悪魔(デモン)降臨

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mangaroyale

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悪魔(デモン)降臨



「―――悪魔(デモン)さ」
刃牙はバキッと顔面に轟く音を最後に、白目を剥いた。
鳴海は気絶する刃牙を見下ろす。
「そんなにDIOにゴマが擦りたけりゃ、テメエの頭でもかち割って貢ぎな、原付野郎」
+++

エレオノールは鳴海の攻防に固唾を呑んで見守っていた。
どうしてあんなに感情を露に出来るのであろうか?
筋肉質の男が女子供を殺すと言った瞬間。
奴の変わり様は凄まじかった。
口調は静かだが津波が来る前の静けさ、全身から発せられる激しい感情。
それは純粋なまでの真っ直ぐな怒り。
怒りを身に纏った鳴海は圧倒的であった。
苦戦していた戦いが一転赤子の手を捻るように敵を圧倒していた。

何故あの男はあそこまで怒ることが出来るのであろうか?
そう言えば、鳴海はあの時も怒っていた。

『確かにそうだ……だがな! あの花火がこのイカレた殺し合いに耐え切れず、寂しさから思わず打ち上げたものだったらどうする!?
 てめぇらは今もあの場所で泣きながら俺達の助けを求めてる人が居ないって絶対に言い切れるか!? 』
『なら俺は一人でも行くぜ。1%でもあそこに助けを求めてる人が居る可能性があるなら俺は迷わず行ってやる!』

どうして、他人のために自分を犠牲に出来るのであろうか?
私はお坊ちゃまを守るのにしか、目が回らないのに。
あの男は全てを守ろうとしている。
それに……もう一つ不思議なこと。
『ありがとうよ、エレオノール。あんたの声がなかったらやられていた』
何故あの男はあの危機的状況で笑みを浮かべることが出来るのであろうか?
なぜ無愛想な自分に笑顔を向けたのだろうか?
分からない。
でも、この溢れる想いだけ分かる。
嬉しかった。
心地よかった。
もう一度、鳴海の笑顔を見たい。
「笑顔か……」

『どうせ勝を助けるなら……助けを必要としている他の人達も助けてやろうぜ!
 そして一人でも多くの人を、笑顔を助ける事が出来れば……きっと勝はお前にも笑顔をくれると思うぜ!
  一生忘れられない……極上の笑顔をな!』

何も考えず、無償で誰かを守ろうとすれば、お坊ちゃまは私に笑顔をくれるだろうか?
微笑みを忘れた人形である私に。
本当に不思議な男だ。あの男を見ていると奇妙な感覚に包まれる。だが、暖かい。
全てを包み込むような優しい感覚だ……。

エレオノールはそっと鳴海に目を向ける。
鳴海は自分勝手に殺し合いに乗った輩を圧倒させていた。
鳴海は確実に勝つだろう。私利私欲に走った敵に怒りを震わせている。
まだ、怒りの中にも、真剣な眼差しが籠められている。言葉を失うほどの真っ直ぐな瞳。
「ここは俺に任してくれ」と言った時より澄み切った瞳。

その目を見た瞬間、エレオノールは全てを理解した。
―――私は羨ましいんだ。
―――無償で純粋で
―――誰かのために怒っている
―――そんな鳴海が羨ましい。
私も鳴海のようになれるだろうか?
誰かのために怒れるだろうか?
笑顔を与えられるだろうか?
私は心底羨ましい。
お前が――――加藤鳴海が。
+++

肉の弾ける音は消え去っていた。
風が戦い終わりを知らせる。辺りは風の音しか聞こえない。

戦いを終えて鳴海は言いようのない感慨にふけていた。終わりの余韻を肌で感じていた。
そんな鳴海を尻目にエレオノールは刃牙目掛けオリンピアを構える。
近くの民家から物色したロープで縛られ、意識を失っている刃牙に殺意が向けられる。
指貫を大きく十字に切る。オリンピアの足から鋭い刃物が突起する。

「止めろ」
だが、無骨な大きな腕に押さえられる。
「今ここでこいつを殺しておかなければ、皆に危険が及ぶ!
  なのに、なぜ、止める!?」
「まだこの原付野郎からDIOの居場所聞いちゃいねえんだ。こいつはDIOという吸血鬼の手下だ。
 居場所を知っているはずだ。そいつを聞き出すまで殺せねえ」
「だが、こいつは喉が潰れている。言葉を発するとは思えないぞ」

鳴海は胸元から手のひらサイズの六角形の鉄の板塊を取り出す。
刃牙を括るときに余ったロープをそれに固定させ、刃牙の砕けた喉元に取れないよう巻きつける。
「それは何いったいなんだ?」
エレオノールは突然取り出した銀色の塊を覗く。
「これは核鉄と言って―――」
鳴海は核鉄の効果を説明する。
武装錬金と叫べば、各々の効果に沿ったものが具現化すること、自然治癒力を上昇させること。
直接患部に当てれば、そのポイントを重点的に回復させること。

なるほどと頷きながらエレオノールは感心していた。
あのときのツンツン頭の少年に現れた槍もこれだったのかと頭の片隅にあった疑問も解決する。
「なんと便利なアイテムだ。しかし、鳴海?
 どうしてこんな便利なアイテムを持っていながら、貴方は使わなかったのだ?」
エレオノールは鳴海の不可解な行動を疑問視する。
鳴海はばつが悪そうに頭をかきながら、エレオノールの凛とした視線から目をそむけ答える。
「ええっと、いや、同じ格闘家同士だから…卑怯な気がして、何となく気が引けたんだ」
指をツンツンとさせながら口を尖らせる。

エレオノールは頭を抱え、呆れたとため息をつく。
「なんとも、非効率な……でも、それが貴方の良いところかもしれないな」
鳴海はエレオノールの皮肉めいた、台詞に文句を言ってやろうと、顔を向ける。
そこには―――

「…!? へえ、エレオノール。あんたでも笑うんだな」

母親のような慈愛に満ちた優しい微笑があった。
出会ったころからずっと仏頂面であった、彼女に現れる初めての笑顔。
鳴海はそんな彼女に見惚れていた。
「えっ!?」
エレオノールは驚いた。

私が笑っているだと。私は微笑を忘れた人形なのに。
自分の無意識の行動に唖然とするエレオノール。
彼女のそんな驚愕めいた想いとはつゆ知らず、鳴海は頬赤らめながら言葉を続ける。

「それに、お前の笑顔……可愛かったぞ」
目を下に落とし、恥ずかしそうに答える。
「なっ! わ、私の笑顔が、か、可愛いだとッ」
頭に熱気が帯びる。今までに美くしいや綺麗だと言われ褒められたことがあるが。
笑顔が可愛いと言われたことがない。エレオノールは動揺に身を任せあたふたする。
鳴海もエレオノールのまさかの反応に驚きを隠せず。
「えっとその、かわいいって言うか、そうわけではなくて…」
「ど、どう、言う訳。な、なんだ?」
二人して言葉にならない不毛な会話を延々と続くことになった。
そんな混乱の中、二人が立ち直ったのは10分後のことであった。
「そういうわけでエレオノール。先に喫茶店に向かってくれないか」
「ああ、分かった」
鳴海はオリンピアに乗り込むエレオノールを後ろから見送る。
オリンピアの腕にはぐったりした身体緩ませた刃牙がぶら下がっている。
鳴海とエレオノールは落ち着きを取り戻した後、今後の動向について相談し合った。
その結果、二人は一旦別行動をとることにした。
エレオノールは一度喫茶店に戻り、パピヨンや承太郎たちに合流。
その後、刃牙からDIOの情報を聞き出し、赤木の提案通りに学校に向かうことにした。
鳴海は周囲に助けを求めている人がいないかを確認詮索をしてから、喫茶店には戻らず、直接学校に向かうことにした。
鳴海にとって、弱きものを守らないといけないという使命感から行動であった。

「エレオノール、後は頼んだぞ」
エレオノールは腕を交差させ、オリンピアを操る。
髪をなびかせ、鳴海に振り向く。
「鳴海! 学校に合流するまでに…絶対に死ぬなよ。」
「ああ、死にはしねぇさ」
鳴海は唇を緩ませ、心配要らないという不敵な笑みを浮かべる。
「ぜってぇに勝を見つけ出してやるぜ。
 それに、エレオノール、お前も勝に会うまでに死ぬんじゃねえぞ」
「無論だ」
そして、エレオノールはオリンピアのジェット機を吹かし、大空に舞った。
鳴海は凛々しい顔つきで、それを見送る。
そして、鳴海は左腕に付いたつまみ捻り、聖ジョルジュの剣を取り出し。
右脚を大きく上げ、地面を大きく踏みしめ、拳を何もない空間に突き出す。
踏みしめた地面が轟き辺りが震える。

「覚悟してろよ、光成」
覚悟を決める。どんな相手であろうが、もう躊躇はしない。
人間であろうが、化け物であろうが、核鉄を使うし、聖ジョルジュの剣を使う。
それこそが赤木が言う『完壁の勝利』を目指せるのなら。
光成の思惑を破壊できるなら。

「それにDIO、てめえもだ」
吸血鬼と名乗る化け物――DIO。絶対に貴様を許しはしない。
絶対に貴様を見つけ出し、ぶっ潰す。
子供を殺した罪、夢も希望も奪い取った罪、貴様の身体に味合わせてやる。
確実にだ。

――光成見ていろよ。
俺は下手くそな道化。
戦うしか能のない道化さ。
だがな、下手な道化は殺し合いの中で踊り狂って、
お前らの思惑を粉々にしてやるぞ。
なんせ俺は悪魔(デモン)だからさ。

鳴海はアスファルトを踏みしめ、歩き出す。
助けを必要としている者を探し出すため。勝を探し出すため。
光成の思惑を掻き乱すため。DIOをぶっ潰すため。
悪魔(デモン)が今歩き出した。


【E-2とE-3の境目/1日目 日中】

【加藤鳴海@からくりサーカス】
[状態]:アバラ骨が一本骨折 胃腸に中程度の怪我 自己治癒中
[装備]:聖ジョルジュの剣@からくりサーカス
[道具]:支給品一式×2(刃牙、鳴海)  輸血パック(AB型)@HELLSING
グリース缶@グラップラー刃牙 道化のマスク@からくりサーカス
[思考]
基本:バトルロワイアルの破壊、誰かが襲われていたら助ける。赤木がいう完璧な勝利を目指す。
1:助けを求めている奴を探す。
2:才賀勝を探す
3:赤木との約束の為に、8時に学校へ行く
4:いつか必ずDIOをぶっ潰す
5:誰かが襲われていたら救出し、保護する
6:殺し合いに乗っている奴を成敗する
7:DIOの情報を集める
[備考]
※聖ジョルジュの剣は鳴海の左腕に最初からついていますので支給品ではありません
※参戦時期は本編18巻のサハラ編第17幕「休憩」後です
※サハラ編から参戦しているので勝、しろがねについての記憶は殆どありません
※エレオノールを取りあえずは信用しています、
またメイクのせいでエレオノールとフランシーヌ人形が
似ている事に気づいていません
※勝という名前に何か引っかかっています
+++

D-3の市役所付近上空を滑空する一人の花嫁。
美しいほど真っ白な衣装に包まれ、陽光がその白さに眩しく辺りを反射させる。

その中でエレオノールは胸に新たな想いを噛み締めていた。
「加藤鳴海か…」
鳴海と言う男の存在。自分の中の冷たい世界に暖かさを与えてくれた男だ。
不思議で心地よい暖かさ。鳴海の笑顔を見るとそれを特に感じる。

感慨深く思いに馳せていると、一瞬眩い光が眼に焼き付けられる。
エレオノールは何事かと想い、光の発する場所を見渡す。光の正体は刃牙であった。
オリンピアの腕の中でぐったりとしている刃牙。その背中が陽光に照らされ、光沢を帯びだしたのだ。
核鉄の効果だろうか。ほんの背中にあった擦り傷の数々が少なくなったように見える。
一細胞一細胞に筋肉が濃縮された凄まじい背中。一つ一つが脈動しているように見える。

「!?」
エレオノールは目を疑った。
刃牙の洗練された背中を眺めていると、形容できない化け物の形相に見えたのだ。
そして、それは一瞬笑ったように見えたのだ。なんとも恐ろしい化け物の嗤い。
「……気のせいに違いない」
エレオノールは一抹の不満を覚えながら、承太郎やパピヨンたちに合流するために目的地である喫茶店に進む。
エレオノールもまた、完璧な勝利を目指して。


【D-3の市役所上空/1日目 午後】

【才賀エレオノール@からくりサーカス】
[状態]:ピエロの衣装@メイク、からくりサーカス、
オリンピア@からくりサーカス、支給品一式
[道具]:青汁DX@武装錬金
[思考・状況]
基本:才賀勝が望む、完璧な勝利を目指す
1:一度喫茶店に戻る。
2:本物の才賀勝を探す。
3:強力な武器が欲しい。人形は手に入れたので他の武器。
4:8時に学校へ行く。
5:刃牙からDIOの情報を聞き出す。
[備考]
※参戦時期は1巻。才賀勝と出会う前です。
※才賀勝の事を偽物と勘違いしています。
※赤木と鳴海のことをかなり信頼しています。
※パピヨン、承太郎の事は完全には信用していません
(信頼の度合いはパピヨン<承太郎)
※今現在は赤木の言う通りにしていますが、
勝が死んだ場合、どうなるかわかりません。
※また、願いをかなえられる権利が少し気になっています。
+++

刃牙はオリンピアの腕に抱かれ、深い眠りに包まれていた。
睡眠下という無意識の中、刃牙の中で意識が変化していた。
DIOの命令、親父を殺すこと、そして、―――鳴海に惨敗を帰したこと。
それら三つが複雑に絡み合う。

左腕が破壊され、全身がぼろぼろになり、普段の力を半分も発揮できない身体。
己の武器―――肉体では戦いに勝ち抜けられない。

刃牙は欲していた。
鳴海に敗北してからよりいっそう圧倒的な力を渇望していた。
全てを破壊できるような欲しい。そのためにならどんな手段を使っても構わない。
DIO様に吸血鬼の力を得るためなら武器を使おうが、人質をとろうが……どんなことをしてでも力を得る。
親父を殺す、黒服の男(加藤鳴海)を殺す。強者は全員殺す。もちろん弱者もだ。
そして、参加者全員を殺した後、
最後にDIO様と対峙したとき、俺は戦いを挑もう。DIO様に。

俺は完璧な勝利を目指す。
圧倒的に敵をねじ伏せることが出来る力をもって勝利を獲得する。
刃牙は朦朧とする意識の中で変わろうとしていた。

鳴海と同じように―――何かに変わろうとしていた。
背中が嗤う。全てを喰らうために。

――――鬼(オーガ)が嗤う。


【D-3の市役所上空/1日目 午後】

【範馬刃牙@グラップラー刃牙】
[状態]:肉の芽による洗脳状態 気絶 全身に大打撲 肺にダメージ大 喉仏が破壊 左腕の肘間接が骨折 鼻の骨が陥没 核鉄で自己治癒中 ロープで縛られた状態
[装備]:核鉄(ピーキーガリバー)@武装錬金
[道具]:なし
[思考] 基本:DIOに力を授かり、親父を殺す。DIO以外の参加者がいなくなったら、勝負を挑む。完璧な勝利を得る。
1:力が欲しい
2:DIOの食料(参加者)を捜し、S2駅に持ち帰る
3:どんなことをしてでも勝利する
4:ナルミと決着をつける
5:親父と決着をつける
6:ラオウ、銀時、覚悟を見つけ、勝負を挑む
7:強者と戦う
[備考]
地下トーナメント優勝直後。ただしトーナメント戦で受けた傷は治っている
※鳴海に受けた傷は深く、戦闘に支障きたしています
※核鉄(ピーキーガリバー)が喉元に括り付けられています
※肉の芽の洗脳により、基本的に己の欲求よりDIOの指示を優先します
※最終的にはDIOと戦うつもりですが、それまでは指示に従います
※勇次郎と同じように、自分に制限が加えられたことを感じ取りました
※喉が潰れ、話すことが困難になっています
※DIOと勝利のためなら武器を使うことも辞さなくなりました
※両腕と両足をロープで縛られています
+++

――――あなたはお気づきであろうか?

鳴海は致命的なミスをしていたことを。
それは、刃牙に核鉄を渡してしまったという致命的なミス。
刃牙の支給品に核鉄がなかったことによる思い込み。
核鉄があっても、効果と使用の仕方を知らないという思い込み。
刃牙は最初に核鉄を支給されていたのだ。もちろん、全てを知っている。

今、喫茶店で波乱が巻き起ころうとしている。
その結末はどうなるかは知らない。

その答えは刃牙の喉元で爛々と銀色に輝く核鉄だけが知っているかもしれない。



135:ありったけの憎しみを胸に 投下順 137:漫画キャラバトルロワイアル0点・家出編
135:ありったけの憎しみを胸に 時系列順 138:遥かなる正義にかけて
129:大切なのはゲームのやり方 加藤鳴海 146:更なる舞台(ステージ)へ
129:大切なのはゲームのやり方 才賀エレオノール 148:『歯車』が噛み合わない
129:大切なのはゲームのやり方 範馬刃牙 148:『歯車』が噛み合わない



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