「戦火の中犯される娘達」SS保管庫

売春宿の日常ー白い川ー

最終更新:

匿名ユーザー

- view
だれでも歓迎! 編集
1875年7月34日
7月の終わりだが、かなり涼しい。内地はまだ夏真っ盛りだろう。随分と北に来ていることを再認識。
直ぐに雪が積もって、オーロラがでる季節になるか。
今晩は明日から司令部休みということもあり、女子寮へ来る連中も多め。部屋が汚されない事を祈るが、
仕方が無い。
女たちの叫び声がうるさい。最初は少々哀れに思ったが、正直、そろそろ慣れて欲しいものだ。
学生とは言え、もう何百回(何千回?)も経験してるんだし。

妊娠したのも増えたので、そろそろ補充必要か。

そこまで書いてセブは鉛筆を置き、ふぅ、と息をついた。ぱたり、と『日誌』と書かれたノートを閉じる。
マッチとタバコをポケットから取り出し、火を点ける。
『No!No!』と部屋の外からは甲高い悲鳴が聞こえてくる。セブはこの国の言葉は分からないが、
否定を表す言葉くらいはなんとか分かる。
逆に女たちはどうなのだろう。学生だし、学校で習っていたのだろうか。
まさかな、とセブは自分の考えを打ち消した。連中は俺たち有色人種を忌み嫌ってる。わざわざ学校で
言葉なんか覚えるはずがない。
何度も犯されるうちに、次第に覚えることはあるかもしれないが。

ノックの音がした。

『はい、どうぞ』

と一言返事をすると、髭面のごつい男がドアを開けた。肩章で彼が中尉であることがわかる。

『親爺さん、お疲れ様。空いてる部屋あるかい?』
『お疲れさん。3階なら、空いてるよ』
『うわ、3階まで一杯か...もっと早く来れば良かったな』
『残業か?』

セブはタバコの灰を落としながら中尉に聞いた。

『ああ。艦隊が入るんだよ。親爺さん達も忙しくなるな』

セブは体を中尉に向ける。

『いつ?』
『再来週に水雷部隊が入る。凄いぜ。戦艦や巡洋艦も来る。こっちは一ヶ月くらいかかるけどな』

そっか~、と少し大きめに呟いて、セブは背もたれに身体を預けた。

『急だな』
『ああ、何か新しい作戦でも始まるのかね』

部屋の外から男の唸り声と女の悲鳴が聞こえた。中尉は頬をポリポリと掻き、『じゃ、頼むわ』とセブに告げる。

『ああ、ちょっと待ってくれ。ついでに見回りだ』

セブは日誌に『艦隊が来週より入港?休み明け、補充を要請』と追記して椅子から立ち上がった。
壁に立て掛けてあった松葉杖とランプを手に取り、部屋の外に出る。
『夜遅くに大変だね』
『部屋汚されたりしたらたまらんからな』
『若いのは?』
『もうすぐ交代だよ』

セブは髭面の中尉と共に、は女の泣き声と男の唸り声、肉を打つ音が響く薄暗い廊下を歩いた。
ドアの前を通りがかった部屋から突然、女の大きな悲鳴が上がった。中尉の大きな身体がビクリと震える。

『おおっ!』
『おいおい、勘弁してくれよ。こっちもビビるじゃねぇか』
『すまねぇすまねぇ』

中尉は頭を掻きながら言った。部屋からの悲鳴は、男の下卑た笑いや満足そうな唸り声と共に、
すぐに悲痛な泣き声に変わる。

『やっぱ、帆船の頃から艦に乗ってた人は肝が座ってるなぁ』
『馬鹿にしてんのか?』

二人が歩く廊下の奥に一際大きな鉄の扉があった。手すりは鎖で巻かれている。
セブがポケットから鍵束を取り出して、鎖を留めている錠に差し込んだ。

『前から思ってたんだけど、小便に行きたくなったらどうすんだ?』
『中に便所があるんだよ。お前は“最初の時”は居なかったか?』
『ああ、俺は船乗りだからね。陸戦隊の連中、随分楽しんだそうだな。羨ましいなぁ…。
陸に上がって初めて抱いた女、もうシクシク泣くだけで、何の反応も無かったもんな』
『そういうのはこの国じゃ、“マグロ”って言うらしいぜ』
『へー。マグロは好きだけど、俺は釣り上げたばっかの活きの良いのが良いなぁ』

鎖を解いたセブが扉を押す。重い音と共に扉が開かれる。

ランプを壁にかけると、真っ暗だった部屋が薄明かりで照らされる。だだっ広い部屋の床に
白い布を敷いて、数十人の女が寝ていた。皆、一様に扉に背を向けている。床に敷かれたまま、
誰も寝ていない布も多い。

『すみませんね』
『ああ、まぁ、ゆっくり選びな』

中尉は部屋の中に入って、眠る女の顔を覗き込むように確かめていく。セブは部屋の様子をぐるりと
見渡した。特に汚れたりしている所はないようだった。

ふう、と一息つくと、顔をニヤリと歪めて、足元で寝ている女の肩に手をかけた。
『ヒッ』と一言小さく叫び声を上げて女は身体を震わせる。ほんのいたずら心...。

薄明かりに照らされた女達の身体をよく見れば、小刻みに震えている者、手が白くなるほど強く
握りしめている者、眉間に皺を寄せてきつく目を閉じている者...

皆、目を覚ましているのだ。

『こいつにするわ!』

髭の中尉は寝ている女を肩に担いだ。くたびれた学生服だけを身に纏った少女は、美しい白に近い
金色の長髪を振り乱し、手足をバタつかせながら、セブには分からない言葉を大声で喚き散らしている。
スカートから伸びる脚が薄闇の中に白く映える。
『親爺さんも、その女を抱くの?』
『まさか』

セブは女の肩にかけた手を、乳房に這わせ、強く揉んだ。小さな悲鳴が上がる。

『遊んだだけさ』
『へへ、まぁ親爺さんはもっと良い思いしてんだろうなぁ。あぁ、俺もこっちで仕事がしたい!』
『30年はえーよ』

セブと髭面の中尉、そして、中尉に担がれて喚く女学生は部屋を出た。セブがドアの取っ手に鎖を
巻きつけ、錠をかける。

『わざわざすみません』
『良いってことよ。たっぷり、そいつを可愛がってやりな』

2人と1人は廊下を歩く。部屋から聞こえる女達の悲鳴、泣き声、喘ぎ声と共に肩に担いだ女学生の
叫び声が響く。
『静かにしろ!』と中尉は何度か怒鳴るが、女は叫ぶのを辞めることはない。

『ちっ、何なんだよ、随分活きが良いな。初めてって訳じゃねぇだろ』
『んー?どれどれ…あぁ…』

女の顔を見てセブは得心したように頷く。

『何です?』

階段に差し掛かる。中尉は女を抱えて居ない方の手を差し出すが、セブは無視して、動かない右足と
杖を器用に使って階段を登っていく。

『そいつ、今日辺り孕みやすいんだよ』
『え?わかるの?』
『俺くらいになるとな。顔見りゃわかる』
『おぉ...活きは良くて卵持ち、って訳か!たまんねぇな!やっぱ親爺さんは、凄いなぁ』
とは言うものの勿論、セブが女の顔で妊娠のしやすさを判断している訳ではない。

セブは女たちに生理周期を申告させていた。こちらの国なら、こんな女学生でさえ、
生理周期と排卵の関係を知っているが、セブの国では、普及していない。

集計は言葉が分かる若い兵隊に頼んでいる。ただし、理由は教えない。以前は全て理由を含めて
教えていたが、妊娠する女たちが妙に多く、結局、その集計をさせていた兵隊が孕ませたり、
他の兵隊から金を取って、教えていたのだった。あの兵学校出の小賢しい顔をした若造、前線で
元気にやってるだろうか、とセブは思った。

(まぁ、顔は悪くなかったから、同僚たちに『可愛がられて』いるだろう。もう、女は十分
抱いたんだし、文句はあるまい)

そんなことがあって以来、セブは女達の管理については自分でやるようにしている。
子供が出来やすい時期の女は、男達が来る時間帯は何か別の仕事をさせて、男に抱かせないように
していたが、髭の中尉が抱こうとしている女は、先刻、部屋に戻したところだった。

『へ、へ。たまんねぇな。しっかりザーメン流し込んで孕ませてやるよ』

ザーメン。この国の言葉で“精液”を表す言葉を女に聞こえるように使い、ニヤニヤと顔を
ふやけさせた中尉を無視して、セブは階段を登っていく。

『ったく』
『なんだよ。いけないのか?』
『若い女の腹が全部膨らんだら、誰がてめぇらの夜の相手をするんだ?調理場のババァとでも寝るか?』
『あぁ...それは勘弁して欲しいな』
セブはニヤニヤしている中尉を一睨みすると、はぁと一息ついた。

『親爺さんはサケは好きかい?』
『あぁ、サケもマスも好きだぜ。随分と食ってねぇがな』
『俺のクニは北の方の島でね。夏の終わりになると、川がサケで埋め尽くされるんだ。メスは腹の中に
イクラをたっぷり詰め込んでるし、オスは白子をしこたま溜め込んでる』

ふぅ、とセブと中尉は階段の途中で一息吐いた。

『サケが卵を産む所は見たことある?』
『ねぇよ』
『大声を上げるみたいに口を開けて、尻尾を振りながら、ひり出すんだ。それによってたかって、
オスが白子…まぁ、ザーメンだな…をぶっかける。スゴイぜ。川が一面、真っ白になるんだ。
オスの撒き散らすザーメンでね』
『言い方が汚ねぇよ。白子が食えなくなるだろうが』
『きひひ、すまんすまん。まあ、あれだ。魚なんだが、見れば交尾してるのが分かる。
体中傷だらけにして、傷口が白く腐ったりしてるんだが、それでも子供を産ませたい、って姿がね』
『何が言いたいんだ?』
『俺はこいつらを犯す時に、口を開けて、叫び声を上げながら射精する。サケみたいに。
言葉はわからないが、俺がお前に子供を産ませたいってのは伝わるかな、って思ってね』
『悪趣味な野郎だ』
『きひひ。そんで、こいつらの子宮をザーメンで真っ白にするんだ。クニの川のようにね。
川の水で薄まらないネバネバのドロドロで』

セブはもうそれ以上、中尉の故郷の話に返事をせず、黙々と廊下を歩いた。女は叫ぶのを止めて、
シクシク泣いていた。

『ほれ、着いたぞ』
『ああ、ありがとう。きひひ、おい、分かるか?お前はこの部屋で、俺のガキを妊娠するんだぞ。
子宮をザーメンまみれにして、お前達の嫌ってる黄色い肌の赤ん坊を妊娠させてやるな!』
『さっさと行かんか!』

はいはい、と部屋に入る中尉は、ドアを閉める前に振り返った。

『明日、非番だし、今日は泊まっていくわ』
『好きにせい!』

ドアがバタリと閉まる。畜生、黙ってりゃ良かった、とセブは後悔した。ドアの向こうから、
すぐに女の悲鳴と、中尉の下品な笑い声が聞こえた。
廊下を歩きながら、部屋の点検をしていく。『“売春宿”には勿体無い建物だよなぁ』とセブは呟いた。

元々、女学校の寮だった建物は、それなりに作りが良い。裕福な家庭の子女しか入れない学校だったと
聞いているが、占領された今ではその女学校の校舎は現地の艦隊司令部として利用されている。生徒と
教師だった女達は、昼間は司令部で雑用をさせられており、女子寮は彼女達の宿舎として、そのまま
使われている、というのが建前であるが、勿論、占領された町の若い女達が小間使いだけで終わる筈
が無い。

校舎に隣接する“女子寮”は、占領軍の男達の欲望を満たす“売春宿”となり、そこで居住していた
生徒と若い教師達はそのまま、そこで働く“売春婦”となった。勿論、春をひさぐ料金は支払われないが。

歩きながら、耳を済ませると、女のすすり泣く音、男の唸り声が部屋から聞こえてくる。楽器か何かを
演奏するためらしいが、上階は各部屋に防音が施されているので微かな音だ。

自室で優雅に楽器などを弾いていた女学生達。学校での雑用は全て、黄色い肌の移民達に任せていた
若い教師達。裕福な家庭に生まれ、何一つ自分達の将来を心配することは無かっただろう金髪碧眼の
白い肌の女達。

今では奴隷として使っていた肌の黄色い猿の仲間達の性欲の吐け口にされている。そして、将来どころ
か、次の月経が来る事を必死に心配しているのだ。

『ま、良い気味だ』

と、独りごちて、セブは部屋の見回りをしていった。
あまり人の入って居ない3階は軽く様子を見る程度にして、2階に移る。
こちらは、防音が施されていない部屋が多く、様々な音が聞こえてくる。

肉を打つ乾いた音、布のこすれる音、男の荒い息や、呻き声。

そして、よく聞こえるのが、女達の声だった。

すすり泣く者、叫び声を上げる者、セブには分からない彼女達の言葉(おそらく罵りの言葉だろう)
を喚き続ける者。そして、娼婦のように嬌声を上げる者。

セブの前方の部屋でバタリと勢いよく扉が開く。金色の髪、白い肌の少女が、制服をかき抱いて、
飛び出して来た。

『あ、コラ!てめぇ、待ちやがれ!』と部屋の中から、間抜けな声が聞こえてくる。

少女はセブを見つけると一瞬、たじろいだものの、すぐに全速力で向かってきた。階段はセブの
後ろしかない。松葉杖を突いた老人など、何とでもなると思ったのだろう。

『全く…』

少女がセブの横をすり抜けようとした瞬間、彼女の身体は空中で一回転した。

床に寝そべる少女は、呼吸の度に、膨らみかけの白い乳房を上下させながら、何が起きたか
分からないといった顔でセブを見つめている。

『おい!出てこい!』

タオルを腰に巻いたひょろりとした長身の男が、部屋の中から出てくる。

『あ、親爺さん…すみません…』
『ちゃんと注意しろと常々言うておるだろうが』

セブは倒れたままの少女の手を掴んで立たせ、男に引き渡した。少女は暴れるでもなく、
しくしくと泣いている。

『まさか、乱暴なことしてねぇだろうな』
『し、してないっすよ!ただ、仲間と一晩で何回出来るか勝負してて…8回目しようとしたら、
こいつが急に暴れ出したんスよ!』

あまりの下らなさにセブは溜息を吐いた。
『分かった分かった。まぁ、少しは休ませてやれよ。お前は明日は非番かもしんねぇが、
そいつは朝早くから、掃除洗濯炊事なんだぜ』

ひょろ長の男はニヤりと笑う。

『知らないね。こいつら、俺たちの同胞にもっと酷いことしてたんだろう?良いじゃねぇスか。
飯が食えて、寝るところもある』

男は女の肩を抱き寄せ、その股間に、手を伸ばす。グチョと卑猥な音と共に、悲鳴が上がる。
軽蔑するような、悔しそうな表情で視線を合わせない女に、男は卑屈な笑みを浮かべつつ囁
くように言った。

『それに、毎晩、男とヤりたい放題だしなぁ』

セブは、はいはいと片手を挙げてひょろ長の男を黙らせると、『ちゃんと用心しろよ』と一声かけて、
見回りを再開した。背後から『よーし、8回目!新記録達成だぜ!』と声が聞こえた。

『ったく、どいつもこいつも…』と悪態をついて、セブは見回りを始めた。

2階の各部屋は上階に比べて半分くらいの大きさしかなく、ドアには見回り用と思われる
小窓が着いて居る。また、上階に比べて狭い部屋が多く、机とベッドだけといった趣で、
大きい部屋の幾つかは二人部屋だ。

この国の言葉を話せる兵隊が女達から聞いたところによると、上階と下の階では生徒の家庭の格が
違っていたらしい。ただ、狭いとはいえ、生徒の多くに一人部屋をあてがうことが出来るのだから、
裕福な家庭の子女が通う学校だったのだろう。
小窓覆いを横にスライドさせて、部屋の中を覗き込んでいく。

ベッドの上で、仰向けにされた少女の白磁のような白く滑らかな脚と脚の間に、赤紫のニキビの
ようなものが散った毛むくじゃらの汚い尻が入り込み、カクカクと動いている。

日に焼けた男は、まるで薄暗い部屋に溶け込むようで、その背中にしがみつくようにしている
白い手はまるで闇を抱いているようだった。

はぁはぁという男の荒い息と少女の小さな嬌声がドア越しにセブの耳に入る。

『はぁ…はぁ…出す…ぞ!』

という声と共に腰の動きが速まり、肉を打つ音と少女の嬌声が廊下に響く。

男が達する前に、セブは小窓覆いを閉める。次の部屋に向かう途中に一際大きい男の荒い呻き声と
少女の嬌声がドア越しに廊下に漏れ出た。
次の部屋では、ドアに向かい合うようにベッドのへりに座った男が、少女の後頭部を両手で掴み、
股間に押さえつけていた。

窓から覗かれているのに、気付いた男はニヤリと笑ってセブに片手をあげるが、その隙に少女は
首を激しく振り、男の股間から顔を離して、激しく咳こんだ。

『おい、てめぇ!』と声を上げて、男は再び少女の後頭部の金髪を掴み、固く閉ざされた少女の唇に、
先端だけが桃色の黒々とした性器をむにむにと押し付ける。

目を閉じて口を開けまいと必死な少女の横顔が首を振った拍子に見える。この国の国民特有の白い肌の
その顔は勃起した男の性器よりも、小さいようだった。

セブは片手を上げて、『邪魔してすまない』と表情だけで男に伝えて、小窓覆いを閉めた。

喧騒の中次々と部屋を見回り、階段を降りようとした頃、『親爺さん、ちょっと…』と背後から声を
かけられた。

半裸の若い少年のような兵士が、部屋の扉を半開きにして、手招きをしている。確か、陸戦隊のやつだったはずだ。
部屋に入ると相手をしていたであろう美人だが少し歳のいった女(確か20代後半の教師の一人だった筈だ)
が、ベッドの上に座り、毛布を体の前でかき抱いて、目を伏せた。豊かな金髪と布団では隠しきれない
白い肩と太もも、ふくらはぎが、暗闇に映える。

『何かあったか?』
『それが…。さっきまで、鞭で叩くような音と、叫び声が聞こえてたんです。確か軍曹が、
凄く若い女の子と二つ隣の部屋に入って行って…』

セブの表情が急に険しくなる。先刻、小窓覆いから覗いた時は特に何もなかったが、確かめなければ
ならない。

『本当か?』
『ええ。でも、怖くて…俺が言ったって言わないで下さいよ』
『分かった。因みにいつからだ?』
『そうですね…2時間ほど前です。すみません、もっと早く伝えたほうが良かったでしょうか』

ちょうど前の見回りが終わったときくらいだな、とセブは思うと同時に、このあどけなさが残る
少年のような兵隊と、ベッドの上の教師は2時間も身体を重ねていたんだと、いう事実に思いが至る。

少年兵は顔は幼かったが、陸戦隊らしい色黒で筋肉質な身体をしていて、体力もありそうだった。
目の下に隈を作り、虚ろな目をして金髪の教師の子宮内では、この若い異人種が何回も何回も射精した
精子が何億匹も元気に泳ぎ回っていることだろう。

『良いってことよ。ありがとな。今度、良い女回してやるぜ』

少年兵の顔が明るくなる。セブは教師だった女を一瞥して、『歳上が好きか?』と聞いた。少年兵は
頬を赤らめて、頭をかく。

『女教師って、何か良くないですか?“最初の時”に見て以来、はまっちゃって…』

ニコニコと無邪気に笑う半裸の少年兵を見ながら『“最初の時”ね…』と呟いて、セブは
『ま、楽しみにしてな』とだけ告げた。少年兵は無邪気な笑顔で『はい!』と元気良く返事をする。

そんな少年兵に優しく微笑み返して、セブはつかつかと廊下を歩いていく。
まさか先任軍曹では無いだろうが、曲がりなりにも海千山千の軍曹たちの1人である。
少年兵が、恐れるのは無理のない話だが、いくら兵隊の中で偉くあろうが、ここでは好き勝手は
許されない。そういう連中を一喝するために、軍に長くいたセブのような老人が、こういう仕事を
している。

ドアの前に立ち、耳を澄ませてセブは部屋の中を窺う。何かを隠されるといけないので、小窓覆い
は開けない。『あぁ…あぁ…』という呻き声と呼吸があわさったような野太い男の声と、
ピチャピチャと水が滴るような音が部屋の中から響いてくる。

セブはランプを床に置いて、鍵束から鍵を選び、一つ深呼吸して、鍵穴に入れる。開錠と同時にノブを回し、
一気に部屋に押し入った。

『う、うわ、何だ!?え、親爺さん?』

驚きの声をあげる軍曹を無視して、セブはずかずかと部屋の中に踏み込む。床には無造作に
制服-軍曹と女学生のもの-が脱ぎ捨てられており、セブはそれを杖で払って、床を見回した。

『親爺さん、何を…』
『黙っとれ!!』

セブの一喝に思わず、といった体で『はい!』と軍曹が返す。ベッドの上で半身を起こした
軍曹の上には、肩までの長さの金髪直毛の小柄な娘が跨っており、生気の無い目ではぁはぁと
息を吐きながら、軍曹の胸板の上に手をついていた。

『おい!何だ、これは!』

ベッドの傍に落ちていた鞭を手に取り、軍曹の鼻面に突き立てる。

『こ、こいつらが俺達の同胞をこき使ってた時の…鞭です…』
『んなこた、聞いとらん!なんで、こんなもんがここに有るんだ!』
『そ、それは…』
『うちの女を鞭で、引っ叩くなんざ、良い度胸じゃねぇか!』
『えっ!いや、そんなことしてないッスよ!』
『嘘つくな、このウスノロ!てめえが鞭で引っ叩く音が廊下まで、響いてんだよ!』
そう言うと、セブは軍曹に跨がる少女の肩を掴み、身体を自分の方に向けさせた。虚ろな青い目で
セブを見上げる少女は少し額が大きい他は整った美しい顔をしていた。

長い金髪が白くほっそりとした肩まで伸びており、くっきりと浮き出た鎖骨の下には『膨らみかけ』
という表現がぴったりな乳房が、肋骨の上に、やや外向きに乗っている。

白く滑らかな腹は、一筋の臍の窪みがあるのみで、大きめの骨盤が、美しいくびれを生み出していた。
太ももは軍曹の毛むくじゃらの腹と腰を挟みこんでいるからか、薄暗い部屋にやけに白く映えている。
その付け根に出来た鼠蹊部のくっきりとした窪みの先には、髪の色より少し茶色がかった陰毛が、
少女とは正反対に汚らしい軍曹の下腹部の真っ黒な茂みと絡まりあっている。

そして、茂みの向こう側では、年齢も、人種も、見た目も、全く釣り合わず、
永久に交わる運命に無かった筈の2人が、お互いの肉体で一番重要な器官同士で深く繋がっているのだ。

上から下まで隈なく少女の身体を調べたが、美しく白い身体には、ミミズ腫れや傷跡などは
一つも無い。少女は、顔だけをセブに向け、焦点の合わない青い瞳で、自分の身体を舐める
ように調べる老人を眺めている。

『てめぇ、なにしてやがった!』
『そ、それは…』
『何処を引っ叩いたんだ!言え!ぶっ殺すぞ!』
『だからそんなことしてませんよ!』
『んじゃ、何か?この細っちいガキんちょがテメェを引っ叩いたとでも言うのか、この木偶の坊が!』

再び少女の身体を検めようとした時、視界の端に引きつった笑みを浮かべる軍曹が映った。

ふと、セブは軍曹の身体を見る。筋肉なのか、脂肪なのか分からないが盛り上がった肉は日に焼けて
浅黒くなっており、胸から下腹部までは海藻のような体毛が繁茂している。

その、虫でも出てきそうな汚らしい胸毛の下の黄色い肌に、赤い筋が幾条も刻まれているのをセブは見つけた。
『お前、まさか…』

とセブが言うと軍曹は顔を引きつらせながら『ははは』と笑った。

『はぁ…』と深い溜息を吐いて、セブはベッドの上に腰かけた。

『親爺さん…』
『もう、何も言うな』
『はい…』

軍曹の上に跨った少女が不思議そうな顔をして軍曹とセブの顔を交互に見る。腰を浮かせかけたが、
軍曹のごつい手が少女の腰を掴んだ。眉間に皺を寄せた少女は『んっ…』と一声あげる。

セブは鞭を手に取り、立ち上がった。

『疑って悪かったな。ただ、これは持っていくぞ』
『はい…』
『ったく…なんでこんなガキにぶっ叩かせるんだよ』
『はは。親爺さん、分かってないなぁ。こういう、か弱い少女が俺みたいなデカい男を賢明に鞭で
叩く姿がまた…って親爺さん聞いて…』

バタリと強くドアを閉めて、セブは深い溜息を吐いた。腹いせに壁を殴ってやろうとしたが部屋の
中から軍曹の『怖かったでちゅよー』という声を聞いて、何もかもが馬鹿らしくなったセブは振り
上げた拳を下ろした。

こんな程度のことで物に八つ当たりしても仕方がない。部屋で見た軍曹の汚らしい体毛の記憶を
払うように頭を振って見回りを再開する。

密告した少年兵の部屋から、『はぁ…はぁ…産ませてやる…俺のガキを…』という呻くような声と、
女教師の啜り泣く声が聞こえた。『若ぇのにお盛んなこって』と独り言を言いながら、部屋の前を通りすぎる。

階段を降りながら、少年兵に組みしだかれ、鳴き声を上げる豊満な女教師と、
虚ろな目をして太った軍曹の上で腰を振る少女を思い描く。股間に徐々に熱がこもるのを感じる。

『今日は女を抱くかな』と思いながら階段を下ると、ドア越しのくぐもった音とは明らかに違う、
パンパンという肉を打つ音と、男が荒く息を吐く音、女の呻き声が廊下に響いている。

セブは今日、何度目かわからない溜息を吐いた。
事務所の前で兵隊が、壁に押しつけるように正対して女を犯していた。女はくたびれた
制服の上からなすがままに身体をまさぐられ、唇を奪われながら、押し殺すように静かに
泣いているようだった。妙に滑らかに動く男の汚い尻に割り込まれた白い両太ももが、
捲り上げられた赤茶色のプリーツスカートから伸びている。

セブに気付き、後ろを振り向いたのは交代要員の若い兵隊だった。

『あ、親爺さん』

兵隊の後頭部で隠れて見えなかった赤髪で白い肌にそばかすが散った少女が、濡れた瞳でセブを見る。
目の周りは真っ赤に腫れ、口の周りは彼女自身のものか、それとも、兵隊のものかも知れない唾液で
てらてらと光り輝いている。口を塞がれ、ろくに息が出来なかったのだろう、はぁはぁと息を荒げていた。

『すまねぇ…すぐに出しちまいますんで』

兵隊は背中越しにセブにそう言うと、赤毛の少女の両頬を掴み、顔を自分の方に向ける。
そして、突然のことに驚き、目を見開く少女の薄い唇に、自分の唇を押し付けた。丸出しに
なっている毛だらけの尻の動きが激しくなり、くぐもった悲鳴が廊下に響く。

セブはまるで二人が存在しないかのように無視して、事務所に入った。鍵を所定の場所に戻して、
椅子に腰掛ける。外では、男の唸り声がより大きくなり、女は悲鳴というより、泣き叫んでいるようだった。
『ったく…』

ブツブツと独り言を言いながら、書きかけだった日誌を開く。部屋を出る直前に記載した『補充を要請』の文字が目に入る。

“補充”

セブは日誌の1番初めの頁を開けた。簡単に『本日、司令部が旗艦から移譲』と書かれた以外は、
必要な物資のメモ程度の記載しかない。

『おい、後ろを向け!ああ?殺されたいのか、売女!早くしろ。そうだ、壁に手を着け。ほら、
膝を下げろ。下げろ!そうだ。いくぞ…』

ったく、すぐ終わるって言ったじゃねぇか、と溜息を吐きながらセブは独りごちる。

聞いた話だが、連中の宗教では、後ろからの挿入は、堕落の象徴であり、悪魔の所業にも等しいそうだ。
そんな連中にとって、廊下で、立ったまま、後ろから犯されるのはどんな気分なのだろう。しかも、猿と呼んでいた俺達に…

ふと、セブは“最初の時”に後ろから犯された女のことを思い出した。

連中が行為を終えるまで、まだ、時間がかかるだろう。セブは腕を組み、椅子の背もたれに体重を預けて、目を瞑った。
あれは、陸戦隊が上陸し、街の要所を占拠した後のことだ。

防衛部隊の抵抗は限定的で、その多くが直ぐに降伏したため、市街地での
戦闘や民間人の死傷はほんの少数だった。

市庁舎で防衛部隊の降伏、及び、市長による恭順の意が示された後、
旗艦に置かれていた司令部を市庁舎以外では一番立派な建物のある、
この女学校に移設することとなった。

寮生活を送っていた女生徒と教師達の多くは学校に留まっていた、と言うよりも、
我が方の侵攻があまりにも早かったため、逃げ遅れたというのが正しいかもしれない。

彼女達は講堂に集められた。銃を構えた陸戦隊員達に囲まれて、皆、寄り添うように
集まり、不安な表情を浮かべていたのをセブはよく覚えている。

そんな彼女達に対し、陸戦隊の先任軍曹が講堂の最前に置かれた台上に登り、
一つ咳払いをしてから喋り始めた。

『帝国水軍遠征艦隊所属、陸戦隊先任軍曹です』

先任軍曹が大声を張り上げると台の脇に立つ若手将校が同じように大声で彼女達の
言葉で通訳を行った。正式な部隊名、先任軍曹の氏名が述べられなかったことに、
長い軍隊生活ゆえの違和感を感じながらも、セブは若手将校の後ろに立って、先任軍曹の話を聞いていた。

『先刻、市長より降伏の要請があり、艦隊司令部にて要請は受諾されました』

若手将校が訳を告げると、教師と生徒達が息を呑む気配が伝わってきた。

『また、降伏受諾後、市長と我が司令部との会談により、以後の駐留に関する
取り決めが暫定的にではありますが決定致しました』

ふぁ~あ、とセブはあくびをしながら、軍曹の話を聞いていた。会談と言っても、
荒くれ者の陸戦隊の事だ。市庁舎の警備部隊を皆殺しにでもした後、返り血を
浴びたままに降伏を迫ったのだろう。

『その場で決定したことですが、貴校の校舎及びその他の施設は我が軍によって
接収され艦隊司令部が当地に設営されます』

集められた生徒達がざわつき始める。

『また、これは市長側からの提案を当方が受諾したものですが…』

と、先任軍曹は一言区切り、咳払いをした。

『貴校の教師、生徒の皆さんには、校舎及び寮に留まって頂き、暫くの間、
我が軍の駐留の支援をお願いすることになりました』
ひそひそと微かなものだった女学生達の話し声が、若手将校の通訳が終わると同時に爆発した。

銃を持った陸戦隊員達が『静かにしろ!』と凄むが、彼女達は一向に話すのを辞めようとしない。
困惑、怒り、恐怖、などの様々な感情が講堂内に渦巻く。

『あいつら、何騒いでんだ?』とセブは若手将校に話しかけた。

『えーと…大抵は意味も無く泣き叫んでますね…嫌だとか、家に帰りたいとか、
お母さんとか。あ、あの髪の長い可愛い子は、何で奴隷なんかに使われないといけないの、
ですね。あと、あの茶色い髪の気の強そうな女の子は、猿は動物園に帰れ、とかそんな感じです』

なぜか楽しそうな若手将校を、はいはい、とセブは手を挙げて制した。

故意か弾みかは分からないが1人の陸戦隊員が小銃の銃口をヒステリックに騒いでいる女学生に向けた。
一瞬、呆けたような表情を浮かべた女学生は次の瞬間、聞く者の鼓膜を引き裂くような悲鳴を上げ、
それにつられて、他の学生たちも悲鳴を上げ始めた。

講堂に響き渡る金切り声に収集がつかなくなりかけた時、制服を着ていない何人かの女達が
立ち上がり、女学生達に何かを呼びかけ始めた。彼女達は静かに、しかし、時に声を荒げて
騒いでいる女学生達を抑え、泣き叫んでいる女学生には肩を抱いて慰めた。

数分もしないうちに騒ぎは収まり、後は女学生達の静かな泣き声だけが講堂を満たした。

制服を着ていない女達は集まって、何かを話し合うと、その中の1人が歩み出た。
この国特有の三つ編みにした金髪を王冠のように頭に巻いた、若くはないが青い目の
背の高い女だった。女学生の制服ではなく、胸にフリルのついた白いブラウスに、
くるぶしまでの長さの黒いスカートをはいている。
『軍曹殿…私は本校の教師をしております、エレナ・クサキナと申します』

若手将校からの翻訳を聞いた先任軍曹は台の上から降りて、エレナと名乗った女教師の
前で敬礼する。それを受けて、エレナはゆっくりと腰を折りお辞儀をした。

『クサキナ教師殿。本職は帝国水軍遠征艦隊所属、陸戦隊先任軍曹です。
軍の作戦が進行中であるため、姓名をお伝えすることが出来ないことをお詫び致します』
『構いません、軍曹殿…。校長、教頭などの幹部は数時間前に市庁舎に呼ばれたまま、
帰っておらず、私が教師の中では最先任ですので、対応をさせて頂きます』

若手将校の翻訳越しに会話が続けられた。

『了解致しました。貴校の幹部の方々に市庁舎へお越し願ったのは当方の要望であります。
司令部の移譲、教師と生徒の皆さんの支援はその際、校長殿ほかの承認を受けて決まったことです』

『そうでしたか…。彼女達はいまどこに?』

『市庁舎にいらっしゃいます。ここに来て直接、皆さんに駐留と支援についてお話になりた
かったそうですが、市街地は未だ危険であるため、市庁舎でお待ち頂くことにしました。
支援については出来るだけ強制はしないで欲しいと要請を受けております。また、学校に
居る皆さんには、軽挙妄動は慎むよう伝えて欲しい、と』

『了解致しました。では、軍曹殿、支援の件なのですが、具体的にはどのようなものになりましょう?』

『雑務です、クサキナ教師殿。当方は現在、我々、武官のみのため、軍務とは関係の無い雑多な
労務を行うような用務員がほとんどおりません。施設の維持整備(これは例えば掃除や洗濯です)や
隊員の食事などの身の回りのお世話をお願いすることになりますが、事務員が当地に着任され次第、
随時、交代されます』

『了解致しました。本校の学生は勉学だけでなく、良家の子女の嗜みとして、家事についても一通り
習得しております。貴軍の皆様のお役に立ちましょう』

『では…』

ゴツい顔にしかめ面を貼り付けていた先任軍曹の顔が少しだけ緩む。

『はい、軍曹殿。当校の教師、 及び生徒は貴軍の駐留のお手伝いをするご用意が御座います。
しかしながら、一つだけ、お聞きかせ願いたいことが御座います…』
『なんでしょう』

『駐留に当たって、当校の生徒達の命を危うくするような役務は御座いませんでしょうか?
もしも、彼女達の身に危険があるようなことが御座いましたら…まずは私達教師に…どうか…』

最後の方は泣き声が混じり、若手将校も聞き取れないようだった。先任軍曹は再び
顔を引き締めて、エレナに声をかける。

『お願いするのは、あくまで雑務です、クサキナ教師殿。生徒の皆さんの命を危険に晒すようなことは
御座いません。もしも、そのようなことをお願いするような事態になれば、
まずは教師の皆さんにご相談させて頂くこととします』
『ありがとうございます、先任軍曹殿…』

エレナは目尻をハンカチで軽く拭い、微笑みを浮かべながら先任軍曹に伝えた。

『では、生徒の皆には私からお伝え致します』

後ろで待つ生徒達に顔を向けようとしたところで、先任軍曹が『お待ちください』と声をかけた。

『なんでしょう、軍曹殿』
『少し貴校についてお伺いしたいのですが…』

エレナは少し首を傾げながら、軍曹に先を促す。

『貴校の生徒の皆さんの年齢は?』
『14~18歳です、軍曹殿』
『それより、若い方はいないのですね?』
『はい、軍曹殿』
『例えば、幼児を預かるような施設はありませんか?また、授業で幼い子供の世話を習ったりはしませんか?』
『幼児を、でしょうか…?』

怪訝な表情を浮かべながら、エレナは答えた。

『本校には学生と教師のための寮が御座いますが、幼児をお預かり出来るような施設は御座いません。
子供のお世話については、あまり重きはおいておりませんが、結婚後のことも御座いますので、
それなりのことは教えております』
『そうですか。では、教師の方に幼児を保育する資格を持たれる方はいらっしゃいませんか』
『本校の教師は中等から高等の学生の教師としての資格は保有しておりますが、それより年下の子供となりますと…』

了解致しました、クサキナ教師殿、と答えて先任軍曹は微笑んだ。それにつられて、エレナも少しだけ顔を緩ませる。

『しかし、どうしてでしょう?』
『間も無く、乳幼児が大量に当地に来るのです』
『お国から子供が来られるのですか?』

それを聞くと先任軍曹はまた微笑んだ。
『いえ、私達の子供ですよ、エレナ教師殿』

まぁ、とエレナは目を見開く。

『お国の軍隊はご子息やご息女を軍船に乗せる風習がお有りなのですか?』

わざとおどけるようにエレナは言った。女学生達から笑い声が上がる。

エレナの発言を笑いながら訳す若手将校に耳を傾けながら、先任軍曹や、
学生たちを囲む兵士たち、そして、セブも笑い声を上げた。

ははは、と笑いをしぼませると、先任軍曹は『セブの旦那ぁ!』と叫んだ。

『準備は出来てますかい?』
『あぁ、バッチリだぜ』

先任軍曹は微笑みながらエレナに向き直った。

『これは一本とられましたな。さて、先程、エレナ教師殿はこの中で
最先任とおっしゃいましたね。失礼ですがおいくつですか?』

『32歳ですが、何か』

再び怪訝な表情を浮かべるエレナに、『失礼しました』と軍曹は微笑みながら、答える。

『いえね、貴校の教師殿は幼児の保育の資格をお持ちでないとおっしゃいましたが…』

軍曹は帽子を取り、台上に置いた。

『エレナ教師殿含め、皆さんはちゃんと資格をお持ちですよ』

『はぁ…』と不思議そうな顔をするエレナに対し、軍曹の笑顔は一瞬にして、
凶暴なものに変わった。

『先公のクセにまだわからねぇのかよ』

若手将校はニヤけ顔を浮かべたまま、通訳をしなかった。

軍曹は、怪訝な表情を浮かべている女教師の白いシャツのフリルを掴み、
一気に引き千切った。
『え…?』

数瞬、呆けたような顔を浮かべた後、クサキナは、はっ、と何かに気付くように、
引きちぎられ、ボタンの弾け飛んだ自分のシャツを見た。白いシルクの肌着を、
胸の双丘が高く押し上げている。

視線を前に向けると、目を血走せらせた軍曹が、先ほどの丁寧な態度からは想像出来ない、
嫌らしい笑みを浮かべている。軍曹は引き千切ったフリルを放り投げ、そのゴツい手をエレナに伸ばす。

『い、嫌っ!』

エレナは小さく叫ぶとは露わになった肌着を隠すために(まるで少女のように)身体をまるめたが、
軍曹は構わずその金髪を乱暴に鷲掴みにした。

エレナが何かを叫んだようだが、セブにはもちろん、何を言っているのかわからない。
軍曹は髪の毛を掴んだまま、先刻まで自分が立っていた台の上にエレナの上体を押さえつけると、
泣き喚く女教師の耳に顔を近づけ、何かを告げる。エレナは目を見開き、絶句した。

(後から、ひどい訛りで『シズカニシロ…!モシ、サワグ、アバレル、オマエ、
ガキタチ…ゼンブ、コロス!!』と言ったと聞いた)

横向きに台上に押さえつけられたエレナの視線の先には、驚愕の表情を浮かべ、
一言も発する事の出来ない同僚や女生徒達の姿があった。

エレナが抵抗を辞めたのを確認してから軍曹は、身体を離して、ベルトに手をかける。

カチャカチャという金属音とファスナーを下ろすジッという音の後、軍服のズボンの中から、
男性器が引っ張り出された。女生徒のうち数人が小さく悲鳴を上げ、また、数人は手で顔を
覆ったが、大部分はただ驚愕の表情を浮かべたまま、固まっている。

軍曹は女生徒達に一瞥をくれると、ニヤリと笑って、掌にぺっぺっと唾液を吐きつける。
そして、彼女達に見せつけるかのように掌の透明な粘液を自分の性器になすりつけ、
シュッシュッと音を立て数回扱いたあと、自分の方に突き出たエレナのスカートの尻の部分で拭った

『ひっ!』

とエレナが小さく悲鳴を上げたが、軍曹は意に解さずといった体でいやらしい笑みを浮かべたまま、
スカートを捲り上げる。白く滑らかな長い脚から、張りのある太もも、股間を隠す白い下着までが露わになる。

騒ぎ始めたエレナの髪の毛を掴み、再び台上に押さえつけると軍曹はエレナにまた、何かを囁きかけた。
エレナの絶叫が講堂に響き渡り、更に激しく抵抗を始めるが、軍曹は力ずくでエレナの下着を
太ももの膝まで下ろす。そして、肥大した自分の男性器を掴み、露わになったエレナの尻の割れ目に
何の躊躇いもなく押し込んだ。
軍曹が至福の表情と共に漏らした『はぁ~~』という声は、
一際大きなエレナの絶叫によって掻き消される。

軍曹はそれを無視して、エレナの腰を掴み、激しく突き上げ始める。

悲痛なエレナの叫びは軍曹の突き上げのたびに肺の奥から絞り出される
ような苦しげな吐息と共に中断させられ、次第に小さくなっていき、
赤く、醜く顔を歪めながら時折、泣き声まじりに何かを呟くのみになる。

そして、エレナの悲鳴が消えると共に、肉を打つ乾いた音、軍曹の唾液まみれの性器とエレナの
膣壁が擦り合わされて起こる、ぐちゅぐちゅという卑猥な音が講堂に響き渡り始める。

『あ、あ、あぁ~気持ちいい…はぁはぁ』

『No...No...』

苦痛に耐えるしかないといった体で無抵抗になったエレナの背後から、
軍曹は肌着越しに乳房を乱暴に揉みしだく。

ふと、セブが集められた女生徒達に目を向けると、彼女達は軍曹に陵辱されているエレナを、
まるで別世界で起こっていることの様に眺め続けていた。

この時、なぜ誰も叫び声を上げたり、泣き喚いたりしなかったのか。
後日、セブが通訳を介して女たちに聴いた所、原因は年齢によって違っているようだった。

性の知識の無い、中等部の女生徒達の多くは、エレナの美しい白い肌に、
奴隷民族の黄土色の肌が打ち付けられるのを見て、いま、眼前で行われている
事の意味が全く分からなかった。

高等部の女生徒達は、ある程度は知識を持っており、既に許婚が居て初夜の手筈の
教育を受けていた者さえいたが、所詮、それは経験の無い少女達が夜更けに面白
おかしく噂し合い、聞き知ったものでしかなかった。

目の前で繰り広げられている暴力的な行為の野蛮さと卑猥さ、そして、教師の尻から時折、
姿を覗かせる男性器のグロテスクさは乙女の無邪気な想像を超えており、
ロマンティックな夢想は粉々に打ち砕かれ、呆然と立ち尽くすしか無かったのだった。

教師達の中には既婚の者もおり、既に子供を持っている者もいた。しかし、事の重大さを
理解している故に、目は見開かれ、脚は震え、声を上げることも出来なかった。
肩を小刻みに震わせ、顔面を蒼白にさせた彼女達に、先刻、女生徒達を落ち着かせた
教育者としての面影は既に無かった。

軍曹とエレナの交接の音に混じって、時折、どさっ、どさっと何かが倒れる音が講堂に響いた。
女生徒や教師の数人が失神し、床に倒れる音だった。
『あ~、もう、辛抱たまらん…出すぞ、金髪!』

と軍曹は故郷の訛りで叫ぶと、台上に両手をつき、腰を更に激しく打ちつけ始めた。
エレナは声を上げることも出来ず、まるで壊れた蛇口のように止めどなく涙を流しながら、
軍曹の腰の突き上げに合わせて、揺れている。

うぅっ~と唸り声を上げて軍曹は一層強く腰を押し込み、動きを止めた。軍曹の毛の生えた
汚ない尻が何度かひくひくと痙攣し、それに合わせてエレナが声にならないくぐもった
叫び声を小さく上げる。

『…ったく』

とセブは小さく呟き、顔を両手で何度か撫でると、ふぁ~あとあくびをした。

はぁはぁと荒い息を吐きながらエレナに覆い被さっていた軍曹がむくり
と起き上がり、ニヤけ顔を浮かべながら、服装を整える。エレナは上体を台上に
もたれかけさせながら、肩を震わせていた。露わになったままの白い太ももには、
一筋、赤い液体が滴り落ちている。

(あんなに良い女なのに、あの歳で生娘とはな)

きっと、良家の子女だったのだろう。許婚でも居るのかもしれない。セブは知らず知らずの
うちに笑みを浮かべてしまっているのに気付いた。

軍曹に目を移すと、先刻まで女を犯していたとは思えない立ち居振舞いで、つかつかと歩き、
通訳をしていた若手将校の前に立って敬礼した。
大尉が答礼し、軍曹は手を下ろした。

『大尉殿!本校の教員の代表者に事情を説明し、校舎施設の接収及び、教員、生徒の方々の
我が軍へのご協力について、同意を頂きましたことをご報告致します』

『ご苦労。しかし…』

台上のエレナを一瞥して、大尉は言った。

『彼女にはきちんと説明していないように聞こえたが。教員と生徒の支援の中の、
その…“身の回りのお世話”について』

ニヤニヤと笑いながら、大尉が言と軍曹もニヤリと笑った。

『十分にご説明したものと理解しておりました。必要であれば、
教員代表殿に再度、ご説明致しますが』

軍曹も先刻まで自分と繋がっていた女を見遣った。エレナは虚ろな目をしながら、
台に背をもたれさせ、止めどなく涙を流し続けている。

『いや、その必要は無い。ところで軍曹。司令部を移設するのに、
どれくらいの時間が必要だろう?』

『そうですな…。セブの旦那、如何です?』

セブはふん、と鼻を鳴らして軍曹を睨んだ。

『この辺じゃ戦闘も無かったし、何処も壊れちゃいねぇんだ。建物を空にするだけなら、
てめぇらだけでも半日ありゃ充分だろうよ』

軍曹が睨み返してきたが、セブはそれを見ないフリをした。

『だ、そうです、大尉殿』

大尉は『そうか』と答えると、顎に手を当てて、目を伏せた。

『何か?』『うん』

大尉は伏せていた目を軍曹に向けながら、『我が軍の艦砲はこの辺りにも着弾したと聞いている』と言った。

『私の見た所、この講堂も含めてかなり古い建物のようだなそれほど頑丈には出来ていないことだろうし、慎重に調べる必要がある』

ほう、と険しかった軍曹の顔がニヤリと歪む。セブは深い溜息を吐いた。

『設営準備完了には1日…いや、2日は必要、と司令部には報告しておこう』
軍曹の顔がいやらしく歪み、セブは舌打ちをする。

『流石、大尉殿。話が分かりますな!』

大尉は微笑を浮かべるが、セブは憮然とした表情を崩さず、軍曹の鼻面に人差し指を突き出す。

『言っとくがな、先任軍曹!綺麗に使えよ。良い建物なんだ。反吐や小便を撒き散らしたら、
お前らで綺麗にしてもらうからな!』

『はは、セブの旦那、聞いてただろ?掃除はあいつらがやるってことになったんだよ』

軍曹は青ざめ動けない女生徒と教員達を親指で指しながら言った。

『そういう問題じゃねぇ。甲板掃除は水軍兵士の基本だろ。陛下からお預かりした施設や装備は
常にピカピカにしとくんだよ。てめぇら帝水将兵として恥ずかしくねぇのか』
『へーへー、すみませんね。我々は水軍の癖に艦も動かせない。陸軍様の露払いの犬でございますよ』
『何だ、その口の利き方は!俺は貴様が産まれる前、船が帆を張ってた頃から艦に乗ってるんだ!
てめぇみたいな糞ガキに生意気な口を叩かれる筋合いは…』

セブが顔を真っ赤にして腕を振り上げたところで大尉が仲裁に入る。

『まぁまぁ、落ち着いてくださいよセブの旦那。軍曹もちょっと言い過ぎだぞ』

同時に鼻を鳴らして二人は視線を逸らした。セブは大尉にも食ってかかる。

『あんたもあんただ、大尉。こんな連中に2日もやりやがって。モノをぶっ壊すことと女とヤることしか
考えてない連中だぞ。この建物もあいつらもみんな使い物にならなくなる』
『まぁ、そう言わないでくださいよ、旦那。陸戦隊の連中の手際が良かったから、こんなに早く街が占領できたん
でしょう?3日ほど市街地の占領にかかるはずたったんだ。本当は今頃、俺たち艦の上なんですよ』

ニヤリと笑う軍曹を一層強く睨みつけた後、鼻を鳴らしてセブは視線を逸らした。
『ただな、旦那の言うように施設を無闇に破壊したり、汚したりすることは許可出来んぞ、
先任軍曹。当然、女達の方もな。連中は貴様達の相手の後は休みなく、船に乗ってる連中の
相手もせねばならん。しばらくはそっちにかかり切りになるだろうから、清掃は貴様らで交代でやれ』
『了解致しました、大尉殿』
『中には支援を拒む者も居るかもしれん。貴様らで“粘り強く説得”するように』
『ひひひ。淑女の扱いは苦手ですが、“商売”の女とのお付き合いだけは、うちの連中は得意でしてな』

女生徒達を囲む兵士達からも笑いが漏れる。

『見た所、男のことなんざ何も知らんようなガキと世間知らずのお嬢さんばかりのようで、流石に
“商売”の作法の御指導なんかは初めてですが、何、方々の港で酸いも甘いも知り尽くした奴らでさぁ。
艦隊の皆さんのお相手の際に失礼がないよう、じっくり仕込みますぜ』
『それは、ありがたいな。だが、何か考えでもあるのかい?』
『聞いたことがあるんでさ。身売りされて無理やり身体を売らされた女にね。いつから、見ず知らずの
男に抱かれるのが嫌じゃなくなったか、って』
『ほう、それで?』
『いつまで経っても嫌だ、特にあんたみたいな汚くて臭い兵隊はね、って』

流石にセブも吹き出してしまう。

『というのは、まぁ、半分冗談でしてね。とにかく、数だそうですぜ。初日5人目の男に抱かれてから、
もう、それからは後は作業になった、と。惨めな気持ちもすっかり無くなって、商売をするに何も思わなく
なっちまったそうでさぁ。まぁ、女によっては、それが5人だったり、10人だったり、するんでしょうがね』

軍曹の卑しい笑みはいつの間にか、不敵な、凄味のあるものに変わっている。

『ちと、数が多いですが、うちの連中も色々溜まってますからねぇ…何しろ、うちらの兵科は敵地に真っ先に
斬り込むんです。玉のデカさだけは船乗りにも陸式にも負けませんぜ。なぁ、みんな!』

野太い歓声が上がり、女生徒達は一層、表情を恐怖に強張らせ、身体を寄せ合う。蛇の大群に囲まれた栗鼠の
群れがあったとしたら、こんな感じなんだろうな、とセブは思った。

『野郎共!聞きやがれ!こちらの…いや、“我らの大尉殿”が、今日の貴様らのとろくせぇ働きに免じて、
“施設の設営”に2日下さるそうだ』

兵隊達から再度、大歓声が上がった。

『目の前の淑女の皆さんは、てめぇらクズ共とは全く関わりのねぇ人生を送る筈だったやんごとねえ方々だ。
裁縫、掃除、料理に洗濯も、将来の旦那様のために、ばっちり習得してて、おつむも大変よろしくあられる。
俺たちがご教授させて頂くことなんざ、一つも無さそうだが、“殿方の身の回りのお世話”については
実地では、よくご存知ないらしい。船乗りの皆さんや陸式の連中に無礼の無いよう、しっかり礼儀、作法、
所作をお教え致すよう、われらの大尉殿から、ご命令だ』
『軍曹殿、任せてくださいよ。ざっと見た感じ、教え甲斐のありそうな娘ばかりですしな!』
『1人につき、最低5人なんざ、それこそ、セブの旦那の言う通り、“半日ありゃあ充分”ですぜ!』
『何しろ、俺らもう、どでけぇ汁のたっぷり詰まった桃かなんかを二つ股の間に挟んでるみたいでさ』
『ひひ、汚ねぇ桃もあったもんだな。ま、てめぇらのねっとり甘いどろどろの汁をしこたま、腹の中に
注ぎ込んでやんな。下の口からな!』
『おっと軍曹殿、上の口から飲ませるのも、乙なもんですぜ!』
下卑た爆笑が講堂に響く。ただならぬ雰囲気に女生徒や教師たちの中には、泣き出し、叫び声をあげる者も出始める。
『好きにしな!ただな、此方の方では腸詰めが名産だからなぁ。貴様のズボンの中のものとそっくりのな。
上の口で噛みちぎられないように注意しな』

大歓声が上がる。陸戦隊員達は談笑しながら、装具を外し始めた。

『さて、私は艦に戻るとするよ』
『大尉殿は設営の指揮を執られるものと思っておりましたが』
『設営は貴様らに一任だ。私は通訳と女学校側の要請受諾を確認しに来ただけでね。何の理由もなく陸に居ては
艦で待つ連中に何て言われるかわからんし、なにより設営の最中は“ここに居ない”ことになっている必要がある』
『なるほど、そうですか…』

先任軍曹は顎に手を当てて、目を伏せると、軍服のズボンに手をかけていた陸戦隊員に『おい』と声をかけた。

『確か、艦から出した内火艇は上陸戦の時に受けた反撃のせいで全部修理中だったな』
『はい、軍曹殿。全艇使用可能ですが…』
『ああ?てめぇ、舐めてんのか?俺がさっき見た時はそうだったんだよ!どうなんだ!』
『は、はい、軍曹殿!全艇修理中であります!』
『馬鹿野郎!ちゃんと見とけ!次にいい加減なこと言ったら、ぶっ殺すぞ!』
『は、は、はい、軍曹殿!』
『という訳で、大尉殿。内火艇が全て故障しており、修理完了も日没後になる模様です。如何でしょう。
当方より艦に連絡はしておきますので、こちらで宿泊なさっては』
『はは、では、そうするか』
『おい、お前!大尉殿は内火艇の故障で今日は艦に戻れなくなったため、女学校の要請受諾を確認後、
市庁舎で宿泊する旨、艦に連絡入れとけ。後でで良いぞ』

『はい、軍曹殿』と答えた若手陸戦隊員を見ながら、大尉はニヤリと笑った。

『先任軍曹。先程、貴様は俺の事を話しが分かると言ったが、貴様もなかなかじゃないか』

ははは、と二人は笑いあった後、先任軍曹は陸戦隊員達に一言、『やれ』と呟いた。

そのあとはただ、凄惨な光景だった。
放たれた猟犬達のように陸戦隊員達は少女と教師に群がった。

目をつけられていたらしい女は直ぐに捕まり、服を引き千切られ、組み敷かれた。
悲鳴、というより絶叫が講堂に響き渡る。

陸戦隊員達の手をすり抜けた女達は講堂の出入口に殺到した。重い扉に手をかけた女教師が一瞬、
呆けたような表情を浮かべ、その後、焦りながら何度も扉を動かそうとしているのをセブは見た。

単に『女だし扉が壊れるなんてことはねえだろう』とセブは思った。少女達が集められ、
先任軍曹が台上に登る前までに、講堂の扉という扉、窓という窓は全て施錠、または、
セブによって閉鎖されていた。

女教師と少女達が扉を開けようと必死になっている背後に、陸戦隊員達が集まり出していた。

ニヤつき服を脱ぎながら、その様子を眺めている陸戦隊員達の表情と、泣きながら、必死に扉を開けようと
している女達の表情を見て、流石のセブも哀れになったが、直ぐに気を取り直した。

その数時間前、同胞の収容所を解放する際の光景を思い出したからだ。

一方的な国交断絶を言い渡され、宣戦布告を受けたセブの祖国は、『帝国』と名前だけは大層だが、
実態は小さな島の集まりに過ぎず、国民の多くを飢えさせて、ようやく戦艦を何隻か買えるような貧乏
な国でしかない。
開戦劈頭、味方主力艦隊の泊地に殴り込んで来た敵水雷部隊を撃退し、連中の『正当な領土』である
かつての同胞のこの土地に上陸するまで、7ヶ月。

先住民である肌の色が同じ同胞や、奴隷として連れて来られた移民達は収容所に集められていた。

信じられない程に痩せ衰えた男達。服をズタズタに引き裂かれた女達。

そして、収容所の外に山のように折り重ねられた老人と子供の……

『良い気味だ』

セブはそれ以上考えるのを止めた。
大体、何もかもこの連中は俺たちを馬鹿にしている。鎧袖一触を狙って泊地に突入してきた
水雷部隊の捕虜達や、銃を突きつけられて降伏する守備隊の兵士達、役所の事務員といった体の
収容所の看守達、それに軍艦に子供を乗せているのかと聞いた女教師も、だ。

みな一様に俺達が『人間』であることに『ようやく気付いた』ような顔をしやがる。

セブは床にへたり込んで動けなくなっている少女の頭を掴み、顔を向けさせて唇を奪った。
唇を離すと少女はまた『ようやく気付いた』という顔をした。セブはその少女を押し倒した。

『そんなに分からねぇんだったら教えてやるよ』

その日、セブは孫が居たとしたら、それよりも若い年齢の4人の少女の『初めての男』になった。

泣き叫ぶ4人目の少女の膣内で射精し、はあはあと息を荒げていた時に背後から『あの、親爺さん…』と
声をかけられた。艦に大尉が帰れなくなった旨、打電するよう命令された陸戦隊員が無電を打ちたいので、
外に出して欲しい、と言っているのだった。

一瞬、こいつを無視すればあの小生意気な大尉に大目玉を喰わせることが出来ると思ったが、
『講堂の外に出たいのですが、どこか扉を開けて頂けないでしょうか』と丁寧に言う陸戦隊員に
怒る気力も無くなり、少女の膣内から、まだ硬いままの性器を引き抜き、立ち上がる。

ドアに向かうがてら、疲れて眠っている陸戦隊の数名を叩き起こした。

失禁した少女達の尿と陸戦隊員達の体液で汚れた床を、取り敢えず拭かせる為だった。


獣のような唸り声が上がり、流石のセブも思わず、ドアの方を見遣った。

一声、悲鳴が上がった後は、女の泣き声と、はぁはぁという男の荒い息の音しかしなくなった。
セブは日誌に顔を戻して、確認項目にチェックを入れていく。ドアが静かに開く。

『いやー、すみません、親爺さん。ちょうど、女を返しにきた奴がいましてね。
鍵が無かったし、良い女だったもんで、つい…』
『他の野郎にヤられたての女とよく出来るな』
『緩くなってて良いんですよ』
『汚なくねぇか。前の男の精液まみれだろ?』
『はは、まぁ、返しにきた奴、良い男だったしねぇ…って、いや、ちょっと親爺さん、
冗談っすからそんな顔せんで下さい!ちゃんとヤる前に拭きますよ!』

セブは片手で若者の言葉を制した。

『大部屋の鍵はそこに掛けてある。寝たいから早く行ってこい。あとな。ただでさえ、俺たちは兵隊達から
良い思いをしてると思われてんだ。あんまり、軽率なことをすんなよ』

『すみません…』

交代の兵隊は赤毛の少女の手を引いて部屋を出て行った。それを見届けて、
セブはタバコに火をつけ、煙を吸い込む。

何故か髭の中尉のサケの話と事務所の前で一瞬だけ目が合った時の赤毛の少女を思い出した。

ふう、と息を吐いて、タバコを灰皿に押し付け、廊下に出る。

セブは両脇の部屋から聞こえる喧騒に負けないよう、赤毛の少女を連れて歩く兵隊に声をかけると、松葉杖を突きながら、つかつかと歩く。

『どうしたんです』
『戻って良いぞ』
『こいつは?』
『俺が抱く』

兵隊はニヤリと笑い、少女をセブに手渡した。

『ちゃんと拭いてくださいよ』

うるせー、と独り言のように返してセブは三階に向かう。
部屋に入るとセブは少女と隣り合わせでベッドに座った。
赤毛の少女はセブに目を合わせようともせず、床に視線を落としている。

セブが自分のズボンに手をかけて下ろすと、少女も無言でスカートの中に手を入れて
白い下着をくるぶしまで下ろした。片足ずつ外して丁寧に丸め、ベッドの脇にある
棚の引き出しに入れる。

セブが少女の手を握ろうと手を伸ばすと、少女はそれを振り払う。

セブがもう一度、手を伸ばすと、明確に拒絶の言葉を述べて、再び少女は手を振り払い、
まるで、隣にセブが居るのを否定するかのように、制服のブラウスのボタンに手をかけた。

少女は腫らした目を伏せて無言でボタンを上から2つだけ外し、今度は長袖の裾のボタンに
手をかける。それを横目で見ながら、セブは剥き出しになっている自分の性器を何度か
しごく。少女が眉間に皺を寄せているのに気付いた。

怒っているような、怯えたような、諦めたような表情。そして、濡れた瞳。

事務室の前で、交代の若い兵隊に立ったまま犯されていた時に、一瞬だけ目が合ったの
を思い出すと、セブは赤毛の少女が手を振り払った理由と、何故か、無性に、この女を
抱きたくなった理由が同時にわかったような気がした。

赤毛の少女の肩を掴んで強引にベッドに押し倒し、そのまま唇を奪う。

舌を絡めると、唾液に混ざる微かな雄の匂いが、その晩、少女に対して行われた
行為をセブに想像させる。

『ん…ん…』と苦しそうに喉を鳴らし始めた少女から唇を離し、少女に息を吐きかける。

涙目でセブを見上げるそばかすの散った白い肌の少女。確かに良い女だ。そして、
その顔に浮かんだ表情は…。

セブは『気付いたか?教えてやるよ』と少女に告げた。

ブラウスに手をかけ、強引にボタンを飛ばしながら開く。少女が小さく悲鳴をあげるのを
聞きながら、スカートをめくり、手で扱いた時よりも硬度の増した性器を、少女の膣口に突き立てる。

赤毛の少女は排卵日に当たっていないことは分かっていた。それでも、セブはわざと
口を大きく開けて唸り声を上げ、勃起した自分の性器を赤毛の少女の性器の中に押し込んだ。

くっ、という赤毛の少女の小さな悲鳴と共に、セブの性器と赤毛の少女の性器は一つになった。

赤毛の少女の膣は緩かった。

セブはサケで埋め尽くされた白い川を思い浮かべながら、老人特有の野太いような
甲高いような嗄れた叫び声を上げ、若く白い身体に腰を打ち付け始めた。


『売春宿の日常-白い川』終わり

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleの プライバシーポリシー利用規約 が適用されます。

目安箱バナー