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孤島の鬼 ◆wZ6EU.1NSA氏


その声を聞いた青年はにたりと笑った。



時は多少遡る。


森の中を闊歩している、一人の青年。
見ればまだ若い。少年という程幼くはないが、まだ十代と思しい。
青年の名は兵藤和也。このゲームの主催の一人兵藤和尊が息子である。
悠々と彼は歩いていた。
それだけの事である。何ら不自然な動作ではない。
ただここが、
地獄の釜の底であるという事実さえ除けば――。


歩を進める彼の体からは自信が満ち満ちて溢れ出している。
もはやそれは傲岸、傲慢と呼べるまでに。まるで自信そのものを具象した存在が如く。
この勝負、己が勝ち切れる…そう信じているが故である。
決して揺るがない勝利への確信。それを彼は微塵も疑ったりはしない。疑う必要もない。
獅子は自身が獅子である事に疑問など抱かない。
それと同じ事である。
凡人とはそもそもの常識が違うのだ。
つまりこの場に似つかわしくないと思える堂々とした彼のその振る舞いも当然であり、必然。
彼にとってのかくあるべき姿でしかないのだ。

和也はE-5地点から北上し、アトラクションゾーンに向かっていた。
彼は不遜極まりない男ではあるが、利に昏(くら)い男ではない。
むしろ聡い。利口で抜け目ない、賢しい男なのだ。
百戦錬磨の猛者ども相手に徒手での優勝が難い事位は充分に承知、理解している。
自分に従属、隷属する人間――狗…手駒…家畜…奴隷――の入手は必須である。
アトラクションゾーンならば人も集まりやすいであろう。そう考えての移動である。
得るなら帝愛の人間が望ましいのだが、そうでなければそれでも良い。
愚民どもの中から適当に選別してやれば良いだけのこと。意のままに人を操る術などいくらもある。
勝つべくして勝つが王の道。王は負ける戦争(いくさ)はせぬのだ。


森を抜けアトラクションゾーンに到達し、さてどこから見て回ろうかと和也が思案していたその時。


『聞けっ……!ここに一千万ある……!!得たくば、奪いに来いっ……!!』

その声を聞いた和也はにたりと笑った。
(面白え…面白えっ…面白えっ…!)

彼も若者らしく面白い事には目が無いのだが、
彼の思うところの「面白い」と一般の若者が思うところの「面白い」とは大分齟齬、隔たりがあるようである。

(『奪いに来い』だと…?イカれてやがる…正気の沙汰じゃねえっ…わんさか集まってくるぞ…今の声を聞いた奴らが…)
だがこれは――、

(――愉快なり、愉快なりっ…!)
「ひ…ククク…ククッ…」
自制心を総動員してどうにか哄笑を抑える。

しかしこの狂乱劇を堪能するには…。
面を擡(もた)げ辺りを見回すと目に入ったのは高い塔。



登り詰めた展望台から広がる景色を見下ろす。
手には売店から失敬した双眼鏡。
文字通り高みの見物。まさに垂涎。


さあ楽しませてくれ――     
泣け叫べ狂え脅え逃げ惑え

さあ愉しませてくれ――
貶め謀り諍い争い殺し合え

さあ聞かせてくれ――
怨嗟慟哭嗚咽と断末魔を

さあ見せてくれ――
酸鼻を極め地獄絵図を描け

喜びを悦びを歓びを――
醜くこの釜の底を這い回れ

さあ、さあ、さあっ…――
死屍骸を積み重ねろ累々と


もうすぐ始まる…魔を招き入れての狂演の舞…パーティーの扉が開く…。

望みは破滅死滅絶滅自滅…!
それこそが歓喜っ…!愉悦っ…!喜悦っ…!随喜っ…!陶酔っ…!
至福…たまらない至福っ…!
残酷に残虐に非道に非情に無邪気なサディズムの権化はもはや辺りを憚(はばか)ることもなくげらげらと嗤う。



 それは愉快そうに、

 とても愉快そうに、

 から笑うは鬼――。




【B-3/アトラクションゾーン/夕方】


【兵藤和也】
 [状態]:健康
 [道具]:チェーンソー 対人用地雷三個(一つ使用済)
     クラッカー九個(一つ使用済) 不明支給品0~1個(確認済み) 通常支給品 双眼鏡
 [所持金]:1000万円
 [思考]:優勝して帝愛次期後継者の座を確実にする
※伊藤開司、赤木しげる、鷲巣巌、平井銀二、神威秀峰、天貴史、原田克美を猛者と認識しています。



※利根川、一条、遠藤、村岡の四人と合流したいと思っています。
 彼等は自分に決して逆らえないと判断しています。

052:手札 投下順 054:十に一つ
052:手札 時系列順 054:十に一つ
035:強者と弱者 兵藤和也 073:悪戯




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