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百に一つ ◆mkl7MVVdlA氏


(さて…指令はあと二つ……何を命令すりゃあいいやろな……)

原田は、自分の考えを纏めるために足を止めた。
歩きながらでも思案はできるが、目的もなくうろつく趣味はない。
一体何を命じられるのか、落ち着きのない様子でこちらをうかがっている村岡の顔を見て、原田はニヤリと笑った。
絶えず人の顔色をうかがい、自分が生き残るためならば白を黒と言い張る。
この男に命じるならば、多少なりとも村岡自身に利する内容の方がいいだろう。
命じられた通りに動くことで、生き延びる確率が多少なりとも上がると分かれば、働きもよくなるはずだ。
なおかつ、失敗しても自分や周囲に被害が及ばないものがいい。
「お前、確か帝愛の人間を知ってる言うたな…?」
村岡は原田とギャンブルルームに入るまで、自分が出会ってきた人物の印象や、この島に来た経緯を情感たっぷりに語っていた。
それは主観に満ち、非常に歪んだ内容であったが、客観的な事実も少なからず含まれていた。
「は、はあ。そうざんすが……?」
「ほう。なら丁度ええ。主催側との窓口を作ってもらおうか」
「……は…?」
村岡は、原田の指令が理解できないという顔で首を傾げた。
「聞こえなかったんか。窓口や。この際、電話でも何でもええ。
 オレと主催がタイマンで話す場所を作れ言うとるんや」
「む、無茶だ…!だ、だいたいワシはッ、裏カジノを経営しているだけであって、
 そんな大それた人間じゃあないざんすよ…ッ!
 帝愛との関係は、ロイヤリティーを上納していただけっ!
 知ってるといっても限度があるざんすっ!」
「細かいことをグチグチ抜かすなッ!これは命令じゃ!」
「ひいいっッ!」

放っておけばいくらでも文句が出てきそうな口を塞ぐため、原田は銃で脅した。
案の定、村岡は自分の頭を抱えて身を竦ませる。
「もったいつけて結局『出来ませんでした』じゃ阿呆くさいわ。
 ……せやな。1日やる。今から24時間以内に、主催と話す窓口を作るんや。
 ええな。24時間以内や」
「あ、あの……本当に…?ワシにそれをやれと…?」
「もしも約束を破ったら、そのときは分かってるな?」
「……ど、どういう意味ざんす…?」
「殺しはしない。約束だからな。ただし、相応の罰は受けてもらう。
 オレたちがどうやってけじめをつけるかくらいは知ってるだろう?」
原田がサングラスの奥で目を細めた。
これ見よがしに、村岡の指へと銃口を押し当てる。
やくざ稼業の人間が、仕事上の失敗で責任を取る場合。
相応の金銭はもとより、そこにかけられた面子……、
それを精算するために指を詰めるというのは有名な話である。
無論、村岡は即座にそれを連想した。
汗ばんだ顔から、みるみるうちに血の気が引いていく。

「指一本とは言わん。大事な大事な約束や。全部で十本、もらおうか?」
「十本ッ!そんな……!」
「そのかわり、どの指を落とすのかは選ばせてやる。足の指を含めてな。
 手と違って、足ならそんなに目立たんやろ。
 冬山登山で足の指が壊死した連中なんざそう珍しくもねぇ」
「ひぃぃ…、せ、せめてその半分に…っ、どうか……どうかっ、お願いしますっ」
「じゃかあしいっ!!十本と言ったら十本だ。ええな。うまくいったら俺に知らせろ!」
「はいいい!」
原田が再び拳銃をちらつかせると、村岡はその場で飛び跳ね、走り出そうとした。
「待て」
「はいっ!」
「……待ち合わせ場所を決めてへんやろ。時間と集まる場所を書いておく。
 中間報告はそこで受ける。もう一つの指令も、メモに書いておく。
 こいつは失敗してもペナルティはない。そのかわり、成功した場合はボーナスがつく」
「ボーナス…?」
「おどれ、…武器が欲しいんやろ?」
「え、えええっ、くださるんですかっ!」
「男に二言はない。武器はくれてやる。といっても、その時オレが持ってるものに限る。
 もしかしたら、途中で銃は壊れて使えんようになってるかもしれんからな。
 何も使えるモンを持ってなかったとしても、その時は恨むなよ」
原田はメモ用紙にペンでいくつかの場所と時間をかきこみ、最後に指令を一つ記すと、村岡の上着のポケットに押し込んだ。
村岡はメモに目を通すこともせず、恐怖と期待がせめぎあう何とも言えない顔で原田の前から姿を消した。




(さて……)
村岡が小走りで闇に紛れた後、暫くしてから原田は歩き出した。
予想以上に、村岡を相手に時間を使ってしまった。
そろそろ、平井と約束していたバッティングセンターに向かってもいい頃だろう。
(どこまでうまくいくかな…)
村岡に、主催側との連絡窓口を作らせる。
成功率は、あまり高くないと踏んでいた。
何しろ、これだけの大がかりなゲームをやらかす連中である。
そんな甘い状況を許すとは思えない。
それでも、百に一つくらいは可能性があるような気がした。
村岡が持つ、粘り強い生への執着がそれを可能にするかもしれない。
自分自身が生き延びる為に、どこまでもみじめに、あざとくなれる。
それはある種の才能だ。
例えば、死の危険に直面した時。
裸で土下座しろと言われたら、村岡は迷わず実行するだろう。
原田には、それができない。原田は、任侠の世界に生きる男だ。
そのなかでも組長という重い看板を背負っている。
見栄と体面。それをなくしては、原田組という組織はたちゆかない。
たとえ他の人間が見ていない場であったとしても、それは曲げることのできない理屈だった。
生きることに貪欲な村岡ならばあるいは、窓口を作るところまではいかずとも、主催に関する何らかのヒントを掴んでくるかもしれない。
己の保身のために。我が身可愛さのために。
ほんの少しでもいい。主催につながる線が見えたならば、その時は。

(手打ちや。手打ちにする)
主催を殺すもう一つのギャンブル。
アカギが示した可能性は確かに魅力がある。
とはいえ、どちらかが倒れるまで戦うのではなく、相応の代償を払って終了とする。
それが現代のやくざだ。
どこかで引き際を見つけられるならば、見過ごす手はない。
このゲームが、どのような背景のもとに発生したのかはわからない。
何が最終的な目的なのかも今のところは不明だ。
原田が懸念しているのは、「このゲームは単なる殺し合いではないかもしれない」という点だ。
もちろん、ゲームの中で誰が生き残るか、最終生存者を賭けての博打は行われているだろう。
けれどそれは、単なる不随行為ではないか。
(もしもオレが主催なら……)
原田は自分自身を主催者の立場に置いて考えてみた。
このゲームには、自分ですら一目を置くような人間が何人も参加している。
過酷な環境下でもそう簡単には死なないような、一癖も二癖もある連中だ。
(平井銀二がいい例だ)
自分ならば、彼らは殺さない。
この島で殺人という行為を働かせ、それを映像や音声という形で証拠にとって脅す事を考える。
博徒、雀士、策士。優秀な奴らの使い道はいくらでもある。
ゲームの中でふるいにかけ、一定数が生き残った時点でゲームをストップ。
観客には予め用意していたシナリオに沿って八百長の試合を見せ、納得させればいい。
もちろん、その時点で役に立たないと判断される不純物は、参加者の手による殺害という手段で取り除く。
(所詮はオレの推測や。だが殺し合いの向こう側にあるモノを、考えてみる価値はある)
主催が殺し合い影でやろうとしている事が何なのか。
それが分かれば、「手打ち」の可能性も見えてくる。
その時こそ、村岡に命じたもう一つの指令も生きてくるだろう。
原田は、村岡が消えた闇の向こうへと微かな期待を込めて視線を向けた。




【E-2/小道沿いのギャンブルルーム付近/夜中】

【村岡隆】
 [状態]:健康 意気消沈
 [道具]:なし
 [所持金]:400万円
 [思考]:ひろゆきとカイジと原田に復讐したい 今は原田に服従する 生還する
※村岡の誓約書を持つ井川ひろゆきを殺すことはできません。
※村岡の誓約書を持つ原田を殺すことはできません。
※【指令その1】3回分の命令が終わり、開放されるまで、正当防衛以外の人殺しは不可。
※【指令その2】24時間以内にゲーム主催者と直接交渉窓口を作る。失敗したら指10本喪失。中間報告の場所と時間は次の書き手様にお任せします。
※【指令その3】メモに記されています。内容は次の書き手様にお任せします。成功すれば原田から武器を貰えます。




暫く歩くうちに、バッティングセンターが見えてきた。
待ち合わせをしていた平井が来ているかどうか、少し離れた場所から確かめる。
バッティングセンターは、夜中にも関わらず煌々と明かりが灯っていた。
室内がどうなっているのかは不明だが、
屋外施設は闇に慣れた目には眩しすぎるほどの明るさで照らし出されている。
周辺はその光のおかげでほのかに明るく、
建物に近寄れば、人影はかなりはっきりと分かる状態だ。
舗装された道からわざと離れ、暗がりを選んで歩いていると、正面の方角から足音がした。
「原田さん。どうやら無事だったようですね」
「……ああ」
声には聞き覚えがあった。平井だ。原田は銃を腰のベルトに挟み、距離を詰める。
互いに、バッティングセンターの様子を遠目に伺っていたようだ。
結果的に、建物に近寄る前に合流する事ができた。
「どうでしたか、そちらは」
「収穫アリや」

原田は平井に対し、村岡の話をした。
博打に勝っただけでなく、そこで村岡に命じた指令の内容も全て説明する。
どこかで自分が行動不能になった時、
指令内容を回収できる人間が不在となっては元も子もない。
「なるほど。案外使える人間かもしれませんね」
「結果が出るかどうか…、まさに博打や。そっちの方はどないや?」
「平山の行き先は『カイジ』でした。予想していた通り、なかなか見所のある男でしたよ」
「仲間には誘わなかったんか?」
「どうしても解決しなければならない問題を抱えていたのでね。
 そちらが優先ということで……、生きていれば明日の夕方、会えるでしょう」
「なるほど」
明日の夕方、というキーワードを聞いて、原田は大体の事情を察した。
時間帯はアカギの約束と同じだ。
短時間で再会と移動を繰り返すとは思えない。
必然的に、待ち合わせ場所は同一という結論に達する。
自分とアカギが別れたギャンブルルームの前。
恐らくはその付近に、カイジを呼んだのだろう。

「何や、浮かない顔やな。疲れたか?」
出会った時からどこか超然としていた平井の表情に、僅かな影が浮いている。
原田はその小さな変化を見逃さなかった。
「いえ。……これだけ歩けば、どこかで会えるかと思ったんですがね。
 そう都合良くはいかないらしい。どうやら、この先も自分で動くしかないようだ。
 この歳になって、修羅場を歩き回るのは面倒だと思っただけですよ」
平井は一瞬、何かを懐かしむような目をした。
過ぎ去った思い出を眺めている、静かな瞳。
そこにあるのは、後悔でも、期待でもない。
今はもう、手が届かない、失われた時間を噛み締めている。
平井が初めて見せる人間らしい側面に、原田は興味を覚えた。
「誰か、会いたいヤツがいるんか?」
「一人だけ。アテにしている男がいました。
 とにかく運の強い男でね。
 そいつの強運に乗りさえすれば、後は何とかなる。
 そう思わせるくらいの力があった」
終始過去形で語られる男の存在は、
話を聞くだけで仲間に引き入れたいと思う程の魅力があった。

ギャンブルルームにおける勝負だけではない。
武器を使った殺し合い。
その最中であっても、運という要素は欠かせない。
黙っていても強運が転がり込んでくると言うのであれば、
その人物を確保するだけの価値はある。
「死んだのか?」
「いいえ。
 運の強い奴ですから、今でもこの島のどこかで生きているでしょう。
 ここまで来て会えないという事はつまり、
 今の私と会わない事こそがあいつにとっての幸運。
 恐らくは、そういう事です」
「どんな奴や。聞いてもええか?」
「名前は――――、いや、やめておきましょう。
 妙な先入観を与えたくない。
 ただ、これだけは言える。原田さん。
 あなたのような人なら、必ずあいつは味方する。
 もしどこかで会ったら、きっと一目で分かりますよ。
 とにかく、欲のない、まっすぐな目をしている。
 それより、どこかで休みませんか。もうこんな時間だ。
 第二回放送を聞いたら、朝まで交代で仮眠を取るというのは?」
「せやな。考えてみれば、飯も満足に食ってへん」
「では、休む場所を探すとして…、予定としてはこのあたりでどうでしょう」


平井は地図を取り出すと、
バッティングセンターから漏れる明かりに照らしてある一点を示した。
禁止エリアとされているD-4の周辺。
アトラクションゾーンを除いた、E-3からE-5を指で辿った。
「そこに、何かアテでもあるんかい」
「身を潜める建物の数が多い。それだけです」
休息を取るのは、第二回放送を聞いてからだ。
腰を落ちつけ、身を休めてから、実はそこが禁止エリアでしたと言われ、
慌てて移動するのは精神的にも肉体的にも負荷が大きい。
原田はこの場に座りこみたくなるのを堪えて、
支給品が入った荷物を背負いなおした。
疲れているせいだろう。最初に比べ、やけに重く感じる。
「行きましょう」
「せやな」
平井は地図を畳んで荷物に戻し、原田と並んで歩き出した。
「そうだ、原田さん」
「何や」
「私に何かあったときのために、このメモをあなたに託しておきます」
「あんたの言うてた、強運の持ち主とやらに渡せばええんか?」
「そのあたりの判断はご自由にどうぞ。必ずしも会えるとは限りませんから」
そう言って平井が差し出してきたメモには短く『島南、港を探せ』と書いてあった。
記されている文字を見て、原田が弾かれたように顔を上げる。
サングラスごしの視線を感じたのか、平井は白い歯を見せて小さく笑った。


地図には港らしき施設は記載されていない。
しかし、考えてみればそれはおかしな話だった。
ホテルやショッピングモールといった大量に物資を必要とする施設を抱えているこの島の輸送手段が、空輸だけというのはいかにも不自然だ。
仮に輸送手段の全てを空輸で賄っているとしても、ヘリではない。
軍用機ならば或いは可能かも知れないが、
ここは基地ではなくリゾート地としての名目を保っている。
最低でも、旅客機が離着陸できる滑走路が必要だ。
さもなければ、この地図にはない、海岸線のどこかに港が隠されている。
そして平井は、空路より海路の方が可能性が高いと踏んだ。
島の南側に、一体何があるのか。
地図を広げて確かめたい衝動に駆られたが、今は移動が優先だ。
第二回放送の後、禁止エリアを確認する際に確かめても遅くはないだろう。
「分かった。これは預かっておく」
「お願いしますよ」


原田は、隣に並んで歩く平井の顔をサングラスごしに盗み見た。
最初に出会った頃に比べ、疲労は滲んでいるものの、
相変わらず恐怖や狂気といった感情は見つけられない。
自分同様、命を賭ける現場に慣れている。
そして、それだけでは説明のできない何か。
得体の知れない、自信のようなものを感じた。
(この男は、一体何者や)
原田は、改めて平井という男を観察した。
ゲーム関連する、重要な秘密を握っている。
それは最初から分かっていたつもりだが―――
(想像していた以上に、危険な人間かもしれん)
アカギと平井、そしてカイジという新たな人物。
明日の夕方、彼らが揃った時に何が起こるのか。
原田は武者震いにも似た震えを感じ、
それを押し殺すように闇の中へと大きく足を踏み出した。




【F-3/バッティングセンター付近/夜中】

【原田克美】
 [状態]:健康
 [道具]:拳銃 支給品一式
 [所持金]:700万円
 [思考]:もう一つのギャンブルとして主催者を殺す ギャンブルで手駒を集める 場合によって、どこかで主催と話し合い、手打ちにする 体を休めたい
※首輪に似た拘束具が以前にも使われていたと考えています。
※主催者はD-4のホテルにいると狙いをつけています。
※2日目夕方にE-4にて赤木しげるに再会する約束をしました。カイジがそこに来るだろうと予測しています。
※村岡の誓約書を持つ限り、村岡には殺されることはありません。原田も村岡を殺すことはできません。
※村岡に「24時間以内にゲーム主催者と直接交渉窓口を作る」という指令を出しました。中間報告の場所と時間は次の書き手様にお任せします。
※村岡に出した三つ目の指令はメモに記されています。内容は次の書き手様にお任せします。成功した場合、原田はその時点で所持している武器を村岡に渡す契約になっています。
※『島南、港を探せ』という平井のメモを持っています


【平井銀二】
[状態]:健康
[道具]:支給品一覧、不明支給品0~1、支給品一式、褌(半分に裂いてカイジの足の手当てに使いました)
[所持金]:1300万
[思考]:生還、森田と合流、見所のある人物を探す 
     カイジの言っていた女に興味を持つ どこか適当な建物に隠れて身を休める
※2日目夕方にE-4にて赤木しげると再会する約束をしました。
※2日目夕方にE-4にいるので、カイジに来るようにと誘いました。
※『申告場所が禁止エリアなので棄権はできない』とカイジが書いたメモを持っています。
※原田が村岡に出した指令の内容、その回収方法を知っています




101:回想 投下順 103:同盟
096:夜行 時系列順 092:主君の片翼
080:十八歩 原田克美 125:我執(前編) (後編)
090:抵抗 平井銀二 125:我執(前編) (後編)
080:十八歩 村岡隆 106:薄氷歩




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