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銀と銀と金と銀 ◆wqrwEsIdSs氏


赤木に似ている……。
銀二の少し後ろを歩きながら、原田はふとそんな事を思う。
今現在このバトルロワイアルに参加しているあの青年に、ではない。
自分の言葉通り生きる事を唯一の誇りとし、己が己である為に自ら命を絶った赤木に。今は亡き赤木しげるに彼は似ている。
赤木と銀二と。
たしかに背格好や年齢など近いものはある。修羅場をかい潜ってきた人間が持つ特有の匂いも共通している。
しかし。
この男は。
この銀二という男は裸足で土の上を歩いたりはしないのだろう。敢えてそのような無為を働くタイプの男には見えない。
ならば。
自分は銀二に老いた赤木の幻影を重ねて視ているのに過ぎないのではないかと。
そんな事を、思っていた。

夕焼けの鮮やかな赤色の残滓と宵闇の薄い銀色が混じり合い、前を行く男の後ろ姿を模糊とさせる。
明るくはないが暗くもない、黄昏時。
誰そ彼時。

不意に銀二が立ち止まり、考え事をしていた原田はその背にぶつかった。
「なんで急に止まんねやっ……!」
「しっ……!」
原田の抗議を、銀二は口に人差し指を当てて遮る。
「原田さん……、あれを見て下さい……。」
言われた通りに銀二の視線の先に目を遣ると二人の男の姿を認める事ができた。
「ご苦労だった……。」
銀髪の壮年は、銀髪の青年に向けてそう言い放った。労いなど欠片も感じられない口調で。
利根川と平山である。
約束どおりに二人の男は発電所で邂逅していた。
『奴隷の剣はまだ折れていない』
伊藤開司から託された言葉を伝えたところで、用無しとばかりに利根川に殺される可能性もゼロではないと思っていた平山は安堵の息を吐く。
まだ自分には利用価値があるという事らしい。
「そうだな…次に落ち合う場所は……」


銀二と原田は二人組に気取られないよう茂みに身を隠しながら慎重に接近していた。
「中年男性のほう……あの男には見覚えがあります。利根川……帝愛の“元”№2……。」
「……知り合いか……?」
「そういう訳でもないんですがね……。」
銀二は原田の事も知っていた。ならば大企業帝愛の幹部の名を知っていたところで何の不思議もない。
「“元”ちゅうんのは……。」
「失脚したんですよ……。噂によると野良犬に噛み付かれてその座を引き摺り降ろされたらしい……。」
とはいえ、と銀二は続けて言う。「帝愛と深い繋がりのあった利根川は使えます……。ですから、隙を突いて動きを封じて捕まえてしまいしょう……。」
「ほう……?」
「勿論、今は退いた身とはいえ利根川は一筋縄でいく相手ではありません……。しかしそのリスクを犯すだけの価値があります……。」
「面白いやないか……。」
そう答えて原田は笑った。
凶暴で獰猛な、笑顔だった。
「では参りましょうか、原田さん……。」
すう、と銀二の眼が刃物のように細くなった。
銀二と原田は身を隠せる距離ギリギリまで利根川へと近付く。身を屈め、音もなく、それ故に気付かれることもなく。
充分な距離に達したことを確認すべく原田が目配せを送ると銀二は頷き、そして利根川を見据えた。
実行の時だ。
原田は隠れていた反動と云わんばかりに勢いよく立ち上がり、銀二は草むらなどないかのような所作で身を起こす。
「動くなやっ!!!」
咆哮をあげ恫喝する原田。
「両手を挙げて下さい……。」
静かな声で威嚇する銀二。
原田の手には安全装置を外した拳銃が握られている。二人の男は言われるがまま素直に両手を挙げた。

平山は事態を飲み込むことすら出来ずに固まっている。
しかし一方の利根川は呆気にとられたのはほんの一瞬。直ぐに冷静を取り戻して自身が置かれている状況に判断を下す。
袖口に隠し持っているデリンジャーの装弾数は僅かに二発のみ。
しかも命中精度・殺傷力は共に低く、相当の至近距離から急所を打ち抜きでもしない限り大の大人を死に至らしめるのは不可能である。
さらに同銃は安全装置が無い代わりに引金が重く設計されている為、早撃ちには不向き。
相手は二人組で拳銃を構えている方は見るからにヤクザ。こちらが妙な動きをすれば容赦なく撃つだろう。
圧倒的不利。
そんな状況であるにも関らず利根川は不敵にも、その口角を持ち上げた。
「な……なんなんだよアンタらっ……!」
原田の意識が、口を開いた平山へと僅かに逸れたその間隙を利根川は見逃さなかった。
利根川は腕を挙げた体勢のまま、原田の方に向けて眼前にあった平山の背中を思いっきり。
蹴りつけた。
「ぎゃっ!!!」
完璧に虚を突かれた平山は悲鳴を上げ、その華奢な身体は実に素晴らしい勢いで飛び出した。
原田は避けきれずに平山と縺れるように倒れ込む。

目論見通り。
森に向かって利根川は猛然と駆ける。逃走である。銀二がその背中を追う。
「fuck you!」
振り向き様に罵声を浴びせると同時に袖口のデリンジャーを手中にスライドさせた利根川は、トリガーにかけた中指に力を込める。
銃声が響き、銀二は咄嗟にその場に伏せた。さらに牽制の為利根川はもう一発を発砲した。
原田は覆いかぶさっていた平山を強引に撥ね退け、妙な動きが出来ない様転がっているその背を膝で踏み付けにする。
そしてその体勢のまま利根川に向けて数度発砲するも、無為に終わる。
利根川の姿は既に生い茂る木々に隠された後であった。

「去によったか……。」
「そのようですね……。」
起き上がった銀二は淡々と答え、原田は実に忌々し気に舌打ちした。
そして。
背を踏みつけにする足は消えたものの、依然平山はうつ伏せたままである。
(なんでこんな目にばかり会うんだ、オレ……。)
そう思うと起き上がるのも嫌になる。
しかし「大丈夫ですか?」と問われて、つい「大丈夫です」と答えてしまう。そう言った以上は起き上がらざるを得ない。
平山はやや乱暴な仕草で、足を投げ出すようにして土の上に座り込む。
安心したのだ。
銀二の声色は、それ程に優しく甘く平山の心に入り込んでいた。
しかしその安心もつかの間にすぎなかった。

「おどれあの男とどういう関係や……?」
ぞっとするような声を背後から浴びせられた。
それに反応して顔をあげれば、夜空にはいつの間にか昇った月が真円を描いてる。満月である。そしてその月の真下には。
鮫のような眼をした男が立っていた。
手に持った拳銃を平山に突きつけながら、凶暴で獰猛な魚の眼が見下ろしていた。

『………見当違いもはなはだしい。背の立つ所までしか海に入ってないのに、オレは海を知ったと公言しているようなもの………』
記憶が蘇る。
そう言ったのは深海の魚のような男だった。
そして平山は思い知る。己は魚ですらなかったのだと。
恐怖に凍りついたままの体で、平山はぎこちなく目玉を動かして銀二を見る。もしかしたら助けてくれるのではないかという期待を込めて。
が、駄目。そんな事はなかった。
平山は素直に利根川との経緯を話した。

「……なる程、つまり平山くんは利根川に利用されていたという訳ですね……。」
穏やかに言う銀二の言葉を受けて原田が拳銃を降ろしてくれるのではと、平山は再び淡い期待を抱いて原田を窺う。
が、矢張り駄目。そんなに甘くはなかった。

誰も助けてはくれないのだ。ならば自ら活路を見出すしかない。
死にたくないという気持ちはあるがしかしそれ以上に、どんな状況になっても諦めない、と交わしたカイジとの約束だけは破りたくなかった。
平山は必死に考える。

もしかしたら。
この二人は殺し合い自体には乗っていないのかもしれない。
何故ならば、こんな自分など殺そうと思えば意図も容易く殺せるのだ。いや「殺せた」のだ。
にも関らずこうして殺さずに生かしているということは、彼らの本懐は別にあるのではないだろうか。
その可能性は充分にある。
ならば、自分もこの殺し合いには乗っていないのだと示せれば、あるいは。
助かるのかもしれない。

そう至った平山は、ひろゆきとカイジとの事も話す。
原田はひろゆきとの事に、銀二はカイジとの事に興味を持ったようだった。
そして原田は平山に向けていた銃を静かに降ろした。

森の中。

追ってくる者の気配は無い。
煌々と照らす月が、ぜいぜいと息を荒げる利根川の足元に影を作っている。
多少開けた場所を選び、利根川は背負っていたデイパックを降ろした。
呼吸が落ち着くのを待ち適当な岩のうえに腰を掛けて、デリンジャーのバレルを開いてカードリッヂを装填する。
その際に腕時計を模した受信機が目に入った。
「ん……?」
生体反応が消えている。という事は。
(平山は殺されたか……。)
それでそれは構わない。
利根川にとって平山なぞ所詮は使い捨ての駒にすぎないのだ。
最後に役に立った。それだけでも充分である。




実際には原田と激突した時の衝撃で計器が接触不良を起こしたのであって、平山は死んでいはない。しかしその事については互いに知る由もなかった。
今は。



【D-2/発電所付近/夜】


【平井銀二】
[状態]:健康
[道具]:支給品一覧、不明支給品0~2、支給品一式
[所持金]:1300万
[思考]:生還、森田と合流、見所のある人物を探す
※2日目夕方にE-4にて赤木しげると再会する約束をしました。

【原田克美】
 [状態]:健康
 [道具]:拳銃 不明支給品0~2(確認済み)支給品一式
 [所持金]:800万円
 [思考]:もう一つのギャンブルとして主催者を殺す 銀二に同行する
※首輪に似た拘束具が以前にも使われていたと考えています。
※主催者はD-4のホテルにいると狙いをつけています。
※2日目夕方にE-4にて赤木しげるに再会する約束をしました。


【平山幸雄】
 [状態]:左肩に銃創 首輪越しにEカードの耳用針具を装着中
 [道具]:参加者名簿 不明支給品0~2(確認済み) 通常支給品
 [所持金]:1000万円
 [思考]: 引き続き利根川の命令には従うが、逃れる術も積極的に探る
※ひろゆきと21時にアトラクションゾーン事務所で落ち合う約束をしました。
※利根川に死なれたと思われていることを知りません

【利根川幸雄】
 [状態]:健康
 [道具]:デリンジャー(1/2) デリンジャーの弾(28発) Eカード用のリモコン 針具取り外し用工具 支給品一式
 [所持金]:1000万円
 [思考]:ゲームで優勝、もしくは和也を優勝させての離脱
※両膝と両手、額にそれぞれ火傷の跡があります
※和也の保護、遠藤の抹殺、カイジとの真剣勝負での勝利・その結果の抹殺を最優先事項としています。
※一条はその目的次第で協力・殺害を判断します。
※デリンジャーは服の袖口に潜ませています。
※Eカード用のリモコン
Eカードで使われた針具操作用のリモコンです。
電波が何処まで届くかは不明です。
※針具取り外し用工具
Eカードの針具を取り外す為に必要な工具です。
※平山から伝言を受けました
※計器からの受信が途絶えた為、平山が死んだと思っています (何かの切欠で計器が正常に再作動する可能性もあります)



066:夢現 投下順 068:計画
064:人間として 時系列順 080:十八歩
045:余裕 平井銀二 080:十八歩
045:余裕 原田克美 080:十八歩
051:仮定 平山幸雄 080:十八歩
048:思惑 利根川幸雄 092:主君の片翼




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