好きなら素直にスキと言え

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mangaroyale

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好きなら素直にスキと言え ◆d4asqdtPw2


「ハァ……ハァ……ここまで来れば大丈夫だよな?」
あの反則まがいの拳王から逃げ切ったのは、もはや奇跡と言っていいだろう。残りの人生の全ての運を使い果たしたかもしれない。
ここまでずっと全力で走り続けた俺は橋の上でついに立ち止まって、悲鳴を上げる肺と筋肉を休ませる。

これはアレか? 酒浸り糖分まみれの生活を送ってきた俺への天罰か何かか?
だとしたらもう酒は控えるから許して神様。糖分も抑えろって? いや……それは譲れねぇ。
「ホラ、だって甘いものには罪は無いと思うんだよね俺はさ。
 それは糖分を扱う人の問題であって、彼らは僕たちに夢と希望と至福の喜びと血糖値を与えてくれる友だと思うんだよね。
 兵器だって使い方によっちゃぁ平和をもたらすって言うか、ホラ、あの……えっと。
 ……ッていうか糖分に殺されるなら本望だしね! 愛するものに抱かれて死ぬなんて最高じゃねぇかコンチクショー!」
何が神様だよ。そりゃあ俺だってパチンコで残金を全て賭けた時や、今週のジャンプ探して町中の本屋巡ったときなんかは神様ってもんに土下座くらいはしたさ。
あぁそのたびに裏切られたさ! そりゃあそうだ。だって神様なんていねぇんだもんなー。神棚は勿論、神社にもカリン塔のてっぺんにさえもいやしねぇ。
そう考えたらなんだか腹が立ってきやがった。こんな時は早いとこ休むに限るんだが……

「なぁ、アンタ。ちょっといいか?」

ん? 何か聞こえたか?
……いやいや有り得ないって。今まさに筋肉魔人から逃げ切った哀れな男をピンポイントで探し出すなんてことは有り得ない。
そうだ、俺は疲れてるんだ。ちょっと休める所を探さなくちゃなァー。
疲れた体にムチを打って歩き出し、俺は安全に休める場所を探……

「なぁ。そこの白髪でパーマのアンタだよ、アンタ。聞こえてるんだろ?」

確かに真後ろから声が聞こえた……
「イヤイヤイヤイヤ! ないないないって! だって俺どっちかって言うと銀髪だもん! パーマだけど銀髪じゃん?」
そうだ、これは空耳だ。だから俺の後ろに筋肉隆々の大男がいるなんてことは有り得ないんだ。
一刻も早く安息の地を探さなくては……って進まねェェェェェェ! なぜか俺が前進しねェェェェェェ!

「なぁほら。ちょっと落ち着けって、オイ」
俺の肩を何者かが掴んでいた。
マズイ。マズイマズイ不味いよこいつは! だって凄い握力じゃねーかァ! ちょっと痛いよコレ! おそらくコレは攻撃されてるよ!
もう走れないんだって! 死ぬしかないじゃん俺! 蝶ネクタイでどうしろっつーんだよ!

……いや待て。落ち着け。落ち着け、俺。
まだこいつがさっきの筋肉バスターとは限らんじゃないか。
いざ振り返ってみると優しい美女が微笑んでいるかもしれん! このくらいの握力なら……神楽でも余裕で出せるレベルじゃないか!
そうだこの人は絶世の美女だ! そうに違いない! 違いないですよね? お願いします神様! 全力で信じますからお願いします神様!
よし、振り返るぞ! 神様は見てくれている。さっきまでのはアレだ。最近江戸の若者の間で流行のツンデレってやつだ。神様も純情な子なんだよな、ウン。
振り返ったら目の前には満面の微笑みを浮かべた美女がいるんだ。そうですよねぇ神様ァ!
そして――


振り返った俺の視界を覆いつくしたのは逞し過ぎるほどの大胸筋、腹筋、そして股間のモッコリ。

(神様コノヤロォォォォォォォォォォォォォ!)
「ハイ銀さん死んだー! しかも糖分じゃなくて筋肉(タンパク質)に殺されましたー」
……アレだ、神様はいたんだ。でもあの野郎は俺を個人的に嫌ってるんだ。
次の人生で頑張ろうか。だったら次は色男に生まれて結野アナの旦那になりてぇ。もしくは結野アナの家のトイレになりてぇ。
「別に殺さないからさ。とにかく落ち着こうぜ」
男が俺の両肩を掴んでそんな戯言を吐きやがった。この期に及んでまだ俺を弄ぼうってか。

「どーせさっきの恨みだろ? 殺すならころせー。 だけどオッサンのことは一生呪ってやるぞ! せいぜい血糖値に気をつけやがれェェェェ!」
一旦逃がしておいてから再び地獄へ叩き込むたぁ。神様はとんだサディストだな。しかも焦らしプレイときたもんだ。
男らしく死を受け入れた俺にオッサンはパンチの一つもよこしゃぁしねぇ。

「なぁ誰と勘違いしてるんだよ? 俺とアンタは初対面だよな? それに『オッサン』って、俺はまだ17歳だぜ?」

まーだコイツはそんな事をいってやがる。いいかげんにしないと本気で化けて出てやる……って何だと?
恐る恐る男の顔を見上げる。
目が合った相手は美女ではなかったが、さっきのアイツと比べれば遥かに穏やかな表情をした青年だった。
「な? 人違いだったろ?」
(神様ツンデレェェェェェェェェェェェ!)
疑ってゴメン神様! いや、俺は最後まで信じてたって言うか。やっぱり信じるものは救われるって言うか、……ん?

「今17歳って言ったかな?」
「え? あぁ、俺は範馬刃牙、17歳だ。ちょっと探してる人がいるんだけどさ……」
「嘘こけェェェ! そんな見てくれの17歳がいるかぁ! それともアレか? お隣のお花屋さんのヘドロさんのご親戚か?
 お前も花をこよなく愛するのか? それともケーキ屋か? 絵本作家かコノヤロー!」
天人に違いないよこいつは! 人間の筋肉の発達には限界があるんだよ!

「ホントに17だって。何で花屋になるんだよ。俺は……何て言うか……格闘家かな」
真っ赤な髪の毛をポリポリ掻きながら天人が答える。ほーらみろコイツもあの緑の鬼と同じように……って嘘だろォォォォ!

「そんなマッチョな奴が格闘家になんかなるかァァァァァ!」


   ▽   ▽   ▽


「えーとつまり、刃牙君は自分の母親のカタキである父親の勇次郎さんを倒すために覚悟って青年と戦って強くなりたい。
 だからその「零」って言うその妙なカバンで探している、ということでいいですか?」
先ほどの俺の改心のツッコミ――今にして思えばツッコミの方がデタラメだが、の後に刃牙少年が聞きたいことがあると言ってきた。
折角なのでお互いの状況を報告しあって今に至る訳なのだが……

「大雑把に言うとそんな感じかな。銀時さんだっけ? アンタ結構、物分りいいっすね」
『多少、引っかかる言い回しはあったがな』

分かるわけねーだろォォォォォォ! あんたらは馬鹿ですか? 普通は地道なトレーニングが実を結ぶもんだろ!
強敵と戦ってどんどん強くなるって、どんなわらしべ長者だよ! それはもう人じゃないよ。わらしべ超人だよ!
だいたいなんでカバンが会話してるんだよ! もうここまできたらミステリーだよ。わらしべ超常現象だよ!

「まぁ正確には強いやつと戦いたい訳なんだ。覚悟って人はその中の一人ってコト。……おっと、殺しには乗らないぜ」
はい? 殺しには乗らないけれども殴り合いはしたいってか?
冗談じゃねー。こんなのと一緒にいたら命が幾つあっても足りないんだよ。ここは上手いこと誤魔化して……

「でさ、アンタ強いの?」
『ふむ……一見する弱そうだが、なかなかだぞこの男。数々の戦場を渡り歩いてきたようだな』

オイィィィィィ! 何勝手に分析してんの? だいたい「一見すると」ってお前、目ないじゃん! どうやって一見したんだよ!
え? ちょっと待て。まさか……俺と……戦う気ですか?!
「ちょっと待ったァ! マジで俺弱いっすよ。戦闘力は2歳児程度だよ!」
『否。謙遜せずとも良く見れば分かる事だ』
だからお前は「見る」んじゃねェェェェェェ! せめて感じろよ! そもそも喋るな。

「だいたい愛用の木刀がないと俺は本来の10分の1、いや100分の1の力も発揮できないんすよマジで!」
「それならさっき見た俺の支給品に刀があったぜ」

詰まれたよオイィィィィィィ! とっても綺麗に詰まれたよ!
ヤバイ、もう逃げ切れない。完全に追い詰められたのが分かる。汗で下着がビチョビチョだ。これじゃ失禁したみたいじゃねぇか。
そういえば最近、尿のキレが悪くなってきたような気が……。
「あったあった、これだこれ。ほら、アンタにやるよ」
自身の荷物を漁っていた刃牙少年が奇妙な刀を手渡してきた。通常の刀とは違い、全てが何かの金属で出来ているようだが、不思議と持ちやすい。
刀身が月の光を反射して淡い金色を呈している。暗闇を一閃する輝きは、まるで異世界へ通じる裂け目のようだ。

思わず見とれている自分に気がついた俺は一先ず手にしていた刀を地に置くと、それと一緒に渡された説明書に目を通すことにした。
「えっと……『支給品、ソードサムライX……』」
ダサ! 名前だっせェェェェェ! どう考えてもキマらないよこんなんじゃ!
なんだよ『X』って! 一昔前に流行った『びぢゅあるばんど』ってやつですか? 時代遅れも甚だしいよオイ!
この名刀を生み出した刀鍛冶のネーミングセンスに驚かされつつも、説明の欄に目を移すと、『錬金術』や『核鉄』などよく分からない単語の中に
『刀身で受け止めた魔法などのエネルギーを攻撃に転用することができる』
の一文を見つけた。
(魔法を使うやつまでいるのか……)
喋るカバンもいるんだ。魔法使いがいたって可笑しくは無い。
この状況に慣れ始めてる自分と、慣れさせてくれやがった刃牙少年と化け物カバンに感心すると同時に、俺は新たな強敵――魔法使いに襲われる可能性を見出してしまった。
人間に許された能力の範疇に甘んじている自分にしてみれば、そのような人外の能力を持った敵と会ったとき、こちらが素手では心許無い。
俺は人を切る気は更々ないが、この剣ならば少なくとも防御には使えるんじゃねぇか?

「それ使ってくれて構わないからさ、俺と戦ってくれよ」
「断る」

相手の目を見ることなしに即答してやった。反論する隙を与えずにまくし立てる。
「それに探さなきゃならんやつらがいるんでな。君はあっちでさっき俺を襲ったスパオーだかユーフォーだか言うオッサンと戦ってきなさい」
「でもそのオッサンどこにいるか分かんないんだろ? じゃあ襲われた場所まで案内してくれよ。そしたら零が索敵できるかもしれないしさ!」
なんでそうなるんだよ! 結局俺は危険じゃねぇか! 
しかし俺を見つめる刃牙少年の目はとても真剣だ。まぁ……母親の敵をとる為だしなー。

そんな訳で俺は刃牙少年を連れて拳王サマを探しに……行くわけねだろォ!
俺は刃牙少年を上手いこと騙して、拳王に襲われた地点とは逆方向である繁華街へ向かうことにしたのだった。


【F-2 橋の上 一日目 黎明】
【坂田銀時@銀魂】
[状態]健康 疲労は回復
[装備]蝶ネクタイ型変声機@名探偵コナン
[道具]支給品一式 ソードサムライX@武装錬金(攻撃に使う気はない)
   不明支給品0~2(未確認。存在しても銀時はいろいろあって忘れている)
[思考] 基本:このゲームをどうにかする
1:刃牙少年を騙して繁華街へ連れて行く
2:新八、神楽を捜す。ついでに桂も
3:ラオウには会いたくない
(備考)零のことはよく分かっていません

※ソードサムライX
エネルギーを使う攻撃を吸収し、攻撃に転用します
制限、効果の対象となる攻撃は任せますが、少なくとも「魔法」には効果アリです


【範馬刃牙@グラップラー刃牙】
[状態]:健康
[装備]:強化外骨格「零」(カバン状態)@覚悟のススメ。
[道具]:支給品一式
[思考] 基本:親父を超える。
1:銀時について行きラオウと戦う。銀時とも戦いたいが……
2:覚悟を見つけ、勝負を挑む
3:強者と戦う。ただしゲームには乗らない
(備考)地下トーナメント優勝直後。ただしトーナメント戦で受けた傷は治っている。



028:鳥の歌に導かれて 投下順 030:A forbidden battlefield
028:鳥の歌に導かれて 時系列順 030:A forbidden battlefield
002:支給品に核兵器はまずすぎる 坂田銀時 072:自分の選んだ道を行け!
025:戦う運命 範馬刃牙 072:自分の選んだ道を行け!


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