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孤軍 ◆IWqsmdSyz2氏


荒い呼気を整えながら、佐原は周囲を見回す。

ここはF-7地帯、温泉旅館内。
ショッピングモールから逃げ出し、南下し続けた結果辿り着いた場所である。

部屋数の多くない小ぢんまりとした建物の中を一周、誰もいないことを確認後、
佐原は一番奥の客室に身を潜めていた。

(クソッ・・・!クソッ・・・!どうすりゃいいんだっ・・・・・・・!)

しづかへの誤射。
板倉に対する裏切りという結果。
森田、遠藤との会話を経て、己の弱さを目の当たりにした。
そうして一時錯乱状態にあった佐原の精神も、
今では落ち着きを取り戻しつつある。

ただただ“目先の人物”を恐れ、逃げ惑う状況が続いたが、
改めて考えれば、当て所もなく直走る姿ほど無防備なものもなかっただろう。
逃げ果せているのが奇跡。
ほぼ無傷で生きていられるのは神助。

(これからどうする?オレに何が出来るっていうんだよ・・・)


“死”に直面する状況は今回が初めてではない。
佐原は一度死んでいる。
そう、佐原はスターサイドホテル、入りえぬ部屋、帝愛の罠によって一度“死んだ”。

今でも鮮明に思い出せる。
鉄骨を渡りきった高揚感・・・
それが招いた油断、そして落下。
訳もわからぬまま、あらゆる臓物が体の中で浮く感覚。
恐怖と不安、手足が冷たくなっていった。
走馬灯は見えなかった。
落ちゆく景色も、何も見えはしない。
ただ、確かに落ちていった。

瞬間、痛みを覚えて意識が途絶え、
あのときオレは死んだのだ、と佐原は思った。

しかし。
なぜだろう、今まさに襲いくるのは死に対する恐怖。
それはまぎれもない“生”の肌合いだった。
オレは生きている・・・!
安堵に似た気持ちと、現状に対する憤りを抱えて、佐原は深い溜息を吐く。

(死んでよかった・・・・!こんなことになるのならっ・・・!
あのとき死んでよかったっ・・・・・!死んでいればよかったっ・・・!でもっ・・・)

スターサイドホテルから生還したことを幸運だとは思わない。
こうして恐怖に怯えることになると知っていたならば、
佐原はあの夜、生還を望みはしなかっただろう。

だが、問題なのは『今』なのだ。

主催の非情さに反発こそあれ、生きていることに対する喜びは疑いないもの。
佐原は、生への感謝・・・感動を自覚していた。
こうして長らえた命を二度と捨てるものか、と強く誓う。
(・・・考えろっ・・・!考えるんだっ・・・出来ることを・・・・!)

生きたい、生き延びたいという気持ちを確かめたところで状況は変わらない。
ゲーム開始から数時間、佐原は敵ばかりを作ってきた。
板倉、森田、遠藤・・・そしてしづか。
佐原は彼らと再度対面したとき、攻撃を受けるのではないかという不安に囚われている。

実質、しづかへの誤射事件も、森田たちへ銃口を向けたことに関しても
佐原本人が思うほど深刻な問題ではない。
いずれの人物とも、修復可能な関係にあるといえる。
しかし、当の佐原はそれに気付けず、故に精神疲労を重ねていた。

(板倉も・・・森田も・・・仲間を集める気でいるらしいし・・・
となりゃあ・・・必然・・・オレの悪評が広がっていくっ・・・・・・!)

打倒主催を目指す板倉、ゲームの綻びを見つけ脱出すると発言した森田。
方向性は異なれども、あいつらなら成し遂げかねない、と佐原は思う。
遠藤も含めた彼らは、世間一般の凡人と“臭い”が違った。

(情報も戦力もある大所帯が有利なのは当然のゲームだ・・・。
グループが出来上がっていけば
逸れ者は仲間として吸収されるか 淘汰されるかの二択・・・!
でもっ・・・!そもそもオレにはその選択肢さえない・・・!)

ライフルを握る手に力が入る。
十畳の和室で、佐原は壁に背を預けながら虚空を睨んだ。

(だってこのゲームに乗ってないやつらからしたら・・・オレは敵・・・!外道者・・・!)

平気で人を裏切る。いざというときに決断できない・・・。
そのうえ人を殺す能力も持たない・・・!
そんな男が歓迎されるはずがないじゃないかっ・・・!
人を殺したくない。殺されたくない。
主催を倒し、ゲーム自体を覆えしてやりたい願望はある。
生還する抜け道が存在するのならば、脱出の手伝いに参加するのも良い。
しかし佐原のひとり決めがそれらを実行しようとする心を阻んだ。

いずれにしても個人で成せる所業ではない。
それならば誰と?どうやって?
こんな状況で、他人のことまで構えるほどオレは出来た人間じゃない。
そもそもオレなんかと組んでくれる人間はこの島にいない、と。

同志を探そうにも、
もし「ライフルを持った金髪の男が味方を撃った」なんて伝え聞いている人物と会ってしまえば
どうしようもない、そこで終わりだ、と佐原は思った。
結果しか知らない相手にどう弁明する?
周りから見てみれば、佐原はただの危険人物。裏切り者。

(本当は違うっ・・・!悪意はなかった・・・!でもっ・・・言い訳に聞く耳持つ人間なんているはずねぇ・・・・!
こんな状況じゃなおさら・・・結果だけが残るっ・・・!オレが板倉を裏切ったって結果だけが・・・・・・・!)

少なくともゲーム開始当初、佐原は自身が殺傷行為を犯すことについて肯定的だった。
もちろん、無差別に殺戮を企てようという訳ではなく、
ただ、生還の手段として必要と考えていたに過ぎないのだが。

優勝するには少なくとも一人、殺さなければならない。
正当防衛の末、人の命を奪うこともあるだろう。
そんな有事の際に、悪いのは“自分”ではない。
やらざるを得ない“環境”や“ルール”・・・このゲーム自体が悪なのだ。
誤射前までの佐原はそう考えることが出来ていた。
責任転嫁といえばそれまでだが、精神状態を均衡に保つための自衛本能だといえる。

しかし、実際にトリガーを引いたとき。
そして放たれた銃弾が無抵抗の少女へ命中したとき。
佐原の中で何かが負けた。
認めてしまった。
裏切ってしまったことを。悪いのは自分なのだということを。

その後森田たちへ発砲できなかったことまでを通した一連の流れは、
殺人の自信を喪失するに十分過ぎる出来事だった。

(人は殺せない・・・金も足りない・・・仲間もいない・・・!
この先も今までみたいに逃げ回ってれば生きてられるかもしれねぇけど・・・)

結局、ゴールを定めなければ現状から脱却することは難しい。
生き延び続けたところで、この島にいる限り――
このゲームの参加者である限りは死の可能性と付き合い続けなければならないのだ。
日常生活で味わうことのないレベルの危険と・・・否が応でも共存させれられる。

(とにかく“このゲームから抜ける”こと・・・こうなったら一人でも考えてかないと・・・・)

かつては帝愛の仕掛けたトリック・・・気圧差が生む突風によりリタイアさせられた佐原。
今回も主催者が何らかの罠を用意している可能性は想像できた。
正攻法で挑んだところで、生還の確証がないゲームなのだということは端から理解している。

(どうせ・・・優勝しても棄権しても命の保障なんかねぇんだ)

板倉もこのことについては言及していた。
遠藤とのやりとりを通して、もはや板倉の発言は信じるに足らないものとなったが
――しかし優勝や棄権で生還出来るのかについては、
佐原自身も疑わざるを得ないだろうと感じていたことだ。

「自力だ・・・!自力でこの島から逃げ切ってやる・・・!」

最終目標は 島からの生還、ゲームからの離脱。佐原は決意を固めた。
出来るかどうかではなく、出来なければ未来がない事態なのだ。

(でも・・・島から逃げるって・・・どうやってだよ・・・・)

佐原はポケットから支給された地図を取り出し、広げる。
思えば冷静に地図を眺めるのはこれが初めてだった。
ゲーム開始直後に ざっと確認しただけで、それ以降は事件の連続。
とにかく敵から逃げようと、随分長い距離を夢中に走った気もするが、
現在地が何処なのかも把握していない状況なのだ。

「見にくいな・・・」

目は闇に慣れていたが、都会の夜と孤島の夜は暗さが違う。
カーテンの隙間から漏れくる月明かりを頼りにしても、
瞳を凝らさなければ地図は読めない。

地図に神経を集中させすぎると、周囲への注意が散漫になる。
即ち、敵が忍び寄っても気付きにくい状況――それは避けなければ・・・。

(部屋の電灯をつけるわけにもいかねぇ・・・だからといって窓際は危険・・・)

「いや・・・あるか・・・?旅館っていったら普通・・・」

佐原は静かに立ち上がり、部屋の中を調べはじめた。
押入れには・・・布団一式。
いくら疲れているとはいえ布団を敷いて休む、なんてわけにはいかないだろう。
観音開きの収納を覗くと、タオルと浴衣。
役に立つかもしれないと考え、佐原はタオルと浴衣の帯を荷物に加えた。

最後にテレビが置かれた棚を開く。

「あったっ・・・!」

佐原が手にしたのはお目当ての品。

(懐中電灯っ・・・!)

多くの旅館で設置されている緊急時用の懐中電灯。
これがあれば手元を照らすことが出来る。
夜明けまではまだまだ長い。
この先、明かりが必要になる機会も訪れるだろう。
大きな収穫だ。

明かりが光線となって外に漏れないよう、電灯部分をタオルで包んでからスイッチを入れる。
小さな電球が佐原の手元、地図をぼんやりと浮かびあがらせた。

「ついたっ・・・!」

電池の残量がどれだけあるかわからない。
佐原はすぐさま現在地を確認する。

「・・・っと・・・・今いるのがF-7あたりか」

ホテルからショッピングモールへ。
ショッピングモールから温泉旅館へ。
佐原は、自分の移動した軌跡を指で辿り、愕然とした。

(なんだよっ・・・オレがいるこの旅館・・・
まるでホテルとショッピングモールの中継地点じゃねぇか・・・・・・!)

武器、支給品一式を合わせて5kgを超える荷物を背負い走ってきたせいだろう。
佐原の体感に比べ、実際に移動した距離は遥かに短いものだった。
その上、ホテルからもショッピングモールからも逃げ切れたとはいえない位置。
両敵から挟まれているような形だ、と佐原は顔を歪める。

(下手に動いたら鉢合わせる可能性があるじゃねぇか・・・)

気付かぬうちに、自らを追い込む方向へ進路を取っていたのだ。
なんと愚かなことをしたのだろう。

(ホテル方面にも・・・ショッピングモール方面に進めない。
だがっ・・・・ここに長居は出来ない・・・!板倉や遠藤たちが移動してくるかもしれないから・・・・!)

当然、いい思い出のない東地域からは離れ、島の西側へ移動したい。
しかし、その為にはホテル、ショッピングモールの近くを通る必要がある。

(万が一・・・移動中に見つかっちまったら・・・・相手は二人
  ・・・もしかしたら仲間を増やしてそれ以上になってるかもしれないし・・・)

頭を抱えて溜息を吐く。
身動きが取れない状況・・・
この旅館はいつ誰が来るともわからない。
だからといって他の場所に身を移そうにも ルートがない。

しづかへの誤射と 森田・遠藤との会話。
それらの出来事が切欠となり
佐原は“彼らに命を狙われている”と思い込んでいる。
あまりに悲観的な妄想だった。
挙句にその考えは“ホテル、ショッピングモールに近づくだけで危険だ”というところまで誇大し、
佐原の行動を著しく制限しているのだ。

一にも二にも、温泉旅館に逃げ込んでしまった 己の判断を呪う。
逆方向に進んでいれば、多くの望みが残されていただろう。

言うまでもなく、悔やんでも仕方がないことは理解している。
今は、少しでも安全な場所を探す。
あるいは島から抜け出す手立てを考えることが先決。

佐原は改めて視線を手元にやり、地図と睨み合う。
図の通りの島であるのならば、周りは海に囲まれている。
孤島から脱出するには・・・。

(泳ぐか・・・?そんなの無理だろ・・・!それとも・・・・・船か・・・・・?)

地図によると、ここから西方向に港らしきものが記されている。
G-4付近のエリアだ。
無論、主催側が脱出の手段――船を残しているとは思えない。

(・・・港か・・・。見に行く価値はあるかもしれない・・・。だがホテル付近は・・・!)

港に向かう最短ルートは、やはりホテルの前を通るものだろう。
北西方向に進路をとって大きく回りこむ形でも港へ向かうことは可能だが、
闇夜の中長時間の移動は危険である。
いくら何でも、外で懐中電灯を使うわけにはいかない。

(どの道・・・安全に温泉旅館から出て行くことなんて出来ねぇ・・・)

脱出以前の問題である。
空でも飛べたら・・・地底を突き進めたら・・・どんなに楽だろうか。
佐原はそう考えてから自嘲気味に笑った。
もしそんな力があれば、こうして怯えることもなかろう。

(いくらなんでも非現実的すぎるって・・・空を飛ぶとか地面にもぐるとか・・・・)

一種の現実逃避だった。
過度の精神疲労、追い詰められた状況を抱えて、佐原は絶望の淵に居る。
空や地底を移動できれば、という有り得ない発想に走りたくもなるものだ。

(ダメダメっ・・・!真面目に考えねぇと・・・!)

が、佐原閃く・・・・!
その一見ファンタジーな所業が不可能ではないことに・・・気付く・・・!

(地下・・・!そうだ・・・・・・地下・・・下水道・・・・!マンホールの下・・・!)

煮詰まっていた現状を打開する策・・・。
視界がクリアになっていくのがわかった。
佐原の心に希望が流れ込む。

旅館の外を調べて見れば、おそらくはあるだろう。
地上から逃れるための入り口、マンホールが。

(誰も気付かないだろっ・・・!足元で人間が移動してるなんて・・・・・!)

佐原の“地下を使う”というアイデア。
足音が響く下水道ならば、誰かが近づいてきたときすぐにわかり、
奇襲を受けることも少ないだろう。
たしかに、隠れるという点においては非常に優秀である。

地下を通れば、誰にも会わずに動ける。
コンパスと地図を確認しながら進めば、
自分の位置を把握しながら移動するのも不可能ではない。

今まで踏んだり蹴ったり、成すことが裏目ばかりだった佐原に光明が差しこんだ。
窮地において逆転の目・・・!
佐原は今にも歓声をあげたい心情で、ひらめきを自賛する。

「我ながらナイスアイデアじゃんっ・・・・!」

そうと決まれば、すぐにでもマンホールを探すべきだろう。
この旅館に長居は無用だ。

高揚した気分で地図を乱暴に折りたたむと、佐原は腰を上げる。
と、その瞬間。ひやりとした感覚が佐原の項に走った。

「わっ・・・!」

頭を上げる動作をした際に、首輪の今まで肌に触れていなかった部分が当たったのだ。

(そうか・・・こんなの付けてるってこと忘れてたぜ・・・)

高ぶっていた心の熱が僅かにひいていくのを感じた。
スターサイドホテルでの出来事が瞼を過ぎる。

(あの時も、ゴールが見えたと思って・・・そのまま突っ走った結果がアレだからな・・・)

例え希望が見えたとしても、無闇に進んではならない。
そのことは身を持って知ったはずだった。
しかし、今の自分はどうだろう。まるであのときのような精神状態じゃないか。
突き進みかねない状況だった。
そしてその先に・・・取り返しのつかない結果が待っていたかもしれない。

“戒め”としてしか見ていなかった首輪に少しの感謝を覚え
佐原は、ふと 考える。

(・・・そもそもこの首輪はどういう構造なんだ?)
数時間前。
ルール説明を受けたホールで、一人の男が死んだ。
忘れようもない、悲惨な場面だった。

説明によれば、それは首輪による機能。
人間の首を飛ばすことなど容易い、それだけの威力がある装置なのだ。
首に爆弾を括り付けられているのと変わりはない。

主催側が自由に起爆できることはわかっている。
禁止エリアに侵入すると、その場合も起爆するらしい。
また、死亡者の名前を放送で読み上げていたことから、
参加者の生死も把握できるシステムであろうことは想像に難くない。

(となりゃあ・・・電波を使ってるのか?
遠隔操作できるんだから何かそういうもん使ってることは確実だが・・・)

首輪に触れる。
冷たい鉄のような感触・・・されども装着していて違和感ないレベルの薄さだ。

(こんな小さい物にそれだけの機能つけられるのかはわかんねぇけど・・・
金が有り余ってる輩が主催者ってんなら考えられなくもないはず・・・・)

優勝者には十億円を贈呈しようなどと のたまう主催陣だ。
実際にその金を差し出すかどうかは別として、
不自由なく事を運べるだけの資産力と技術を持っているだろう。

(もしそうだとして・・・
携帯電話なんかは電波が届かなくなれば圏外になる。
この首輪も同様に“圏外”が存在する可能性はある・・・・)

レミントンを静かに伏せ置き、腕を組む。
冷静になろうと意識して思考を巡らせれば、不思議と頭が冴え渡る気がした。

佐原は決して知識力があるタイプの人間ではなく、
また、物事の分析に向いた性質でもなかった。

しかし、働き出した思考回路は止まらない。
自然に結びついていく。
佐原の考える“圏外論”と、先刻のアイデア・・・地下へ逃げるという行為が。

(地下が圏外だとしたら・・・・?
おいっ・・・!待て待て待て・・・待てよっ・・・?
そうするとどうなるっ・・・?
携帯が圏外になると、繋がらなくなるだろ?
首輪が圏外になって・・・主催側から繋がらなくなったらどうなるんだ・・・?)

携帯が繋がらないとき
――電話を掛けた側、送信側からは 受信者がどこにいるのかわからない状態になるだろう。

(となりゃあ、地下が圏外なら
主催側から見たとき忽然とオレが消えちまったように見えることも・・・ないとはいえない・・・!)

主催から見て佐原が消えるということ。即ちまさにゲームからの離脱・・・!
願ってもないチャンス。それを糸口にして、本当に島から逃げ出せるかもしれない。

一方で、佐原は危惧するべき点についても気付いていた。
もし「電波が途切れる」ことが起爆条件のひとつだった場合、最悪のケースとなる。

(・・・その場でドカン・・・首輪が爆発するかもしれねぇ・・・)

一時は光明に思えた地下に身を隠すという行為だったが、
首輪が即座に起爆する可能性を考えると、実践を躊躇してしまう。

(クソっ・・・いいアイデアだと思ったんだが・・・・・)

思えば、まともに“ゲームのシステム”について考えたのは今がはじめてだ。
首輪の性能は全くの未知数。
佐原の知りえる情報は、首輪の爆発条件。それすら詳細にはわからない。

だが、良かった。佐原は思った。
今の発想が正しいかどうかは別として・・・
もしもこういった危険性にまで考え及ばないまま
地下へ移動して命を落とすことになっていたら悔やみきれない。

“死なないこと”
それが命題なのだ。
再び首輪に手をやると、先ほどとは別の冷たさが感じられる気がした。
ゲームからの離脱において、無視することの出来ない存在。
そして・・・

「あぁっ!」

首輪に関連してもう一つ
――佐原は重要なことに気付く。

首輪が爆発する条件は・・・禁止エリアに侵入すること。
では、現在の禁止エリアはどこだ?

佐原は手の加えられていない地図を見下ろして呆然とした。
本来ならこの地図に
第一回の放送時に告げられた禁止エリアをメモしておくべきだったのだ。


数時間前、確かに全島放送で死亡者の名前と禁止エリアが発表された。
そのことについては、佐原も気付いている。

しかし、島に黒崎の声が響き渡ったその時間。
佐原は、板倉たちから逃げていた。
一心不乱に身を隠す場所を探し惑っているときだった。
死亡者と禁止エリアについて述べていたということはわかっても
詳細な内容など、ほとんど耳に入っていない。

(バッカヤロ!なにやってんだよ!オレは・・・・!)






【F-7/温泉旅館・客室/夜中】
【佐原】 
 [状態]:精神疲労 首に注射針の痕
 [道具]:レミントンM24(スコープ付き)、弾薬×29 、懐中電灯、タオル、浴衣の帯、支給品一式
 [所持金]:1000万円
 [思考]:板倉、しづか、森田、遠藤と会いたくない 人を殺したくない 自力で生還する
※第一回定時放送時に錯乱状態だったため、放送の内容をほとんど覚えていません。


081:獣の儀式 投下順 083:事故
093:信頼 時系列順 096:夜行
071:それぞれの試金石(前編)(後編) 佐原 107:猜疑と疑惑(前編)(後編)




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