも、その場に泣き崩れた。
…そうして、しばらく経って激情が収まってくると、黒沢は再び立ち上がり、のそりと歩き出す。
別荘を出てからずっとこの繰り返しだった。
どのくらい歩いただろう。
森の中でふと、鼻につんとくる香り。磯の香り。黒沢は足を速めた。
視界が開けた。
海だ。
海は見えたが数十メートル下…断崖絶壁になっている。
海からの風が頬をなでる。泣き腫らした目に夜風が当たり、ひりひりする。
遠くを見つめる。
島一つ見えやしない。見えなければ、泳いでどこかの島まで逃げ切る、なんて行動も起こす気になれない。
美心の亡骸に目を落とし、思った。
この見晴らしの良い場所に埋葬するなら、せめてもの慰めになるのではないかと。
美心の顔を見つめる…その顔が涙で滲んで揺れた。
黒沢は海から目をそらし、もと来た道を振り返った。
数歩戻ったところに、ふと白いものが光って見えた。
木の根元で点々と白く光って見えたそれは、小さな花だった。
こんな日の当たりにくい場所でも、健気に咲いている。
黒沢は木の根元を掘り返していた。花にはかからぬように気をつけながら、土を掘りだした。
黒沢の持っていた支給品…小さな金属のシャベル。
こんなことに使いたくなかった。こんなことにしか使い道のない…だが、今は有難い支給品。
シャベルが小さいなら数だっ…!その分手を動かせばいいっ…!
黒沢は無心になって堀り続けた。
ようやく、女性を一人埋められるくらいの穴ができた。
地面の窪みに美心をそっと横たえる。
「無念だったろう…!」
黒沢は美心に語りかけた。
「美心さんも…、たぶん何かの目的があって参加していたはず…。
このゲームが殺し合いだなんて、オレと同様、聞かされてなかっただろうが…。
こんなところで死ぬのは…無念だっただろうっ…!」
黒沢は美心の手をとり、語りかけた。美心の指はすっかり冷えきっていた。
大粒の涙が美心の指を濡らす。
ふと考えた。この女性が参加する目的は…何だったのか…?
美心の体に土をかけた。
足のほうから順番にかけていった。だが、顔の周りになると、手が止まる…。
自分を愛してくれた女性…!初めて好きだと言ってくれた相手…!
ようやく土をかけ終え、分厚い手で土を平らにならした。
合掌する。
本当なら親元に帰してあげたいが、叶わぬこと…。不甲斐無い男ですまんっ…!美心さん…!
汗だくになった額を手の甲でぬぐいながら、海のほうに向かって座り込む。
これからどうする…?
美心さん…、いや、美心がいなくなってしまって、心の支えが無くなった…!
ふと、先ほど感じた疑問を思い出す。
何だ…?美心が参加した目的は…?
できれば、美心の無念を晴らしたい…!せめて…!
黒沢は腕を組んで考えた。推理だっ…! 今だけ憑依しろっ…!コナン君…!
黒沢は腕を組んだままうろうろと歩き回った。
が…駄目っ…!
なんにも思いつかないっ…!
道中何を話したんだっけか…。ずっと不安で、ろくに互いのことも話さなかったな…!
もっと色々聞いときゃ良かった…!
オレも…何でもいいから話しときゃ良かった…!穴平のこととか…太郎とか…スーパーカップのこととかっ…!
ふと、美心の持っていた支給品のデイバッグを漁る。
藁をもつかむような思いだった。美心が黒沢を頼っていたように、黒沢もまた、美心の存在を心の支えにしていたのだった。
美心のデイバッグから出てきたものは、通常支給品と、小さなラジカセ。
ラジカセはずいぶん旧式の代物だった。
(おお…今どきカセットテープだっ…)
ふと見ると、中のカセットテープは少しだけ進んでいる。
「?」
そのとき、黒沢に圧倒的閃きっ…!
もしかしたら…!
黒沢は震える指で巻き戻しボタンを押す。
キュルキュルと音が鳴り、音が止んでから再生ボタンを押す。
数秒間の雑音…、その後、小さくか細い声が流れた。美心の声だっ…。
「カイジ君…」
ブチッ
手は停止ボタンを押していた。
え…? え…? え…?
カイジ君…?
黒沢は動揺したのだった。美心の声で別の男の名前が呼ばれたことに。
これが録音されたのはたぶん…公衆便所…。
美心に出会う直前…。オレが強烈な便意を感じ、便所に駆け込む前…。
ゲームが始まったばかり…こんな状況で録音する内容は…きっと重要なメッセージ…!
それも、美心にとって最も重要な人物に対しての…!
そして、その人物はこのゲームに参加しているっ…!
………もしかして、恋b
「いやいやいやっ…!それだけはないっ…!絶対無いっ…!!
美心が二股なんてするはずないっ…!!
もし本当に恋びt…なら、オレのことを好きになった、などというはずがないっ…!!」
黒沢は思わず声を上げていた。
心が美しいから…オレの美心は…!
「つまり…このカイジ君ってのは、兄弟か親戚っ…!
だから美心にとっては重要人物…!身内だから…!
…例えば、幼少の頃生き別れた兄弟…! その兄弟を救うため、美心は勇気を振り絞り、単身ここにやってきたっ…!」
黒沢の中でどんどん話がドラマティックに盛り上がる。
「そうだっ…!大事な身内に残したメッセージなら、届けてやらないとなっ…!
…だが、どうやってカイジ君を探す…?
………………。
身内だとしたら…、美心によく似ているんだろうか、やはり…?」
あのつぶらな目…、立派な鼻…、愛嬌のある、大きな口元…!
そうだっ…!きっとそうに違いないっ…!
「よしっ…探すぞっ…身内のカイジ君を…!
それで必ず…このメッセージを伝えるっ…!
言わば…オレはメッセンジャー! 正義の味方、メッセンジャーっ…!」
………色々な勘違いはあるものの、黒沢は、こうして今後の方針を決めた。
だが今は夜…体を休める…。そして、夜が明けてから行動するっ…!
【B-7/崖沿い/夜】
【黒沢】
[状態]:健康、やや体力消耗
[道具]:不明支給品0~4 支給品一式×2 金属のシャベル 小型ラジカセ
[所持金]:2000万円
[思考]:今は体を休める 美心のメッセージをカイジ君に伝える カイジ君を探す
※メッセージは最初の部分しか聴いていません。
※美心に似ている人物を探そうと考えています。
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