Justice to Believe ◆VACHiMDUA6



「ここがホテルか」
 防人こと――英語とフランス語のチャンポンだが――キャプテン・ブラボー、桐山と別れてから暫くして、ホテルに劉鳳は到着した。
 真・絶影から飛び降り、解除。
「く……思った以上に、疲労が大きい」
 疲労に少し歩を弱めながらもホテルの入り口を開く。

「平賀才人はいるか!」
  いるか、いるか、いるか――――
 ホテルに声が木霊する。
 どうしてなかなか、人が出す音の無いホテルというのには音が響くらしい。
「平賀才人はいるか!」
 再度の呼びかけ、
  いるか、いるか、いるか――――
 木霊以外は全くの無音。
 平賀才人という人物の返答、存在は期待できない。
 時間的に考えて、彼がまだ到着していないということは考えられないだろう。

「遅かったか……」
 真・絶影の速度が本来のものなら、或いはもっと早く出発していたなら……劉鳳の頭に様々なifが思い浮かぶ。
 しかし所詮、そんなifなど意味がない。劉鳳は思考を切り捨てて、ホテルを後にしようとして――
   ――気がついた。

「これは……」
 破壊痕。いや、戦闘痕といったところか。
 ホテルの入り口より少し離れた部分にそれはあった。
 アスファルトで舗装された道路に深々と刻まれるいくつもの足跡。普通に移動していて、このような足跡がつく筈もない。
 これは、紛れもなくここで戦闘があったという証。
 劉鳳は考える。
 平賀才人はこのホテルに来て、ここで何者かと遭遇し、結果――戦闘になった、と。
 桐山から聞いた限り、平賀才人は自分から積極的に戦闘を仕掛けるタイプではない。
 むしろ彼は、襲いかかる脅威を防衛するような人間だろう。
 となれば、戦闘の原因は彼と遭遇した側に由来するだろう。
 確かなことはひとつ。
 それは――平賀才人と遭遇した人間は、DIO、アーカード、拳王、勇次郎などと同じく、殺し合いに乗った人間であるということ。

「社会不適格者共め!」
 忌々しげに呟く劉鳳の言葉に呼応して、絶影――周囲のアスファルトを分解して構成された――が触鞭を地面に振り下ろす。
 結果、乾いた破裂音と共に地面は爆散した。

咎めた、防人衛と同じ破壊行為。
 しかしそのことを考える余裕が今、劉鳳の頭にはない。

「俺は……また間に合わなかった」
 ポツリ、と言葉が零れる。
「あの少女のように」
 零れた言葉は連なって。
「俺は遅いのか」
 ポツリ、ポツリと落ちてゆく。
「始めの場、光成という老人にむざむざと少女を殺させ、今度の場では、平賀才人を危険にさらす。
 俺は……俺の正義は間違っているのか」
 自分へ落ちる、言葉の雫。
「否ッ!
 俺は確かに遅い!――だが、俺の正義は間違ってなどいない!」
 しかし、雫は意志を穿つことはない。
「あの少女のような犠牲を出さない為にも、殺人者は断罪しなければならない!」
 迷うこともない。いつだって劉鳳は、正義を貫くだけなのだから。

 ともすれば、劉鳳が為すことは限られている。
 平賀才人の安否を確認すること、ブラボー達と合流すること、平賀才人を襲った悪を断罪すること、そしてこの殺し合いを断罪すること。
 全てを可能な限り、いや可能を突破してでも正確に!的確に!そして何よりも――速く! 行わなければならない。
 だったら今すべきことは、それは『平賀才人の安否の確認』。

ひとまず、再び戦闘の現場を確かめてみる。何を確かめるにも、ここが一番確かなことがある場所だ。

 ひとしきり、確認してみて、結論。
「平賀才人はひとまず逃げられたようだな」
 現場に残された痕には、出血痕はない。それに……死体も、ない。
 ならば、適度に殺人者の相手をして逃げたか、相手に連れ去られたのどちらかだ。
 どちらにしても、追いつければ問題はない。
「東か、西か、それとも北か…」
 ホテルはマップの最南端。ここから移動できるのはその三方しかない。
「悩んでいても仕方がない……真・絶影!」
 再び真の姿になった絶影に乗り、劉鳳は飛んだ。

 一刻も速く、平賀才人を保護するために。
 一刻も速く、ブラボー達と合流するために。
 一刻も速く、悪を断罪するために。
 一刻も速く、こんな殺し合いを止めるために。
 一刻も速く、犠牲者をなくすために。

    ◇  ◆  ◇

「なんだあ!?」
 決意新たに北へと歩き出した才人だったが、足を止めていた。
 自分がさっきまでいたホテルの方向、いやホテルから聞こえてくる破裂音に。
 あからさまな破壊を表すそれに驚きを隠せない。
  破壊音……破壊――殺し合い。
 十中八九殺し合いに乗っている人間が近くにいる、その事実に才人は更に驚愕する。
 しかし、それは一度聞こえただけであり、戦闘音というにはあまりにも呆気ない。
 戦闘というよりは寧ろ、癇癪のようなものだった。

 それから暫しその場に立ち尽くすが、音は聞こえない。
 無視するか、それとも――と、
 才人の思考が決定するより早く、ホテルから何かが飛び出した。
 よく目を凝らすと、何か大きな生物に男が乗っているということがわかった。
 男は猛烈なスピードで才人から見て右――西の方角へ、飛行している。
 西には散達。
 彼らはバイクに乗っていたが、今の男はバイクより速い。
 このままではかち合うことは必至。
 散達とかち合えば、男がどうなるかは……容易だ。

暫し考える――――までもない。答えは決まっている!
 男がさっきの破壊音の主だとしても!
 シエスタの死を悲しむ自分のように、ルイズの安否を心配する自分のように、男にもそんな人間がいるならば――
「――いかないワケには、いかねーだろ!」
 才人も西へ向かって走り出した。

 ――ごめんな、ルイズ。会うのはもうちょっと遅れる。
   けど、絶対会えるから――それまで無事でいてくれ。

     ◇  ◆  ◇

「散」
 村雨が、背後にいる散に声をかける。
 何だ、と散は応じる。
「ホテルから音が聞こえる。何かを壊しているような音だが……どうする?」
 無表情だが、思案をにじます村雨の言葉に、散は素っ気なく返した。
「構わん。今は下水処理施設とやらに向かうことが先決だ。
 それに自らこちらに向かってくるかもしれぬ」
「そうか」
 散の返答に納得し、アクセルを更にふかす村雨。
 それから数拍を置いて村雨達の頭上に、そいつは現れた。

「止まれ! 平賀才人を知らないか!?」
 絶影に乗った、劉鳳その人である。
 頭上を見上げ、散に指示を仰いで――その後、村雨はバイクを停止させた。

バイクを降りる散達に、絶影から降り解除した劉鳳は今一度、平賀才人を知らないか、と問いかけた。
 知っているなら居場所を、更に場合によっては断罪をすることを考えていた。
 そんな劉鳳の様子を知ってか、散は平賀才人を知っている、そして――先ほど戦った、と答えた。
 驚愕を口にする劉鳳に、散は言った。
「何を驚く?
 この散、人類を抹殺する為の存在。ならば私と対峙した以上、死合をする義務がある。サイトとやらもそうだった」
 その言葉を聞いた劉鳳の目に炎が灯る。正義、という名の。
「そのような戯言を……!本気で言っているのか!」
 怒り高らかな劉鳳の声色に、散は、
「人間という真の悪魔を滅ぼす。…その星義がこの散にはある!」
 いや、散も声高に、星義を返した。

「それが正義などと……戯言をほざくな毒虫が……ッ!
 俺と絶影が貴様らを断罪するッ!」
「正義ではない!星義だ!!!」

 最早、問答は無用。

「絶影!」
 三度の発現。
 対して散は既に装着。
 触鞭を振り上げる絶影と、
 構えをとる現人鬼。

 遂に、拳の火蓋が切って落とされ――

「待て」
 ――る瞬間に、村雨の言葉が中断させた。

 二人の視線を受けるが、村雨は全く表情を変化させず、散と劉鳳の間に割って入った。
「何のつもりだ。良よ」
「今度は邪魔をするなと言われていない。
 お前は……散は、先ほどの戦いで負傷している。それでは全力を出し切れないだろう。
 それに――」
 相も村雨の表情は変わらず、
「――見つけたい」
 されど、強い思いを言葉に乗せて、言い切った。
 「見つけたい」――主語も述語もない、五つの音の塊。
 しかし、乗せた思いは十二分。

「わかった。ここは好きにするがいい」
 村雨の思いを受け取り、散は拳を収めた。

「…何のつもりか知らないが、貴様らを断罪することには変わりない」
 劉鳳の為すことは変わらない。自分の正義を貫くこと。悪を断罪すること。

「行くぞ……キサマの痛みを見せてみろ」
「ほざけ!絶影!」
 村雨の姿は赤く変わり、絶影は刃を構える。
 相手を変えて、戦いの火蓋は再び切って落とされた。

「ヌゥウン」
 地を力強く蹴り、その反動でZXは絶影までの距離を大きく詰める。
 移動距離も速度も、規格外の一飛。そのまま腕を絶影目掛けて振り下ろす。
「遅い!」
 しかし、絶影はそのZXすらも上回る速度で身を躱す。そして変わりとばかりに自らの攻撃をZXに打ち込む。
 攻撃後の隙を疲れたZXに回避のしようはなく、足場の無い空中ということもあり、派手にはじき飛ばされ、地面に大きく体を打ち付けた。
 しかし、何事も無かったかのようにZXは立ち上がる。
「これは……痛みだ。痛みはもう知った……他の何かを見せてみろ」
「ほざけ!ならば、貴様が俺の正義に屈するまでやり続けるだけのこと!
 絶影ッ!!」
 劉鳳の言葉に呼応し、更に速度を増しZXに遅いかかる絶影。
 対するZXは拳で迎え撃つが、右かと思えば左、左かと思えば右、正面かと思えば上、と予想を超えた方向から絶影は襲いかかる。
 ZXの動態視力を持っても完全に追いきることは不可能。或いは本来的なスペックから言えば可能なのかもしれないが……。

(これが…信念、生きる意味の有無というわけか……)
 自分と目の前の男との差には、正直嘆息が洩れる。これが自分――意味を持たぬ者と、目の前の男――意味を持つ者との差。
(だが…)
 多種多様な方向から手数と速度で押す絶影。しかし惜しむらくは力、力が足りない。
 対するZXにあるものは並み外れたタフネス。
 力が足りない以上決定打は生まれない。
 もっとも、決定打でないとしても相当の疲労や衝撃は体に溜まるのだが、ZXの機械の体は容易にはその二つの蓄積を良しとしない。
 結局、お互い決定打は生まれない。それどころかZXに至っては、一撃すら決められない。
 ならば、一撃。一撃を決めることを考えてZXは拳を振るう。
 しかし、一撃。たったの一撃たりとも掠ろうとしない。
 一方的な釣瓶打ち、だがそれでもZXは拳を振るう。

一方、劉鳳も驚愕していた。
 余りのタフネス。通常ならばとうに限界を迎えているはずなのに、目の前の悪はまだ倒れない。
 しぶとい。いや、何かそれ以上の立っていられる……立たなければいけない理由に突き動かされているかのような不屈。
 だが、どんな理由が有ろうとも悪である以上――断罪しなければならない。
(ならば、すべきことは……ッ!)
 更なる……真の絶影を用いて目の前の男を完全断罪。
 この男を倒したとしても、まだ後ろには控えている悪がいる。
 全力で、迅速に、目の前の男を断罪する。
 真の能力を用いて!

 しかし、目の前の男の攻撃は当たらないとはいえ凄まじいもの。解放の隙は十分反撃の機会を与えてしまう。
(ならばまずはッ!)
「まだだ絶影ッ!もっと……もっとだ!」
 更なる高速化。
 男の動きを封じる程の一撃を放つ!
 絶える影。そして更に硬質化する触鞭。
 その一撃は絶影目掛けて突き出されたZXの拳を断ち、勢いそのままにZXの喉元へと突き刺さった。
 しかし絶影の攻撃は止まらず、もう一方の触鞭がZXの頭部へと向かう。

回避のしようの無い一閃。命中すれば命の無いことは間違いが――それは完全にZXへと届かず、頭部の外殻の一部に止まった。
 それの到達よりも数瞬速く、ZXは刺さった触鞭を引き抜き、絶影の体を上へと投げ出していたためだ。
 この行動が間に合わなかったのなら今頃ZXは次の放送で名前を呼ばれるうちの一人となっていただろうが、現実は間に合った。
 その結果、ZXと絶影の立場は逆転する。
 攻撃を当てていた側は当てられる側に。そして攻撃を当てられていた側は――当てる側に。
「フン!」
 放り上げられた絶影目掛けて、十字の手裏剣が飛来する。
 通常ZXの肘にセットされているそれは、ダイヤモンドより硬い刃、鋼鉄をも貫く威力を有する。
「く……ッ」
 解除をするか――いや、ここで解除をして次に発現できるのか?
 一瞬、劉鳳の頭をそんな考えがよぎる。
 それはほんの一瞬だが、迷いは行動を鈍らせる。
 体勢を整えるだけで精一杯な絶影は解除も回避も間に合わず、迫る手裏剣を叩き返そうとするが、逆にその触鞭が手裏剣に千切り落とされた。
 それで絶影本体を切断されなかったのは、流石劉鳳といえよう、だが――まだZXの攻撃は終わらない。

「ウオオオオオオオオオオオオオオオオオオ」
 地から、天へと登る蹴撃。
 当たれば行動不能は免れぬ一撃。
 だがしかし、絶影も――劉鳳もやられっぱなしではない!
「撃ち滅ぼせ!絶影ッ!!」
 迫り来るZXの攻撃を避けつつ……その足を掴んで――勢いそのままに地面へと叩きつける!
 元来の力に加え、振り子のように遠心力で加速がついたZXは、猛烈なスピードで地面へと距離を詰めさせられる。
「うおおおおお」
 片腕が破壊され、且つ自らの一撃を相手の攻撃に転じさせられた以上、避けようなく地面へと激突。
 結果――強大な爆裂音と砂埃が当たりを埋め尽くすことになる。

     ◇  ◆  ◇

「はあ――は―あ」
 立ち止まり、大きく肩で息をする。
 才人は改めて認識する。やはりバイクと謎の乗り物、徒歩……いや徒走との差は大きいらしい。
 走れども走れども、なかなか散達のもとへとたどり着かない。
 この分ではもう――自分の時のように――争いは始まってしまっているだろう。
「くそッ!……間に合ってくれよ!」
 息を整え、再度走りだそうとしたその時。
 才人の耳に強大な爆裂音が入った。

これは明らかな戦闘の証拠。
 つまり――先ほどの男と、散達との戦いが始まってしまったということ。
 『散達は殺し合いに乗っている』
 その事実を再認識しつつ、才人は再び走り出す。
「頼むから、無事でいてくれよ!」

 ――まだ見ぬ人間の安否を祈って。

     ◇  ◆  ◇

 視界を覆う土埃のなか劉鳳は息をもらす。
「やったか?」
 つい、そう嘆息してしまうほど先程に一撃は見事に決まった。
 これならば先程のタフネスも屈したのではないか――この考えが現実的でないことは重々劉鳳も承知している。
 寧ろ先程のタフネスだからこそ、この程度の一撃では屈しないということも。
 しかしそれでも――先程までのダメージが蓄積し、倒れているのではないか――そう、考えてしまう。
 そんな思考の中、徐々に霧は晴れていく。
 そこには赤い姿の怪人が、
「――増えた、だと!?」
 三人いた。

 しかし、よく見ると――喉元や腕の傷が回復している。
「幻影!……これが貴様の能力か!」
 しかし、ならば本体はどこへ行ったというのだ?
 ――逃げた
 有り得ない。あれほど戦いを望んでいたものだ。それは考えられない。
 ならば、隠れた――そう考えるのが順当であろう。
 だとしたらどこに?
 ――空
 有り得ない。奴は地面に叩きつけた
 ――地面
 ……潜ったか!

 ここまで劉鳳の思考は一瞬。隙というには余りにも短い。
 しかし――
「一瞬で……十分だ」
「後ろ!!」
 ――ZXにはそれで十分。
 背後の地面から突如出現したZX目掛け、絶影は触鞭を振るう。
 その速さも十分。
 不意を突かれて尚も、ZXと同じ速度。相打ちは免れまいが……!
「ナニッ」
 一方的にZXの拳だけが命中する。
 よろける絶影。
 そのまま、連打。
「ちぎれた腕で……き……貴様は…」
 そう、ZXは正常な腕で触鞭を掴み取り、ちぎれた腕で絶影を殴打していた。
 痛みを感じ辛い、パーフェクトサイボーグのZXのみに許された芸当。
「そうだ!この程度……俺の痛みではない!!」
 散と出会ったことで痛みを取り戻したが、未だに痛みには強い。

そのまま絶影を地面に引き倒し、更なる殴打を加える。
 先程とは真逆の拳の嵐。
 とうに相手は意識を手放し、その体を単なる肉の塊に変えるもの。
 だが――
「フ……その程度か……」
 劉鳳は、絶影は砕けない!
 それどころか更に闘志を燃やす!
「!!」
 劉鳳の闘志に、言葉には出さないにしろZXは感慨を受ける。その一瞬。
 その一瞬が命取りだ。
「真・絶影!!」
 絶影の両腕の拘束が解け、下半身が……巨大な蛇を思わせる尾に変わる。
 そして、その尾を持ってZXを弾き飛ばす。
「チィィ」
 飛ばされつつも、体勢を整え更に絶影へ向かうZX。
 だがしかし……その拳は届かない。
 何故なら――
「剛なる左拳“臥龍”」
 ――それよりも速く、ロケットのような拳がZXを叩き飛ばしたのだから!

「ガアアァ」
 再び上空へと打ち飛ばされるZX。そこへ今度は新たに――
「剛なる右拳“伏龍”」
 ――ドリルのように回転する右の拳が襲いかかる

「う…おおおおおお」
 何とか体勢を立て直し、ZXは右足で蹴りを放つ。

 右拳対右足。その軍配は――

「!!」
 ――劉鳳に上がる。
「うおおおおおおおおおおおぉぉ」
 粉々に砕け散るZXの右足。痛みに震えるその体に、再び――
「――剛なる左拳“臥龍”」
 いつの間にか回収した、左拳が命中する。
「クッ!!」
 鳩尾に入れられた一撃でZXの体は更に上へと押し上げられる。
 そしてZXへと打ち込まれたその両拳は絶影に回収される。トドメの一撃を放つ為に。
「いくぞ――」
 両の拳をZXに向け、
「――剛なる両拳“臥龍”“伏龍”!!」
 ダブルパンチ。

     ◇  ◆  ◇

「間に合っ……た」
 走ること十数分、ようやく平賀才人は戦いの場へと到着した。
 そこでは今まさに戦いが繰り広げられているようで、
「――剛なる左拳“臥龍”」
「クッ!!」
 異形の赤い怪人を、異形の白い怪物が圧倒していた。
 圧倒的、まさにその一言に相応しい怪物。
 太陽の眩しい空へと打ち上げられる怪人に、
「――剛なる両拳“臥龍”“伏龍”!!」
 異形の怪物が拳を放つ。

「なっ……」
 どうみても赤い怪人にトドメを刺そうとする怪物。
「ちょっと――」
 才人が前に出ようとした正にその時。
 太陽よりも眩しい光が起こった。
「オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ」
 赤い怪人が、更なる赤い光を放つ。
 同時、怪人は急加速をし――
「ウオオオオオオオオオオオオオ」
 ――白い怪物を急襲する。

     ◇  ◆  ◇

「オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ」
 劉鳳の頭上で急激にZXが輝き出す。
 そして、劉鳳、絶影を急する。
「ウオオオオオオオオオオオオオ」
 真っ赤に輝くZXの体、白く回転する絶影の両拳。
 その二つが、空中でぶつかり合う。

「ウオオオオオオオオオオオオオオオオオオ」
「オオオオオオオオオオオオオオオ」
 ぶつかり合う二つは激しく火花を散らす。
 それでも、絶影の両拳の方が強い。
「オオオオオオオオオオオオオオオ」
 対したZXの輝きはみるみるうちに失われていく。
 これが――劉鳳の知ることではないが――ZXの制限。
 まだ辛うじて輝いているものの、光が消えると同時に絶影の拳がZXを貫くだろう。
 それは数瞬後の未来。

「まだだ……!!」
 だが、ZXは諦めない。
 その意志に呼応してか、赤い光は少しだけ輝きを増す。
 しかし、それでも両拳には及ばない。
 だがしかし、まだZXは諦めない。
「輝け……一瞬でいい!」
 ZXの言葉に、体は輝きを取り戻す。
「もっとだ!」
 更に、
「もっと」
 更に、
「もっと」
 更に、
「もっと輝け!!」
 光は強くなり、ついに絶影の拳と拮抗する。
「ゼクロスキック!!」
 拮抗した二つの衝突は次の瞬間、バランスを崩し、崩壊する。

 ――“龍”の名を冠する両拳の破壊を持って

   ◇  ◆  ◇

 才人の視界が赤に包まれる。
 怪人が押し勝った。
 ならば次に起こることは?
 ――――ッ!
「ハイエロファントグリーンッ!!」
 想像した未来にさせない為に、新たな力を行使するッ!

「間に合えっ!!」

     ◇  ◆  ◇

 ――視界が赤に包まれた
 絶影が負けた。俺が……負けた。
 その事実を認識すると共に、劉鳳の体は衝撃に包まれた。
 不思議と、痛みは感じなかった。

凄まじい土埃が段々と晴れて、ようやく視界がきいてきた。
 埃の源はミサイルでも打ち込まれたかのごとく、酷く抉られていた。
 真・絶影が居た場所も粉々に消し飛んでいる。
 しかし、おかしい。
 先程までと見ている風景が異なっている。
 自分、絶影、その向こうにバイクと鎧が居た筈なのだが……。
「あの!」
 思案する劉鳳に突然声がかけられた。
 空の広さから察するに、自分は倒れているようで、声の主は寝転ぶ自分の隣にいるようだった。
 声の主に視線を送る。
「お前は平賀才人か!」
「俺を知っているんですか!」
 どうやら自分は探したいた相手に助けられてしまったようだ。
 礼を言おうと立ち上がって、
「あ……」
「え……」
 気づいた。

  ――――白と青色は場違いな赤で染められていた

 倒れる。
 それは、どうみても致命傷だった。
 せっかく、出会ったというのに、別れはどうみてもすぐそこだった。
 悔しい。
 それはどうみても自分のせいで、自分が遅かった故にそうなったというのは明白だった。

 これは致命傷だ。
 この分では二度と――合流はできそうにない。
 せめて、伝言だけでも伝えなくては。
「で……伝言を頼んで……いいですか」


 スタンドのダメージは本体にフィードバックする。
 本来ならば、スタンドはスタンドでしか傷つけられない。しかし、制限故にこの場ではそうでない。
 劉鳳をゼクロスキックから助けようとした才人の『法皇の緑』は、ZXが舞いあげた破片の一部に、本来の持ち主が貫かれたのと同じ場所を貫かれた。
 そして、それは今の持ち主の才人に伝わった。

 正義を貫く代償は―――自分自身。

【C-8 西部/1日目 朝】
【平賀才人@ゼロの使い魔】
{状態}:強い疲労 胸部に痣 散に対する強い怒り 強い信念 胸部に破片(致命傷)
{装備}:バヨネット×2@HELLSING、ハイエロファントグリーン(法皇の緑)のDISC@ジョジョの奇妙な冒険
{道具}:紫外線照射装置@ジョジョの奇妙な冒険(残り使用回数一回)
{思考}
基本:劉鳳に伝言を託す
1:ごめん……ルイズ……

 胸の傷が致命傷ということは自覚しています
{備考}
伝言は後の書き手さん任せです

【葉隠散@覚悟のススメ】
[状態]:右腕負傷 全身に中程度の負傷 中程度の疲労 右腕と右太ももに浅い裂傷 右腕に軽度の麻痺(そろそろ回復)
[装備]:強化外骨格「霞」(右腕部分に亀裂、右手掌部を破損)
[道具]:クルーザー、 支給品一式(散&村雨。デイバック一つにまとめてある)、不明支給品1~3品(村雨&散。確認済み)
[思考]
基本:人類抹殺。
1:才人のことが残念。
2:伝言が終わるまで待つ。
3:村雨の戦いを邪魔するつもりはない。
4:西に向かい汚水処理場と変電所の様子を見る。
5:人間を殺す。しかし、村雨のように気に入った相手は部下にする。
6:村雨の記憶を必ず取り戻してみせる。
7:才人のマスターのルイズに興味有り
8:マリアを殺すのは最後。

【村雨良@仮面ライダーSPIRITS】
[状態]:疲労大、全身に裂傷、変身中
[装備]:十字手裏剣(1/2)
[道具]:なし
[思考]
基本:殺し合いに乗る。
1:才人の伝言が終わるまで待つ
2:散と共に汚水処理場と変電所に向かう

[備考]
参戦時期は原作4巻からです。
村雨静(幽体)はいません。
連続でシンクロができない状態です。
再生時間はいつも(原作4巻)の倍程度時間がかかります。

【劉鳳@スクライド】
[状態]:疲労大、絶影破壊によるダメージ、深い後悔
[装備]:なし
[道具]:支給品一式、4色ボールペン、色々と記入された名簿、スタングレネード×2
[思考・状況]
1:平賀才人の伝言を聞く
2:村雨、散を断罪する
3:1、2が終わったら変電所へ向かい、防人・桐山と合流。
4:悪(主催者・ジグマール・DIO・アーカード)は断罪、弱者(シェリス)は保護
5:カズマ・シェリス・防人の知り合い・桐山の知り合い・核鉄を探す。
※絶影にかけられた制限に気付きました。
※桐山・防人と情報交換しました。
※名簿に青い丸印が付けられているのは、カズマ・劉鳳・シェリス・桐山・杉村・三村・川田・才人・ルイズ・防人・カズキ・斗貴子
 赤い丸印が付けられているのは、ジグマール・DIO・アーカード
 緑色の丸印が付けられているのは、蝶野

[共通備考]
※劉鳳とZXの戦闘音は周囲5マスに響きました


090:パピ☆すた 投下順 092:続:ハッキング
090:パピ☆すた 時系列順 092:続:ハッキング
075:双剣のサーヴァント―I have created over a thousand blades.― 平賀才人 099:明日を生きる君に
075:双剣のサーヴァント―I have created over a thousand blades.― 葉隠散 099:明日を生きる君に
075:双剣のサーヴァント―I have created over a thousand blades.― 村雨良 099:明日を生きる君に
078:フライトコードなし! A-6/ホテルへ向かえ! 劉鳳 099:明日を生きる君に