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危険人物 ◆X7hJKGoxpY氏


田中沙織は強かな女性であった。
彼女には、金のためならばどのような行為も辞さないところがある。
このギャンブルに不用意に参加してしまったのもこのためであった。
だが、もとより精神的に強い人間であるというわけでは無い。
「死のギャンブル」という現実は彼女に恐怖と絶望を抱かせるに十分すぎるものだった。
(そんな………そんなことって…………)
ギャンブルの内容を聞き、山口の死を目の当たりにして、彼女の目の前は真っ暗になった。
(嫌よ……助けてっ………誰か……)

――どのようにしてホテルから出たのか、はっきりしない。
気付いたら、民家の中にいた。
良く誰にも遭遇しなかったものだと思う。
ひとまず死を免れることができたのは幸運としか言いようがないだろう。
それほどまでに彼女の心は憔悴しきっていた。
(なんで殺し合いなんて……)

彼女の動揺にはある理由がある。
――半年以上も前のことだ。
彼女は神威家の「お家騒動」の立役者の一人であった。
無論、目的は金のため。
彼女にしてみれば、良い稼ぎになってくれればよかったのだ。
だが、残ったのは金では無く、ある種のトラウマ。
「鏖」
エレベーターに書かれた血文字が彼女の頭にこびり付いて離れない――
その日に起こったのは凄惨な殺し合いであった。
いくら強かであるといっても若い女性である。
心に大きな傷を残すのは当然といえた。

(もう……嫌………殺し合いなんて………)
彼女は壁にもたれかかって座り込む。
死にたくない。
人の死も見たくない。
そうして頭を抱えてうつむいた瞬間、玄関の扉が開かれた。


 * * *


殺人鬼との望まぬ出会いを果たしてから、カイジはホテルの中庭に即座に身を潜めた。
移動する前に、支給品を確認しておきたいがための行動である。
(チッ……冗談じゃねえ………やってられるかっ……)
カイジは支給品を確認していらついた。
支給された武器はボウガンと矢が十本――実際に山口の死の瞬間や、殺しを楽しむ狂人を見はしたものの、
こうして人を殺す武器を手にすると自らも本当に参加させられているという実感が湧く。
(オレは乗らねえっ……こんなギャンブル………絶対に!)
狙うはこのギャンブルの主催者だけである。
死んだ山口にも誓った、必ず仇はとると。
――とはいえ、どこから攻めればいいのか、今は全く分からないが。

(とりあえず仲間を見つけねえと……どこに行くべきだ)
乗らないと決めた以上、できれば人の集まるところには行きたくない。
だが、仲間を集めるためにはそのリスクを冒さざるを得ないだろう。
この地で安全に仲間を集めるのは不可能であるといっていい。
カイジはしばらく悩んだあと、アトラクションゾーンを目指すことに決めた。
ここならホテルからさほど離れていない大きな拠点のため、人も集まりやすいはずである。
カイジは立ち上がると、周囲を警戒しつつ動き始めた。


カイジは民家の影に身を隠しながら北上する。
路上を歩くと目立つ。
突然の襲撃を避けるための配慮である。
その時、カイジの目にあるものが止まった。
(あれは……女?)
何を考えているのだろうか、カーテンも開きっぱなしで窓から丸見えである。
あれでは殺してくださいと言っているようなものだ。
(……どうする………このままだと死ぬぞ………あいつ………)
カイジは悩んだ。
仲間が欲しいとはいえ、自分の身もまともに守れないような女では戦力にはならないだろう。
いや、それだけならまだいい。
あれが獲物をおびき寄せる罠だとしたらどうか。
或いは殺し合いにも発展しかねない。
(ぐっ………クソッ…………バカッ…………!こんな時に……!)
――しかし、カイジはここで見捨てることのできるような男では無かった。
ぶつくさと独り言を言いながら玄関へと移動する。
そして万が一に備えてボウガンを構えると、カイジは扉を開けた。

家に入り、カイジは廊下を歩いてゆく。
そしてリビングに入る――女と目が合った。
「動くなっ……!そこから……」
カイジはボウガンを女に向ける。
女は一瞬ビクリと体を震わせ、直後に悲鳴を上げた。
「いやあああああああああああっ!!!」
「バカッ!叫ぶなっ!気付かれるだろ!安心しろっ!オレは殺し合いには乗ってない!」
だが、女は聞く耳を持たずヒステリックに叫び続ける。
「いやっ!いやっ!助けてっ」
「だから叫ぶなっ!」
慌てて女を止めるカイジ。
――彼女を説得するのに、十分ほどの時間を要した。

「そう……確かに迂闊だったわ……忠告してくれてありがとう」
女は礼をいった。
二人は外からは見えない台所へと移動している。
幸いにも誰にも見つかることはなかったようだ。
「自己紹介がまだだったわね……私は田中沙織よ」
「ああ、オレは伊藤開司だ」
自己紹介を終えると二人の間に沈黙が流れた。
精神的な疲労から話すのが億劫になっただけなのだが、微妙に気まずい。
この空気に耐えられなくなったのか、沙織は口を開いた。
「カイジ君……殺し合いには乗らないって言ってたけど………どうするの?」
「………このギャンブルを潰すつもりだ」
「えっ!それってつまり……」
「あ、いや……方法はまだ見当も付かないけど」
「………そう」

再び気まずい沈黙。
そう、がっかりされても困るのだ。
現状では手段が思い浮かばないのだから、仕方がないではないか。
今度はカイジから口を開く。
「取りあえず………」
「なに?」
「支給品を見せてもらってもいいか?」
「あ!そういえば確認してなかったわ」
呑気な女だとカイジは思った。
尤も精神的にそんな余裕が無かっただけかもしれないが。
「これは……冊子ね。『参加者名簿』か……」
出てきたのは、写真付きの参加者名簿であった。
「これは幸運かもしれない……」
危険人物が掴める可能性もある。
これが把握出来るのと出来ないのとでは差は大きい。
カイジはそういうと、チェックをはじめた。

「カイジ君……危険人物はいた?」
沙織が尋ねる。
「ああ………殺し合いに乗りそうな奴は多い……」
彼の知る人物の多くはっ乗っているとみて間違いないだろう。
特に危険な人物は四人。

「要注意人物……一人目は有賀って男だ………一度ここで会っただけだが…………
こいつは殺しを楽しむ性質……最も危険っ………!
そして二人目………一条……こいつには七億の借金がある………棄権では無く優勝を目指す可能性は高い……。
三人目は利根川……こいつは失脚こそしたが、かつて主催者の側近だった男………」
「……三人とも危険ね」
「最後に四人目………何故参加しているのかはわからない………だが……間違いなく危険な男っ……
兵藤和也………主催者の息子だ…………さて、次はあんたの番だ」
言い終えるとカイジは沙織に名簿を渡した。
沙織もパラパラとページをめくる。
「まず多分力になってくれる人物として森田鉄雄………彼は仲間にしたいところね。
それから危険なのは神威秀峰、勝広、吉住邦男……………ねえ、気になることがあるんだけど」
「……なんだ?」
「死んだはずの人の名前が載ってるの………神威勝広と吉住邦男……どういうことだと思う?」
死んだ人間の名前。
カイジも気になってはいた。
石田と佐原――あの鉄骨渡りで死んだはずの二人。
だが、考えられることは一つしかない。
「多分生かされたんだ………連中にっ…………このギャンブルの参加者にするために………」
「……ひどい…………」
思うところがあるのだろうか。
沙織はやや沈んだ様子を見せた。

「まあ今は参加した経緯なんてどうでもいいだろ………違うか?」
「ええ………あ、あともうひとつあるんだけどこの数字なんだと思う?」
「数字?」
カイジは名簿をのぞきこむ。
なるほど、顔写真の右上に小さく数字が書かれている。
例えばカイジは19.0、沙織は133.3といった具合である。
(数字………ああっ……まさかっ………!)
「どうしたの?目の色変えて」
「これは……確証はないが……多分………倍率だっ……!トトカルチョの……!
連中……誰が優勝するかを賭けてたんだ!」
「……ある意味ついてるわね」
「ああ………」
トトカルチョの倍率だとすればこの発見は大きい。
倍率が低い人間ほど人気がある――つまり危険性は大きい、ということである。
カイジは急いで倍率を確認した。


「どうだった……?」
「明らかに危険なのは二人だ………倍率が飛びぬけて低い…………10倍を切ってる………赤木しげると、平井銀二……」



【C-4/民家/真昼】
【伊藤開司】
 [状態]:健康
 [道具]:ボウガン ボウガンの矢(残り十本) 支給品一式
 [所持金]:1000万円
 [思考]:このギャンブルを潰す 仲間を集める 森田鉄雄を捜す
 赤木しげる、有賀研二、一条、神威勝広、神威秀峰、利根川幸雄、兵藤和也、平井銀二、吉住邦男に警戒
     ※石田が合流したがっていることに気づいていません。

【田中沙織】
 [状態]:健康
 [道具]:参加者名簿 支給品一式
 [所持金]:1000万円
 [思考]:死に強い嫌悪感 カイジに同行する 森田鉄雄を捜す
 赤木しげる、有賀研二、一条、神威勝広、神威秀峰、利根川幸雄、兵藤和也、平井銀二、吉住邦男に警戒


014:装備 投下順 016:保険
013:再起 時系列順 016:保険
006:「I」の悲劇 伊藤開司 033:二択
初登場 田中沙織 033:二択






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