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束の間の勝者 ◆JsK8SvgrFA氏


兵頭和也は地雷を埋めたギャンブルルーム入り口に背を向け、これからどの方向へ進むかしばし考えていた。
この地雷の結果も興味あるところだが、いつまでも地雷を見張り続けるには時間が惜しい。
もっと攻撃的な武器も欲しいところであり、また、協力者となるであろう者たちとも合流したい。
‥‥‥しかし、考える間もなく、何やら近いところで人の争う声が聞こえて来た。
(これは‥‥‥期せずして、すぐ傍で戦いが始まったか‥‥‥面白い‥‥)
和也は茂みに隠れた。


その少し前。
神威勝広は、しづかと少し話し合った結果、とりあえず病院やホテルのある南へと向かっていたところであった。
ある瞬間、背後で突然モーター音が聞こえた。
振り返れば、いつの間に忍び寄ったのか、チェーンソーを構え殺意に満ちた表情の老人。
否、その姿は勝広がこの世で最も憎んでも憎み足りない男であった。
この男を殺すことに、自分の残りの生涯の全てを賭けることを一度ならず二度も誓った‥‥‥‥
勝広の父、秀峰の姿がすぐそこにあった。
「ほほぅ‥‥‥。勝広か‥‥‥。面白い。
 こんなに早くお前に出会えるとはな。
 ‥‥‥しかし、お前にわしが倒せるかな‥‥‥?
 わしはお前を倒す‥‥このゲームに参加している他の愚図どもと同じようにな‥‥‥!」
秀峰は、唸るチェーンソーを勝広の前に躍らせた。

「危ないっ!」
しづかが小さく叫んだ。
「下がっていろっ!」
勝広はしづかを制し、拳銃を構えた。
秀峰は不敵にも笑って見せた。
「銃か‥‥‥。
 この至近距離で、お前の拳銃とわしのチェーンソーのどちらが有効かのう?
 ほれっ!」

パァン‥‥

勝広の拳銃の弾丸は空しく宙を撃った。
拳銃が火を吹くより、秀峰のチェーンソーが勝広の腕に届く方が少し早かったのである。

‥‥ヂュイーン‥ヂュヂュヂュヂュ‥‥!!

チェーンソーが人の肉を喰う嫌な音が響く。
勝広は拳銃を取り落とす。
右腕に走る激痛。
‥‥だが、勝広は諦めないっ‥‥。
反射的に、肉に食い込むチェーンソーを振り払う。
結果として、右腕の肉は大きく抉れ、血は激しく噴き流れた。
勝広はその場に腰を突いてしまった。
しかし、その目に宿した闘志は消えるどころか、ますます激しく燃え上がった。

「どうした? 拳銃が無くてはもう戦えまい‥‥‥。
 次は腕ではなくて、首をいくぞ‥‥‥」

更にチェーンソーを構え直した秀峰の顔はまさに悪鬼であったが、秀峰からすれば殺されなければ殺されるこの状況では、自分の子とはいえ躊躇は無かった。

勝広の首に、チェーンソーの凶暴な刃が迫る。

「くっ! そんなに簡単に、親父に命までも奪われたくはないっ!
 死なば諸共っ‥‥‥!」

勝広は渾身の力で、秀峰のチェーンソーを刃とは別方向から蹴り上げた‥‥!

高速で回転するチェーンソーは刃先を狂わせ、秀峰の首めがけて向かった‥‥‥!!

‥‥‥ヂュン‥‥‥!!!

チェーンソーはわずかに秀峰の喉をかすった‥‥ように見えた‥‥‥、がっ!

噴出した血液の量は尋常ではなかった。
わずかにしか当らなかったように見えたチェーンソーの刃先は、秀峰の大動脈を抉っていたのである。

「ぐおぉぉぉぉぉぉぉぉっ!」

首から大きく血を噴出しながら、秀峰は絶命した。
あまりにもあっけなかったため、勝広はにわかには信じられないという風情だったが、秀峰の死を確認すると、

「‥‥‥やった‥‥やったぜ‥‥‥。
 ついに‥‥‥親父を殺した‥‥‥‥。
 はは‥‥‥ははは‥‥‥あはははははは‥‥‥‥」

と、秀峰の返り血を浴びながらも、狂ったように笑い続けた。

秀峰を殺すと誓ってから、どれほどの辛酸をなめただろう。
そして、ここに至るまでの積年の恨み。
勝広にとって悲願とも言える秀峰殺しは、今やっと達せられたのである。
勝広には、この殺人ゲームでさえも、秀峰を殺すことができた舞台を与えてくれたものとして感謝したいくらいの気分であった。


有効な武器らしいものを持っていなかったしづかは、勝広に制されるまま少し下がった位置で、この親子の殺し合いを、気丈にも見つめていた。
勝広が勝利した瞬間、彼の傷を思いやってすぐに駆け寄ろうとしたが、勝広のあまりの笑い様に少し恐れをなし、その足を留めていた。
勝広の異様な喜びように、しづかは彼が少し自分とは遠い感覚の中にいるように感じられていたのであった。

どれくらい時間が経っただろうか。

しづかは、先程から人の気配を感じていた。
ずっとこちらを伺っているような視線だけは感じている。
しかし、どこにいるか解らない。
警戒しつつも、勝広の傍から離れられずにいた。


やがて勝広は、自分を取り戻してきたようだった。
「‥‥‥しづか、すまなかった。
 この親父を殺すことが、俺にとっては人生最大の目標だったんだ‥‥‥。
 今、その夢がかなって、つい、我を忘れてしまった‥‥。
 あとは、俺はどうなろうと構わない。
 これからはお前の好きにするがいいさ‥‥‥」
「ああ。
 ‥‥‥しかし、さっきから、ずっと私らを見てる奴がいる‥‥‥」
勝広はぎょっとして、辺りを見回した。

「‥‥どこに居るかは解らない‥‥‥、
 だけど、確実に居る‥‥‥。
 警戒するに越したことはない‥‥‥。
 だが、このままじっとしていても仕方ない。
 とりあえず、おっさんの怪我の手当てだ。
 近くに病院がある。消毒くらいできるだろ。
 行こう」
「‥‥そうだな。
 その前に、こいつの武器や道具を漁っていこうぜ。
 俺は拳銃を持つ。チェーンソーは、この手じゃ扱えないから、
 しづかが持て」
二人は、道具や所持品を山分けすると、病院へ向かってさらに南下することにした。


和也は、一部始終を茂みの影から見守っていた。
しづかに気づかれそうになった時は流石に少しマズいと思ったが、結局見つからなかった。
そして、どうやら二人の行く先が病院らしいことがわかった。
行く先が病院であれば、この位置からだと必然的にギャンブルルーム前も通過する。
地雷の威力に興味を持った和也は、引き続きこの二人の様子を見ることにしたのである。


勝広としづかの二人は、それぞれの武器を構え、辺りに警戒しながら病院に向かっていた。

しかし、いくら周囲に警戒していても、地中に埋まっている物には気づくことができない。


ドォォォォォーーーーーーーーーンン!!!!


しづかには、一瞬何が起こったのか解らなかった。
突然の地鳴りのような音響。
巻き起こる土煙。
勝広が、和也の仕掛けた地雷を踏んでしまったのである。

突然の振動に、しづかは思わず転んでしまった。
気が付けば、一歩先を歩いていた勝広が倒れている。
「おっさん! おっさん!!」
良く見れば、勝広の下半身は吹き飛んでいた。
息は既に無かった。
「‥‥‥ひっ!!」
これには、さすがのしづかも心底驚愕した。
しかし、しづかはパニックを起こす前に、次の瞬間、近くの茂みで物音がしたのを聞き逃さなかった。
しづかはある確信を抱いた。
チェーンソーのスタータを一気に引いて、目の前の茂みを目指して切り込んで行く。
「‥‥‥そこだっ!!」
茂みを切り裂いたチェーンソーの先に、和也がしゃがみこんでいた。
「おまえだな!! さっきからずっと見ていたのも!
 私らに手を出さなかったのも、ここに来させるためだったんだな!」

計画通り、地雷によって一人の男を殺すことができた和也は、茂みのなかで思わずほくそえんでいた。
そして、生き残りがまだ中学生の女の子であることに少し油断をしていたのであった。
逃げそびれた和也は、しづかの差し出すチェーンソーを目前にして動けずにいた。


【E-5/ギャンブルルーム付近/午後】
【しづか】
 [状態]:健康
 [道具]:チェーンソー 不明支給品0~2(確認済み) 通常支給品×2
 [所持金]:2000万円
 [思考]:和也の出方を伺う

【兵藤和也】
 [状態]:健康
 [道具]:対人用地雷三個 不明支給品0~2個(確認済み) 通常支給品
 [所持金]:1000万円
 [思考]:優勝して帝愛次期後継者の座を確実にする しづかの出方を伺い、生き延びる
※伊藤開司、赤木しげる、鷲巣巌、平井銀二、神威秀峰、天貴史、原田克美を猛者と認識しています。
※利根川、一条、遠藤、村岡の四人と合流したいと思っています。
 彼等は自分に決して逆らえないと判断しています。

【神威秀峰 死亡】
【神威勝広 死亡】
【残り 34人】


030:窮鼠 投下順 032:説得
030:窮鼠 時系列順 034:賭博覇王
004:再び しづか 035:強者と弱者
021:異彩の事実 兵藤和也 035:強者と弱者







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