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仮定 ◆6lu8FNGFaw氏


カイジと沙織は、生垣からそっと白髪の青年…
“赤木しげる”の様子を伺っていた。

白髪の青年はフラフラと危なっかしく歩き、ふとその場にしゃがみこんだ。
見ると、嘔吐している。
何があったのかわからないが、よほど具合が悪いように見える。

沙織は考えていた。
(……見たところずいぶん弱っているようだけど…どうする?
名簿の数字からすると…五指に入る危険人物…だけど…
今なら… 殺すのは容易いかも…… 背後から不意をつけば…
今なら……)

沙織の中に芽吹く仄暗い思考……
しかし、自分の中のもう一つの自我… 「死」に対する本能的な忌避感…
それが冷徹な思考を阻む…

(……直接手を下さずともいい… あの様子じゃ他の誰かに殺される…
そうよ… 私の知らないところで死んでくれるのはいっこうにかまわない…
いくら弱っていても、仕留め損ねたら面倒なことになる…今は怪我一つでも命取り…
何も… たとえ容易くとも… こちらからリスクを負うことはないわ……
だからここは… “赤木しげる”に悟られないようどこかへ…カイジ君にもそう促して…)

「田中さん」
沙織はハッと我に返る。
すぐ横でカイジが、生垣の向こうを見据えたまま、沙織に小声で話しかけたのだった。

「あれ…見てくれ。あの首のところ」
「……え?」
沙織はもう一度白髪の青年を注視する。
青年の首には当然のことながら首輪…、その上にさらに謎の機械が取り付けられている。

「……何?あの機械…」
「……帝愛側なのか?あいつ… いや、むしろ逆っ………」
「え?」
「しかし、何で…。…どの道、話をしてみるしかねえか…。」

カイジは独り言をつぶやきながら考え込んでいたが、ふと何かに気づいて
沙織のほうを向く。
目を見開いて沙織の首元をじっと見つめる。

「もしかしたら……! いや、待てよ…」
「何?何の話をしてるの…?」
「田中さん」
カイジは自分の首輪を指差し、沙織に謎掛けのような言葉をかけた。

「これ… 外したくないか?」


平山はしばらくしゃがみこんでいたが、ゆるゆると立ち上がった。
ここで時間をつぶしている場合ではない。
六時の定時放送までに、利根川との待ち合わせ場所に着かなければ…。
それこそ、破滅…! 殺される…!
意を決して歩き出そうとしたとき、不意に背後から声がした。

「動くなっ…! 動いたら撃つ…!」
「ひっ……!」
「そのまま… 動くなっ…!おかしな動きをしたら命は無えぞっ…!
その腹に大穴を開けられたくなきゃ…動くな…!」

カイジは、平山にボウガンを向けたまま背後から脅しをかけた。
…ボウガンそのものは、痛手を負わせられる武器だが、うまく狙いをつけ、
一発で致命傷を負わせられなければならない。
それができなければ、二発目を装填している合間に逆に襲われかねない。
だから、相手がこちらを向かないよう牽制した。
『腹に大穴が開く』という言葉から… 相手がこう想像してくれれば…
こちらの武器が散弾銃か何かだとでも思ってくれれば好都合…。

それほど警戒する必要がある…“赤木しげる”は……!

「う…動かねぇっ!何でもする!何でもするからっ…命だけは…!!」
「……………」
「な…何だ?何が望みだ?言ってくれっ……!」
「…………?」

憐れな声で命乞いをする“赤木しげる”………。
カイジは想像していたイメージとの違いに当惑していた。

(………なんか…、危険人物のわりには妙に腰が引けてるな…?
いやしかし、これも演技かもっ…!
警戒を緩めたところで反撃してくるような……)

「………お前、赤木しげるだよな…?」
「えっ…!? う、いや違うっ、オレは…!!」
「…カイジ君」

生垣の向こうに隠れていた沙織が、複雑な表情でカイジに声をかけた。
「名簿を見直してみたんだけど……その人、“赤木しげる”じゃないみたい…。」


「……で、平山…ひとつ聞きたいんだけど…いいかな?」
心細いところに、脅しかけられて、すっかり縮こまってしまった平山にカイジは声をかけた。

「……何だ?何でも聞いてくれ…」
脅されて、死んじまう…!やめろ、死にたくない…!と思ったら赤木と間違えられていて、しかも脅してきた相手が伊藤開司で、よくよく聞いてみるとオレを殺す気がなくて、急に不運と幸運…天地が入れ替わったようで…、平山はぐったりしていた。半ばヤケになって答える。

「その首輪の上についている機械…誰につけられた?開始当初からついていたものではないだろ?」
「………利根川幸雄に…」
「やっぱりそうか…」
「……あんた…利根川幸雄に何をしたんだ…?」
「え?」
「利根川からの伝言だ…。あんたに会いたい、と…。」
「………。他には?」
「いや…。…この紙を見てくれ」
平山は少し迷ったが、カイジに利根川からのメモを見せることにした。

<兵藤和也>
見つけ次第事情を説明して保護、命を賭けて守り抜くこと。
持ち金は全て手渡し、一億に到達しない様ならばそれまで補佐すること。

<遠藤>
見つけ次第殺害すること、その手段は問わない。

<一条>
見つけ次第事情を説明して、私と目的が一致しているならば協力体制を取ること。
渋るようならば「私が元の地位に戻れた時は、地下から出す手筈を取る」と伝え説得すること。
ただし一条が私を蹴落としての優勝を目論んでいる様ならば、隙を見て殺害すること。

<伊藤開司>
見つけ次第事情を説明して、私の前に連れてくること。
間違っても危害は加えず、出来る限り万全の状態という条件で。

(…ひろゆきが言っていた。この伊藤開司…。この男次第でオレの運命が変わるかもしれない、と……。
オレを殺す気がない、とわかっただけでも、救いだ…。希望…。)

「……なるほど。」
カイジはメモを平山に返した。

「わかったろ?俺はあんたに危害を加えない。利根川の命令に反することになるから…。
……次の定時連絡時に発電所で落ち合う約束をしている。一緒に来てくれないか……?」
「…カイジ君…」

そばで二人のやり取りを聞いていた沙織が声をかける。
行ったら何をされるかわからない…。この平山はともかく…。
「利根川」という男は、人を脅して言いなりにさせるような人物…。

「……………平山…それはできない。」
「えっ…」
「今は…。おそらく時期尚早…。
ただ…、もちろんいつかは会うことになるだろうが…。少し…、そうだな…しかしそれじゃあアンタが困るか…。」
カイジは少し考え、平山に言った。

「2日時間をくれ…と、利根川に伝えてくれ…。2日後の夜に発電所で、と…。
ただ、この伝言だけじゃあ、利根川はアンタが本当にオレに会ったのかどうか怪しむだろうから…。
もうひとつ……。
『奴隷の剣はまだ折れていない』、と…。」
「奴隷…?」
「そう…。それで通じるはずだ」
「………………。」
「もうひとつ、アンタに頼みがある」
「……何だ?」
「もし、『いつ、どこで会ったか』と聞かれたら、こう答えてくれ。
『利根川と別れた1時間後くらいに、利根川と別れた場所の近くで』と…。
もし本当のことを伝えられると、利根川がこちらの足取りを追って来るかもしれない」

「………な、なるほど…。わかった。…今は会えない事情があるんだな?」
「利根川の思い通りには動いてやらないってことさ。
奴は今、メモの通り仲間を集めている…。
それなら、こっちも仲間…同志を、ある程度集める必要がある…。
利根川…、奴が求めているのは、おそらくオレとのサシでのギャンブル…!
だが…、その前段階として、ギャンブルに乗せるためにどんな手段を使うかわからない…。
だから…、こちらも2日で同等の体制…同志を集める…!
……おそらく…、『帝愛』である奴と戦い、勝てば…大きな意味があるはず…」
「…意味、ってのは…?」
「利根川が首尾よく一条や…、兵藤和也と合流すれば…。
そいつらまとめて強制的に仲間にできる…、そういう条件でギャンブルをすれば…。
そこで奴に勝利すれば…。
もしかしたら『主催者側』との交渉すら可能かも知れない。」
「……『主催者』との…交渉…!?」
「…まぁ、まだ確信まではないけどな。うまく運べば、だ。」

平山は呆然としていた。
自分は、ただ生き延びること…。それだけを考えていた。
『主催者』との駆け引き…。そんなこと…考えてもみなかった。

このゲームそのものがひっくり返れば…生き延びるだけでなく、
誰かを殺したり… 殺されたり… そんな悪夢からの開放っ……!
戻れる…! 日常に……!!

「そうだ、平山…、この機械のことだけどさ」
カイジは平山の首輪についた機械を指差した。

「…知ってるのか…!?この機械のこと…!」
「ああ…。オレもつけさせられたことがある。利根川とのギャンブルで…。」
「ええっ!?…な、何か知らないか!?外す方法とか…!」
「いや…。これは特殊な器具がないと取り外しはできない。
利根川がそれを取り付けるときに使った器具でないと…。」
「そうか……。」
「ただ…、あのリモコンは、そんなに遠くまで電波が届くようには見えなかったけど…」
「…! そうなのかっ…!!」
「元々互いに向き合っての勝負で使う道具だからな…。
…と言っても、電波が届かなくなる距離がどこまでか、なんてわかんねぇけど…」
平山は落胆した。そして、ふとカイジを見る。

「…アンタ、勝ったのか?そのとき…利根川に……」
「………ああ。」
(そうか…… 利根川はそれで、カイジに復讐しようと考えているのか…
ひろゆきが言っていた通りだ…!)

「……平山」
「…あ、ああ、何だ?」
「仲間になってくれないか?」
「えっ…?」
「利根川を裏切れ、ってことじゃないんだ。オレが利根川に勝ったら…、
アンタを開放できるかもしれない…。そのとき、仲間になってくれってことだ」
「…もちろんだ!というか、オレのできる範囲で協力させてくれ!
オレは何だって…」
「…じゃあ、生き延びてくれ」
「えっ…」
「出来る限り…どんな窮地に陥ったとしても……、
必死に考えて、諦めないで、生き延びてくれ。」

カイジには、平山のことが他人事には思えなかった。以前…自分も…
例の禍々しい機械をつけさせられ…命懸けの勝負をしたことを思い出すと…。

「じゃあオレはそろそろ…、利根川と会う時間が迫ってるから…!」
「ああ、またな…」
平山は少し急ぎ足で、目的地に向かって歩いていった。
日はずいぶん傾き、夕闇がそこまでせまってきていた。

「……カイジ君、…さっきの話、本気?」
沙織はカイジに話しかけた。

「……そこまで上手くいくかどうかは分からねぇ…。だけど、希望があるなら…、道が見えたなら…進むだけだ。」
「利根川って人と…本当に戦う必要なんかあるの?……命を賭けろとでも言われたら…?」
「きっと…そう言われるんだろうな…。
いつもそうだ……。結局…命懸けの勝負をするハメになるっ…。」
カイジは深いため息をついた。

「…イヤなら反故にすればいいじゃない。命まで賭けて…、向こうの一方的な言い分を聞き入れることはないわ。」
「……そういうわけにはいかねえ」
「何故?…あの平山とかいう人のため?」
「それもあるけど……。これのためだ」
カイジは自分の首輪を指差した。

「これ…?」
「まぁ… これも、さしたる確信はねえんだけど…」
カイジはデイバッグから筆記用具を取り出し、何か書いて沙織に見せた。

『平山がつけていた例の機械、これが首輪の作りとどこかよく似ていた。もしかしたら同じメーカーかもしれない…。
このゲームの主催者に帝愛がいる以上、同じ工場で作られていても不思議じゃない。
そんで…、ここからはほとんど願望に近いけど…。
利根川の持っている、例の工具がもし、首輪の螺子に合う様なら……、この首輪を外すことが可能かも知れない。
…まぁ外す前に、首輪を爆発しないよう無効化…電波を遮断するとか…が、できればの話だが…』

沙織は目を見開いてカイジの顔を見つめた。

同志を集め、利根川に勝ち…『主催者』と駆け引きをすることも……
首輪から開放されることも……
どちらも仮定に仮定を積み重ねた、まだか細い想像…空想……! だが。

不可能かも知れない……
でも、可能かも知れない…………

【C-4/アトラクションゾーン/夕方】
【伊藤開司】
 [状態]:健康
 [道具]:ボウガン ボウガンの矢(残り十本) 支給品一式
 [所持金]:1000万円
 [思考]:仲間を集め、このギャンブルを潰す 森田鉄雄を捜す
     赤木しげる、有賀研二、一条、神威勝広、神威秀峰、利根川幸雄、兵藤和也、平井銀二、吉住邦男に警戒
※平山に利根川への伝言を頼みました。
※2日後の夜、発電所で利根川と会う予定です。

【田中沙織】
 [状態]:健康 精神不安定
 [道具]:参加者名簿 支給品一式
 [所持金]:1000万円
 [思考]:足手纏いになるものは殺す 死に強い嫌悪感 森田鉄雄を捜す
     赤木しげる、有賀研二、一条、神威勝広、神威秀峰、利根川幸雄、兵藤和也、平井銀二、吉住邦男に警戒

【平山幸雄】
 [状態]:左肩に銃創 首輪越しにEカードの耳用針具を装着中
 [道具]:参加者名簿 不明支給品0~2(確認済み) 通常支給品
 [所持金]:1000万円
 [思考]:利根川に会いにいく 引き続き利根川の命令には従うが、逃れる術も積極的に探る
※ひろゆきと21時にアトラクションゾーン事務所で落ち合う約束をしました。
※カイジから利根川への伝言を預かっています。


050:混乱 投下順 052:手札
050:混乱 時系列順 052:手札
049:操作 伊藤開司 062:変化
049:操作 田中沙織 062:変化
049:操作 平山幸雄 067:銀と銀と金と銀




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