魔女狩り ◆hqLsjDR84w



 『地図の端に向かい、そこを調べる』
 それが、俺とジョジョの共通の目的だった。
 最終目的は脱出だったが、それは脱出の為に必要なことだった。
 アイツはいなくなっちまったが、アイツとの誓いは果たしてみせる。
 この殺し合いを止めてみせるという誓いを。

「というわけで、地図の端に来てみたが……」

 境界線から先も何ら変わりなく道路は続いているし、建物も確認できる。
 地図の外に出てみたい衝動に駆られるが、どうすべきか。
 出た瞬間に首輪がボン! なんてことになっちゃあ、あの世でアイツに笑われちまう。
 そもそも、別に外に出れるかどうかを調べに来たわけじゃない。首輪を解除したあとに、脱出する為のルートを確保するのが目的だ。
 しかし……

「なんにも、見つかんねえなあ」

 本当に何も見つからない。
 決して地図の外に何も存在しない、というわけではない。目の前には道路や建物、樹木などがちゃんと存在する。
 見つからないのは、『おかしな所』である。
 おかしな所が存在しない。
 もしかして、地図の外に脱出へのルートなど無いのでは? そんな考えが脳内に浮かぶ。

 ――だが、気になることがある。

 ポケットに入れていた地図を開く。
 今まで禁止エリアと指定されたところには、ボールペンで印をつけてある。
 印が付いているのは6つ。
 第一放送によって告げられた禁止エリアは、H-7、F-1、A-3の3つ。
 第二放送によって告げられた禁止エリアは、H-2、C-2、A-7の3つ。
 その6つの内なんと5つが、『地図の端のエリア』なのだ。
 これは明らかに、主催者が『地図の端に、参加者は入って欲しくない』と考えている証拠とはいえないか……?
 もしかしたら地図の外に、バトルロワイアルを根本から破壊する何かが存在するのかも……?

 しかしここで余計なことをして、死ぬわけにはいかない。
 俺は既に死んでいたはずだったのを、アイツに助けられた。
 今の俺の命は、言わばアイツから貰った命。
 無駄にするわけにはいかない。

「なんにせよ1人で考えるのには、限界がある。仲間がいなきゃ駄目だよなァ……
 ああ、アイツがいてくれれば……」

 だが、アイツはもういない。あの女に殺された。そんなこと分かってい―――

「いや、分かってねえ!!」

 俺は何をグズグズしていたんだ!
 あの女が危険人物だと分かっているのは、俺とあのバイクに乗ってた男だけだ。
 他の奴等は分かってねえ! バグを早急に取り除く為に、あの女が危険だと知らせなくては……だが、どうする?
 拡声器でも探すか? 学校やホームセンターならあるだろうが、俺の1番近くにある施設はホテルだ。
 こんなところに拡声器なんておいてあるわけがない。
 ならば、どうする? 俺はどうする?
 とりあえず今までにあったことを思い出せ。とりあえずクールに、だ。クールになれ。

 ――まず、体育館でアイツに出会った。
 ――そしてスーパーの事務室でハッキングを試みた。
 ――しかし、失敗に終わった。
 ――次こそは成功させるために、携帯電話を求めて外に出た。
 ――杉村の死で動揺していた俺は、アイツに本当の『クール』を学んだ。
 ――あの女に出会い、ボーリング場を目指すことになった。
 ――しかし道中で、アイツがトイレに行きたいと言い出し……

「――――――ッ!!」

 そうだ、アレだ。アレならば、遠くの相手にあの女の脅威を知らせることができる。
 さらにアレならばホテルにも……いや、どこにだって必ず存在する。
 いるのか知らねーが神様よ、思い出させてくれて感謝するぜ!



『とぅおるるるるるるるるるるん♪』

 最初はホテルの電話を使用しようかとも思ったが、それではホテルにメッセージを残せないので、近くにある民家の電話を拝借することにした。
 俺がこの電話を使用し始めてから、結構な時間が経過したからだろうか。すっかり、この奇妙なコール音にも慣れてしまった。
 1つのメッセージに約4分。それを十数回も繰り返しているのだから、結構な時間が経過して当然か。
 しかし、どこにかけても誰も出ないな……
 病院や学校ならば、人がいてもおかしくはないと思ってたんだが……

『ただいま留守にしております。ピーという発信音の後に――――』

 よし、今までどおりに―――

「今から話すことを真面目に、かつ冷静に聞いて欲しい。
 俺の名は―――すまない、言うことは出来ない。
 だが、信じて欲しい。言いたくないのではなく、言えないんだ。
 あの女に俺が生きていることを気付かせるには、まだ早すぎるからな。……これがどういう意味かは、今から説明しよう。
 参加者名簿に、『柊かがみ』という名が載っているだろう? 彼女はこのプログラム――いや、この殺し合いに乗っている。
 それを詳しく説明するために、俺がここに呼び出されてから今までにあったすべての事を話す。
 少し長くなるが、聞いてくれ」

 さすがに十数回も同じ内容を話し続ければ、喉が若干痛くなる。
 喉の痛みを水を飲むことで緩和させながら、言葉を続ける。

「名簿に載っている、『ジョセフ・ジョースター』という男。
 俺はその男とこの殺し合いが始まってすぐに出会い、共に行動していた。
 しばらくして……第一放送が終わった頃だったな。路上で気絶していた少女、柊かがみを発見した。
 さすがに放っておくわけにもいかず、彼女を俺達で保護した。
 目覚めた彼女が仲間と合流したいといったので、俺達は民家から拝借した車でボーリング場へと向かっていた。
 その道中で先程の第二放送が始まり、直後に彼女は豹変した。
 急に『スタンド』という支給品を行使し、車を炎上させたんだ……
 俺はジョセフ・ジョースターの機転と、アイツの『波紋』とかいう能力で一命を取り留めたが、アイツ自身はおそらく……」

 奇妙なコール音には慣れても、やはりこの事を話すのは慣れねえな。
 そんなことを思いながら、さらにメッセージを言い続ける。
 口調がきつくなっていることに気付きながらも、こればっかりは変えようと思っても、変えられねえ。

「俺は柊かがみを許さないッ! アイツを殺したあの女はッ!
 しかし俺の力じゃあ、あの女を倒せねえ。だから……俺は逃げるしかなかった。
 あの女が殺し合いに乗ったと、分かっていながら!!
 だがッ! これ以上の被害者は出さねえ! アイツみたいな、被害者を出してたまるか!!
 今からあの女の特徴と、持っている武器、そして支給品『スタンド』について話す!
 あの女の特徴を、頭に刻み込んでくれッ!!
 性別は女。名前は柊かがみ。髪と目は紫色で、長い髪を2つに結っている。身長は160cmくらいだ。
 服装は……車の炎上の所為で、服も燃えてしまったようなので何も着ていない。だが、おそらく適当な服をその辺で調達するだろう。
 そして槍のような武器を持っていた。あと『スタンド』についてだが……これは俺もよく分かっていない。
 CDのような形状で、それを額に埋め込むと背後霊みたいなのが出てきて、そいつが戦ってくれるんだ。
 俺も『スタンド』を支給されたのだが、あの女のものとは違う。
 俺のは筋骨隆々な青年のような姿だが、あの女のは真っ赤な鳥みたいな姿をいていた。
 そして口から、十字架型の炎を吐き出していた。それで車を炎上させたんだ。
 信じられないかもしれないが、真実なんだ。信じてくれ、頼む!
 もうアイツのような被害者は出したくないんだ!!」

 ここで受話器を下ろす。

「ふぅ……」

 これでだいたいの施設に、電話をかけ終えたことになるな……
 正直な話、『スタンド』の話を出すべきか否かはすごく迷った。
 そんな事を言って、このメッセージを虚言だと思われたら困るからだ。
 しかしあえて全てのメッセージに、『スタンド』に関することを残した。
 『スタンド』を所持していると知らずに、メッセージを聞いた人間があの女の戦力を過小評価したら困るからな。
 そんなことでアイツみたいな被害者を出すなんて、もう御免だ。

「ジョジョ……、お前の仇は絶対に取るからな……!!」


「ジョジョ……、お前の仇は絶対に取るからな……!!」

 力強くそう呟いて、三村信史は拳を握る。
 『死んでいない』ジョセフ・ジョースターの仇を取るという、強く硬い決心をその胸に秘めて。

 それにしても、彼は本当に運が無い。
 もしも彼が、もう少し早く柊かがみが暴走した直後に周囲を注意深く確認していたら、同志を見つけることが出来たかもしれないというのに。
 もしも彼が、もう少し早く変電所に電話をかけていれば、同志を見つけることが出来たかもしれないというのに。
 もしも彼が、もう少し後に病院に電話をかけていれば、同志を見つけることが出来たかもしれないというのに。
 もしも彼が、もう少し後にボーリング場に電話をかけていれば、同志を見つけることが出来たかもしれないというのに。

 もしも彼が、もっとクールでいられたならば――――

【D-8 最南端の民家/一日目 午後】


【三村信史@BATTLE ROYALE】
[状態]:精神疲労(中)
[装備]:トランプ銃@名探偵コナン、クレイジー・ダイヤモンドのDISC@ジョジョの奇妙な冒険
[道具]:七原秋也のギター@BATTLE ROYALE(紙状態)支給品一式×2
[思考・状況]
基本:老人の野望を打ち砕く。かがみはどんな手段を使ってでも殺す。
1:仲間を探す。
2:再度ハッキングを挑む為、携帯電話を探す。
3:集められた人間の「共通点」を探す。
4:他参加者と接触し、情報を得る。「DIO」は警戒する。
5:『ハッキング』について考える。
6:「柊かがみという女は殺し合いに乗っていて、人を一人殺した」という情報を参加者に広める
[備考]
※本編開始前から連れて来られています。
※クレイジー・ダイヤモンドは物を直す能力のみ使用可能です。
 復元には復元するものの大きさに比例して体力を消費します。
 戦闘する事も可能ですが、大きく体力を消費します。
※ジョセフは死亡したと思っています。
※マップの外に何かがある、と考えています。
※彼が留守番電話にメッセージを残したのは、以下13ヶ所です。なお、メッセージは全て同一です。
 老人ホーム(A-1)、市役所(D-3)、病院(F-4)、消防署(D-4)、学校(C-4)
 総合体育館(D-5)、ホームセンター事務室(H-5)、総合スーパー事務室(D-6)
 変電所(A-8)、汚水処理場(B-8)、ホテル(D-8)、パブ(F-8)、ボーリング場(G-8)
※乗用車は民家の前に置いてあります。


141:サイアクだあなたは、沈黙したその目にヤラれそう 投下順 143:揺らいでいく未完成の『メモリー』
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131:戦闘潮流 三村信史 162:三村信史は砕けない