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**双剣のサーヴァント―I have created over a thousand blades.― ◆7jHdbxmvfI 突如として戦場全域に響き渡る老人による放送。 そしてその放送の内容をじっくりと聞いた後、隻眼の男は助手席に座る少女に声を掛けた。 「良かったな。あんたの探してる劉鳳って奴はまだ生きてるぜ」 「ええ、安心したわ。まあ劉鳳に限っては死ぬなんて絶対にありえないんだけどね」 二人は車内で和気藹々とした会話を楽しんでいる。 シェリスも独歩と一緒にいて、この男が自分を傷つける心配は無いと確信出来たおかげで、ようやく持ち前の明るさを取り戻しつつあった。 最も独歩の方はというと、年頃の少女との会話の心得などあるわけも無く、一方的に受身になっているだけなのだが。 「でもまあ安心したぜ。始めに会った時は今にも死にそうな表情してたからな」 「そう……でもおじさんのおかげでかなり落ち着けたわ。ありがと」 「大したことじゃ……っ!?」 そこでふと言葉を切る。 目の前から来たバイクと一瞬すれ違い、その瞬間独歩の表情は明らかに変わったのをシェリスは気付いていない。 「……どうしたの?あのバイクの人……知り合い?」 急に黙った独歩が気になり声をかけるが独歩は答えない。 ただ黙って前に向かって車を進ませているだけだ。 そうして数十秒が経過する。 さすがに落ち着きを取り戻し、ようやくシェリスの声に反応する。 「………はっ!悪いな、何かあったか?」 「別に……ちょっとおじさんボケちゃったかと思っただけよ」 「そうか……悪い悪い、少し考え事しただけだ」 すぐにシェリスに謝罪をする。 しかし心の奥はやはり別のことを考えていた。  何だ今の二人乗りは?……闘志が……勇次郎と同じかそれ以上……ちっ!俺が呆然としちまうた情けねえ。 自分の不甲斐なさに叱咤していた。 でも今さら引き返すわけには行かない。 隣にいるシェリスを危険に晒すわけにはいかないからだ。 「なあ嬢ちゃん、ちゃんとした服ほしくねえか?」 「えっ?もちろん欲しいけど……」 「なら繁華街の方に行くか?そこなら綺麗な服も多分揃ってるぜ」 「でも……劉鳳の事が……」 「その劉鳳だって人が集まるところに居ると思うぜ」 「………そうね。ありがとおじさん」 「大したことじゃねえよ」 そう言い切ると、独歩はハンドルを更に深く踏み込む。  今はこの嬢ちゃんを劉鳳に会わせねえとな。女の子を危険に晒すわけにはいかねえ! 決意を強めて、北への進路を進む。    ☆   ☆   ☆ 「いいのか?」 遠ざかる車を流し目で見つめながら、村雨は静かにバイクの後ろに座る散に声を掛ける。 しかし散の口調はあっけらかんとしていた。 「構わぬ。どうせ最後には全ての人類を消すのだ。それよりも今は先に汚れを落としたい」 最初に言った事は基本的に貫くのが散の姿勢。 その言葉に小さくうなづき、村雨はそのままホテルへとバイクを走らせた。    ☆   ☆   ☆ そうしてしばらくバイクを走らせ、ホテルへと到着し、すぐさま大浴場に向かい散は汚れを落としに向かう。 そして村雨は大浴場の入り口手前で身を清める散を待つことになる。 「ミカゲ……」 給水場の紙コップに水を入れ、その水を一口飲み、椅子に座りながら小さく呟くは仲間の名前。 仲間というには互いの事はほとんど知らない。 バダンという組織に共にいた、ただの同志に過ぎない。 それでもただ数少ない、自分の記憶を知っていた人物に変わりは無い。 そして自分が真っ先に合流を考えた人物。 その『仲間』は先ほどの放送で死を告げられた。 まさかという感情はあったが、自分も散に敗れた。 今生きているのは、散が自らを『仲間』と認めたから。 つまり自らの身も、散の考え次第では既にこの世に存在してない。  ……俺の記憶はもう戻らないのか……残念だ。あの女の正体だけでも知りたかった。 いつも自分を見守っているような女。 その正体が二度と分からないというのは酷く残念だった。 それから約数十分。 「……ふう………しかし長いな。……見かけ通りの清潔……いや潔癖か」 気を紛らわす為に小さな軽口もする。 するとそれから更に数分で散はようやく入浴を終えて、村雨の元に戻った。 「よし行くぞ!」 開口一番で散は村雨に告げる。 「分かった。それでどこに行く?」 「うむ。まずは西の方へと向かおうと思う。変電所やら汚水処理場とやらを確認しておきたい」 「そうか。ではそこに向かおう」 歩きながらの数度の言葉のキャッチボールで行き先を決める。 そしてロビーに出た時だ。 青いパーカーを着た、双剣を持つ男に出会ったのは。    ☆   ☆   ☆ 平賀才人は一心不乱にホテルを目指していた。 途中の放送があったが、その内容は才人に活力を与えていた。  ルイズは生きてる。それにキュルケやタバサも。急がないとな。一刻も早く俺が見つけないとな。 仲間が全員生きているという結果は心に安定をもたらした。 確かにシエスタはもう居ない。 でも、だからこそこれ以上犠牲を出さず、生きて帰る。 それが才人の答えだった。 「結果は変えられねーんだ。今はただルイズを探すしかないだろ! 泣いたり悲しんだりするのは帰ってからだ!トリステインに帰って、シエスタの墓を作るまで泣くわけにはいかねーんだ!!」 自分に更に喝を入れ、ホテルへと目指す。 そしてしばらく歩き続け、ようやくホテルに到着した。 すると入り口手前には、大きなバイクが停めてあった。  バイク?なら中にも誰かいる……よな。 すぐにそう推理してホテルへと入る。 入り口のドアを潜り中に入ると、そこには誰も居なかった。  居ないのか?とりあえずフロント辺りから調べるか。……と、その前に水。 まずは喉の渇きを潤す為に、売店に向かい冷蔵庫にあるミネラルウォーターを飲む。 水は体に染み渡り、体力を回復させる。 「ふう、助かった。……よしっ、探すとしますか」 才人はロビー周辺と探して回るが、特に人が居る痕跡は無い。 しかしこれはある意味想定の範囲内。  やっぱ一階じゃないか。客室探すか?でも部屋多いし……とりあえず最上階のスイートだけ目を通すか。  ルイズならスイート以外で寝泊りするわけねーからそこに居なけりゃ別の場所探せばいーし。 これから探す場所を決め、エレベーターに向かおうという時だ。 二人連れの男に出会ったのは。    ☆   ☆   ☆ 「………貴様は確か…………そうだな。最初の地で覚悟と一緒に居た者だな」 最初に口を開いたのは散。 才人を見て、一瞬思考が止まったがすぐに戻る。 目の前の男は、最初に老人の手でメイドを殺され、覚悟に遺体を渡された男。 その事をすぐに思い出したのだ。 「覚悟?……まさか……えっ、あの男知ってるのか?」 散の言葉に驚き聞き返す。すると散はすぐに答える。 「そうだ。覚悟は私の………この散の弟だ。……所詮愚弟だがな」 「愚弟?」 この言葉には疑問を感じてしまう。 わざわざ人前で弟の事を愚弟というのにはさすがに違和感があった。 「それより貴様の名は?」 でもそのことを考えるより先に散が名を尋ねる。 それでようやく自分が名を名乗っていなかった事に気づいた。 「あっ、平賀才人……です」 非礼を思わず恥じながらも、丁寧に頭を下げて名乗る。 「サイトか……良い名だ」 しかし散は自分の名を褒める。 言葉や振る舞いもだが、その礼儀正しい仕草につられ才人も敬語に直して質問をする。 「あの、……ルイズは知りませんか?ピンク色でウェーブヘアーの女の子なんですか」 「知らぬな。その女、お前の何だ?」 「えっ……」 予想外の問いかけに思わず口が止まる。 だが、落ち着いて間をおいて、一呼吸の後に口を開く。 「俺の……主です」 その言葉、はっきりとし凛とした声で発した。 目は前を見据えた、その佇まいは散にとって覚悟と重なる部分があった。 「……それじゃあ失礼します。散さんも弟に出会えるといいですね」 才人はそれだけ言うとホテルから出ようと身を翻す。 でもそれはあっさりと止められる。 「待て、この私と対峙しながら、死合もせずに逃げるのか」 淡々と、しかしはっきりとしたその言葉は才人を引き止めるには十分だった。 「えっ?試合……ですか?」 「違う!!……死合だ。この散、人類を抹殺する為の存在。そしてその私と対峙した以上お前は私と死合をする義務がある」 散は口調は最初とはまるで違う。 無茶苦茶な理屈なのだが強い威圧感のような物が説得力を増している。 「なっ!ちょっと待てよ。人類抹殺とか分からねえよ!何言ってんだよっ!!」 思わず地に戻りながらも、必死で言い返す。しかしそれは無意味。 信念を宿した散の心をひっくり返す事など不可能だ。 「サイトといったか。お前の目は覚悟と似ている。……よって私も全力を出す……瞬着!!」 叫ぶと同時に、散の身を黒い鎧が包んだ。 否、それは鎧でなく、地獄に咲いた黒い薔薇と称されるべきだろう。 その黒き薔薇に身を包み散は静かに歩き出す。 「良よ。邪魔はするな。一切の手出し無用」 「分かった。二人の邪魔はしない」 今まで傍観を決め込んでいた村雨は、散の注文にすぐ了承した。 一度自分の身を救った散には恩がある以上、一対一の戦いの邪魔のような無粋な真似をする気は最初から無かったのだ。 「ではサイト。外に出よう。ここは狭くて邪魔だ」 「……ああ、分かったよ」  くそっ!逃げるか……いや、逃げるわけにはいかねえだろ。今は最初のDIOやアーカードの時と違う。武器があるんだ。  それなのに逃げるわけ行くかよ。そうだ。逃げちゃ駄目だ。それに―― 「意地があるだろ!男の子にはっ!!!」 震えて逃げ出しそうな身を鼓舞する為に叫ぶ。 気合をいれ、両の足でしっかり地面を踏みしめ恐怖を押し殺す。 「叫んで身を鼓舞するか。そこまで覚悟に似ているとは……真に面白い奴だ」 散と才人は並んで外に出る。 少し後ろには二人の戦いを見届けるように村雨がついてくる。    ☆   ☆   ☆ 外に出ると、二人は少し距離を取り構える。 「では始めるぞ。サイト!準備はいいか!!」 「ああ、良いぜ」  ふふふ。本気は出すと言ったが相手はあくまでも生身。それになんだ。明らかに緊張しているではないか。  ……いいだろう。霞を纏った私を相手に立ち向かうお前への礼だ。全力で手加減したトルネード螺旋。  これにどう対応する?見せてみろ。 自らの中で戦闘の方針を決め、散は第一撃の構えを取る。 天上天下零式防衛術の葉隠散。 その散の構えは左螺旋から派生する一撃必滅のトルネード螺旋。 対する才人はバヨネットを二本、十字架のようにクロスさせる構えを取る。 その構えは、本来の持ち手アレクサンド・アンデルセンと奇しくも同じ構え。 「トルネードッッッ!!螺旋ーーーーーーーーー!!!!!!!」 先に動くは散。 素早い動きから一気に接近し、必殺の掌打で全身に波紋を起こししとめる、一撃必滅の技。 手加減はしていても、技の威力は十分。当れば死は免れない。 「うおらああっっっ!!!!!」 しかしそれは直線的な技。 幾度もの激戦を経験し、多彩な魔法を使いし魔術師との死闘を乗り越えた才人にとって、まっすぐの攻撃を避ける事などいとも容易い。 それに何より、手加減された為に通常よりも遥かに速さが足りない。 線をずらす事により直撃を避け、すれ違い様にバヨネットによる斬撃を散の右肩と右太ももに繰り出した。 「っ!?」 避けられたと判断し、全身を使い勢いを止める。 そしてすぐに態勢を立て直す。 才人の攻撃は散にとって全くの予想外だった。 覚悟ならば真正面からぶつかり犠牲を省みずにカウンターを繰り出していた。 しかし才人は違った。 激突を避け、それどころか自分の勢いを利用しての斬撃。 強化外骨格といえど、これには対処しきれず浅いながらも裂傷を許してしまう。  避けるか。やはりまるで同じとはいかぬな。だがしかしそれでこそ戦い甲斐があるというもの。  それに私が手加減をしたとはいえ、あの動き。とても面白い。もう少し遊んでやろう。  少しずつ本気に近づけさせてもらうぞ。どこまでついてこれるかな。 「平賀才人!とても素晴らしい動きだ。先ほどの攻撃……とても見事だ。賞賛を与えよう」」 「堪えてない……か。くそっ!余裕ぶりやがって。一撃で行動不能して終わりにするつもりだったのによ!やっぱ考えどおりにはいかねーな」 散と才人は同時に接近。 次なる攻防は掌打と剣と鍔迫り合い。 散の右の掌打が一突き。 しかしそれを才人は剣で一閃、弾くと同時に第二閃。 それを弾くは散の腕。 返す刀で左の掌打、そしてそれを一閃する才人の剣。 無数の金属音ばかりが響きあう。 散の掌打と才人の剣。 次の瞬間には攻守が入れ替わるギリギリでの技の応酬は速度をドンドン増していく。 「諦めろ!私を認めれば楽になれるぞ、サイトッッ!!!!」 「断る!!俺はっ!絶対に諦めねー!!!!」 速度は更に増す。 見ている村雨にとって、これはありえない光景に見えた。 「手出し無用……か。言われなくても手を出せない………か」 村雨の認識は正しかった。 既に二人の戦いは割って入れるような生易しい物ではない。 あまりに長く続く二人の攻撃の応酬、響く金属音はまるで一つの音楽のようであった。 人間を捨て、現人鬼(あらひとおに)となった散。 人間を捨て、使い魔(サーヴァント)になった才人。 改造人間になった村雨も本来、身体能力ではこの二人に負けない、いやむしろ上回っているだろう。 散の側に加勢に入れば、それこそ一瞬で勝負を終わらせる事も可能な筈だ。 だが記憶というバックボーン。生きる信念を持った二人は限界を超えて、否!限界を振り切った動きが出来る。 それに何より、この二人には熱い闘志があった。それに割ってはいる真似など、出来るはずがなかった。  「才人!貴様には圧倒的に足りぬ物が有る。それはっ!」 散は叫ぶ、無数の掌打を繰り出しながら更に言葉を続ける。 流れはわずかに散に傾く。散の攻撃が続く。 才人はその連撃に防戦一方となる。 「信念!情熱!決意!勇気!人望!冷酷さ!華麗さ!そして何より!!美しさが足りぬっっ!!!」 言い終わると同時に放つは必殺の螺旋。しかしそれを的確にバヨネットで才人は受け止める。 「ふざけるな!俺の剣は縦横無尽!変幻自在!!絶対無敵!!!」 言い返しながら、才人は両の剣での攻撃。 全身を切り刻むような超高速の剣撃。 次は散が防戦一方。 一瞬にして攻守は入れ替わる。 「俺は負けない!お前のような悪には絶対にっ!!逃げない!!今は諦める時じゃねえ!!」 トドメとばかりに、貫くような突きの一撃。 しかしそれを散は肘で受け止め、そのまま蹴りを放つ! 「私は負けぬ!人間という真の悪魔を滅ぼす!その星義がこの散にはあるっ!!!!!!!!!」 散が放った蹴りはとにかく全力での一発。でもそれを才人は、少し後ろの仰け反り避ける。 しかし攻撃は単発に終わらず、更に掌打と蹴りを連続で放つ。 あまりの速さにその蹴り、その掌打、全てが十にも二十にも見える。そしてその全てに力がある。 その力、正に鬼が如し。 「馬鹿でかい正義だな!でもな!!だったらそのデカイ正義を抱いて溺死しろっ!!!!!」 相対する才人。 その攻撃を紙一重でかわし、あるいは剣で捌き、更に迎撃。 音速を超えるのが散の掌打なら、才人の剣閃は光速を越える。 パワーでは遥かに才人の上を行く散。しかし才人は技術とスピードでそれを補う。 才人は散の脳天を叩き切らんとばかりに、右のバヨネットを散に振り下ろす。 「正義ではない!星義だ!!サイトっ!!!」 しかし動体視力ではやはり散が上。正確に才人の剣に掌打を合わせる。 両者の掌と剣はひときわ強くぶつかり、それに共鳴する音もひときわ高くなる。 そしてそれが鳴り終わるよりも刹那の速さで、二人は大きく後ろに跳んで再度距離を取る。    ☆   ☆   ☆ 才人と散は深呼吸をして、両者共に息を整える。 そして三度の攻防に備え構えを取り直す。  冗談じゃねえ。あの鎧堅すぎるぜ。だがよ……負けてたまるか!俺はルイズのために死ぬわけにはいかねえ。  絶対に勝つ。俺の中のガンダールブの力!もっと俺に力をくれっ! 強く才人は念じる。そしてそれに答えるように才人の左手の刻印が光る。 そしてその刻印が更に才人の力を上昇させる。  ………これが俺の力。いける。力がみなぎってくる。だが足りねえ。もっとだ!もっと!! 才人が強く念じる間、散も右螺旋の構えをとり、身を低くし大地の反作用を得て、更に体中をひねり右手に全力を注ぐ。 「参れ!サイト!!」 「言われなくても行くぜっ!!」 散の言葉に反射するように才人は駆け出す。 「輝け!もっとだ!もっと!もっと!もっと輝けえぇぇっっーーーーー!!!!!!!」 「螺!螺!螺!螺旋ーーーーーー!!!!!!!!!!!!!」 才人の左手は強い輝きを放つ。散の体からは溢れんばかりオーラが放出される。 才人のバヨネット、散の右掌打が激突。 そしてそれは大地を揺るがせ、大気を震わす。エネルギーのぶつかり合い。 「おらっ!負けるかあああ!!!!」 「負けぬぞ!サイトオオオオォォォォ!!!!」 常識外なエネルギーのぶつかり合い。 十秒、二十秒、三十秒。 全く両者は譲らない。静止した姿は写真の中の光景といっても人は騙される事間違いなし。 「負けねえ!!これがっ!俺のっ!!輝きだああああぁぁぁ!!!!!」 ガンダールブの刻印が更に光る。 それと同時に散の腕が僅かに後退する。 最初の右肩への斬撃がここに来て影響を及ぼしているのだが、それでも確かに、一瞬ではあるが不退転の散の掌を後退させたのだ。 そして遂に散の、右腕の強化外骨格には亀裂が走る。 「ぐっ……サイトっ、貴様ここまでやるか!だがしかし!勝つのは私だっ!!!」 フェイント、いや違う。 それは力を注ぐ方向を反転させたに過ぎない。 右の掌で二本のバヨネットを握り、天空へ螺旋を放つ。 「螺旋!!!!!」 「なっ!?」 散の叫びと共に、才人のバヨネットは後ろに上段に弾かれる。 強く握り締めているため手から離れる事はないが、大きく態勢は崩れてしまう。  ぐっ、態勢を立て直す、いやここは一度距離を取る。大丈夫だ、相手の体も浮き上がっているからすぐに攻撃は―― 落ち着いて思考をするが、それを散は許さない。 散の攻撃は螺旋が全てではない。 全身凶器の異名を持つ散にとって攻撃の手段は決してないわけではないのだ。 散はバランスが崩れているにも関わらず、左手を構える。そして打ち出すは得意の掌打。  早!?急いで下がって――― 「弾!!!」 瞬時に身を後ろに引くが、それと同時に顎を掠めて胸部へと散の掌打が炸裂。 「がっ!」 勢いのまま才人は後ろへと飛ばされる。 そしてそのまま地面へと叩きつけられるかという所で、何とか態勢を建て直し両足で着地。 「ぐっ!……ちっくしょ……」 大地の反作用が得られず、捻りも溜めも中途半端、技の入りも浅いため波紋を起こす事はない。 しかしそれでも胸部への打撃は十分な威力を誇っていた。  冗談じゃねえぞ。くっ……やべえ。足が……足が動かねえ!? 顎をほんの僅かに掠めた攻撃。 だがその僅かが逆に致命傷。 脳を揺らされ三半規管を一時的に麻痺させ、思うように動く事が困難となる。 そして無情にも散は自分へとゆっくりと、しかし確実に接近してくる。  負けるのか……死ぬのか………ちっ。だがまだだ。死ぬのは構わねえが……何も残さずに死んでたまるか!何の証も残さず死ぬなんて真っ平御免だ! 「……才人。私はお前が気にいった。この散と共に歩む気は無いか?」 「ふざけんなっ!確かに俺の敗北は揺るぎそうにねえが、最低でも腕一本は頂かせてもらう!!貴様が相手をするのは死を覚悟した生きる亡霊だ! その五体失う覚悟を持ち、……恐れずして向かって来い!!!」 散の申し出を振り切り、二本のバヨネットを構える。 力が入らない足を上半身でカバー。刺し違えてでも腕は貰う。 決死の覚悟で散を睨みつける。 「…………それが貴様の返事か。では問おう。貴様のその剣、本来の自身の武器ではないな」 だが散。歩みを止め、予想外の問いをしてくる。 この問い、才人には意図が分からなかった。  何のつもりだ?だが……そうだな。嘘つく必要は無い。 「当たり前だ。俺の武器はデルフリンガーの剣だ。こんな短い剣じゃねえよ」 「長い……長刀か………」 それだけ言うと散は身を翻し、今まで傍観を貫いていた村雨の元へ戻る。 そして―― 「いいな」 「構わない」 短いやり取り。 散はバッグを一目確認。そして振り返り才人へと宣言する。 「サイト……この死合一時預かる。私は貴様が気に入った。貴様がそのデルフリンガーとかいう剣を手に入れ次第、再戦を申し込む!」 高い声。それでいて芯が通った声だ。 「なっ!?ふざけんなよ。どういうつもりだ?」 「貴様を評価しての所為だ。無論私から仕掛けた死合であることには変わりは無い。これは放棄する詫びだ。受け取れ」 「って、えっ?」 才人の手に一枚の紙が投げ渡された。 「この散を相手に勇敢に戦った礼も込みだ。遠慮せずに受け取るがいい」 この言葉を最後に散は村雨と共に才人に背を向けて去っていく。 しばらくしてバイクの音。 もうここには二人はいない。 そして数分後。 三半規管の異常がようやく回復し始め、足に力が戻り始める。 しかし敗北感は決して拭いきれてはいなかった、 才人は壁にもたれながら、うな垂れていた。 「負けた……ちくしょう。俺は……くそっ!」  駄目だ。あの野郎…… 暗く心の闇に囚われそうになる。しかしその時、声が聞こえた。 『才人さん。元気を出してください。私が見守っています。それに……ルイズさんを守れるのはあなただけなんですよ!』 「えっ!?………シエスタ?」 聞きなれた声。確かにそれはシエスタのそれだった。 しかし声が聞こえたのは一度きり。姿は当然無い。 「シエスタ…………そうだよな。俺がやらなきゃ駄目だ、シエスタのような人間は絶対に増やさない」 決意を胸にゆっくり立ち上がり、散から受け取った紙を開き、中から出てきたハイエロファントグリーン(法皇の緑)のDISCを頭に挿入する。 そしてそれと同時に自分の前には不思議な人型のスタンドが出現する。 「これが俺の新しい力……やるしかないな。………葉隠散!例えこの命を犠牲にするとしても……俺は必ずお前を倒す!!」 決意の言葉を思い切り叫び、才人は北へと歩き出す。    ☆   ☆   ☆ 「良かったのか?」 バイクを運転しながら村雨は後ろに座る散に話しかける。 だが散の答えは少し予想とは違った。いや予想通りかもしれない。 何より、二人乗りは通常両手を運転手に回すが散の右手からは力が入っていなかった。 この事実が何となく村雨に悟らせていた。 「構わぬ。あの男……この散の右腕に傷を………それも不得手の武器で。私は常に完全でなければならない。 従って万が一にも、『相手の武器が不得手だから勝てた』など許せぬ。そのような自分はド許せぬのだ。 だから先ほどの武器は私自身への戒めだ。次に会った時、あやつはあの武器も使いこなしてくるだろう。 だがその上で、あえて作り出した不利な状況を覆し、私が完全な勝利を収め、そしてあやつを部下にしてみせる。絶対にな」 淡々と告げるが、ところどころ僅かに感情が見え隠れした言葉だった。 しかしその言葉の中には、何人もの部下の上に立つ支配者の風格というものが漂っていた。 実際、あらゆる手段を用いていれば、最初から全力を出し切れば散の勝利は動かなかっただろう。 だが、散はそれを良しとしない。 手加減をしたというのは自分が相手の力を見誤ったという慢心に過ぎない。 それを言い訳にして、自分を甘やかすような愚かな真似、そんなことを散はするわけがなかった。 何より最後の一瞬、才人が自分が腕を退かせた瞬間、その瞬間自分は間違いなく『本気』を出していた。 一瞬ではあるが才人が自分の上を行ったのは事実。それ故に散はあそこでの決着を望まなかった。 真の決着は互いが100%の真価を発揮するその時。非常に遠回りなやり方ではあるが、それが葉隠散なのだ。 「散……変わったやつだな」 「何を言う。お前の記憶も取り戻してやるから安心しろ」 「……ああ。信用している」 二人は西への道を行く。 当初の予定通り、変電所と汚水処理場を目指して。 散と才人。二人は知らないだろう。 自分の弟が、自分のマスターが。 先ほど対峙した相手のマスターと、相手の弟と、行動を共にしているなど、露ほども知らない。 知る由もない。 それはあまりに不思議な縁。 運命の螺旋はまだ終わらない。 【D-7 北部 一日目 朝】 【愚地独歩@グラップラー刃牙】 [状態]:健康 [装備]:逆十字号@覚悟のススメ、キツめのスーツ [道具]:支給品一式、ランダムアイテム(1~2、本人確認済み) [思考・状況] 基本:殺し合いには乗らない、乗った相手には容赦しない 1:シェリスの服を見立てる為に繁華街に行って、服を探す。 2:アミバ・ラオウ・勇次郎・カズマ・ジグマール・平次(名前は知らない)と接触、戦闘 3:乗っていない人間にケンシロウ・上記の人間・タバサ(名前は知らない、女なので戦わない)の情報を伝える。 4:シェリスとともに劉鳳を探す。 5:ま た シ ャ ワ ー を 浴 び た い [備考] ※逆十字号に乗っている場合、移動速度は徒歩より速いです [参戦時期] 地下トーナメント後、死刑囚前。 【シェリス・アジャーニ@スクライド】 [状態]:健康 かなり落ち着いてきた [装備]:光の剣(ただのナイフ)@BATTLE ROYALE、ホテルの従業員の服 [道具]:支給品一式 [思考・状況] 基本:劉鳳に会うまで死にたくない 1:繁華街に行って服の着替えを探す。 2:独歩とともに劉鳳を探す 3:劉鳳に会うまで、他の参加者(今は独歩)に匿ってもらう 4:思考2で匿ってもらった参加者が自分に害意を持っていると判断した場合は、殺される前に隙を突いて殺す 5:平次、タバサ(両方とも名前は知らない)は殺人鬼という情報を流す。 [参戦時期] 劉鳳と同時期 [備考] ※タバサのマント@ゼロの使い魔 はホテルの脱衣所に放置、内側は血だらけです。 ※アプライド=サック=アップについて 触れた相手のアルターを吸収する能力。シェリス単独で使用可能とします。 アルター以外の特殊能力(スタンド、魔法など)にも吸収の効果は及びますが、能力などの制限は不明とします。 【D-8 北部 一日目 朝】 【平賀才人@ゼロの使い魔】 {状態}中程度の疲労 胸部に痣 散に対する強い怒り 強い信念 {装備}バヨネット×2@HELLSING  ハイエロファントグリーン(法皇の緑)のDISC@ジョジョの奇妙な冒険 {道具}紫外線照射装置@ジョジョの奇妙な冒険(残り使用回数一回) {思考・状況} 基本:悪を倒す、弱者の保護 1:繁華街を目指し歩く。 2:ルイズを探し出して守る。 3:竜の羽衣、デルフリンガーを始めとする身を守る武器が欲しい。 4:武器を手に入れて、シェスタの仇(光成、他)を討つ。 5:キュルケ、タバサ、葉陰覚悟との合流、武器の捜索。 桐山に謝りたい。 6:デルフを手に入れ次第、散と再戦しリベンジを果たし必ず処断する。 【C-8 西部 一日目 朝】 【葉隠散@覚悟のススメ】 [状態]:右腕負傷 全身に中程度の負傷 中程度の疲労 右肩と右太ももに浅い裂傷 右腕に軽度の麻痺(一時間弱で回復)       才人に対する若干の執着 [装備]:強化外骨格「霞」 (右腕部分に亀裂、右手掌部を破損) [道具]:なし [思考] 基本:人類抹殺。 1:西に向かい汚水処理場と変電所の様子を見る。 2:人間を殺す。しかし、村雨のように気に入った相手は部下にする。 3:デルフを手に入れた平賀才人と再戦し勝利、自分の部下にする(その為に可能であればデルフを奪取) 4:村雨の記憶を必ず取り戻してみせる。 5:才人のマスターのルイズに興味有り 6:マリアを殺すのは最後。 【村雨良@仮面ライダーSPIRITS】 [状態]:全身に中程度の負傷(ほぼ完治) [装備]:クルーザー [道具]:支給品一式(散&村雨。デイバック一つにまとめてある)、不明支給品1~3品(本人&散。確認済み) [思考] 基本:殺し合いに乗る。 1:散と共に汚水処理場と変電所に向かう 2:散と才人と再戦の際は邪魔をする気は一切無い。 [備考] 参戦時期は原作4巻からです。 村雨静(幽体)はいません。 連続でシンクロができない状態です。 再生能力はいつも(原作4巻)の倍程度時間がかかります。 バイクに乗っている為に、徒歩よりも移動速度は速いです。 |074:[[第一回放送]]|[[投下順>第051話~第100話]]|076:[[美徳の不幸]]| |074:[[第一回放送]]|[[時系列順>第2回放送までの本編SS]]|076:[[美徳の不幸]]| |054:[[貴重な貴重なサービスシーン]]|愚地独歩|115:[[LOVEサバイバー]]| |054:[[貴重な貴重なサービスシーン]]|シェリス・アジャーニ|115:[[LOVEサバイバー]]| |044:[[去るものは追わず]]|平賀才人|091:[[Justice to Believe]]| |066:[[葉隠散には夢がある]]|葉隠散|091:[[Justice to Believe]]| |066:[[葉隠散には夢がある]]|村雨良|091:[[Justice to Believe]]| ----

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