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心に愛を」(2008/08/10 (日) 21:54:34) の最新版変更点

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心に愛を  ◆DO.TxVZRzg 「まったく。カズキよ、お前は何をやっておるのだ」  ナギは130cmにも満たない小さな体で大きく手を振り上げつつ、怒りをあらわにした。  同行する男が突然光の槍を天高く掲げ、とてつもなく目立つ行為をとったのだから、当然のことだ。 「もしも危ない奴…… 「いや、ゴメン」 ……が来たらって、いきなり謝るな!」 「まったく……とにかくだ、我々は今お前のせいで危険な状況に立たされている。 早急に安全のための策を考えねばならん」  ナギとカズキは、地下鉄の駅舎に戻る。  ここは地下鉄とは言っても、ホームが地上にある一風変わった駅だ。  横浜市などの地下鉄にこのような駅があるのだが、 つい最近まで地下鉄は●武を運ぶものと思い込んでいたナギには知る由もない。  そんな特殊な駅の構内で、ナギが選んだ場所は駅員の入る事務室であった。 「しばらく、ここで隠れているぞ。ハヤテたちが戻ってきたら、すぐにでも離れるがな」 「いや、でもここじゃ狭くて戦えないし、逃げ場だって……」 「心配するな、逃げ場ならある」 「え、どこに……」  事務室はほぼ完全な密室である。入り口は一つで窓はない。  だからこそ、ここには優れた逃げ場があるのだが、カズキはそれに気付いてないようだ。 「よいか、この部屋は窓を含めて入り口が一つしかないのが特徴だ。 従って、危険人物は入り口からしか入れん」 「で、でもナギちゃんだって入り口からしか出られないよ。俺なら壁を壊して逃げられるけど……」 「心配するなカズキ、私には力がある。JOJOとパピヨンの戦闘後、使い方に気付いた支給品がな。 これを使えば……」  そういってナギはデイパックから支給品を取り出そうとする。しかし。 「って、おいJOJOとパピヨンが闘ったって? どういうことだよ」 「あれ、言ってなかったか。一度パピヨンとJOJOが闘ってな。だが心配無用だ、もう戦闘を続ける雰囲気ではなかったぞ」 「そっか、まぁパピヨンは気まぐれなやつだし……」  カズキは、JOJOとパピヨンが再び戦闘をしないかと心配しているのだろう。  しかし、心配しているとはいえナギの身を守る必要がある以上、何も出来ないのも事実だ。  なので、このことは無視して話を進めていくことにする。 「でだ、話を元に戻すぞ。私の支給品は一見するとただのCDだが…… 「いや、それCDにしちゃでかすぎない?」 「どこまで人の話を折れば気がすむのだお前は!」  拳骨を一撃カズキにお見舞いする。そして、続きの話をするためにCDを頭に入れた。 「すっげーー、CDなのに頭に入ったよ」 「驚いたかカズキ。これは精神の力をそのまま戦闘力に反映させるという代物でな。 私のような全宇宙が期待する新人漫画家にとって、まさにうってつけの支給品なのだよ」 「使ってみてくれよ」  必要以上に驚くカズキに、ナギは気をよくしてCDの力を見せようとした。 「よく見ておけよ、これが私のス……って、この駅に近づいてくる者がおるぞ!」  またも話の腰を折られた。こいつはJOJOの持っているものとは一味違うというのに…… ■  フェイスレスはジャギの首輪を得るためS5駅まで戻ってきていた。  S5駅での戦闘で、彼はジャギをS6駅行きの電車に轢かせて殺した。  とすれば、首輪は若干S6駅よりの所にあるのか。いや、ジャギの死体の位置、電車の速度から考えて、 S5駅プラットフォームにあるのだろうか。 「もっとよく見ておくべきだったよね」  あの時は、盗聴や監視を警戒して首輪をとらなかった。それどころか、首輪に関することは一切口にしなかった。  しかし、あれから放送を経て、考えも変わった。  当時とは逆の結論だが、ジャギの首輪を手に入れようと思ったのだ。  そして、原点に帰り首輪を『分解』するのである。  ここで言う『分解』とは、もちろん単なる分解を意味するのではない。  この『分解』はフェイスレスの得意技だ。人形や機械など彼の知識が及ぶもの全てを、一瞬で解体する技である。  もちろん、知ってさえいればできるのだから、医学知識を持つ彼にとって人間も例外ではない。  また、この技には知られざるバトルロワイアルの盲点まである。  バトルロワイアルという演目が想像もしていなかった事柄が隠れているのだ。  だが、その事は後で述べるとして、ここで重要な事は『知ってさえいれば』、『何にでも』適用できるという事実だろう。  そのため、彼は首輪を知ろうと思っているのだ。 「どこだったかな……」  プラットフォームから線路を見下ろせば、あたり一面にどす黒い液体が散布されている。 「不純物が多いとこうなるんだよね」  化学合成、錬金生成の際にできる不純物だらけの溶媒は、様々な物体が交じり合い、 結果として幅広い周波数帯の光を吸収する。  そのため、溶媒は真黒い液体になるのだ。今、枕木の上にある液体は正にそれと同じ色をしている。  もちろん、静脈血の黒と溶媒の黒は原理が異なっている。  しかし、この黒さはジャギという人間の腹黒さを物語っているようだった。 「それにしても、どこを探してもないじゃないか……」  全身が散らばっているので、単に見つかりにくいだけかとも思ったが、数分ほど探しても見つかる気配がない。  誰かが持っていったのだろうな。そんな事を感じ始め、フェイスレスはその場を去ろうとした。 ■ 「アンタだったのか……」  カズキはナギと2人でプラットフォームに出ていた。  首輪探知機で、何者かの接近に気付いてはいたが、それがまさかフェイスレスだとは思わなかった。  フェイスレスはちょうど、プラットフォームの階段を降りているところだった。  軽い気持ちで、会ってみたいと言ったのはカズキ。  慎重な考えで、隠れていようといったのはナギ。  2人で議論した結果、カズキの考えが通り、接近者との邂逅となったのだ。  けれど、ふたを開ければ接近者はカズキの知りうる限り最悪の人物。  パピヨンならいい、強いし怪しい雰囲気もあるが危険ではない。  女道化師は危険だが、フェイスレス程の奥深さを感じなかった。  だが、こいつは、この男だけは…… 「最悪だ、ナギちゃん。俺の後ろへ」 「なぁんだ、ちょっと見ないうちに随分かわいい彼女を作ったじゃないか」 「わ、私はカズキの彼女ではない!」  激昂したナギが、カズキの前へと出ようとする。  ハヤテという存在がある以上、彼女の気持ちも理解できるが、この場では控えるべきだ。 「抑えてくれ、ナギちゃん。あいつはただの老人じゃない」  フェイスレスは、顔を縦横斜めに引っ張りながら、器用に変形させている。  時折、カズキの顔になったりするあたり、この老人の遊び心が伺える。  顔を変形させるという珍妙な特技を無視すれば、目の前にいる遊び心豊かな老人は単なるボケ老人と見ることさえ出来なくもない。  けれど違う。ここにいる男は最上級の危険人物だ。 「武装錬金」  心臓から、闘うための槍を取り出す。  その異常な行為を目の当たりにしても、「やっぱスゲーー!」と手を叩いて驚くだけ。  余裕から来る発言であろう。なにせ、彼はカズキの本質を瞬時に見抜き戦闘中に背を向けるという荒業をやってのけた玄人だ。  さらに言えば、老人離れした身体技能でサンライトハートを分解しようとした実績も持つ。  カズキの額に汗が滲む。もし戦闘になったら、自分はこの男に勝てるのだろうか…… 「おい、お前。こんな所に来て一人で何をしておる」  いや、抑えてって言ったじゃないか。  ナギはカズキが静止するのも聞かず、フェイスレスを刺激する発言をする……いや、違うか?  よく考えてみれば、確かにフェイスレスが駅に来た理由は重要だ。  探知機によれば、彼は別の駅からではなく、北側からやってきた。  ここから別の駅に行くのか。いや、それにしてはプラットフォームから出ようとしているのは不自然だ。 「あぁ、ちょっと首輪を取りに来たんだよ。でも、もうなかったなぁ」 「なんで、ここに首輪があるって思ったんだ?」 「だってぇ、僕が殺したんだもん。ジャギ君をさ」  瞬間、フェイスレスのいた場所に一筋の光が走る。 「おぉ、怖い怖い」  カズキの攻撃をフェイスレスがかわす。突然の事態に焦ることなく対処した。  この男はやはり危ない。 「ナギちゃん、隠れてて。これ以上のものは、君に見せたくない」  戦闘する、倒すという行為は、敵を殺す事も有り得るという事だ。  もちろん、殺さずに無力化するだけで済めば、それに越した事はない。  だが、相手の実力から考えて、それは不可能に近い。恐らく、殺す覚悟で行かなければ倒せない。 「お、おいカズキ。この私には闘う力があると見せたばかりだろう」  確かに、ナギのCDは見せてもらった。けれど、戦闘とは単に力だけでやるものではない。  相手が傷つき血を流す姿を見ても行為を止めない覚悟と、自分が死ぬかもしれない覚悟の二つが必要になる。  だから、CDの力を得たばかりのナギに戦闘行為は不可能だ。  それ以前に、カズキはハヤテに約束した。ナギを守ると。だから彼女を闘わせるわけには行かないのだ。 「殊勝な心がけだねぇ。でも、本当に彼女の助けは要らないのかな? カズキ君一人で僕に勝てるって思ってるのかい」 「勝てるさ!」  ナギに「逃げろ」とつぶやき、カズキはフェイスレスに向けて突撃する。  フェイスレスは、カズキに向かい銃口を向ける。  引き金を引く寸前、カズキはそれを切っ先で弾き飛ばした。 「ヒュゥ、やるぅ!」  フェイスレスはあくまで余裕を見せている。その油断が命取りだ。  カズキはサンライトハートを両手に持ち、突き、袈裟切り、胴切り。  あらゆる攻撃を16歳の身体能力を全開にして、肉体年齢的には60を超えているであろう老人に繰り出していく。  けれど、その攻撃はことごとく当たらない。あるときはかわされ、あるときは防がれる。 「言い忘れたけど、カズキ君。僕は素手でも強いよ。手加減したままだと勝てないんじゃないかなぁ」  そんなことは既に分かっている。だが、カズキには全力を出せない理由があった。  背後でナギが見ているのだ。  どれ程、決意を固めたとしても、穢れを知らぬ少女の前で老人を叩きのめすわけには行かない。  早く逃げろと思っているのだが、ナギはその場から動こうとしない。  恐らく、自分の力でカズキを支援するつもりだろう。 「はぁっ!!」  掛け声で誤魔化しつつ、フェイスレスを威嚇する。  だが、そのような手段が通用する相手ではない。全てが見透かされている。 「こっちはそろそろ、本気を出すよ」  フェイスレスのスピードが一段アップする。同時に、カズキはその拳を数発浴びる。  重い、そして、硬い。やはり、フェイスレスは一味違う。 「効くだろ、僕の拳は。僕の体は大半が安っぽい機械で出来てるのさ。だから、強いぜぇ」  そうか、それが分かれば……  西遊記の孫悟空よろしく、サンライトハートを回転させ、その遠心力でもって斬りつける。  スピード、パワー共に先ほどの比ではない。けれど、フェイスレスはどこか詰まらなさそうだ。 「なぁんだ。やっぱり、実力を隠してたんじゃないか…… 大方、僕の強さがわかって、これぐらいの力なら殺さなくても済むって思ったんだろ? だから、そんだけ力を出したのさ。 でもね、君の顔に書いてるよ。『俺の実力はもっと上だ』ってね」  確かにカズキは、フェイスレスを殺さない、大怪我をさせない範囲でしか力を出していない。  けれど、それを見抜く態度は癇に障る。 「今から本気を見せる!」  再度、掛け声と共に突撃する。せめてナギに見えないように、ホームの端でこの男を倒す。 「もう、飽きたよ」  フェイスレスは、落ちた銃を拾い上げ、再びカズキへとその口を向ける。  横一線、サンライトハートの一撃が、またも銃を叩き落とす。 「こんなときだけ速いんだから……で・も・ね」 「カズキ、後ろだ!」  ナギの甲高い声が突然響き渡る。後ろ? 後ろに何がいるって言うんだ。  首輪探知機では一人しかいなかっただろ。疑問に思うカズキが振り返るとそこには、死神の鎌を携えたかぼちゃが一匹。 「な、いつの間に……」 ■  三千院ナギは見ていた。見ているだけで、何も出来なかった。  2人の戦いには入り込む隙がほとんどなかったのだ。  老人が銃口をカズキに向ける。  猛スピードでカズキがそれを切り払う。  そして、そのまま老人を蹴り飛ばそうとした瞬間。  線路下に隠れていた、かぼちゃの化け物が、突然現れてカズキに切りかかってきたのだ。 「ば、馬鹿な……っく」  かぼちゃの攻撃を、カズキはかわす。そして、距離をとろうとした瞬間…… 「バブル・ザ・スカーレット」  かぼちゃから吐き出された粘着液により、カズキの動きが止まる。  そして再び、そこに鎌が振り下ろされた。 「まずい、武装か……」  カズキは何かをしようとしたが、時既に遅し、死神の鎌はそのまま彼の胸元を切り裂き……そして。 「肉も断った、骨も断った。もう、終わりだよカズキ君」 「か、カズキ……」  人体の急所、胸を引き裂かれたカズキの体はそのまま横たわり、起き上がることはない。 「詰まらない戦いになっちゃったねぇ……本気を隠すから、こういう目にあうんだよ」 「もしかして、私のせいなのか。私のせいで、カズキは力を出し切れなかったのか……」  カズキの死体に駆け寄り、ナギはその体を抱き寄せる。 「どうして、全力を出さなかったんだ。私は別に、あんな奴が死んでも何とも思わんぞ」 「君に、そんな風な考え方を持たせたくなかったんだろう。優しかったんだよ。そして、弱かった」 「カズキは弱くない。本気さえ出せたら、お前に負けたりしなかった」  フェイスレスが、カズキに近づいてくる。 「近寄るな、この馬鹿者が……お前のせいで、このカズキは死んだんだぞ」 「ナギちゃん、だっけな。お嬢ちゃんにも死んでもらおうと思ってね」  かぼちゃの化け物を傍らに、老人はゆっくりと歩いてくる。  鎌を携えたその姿は、古来より言い伝えられている死神の姿そのものだ。  怖い。  普段のナギなら、そう思ったであろう。人殺しの瞬間を目撃し、死神が目の前にやってきて。  怖くないはずがない。けれど…… 「この私は死なんぞ、私と闘え、このボケ老人が!」  今のナギは怖がらない。 「強がっても、体が震えてるよ。僕の夢のために死んでくれよ」 「貴様の夢の事など知らんわ。この三千院ナギにも夢があるのだ、ハヤテと結ばれる夢。漫画を一兆部売る夢がな!」  死神老人の歩みは止まらない。 「貴様がどうしても私を殺すというのなら、私は貴様を倒さなければならん」  ナギが死神を怖がらない理由。それは…… 「スパイスガール!」  スタンド能力を身に着けたからだ。  突然、顕在したスパイスガールに死神老人は歩みを止めた。 「凄いじゃないか!」  そして惜しみない拍手を送る。この行動だけをとってみれば、やはりどこかずれたボケ老人だ。 「その余裕が命取りだ!」  スパイスガールを使い、ナギから攻撃を仕掛ける。  この破壊力とスピードはスタンドの中でも最上級。  ナギという操演者のせいで多少乱雑ではあるが、一撃でも喰らえば、ジャック・オー・ランターン(ジャコ)は致命傷を受ける。 「バブル・ザ・スカーレット」 「その技はもう見た!」  スパイスガールの身体能力を使い、すばやくガムをかわす。  そして、距離をため再び、老人に突撃する。  スパイスガールによる連続攻撃。単純な拳の連打だが、その一撃一撃は強烈。  ジャコを使いよけつつも、僅かながら攻撃を受けてしまうフェイスレス。  一旦、彼はナギとの距離を開けた。 「なるほど、自動人形と繰り人形の中間といったところか。自分の思い通りに動かせる人形。 けれど、操演者の思いがなければ動かない? 違うかなナギちゃん」 「そうだと言ったら?」 「だとしたら、僕はもうそれの弱点を見つけちゃったなぁ」  2人の距離は10mほど。ここからだとスパイスガールは届かない。  弱点とは、その事を言っているのだろうか。いや、文脈から見てそれはない。  だとしたら一体……ナギは頭の中でフェイスレスの言っている事を考えている。  もしかしたら……  対峙する2人の頭上から、スピーカーの音が聞こえる。 『まもなく、1番線に電車が参ります。白線の内側にお下がりください』  放送終了後に、またもナギが動く。 「行くぞ!!」  フェイスレスはジャコを高く上げ、自身の上でホバリングさせる。  そして、あろうことか、迫り来るスタンド相手に己が肉体をもって格闘戦を仕掛けてきた。 「な、なんだと!」 ■  フェイスレスはスパイスガール、否スタンドの弱点に気付いていた。  スタンド(彼は名前を知らない)は、操演者の思念によって動くものである。  しかし、忘れてはならないことが一つ。  操演者はあくまで人間だという事だ。  元々、人間は同時に複数の事を考えられるようには出来ていない。  そして、当たり前だが同時に四本の腕を操られるようにも出来ていない。  人形繰りを200年以上続けたフェイスレスには経験がある。  つたない人形師が人形を操ると、自分も人形に釣られて動いてしまうという経験だ。  彼自身、幼い頃には何度かそんな事をやってしまった。  現代の子供たちが興じるテレビゲームに喩えて言えば、レーシングゲームをやっている子供が、 レースカーと一緒に左右に揺れ動く現象がそれにあたる。  これは、人間という生き物の本質に他ならない。  どの人間も、生まれたときから、一つの脳と二本の腕、二本の足を持って暮らしてきているのだ。  従って、それ以上のものを操ろうと思った場合には、それなりの訓練が必要である。  だからこそ、自動人形破壊者(しろがね)たちはフランスのキュベロンで人形繰りの練習をやっているし、 フェイスレスだって、幼い頃白家で人形繰りの基礎を学んできたのである。  そう、目の前の少女が持っている弱点とは、自分とスパイスガールを別の生き物のように操れないという事。  そして、自分はその弱点を既に克服している。これは大きなアドバンテージだ。  目の前の似非自動人形と格闘戦を繰り広げるフェイスレス。  同時に、ジャコを彼女の後ろに移動させていく。気付かれないようにひっそりと。  少女は、フェイスレスに集中していて背後の事には気付かない。  そりゃそうだ。彼女の頭は目の前にいる対戦相手で一杯になっているのだから、他の事は処理能力を超えて溢れてしまう。 「終わりだよぉん」  ジャコの糸にほんの少し力を入れればそれで終わる。その瞬間であった…… 「終わるのはお前だ」  少女がいきなり、前に走り出したのである。  決して速くない。だが、スタンドとは連動しない形で走り出した。 (馬鹿な、読み違えたか……)  己の予想を超える出来事に、フェイスレスの動きが一瞬止まった。 「コノ腐レジジイハ ブッ壊ス!」  一撃、二撃と、スパイスガールの攻撃がヒットする。 「WAAAAAAAAAAAAAAABEEEEEEEEEEEEEEEEE!!!」  容赦ないスタンドの攻撃が、流れるように全弾あたった。 「さ、最初からオートマトンだったというわけか……」 「スタンドだ、間違えるな。そして、こいつは自我を持って動いておる。そうだろ、スパイスガール?」 「ソノトオリデス」  してやられた。  まさか、自動人形を繰り人形に見せかけて攻撃していたとは思いもよらなかった。 「やるねぇ……」  フェイスレスの顔から、戦闘中始めて余裕がなくなる。  そして、そのまま、これまでとは逆に自分から相手に突撃する。ジャコを引き連れて。  少々驚かされたが、要は、運動神経の鈍い女の子と、自動人形が一体いるだけの事。倒し方はいくらでもある。  女の子は、自分が近づくと後ろに向かって走る。それにあわせて、自動人形はバク転で付いて行く。  まずは、自動人形から倒す。そして、自分を甞めた女は、後でいたぶって殺す。 「いくよ、ジャック・オー・ランターン!!」  フェイスレスが少女まで、あと5Mと迫ったとき、突然、床が変形し始める。 「言い忘れたが、その床は柔らかくなっておる」  そこは、カズキ戦の時フェイスレス自身がジャコを隠していた場所。  線路下にある緊急退避場所の天井が、なぜか一枚のゴム板のように柔らかくなっている。  その床は、フェイスレスの体重を支えきれず、くにゃりと曲がる。  足場を失った彼は線路に転落し、その目の前からは列車が迫ってきた。 「ま、まさか……うぉあああ!」 ■ 「やった……勝った、勝ったぞ!!」  身体能力で明らかに上回る相手を倒してのけた。  スタンド能力、スパイスガールの力は本物だ。  もちろん、少々不意打ちに近い事を二度もやったことが勝因なのだろうが、 何にせよ、最終的に勝ったのは自分だ。  ナギは1番線に停車した電車を見つめる。  恐らく、あの電車の下には粉々になったフェイスレスとかぼちゃの化け物がいるのだろう。  ナギは勝利の興奮と、戦闘の余韻に浸り気付いていないが、粉々になったという事は 死んだということであり、彼女が人殺しをしたという事だ。  8年前、彼女の両親が死んでしまったときと同じように、その死を悲しむ者がいるかもしれないのだ。 「ま、まぁ私は悪くないからな。だって、アイツ……」  少しずつ、罪悪感が沸いてくる。  本当に殺さなければいけなかったのか。それ以外に手段はなかったのか。 『1番線から、普通S6行きが発車致します』  駅から、電車が離れていく。  ナギは疲れた体を押して、最後の確認をしなければならない。  本当にフェイスレスは死んだのかという確認をだ。  走り去った電車のした、二本のレールの間には、かぼちゃの化け物が原型をとどめない姿で転がっていた。 「う、うむ……これでよかったのだな……」  しかし、よくないことが一つ。フェイスレスの死体がないということ。  死体はかぼちゃの化け物(スタンドかな?)だけで、本体のものがない。  どこにいるのかと、ナギが探し始めたとき…… 「いやぁ、よくよく考えたものだったと思うよ」  ナギの背後から老人の声。 「……生きていたのか……」  不思議な気分だ。  人殺しをしなくて済んだという気持ちと、老人を殺せなかったという気持ちが半分半分で ごちゃ混ぜに入り混じっている。  振り返ると、老人は左腕をなくしているものの出血はなく、 痛みすらないといった表情で立っていた。 「生きていたのなら、今すぐこの場を立ち去る事だな。もう分かっただろ、お前では私に勝てない」 「何か勘違いしているんじゃないかな?」  刹那、フェイスレスの体が消える。  そして、次の瞬間、ナギは腹部に激痛を感じた。 「僕が本気を出していたとでも思っていたのかい」  見えなかった。スタンドの発現すらままならないスピードでフェイスレスは攻撃してきたのだ。  その攻撃が右手によるものか、足によるものかすら、ナギには分からなかった。 「この僕が、カズキ君ならともかく、君みたいなお嬢ちゃんに本気を出すわけないだろ」  また攻撃。  今度は見えた、右拳が顔面にぶつかった。 「っく、スパイスガール」  「遅い」  発現させたスパイスガールもろとも、フェイスレスは前蹴りでナギを弾き飛ばす。 「柔らかくする能力は厄介だからねぇ、今すぐ分解させてもらうよ」  片腕を失ったというのに、フェイスレスのスピードは遅くなるどころか速くなっている。  そういえば、体が機械化されているといっていた。  そんな体だから、左腕を失っても、痛みによる動きの低下が見られないのだろうか。 「スパイスガールよ、防いでくれ」  自身のスタンドに最後の望みを託す。スパイスガールが攻撃を防げなければ、自分は殺される。  けれど、フェイスレスの動きは止まらない。 「分解」  右手一本で、スタンドの右腕を解体し始める。  はじめは指から、手首、肘、肩。そこまで分解したところで、再び蹴り飛ばす。 「…………がぅ」  声にすらならない痛みが、右腕に走る。  スタンドが傷ついたせいで本体にまで、同じダメージが来る。  まずい、まずい、どうしたらいい。  自分はここで死ぬのか……そんな思いが頭の中をよぎる。 「私はまだ、死にたくない。ハヤテに再会していない。ハヤテと結ばれていない。死にたくないぞ」  夢はかなわぬまま終わるというのか。  漫画すら賞をとれず、ハヤテとは再会できた後に別れたまま。  けれど、そんなナギの考えをよそに無常にも死神フェイスレスは迫り来る。  ナギは諦め、そのまま目を瞑った。その時だった…… 「ナギちゃんから離れろ!!」  聞きなれた少年の声がする。  死んだはずの少年の声がする。  ナギが目を開けるとそこには…… 「カズキ!!」  武藤カズキがいた。 「フェイスレス、ナギちゃんに手を出すな!」  カズキの胸からは血が流れている。けれど、その量は少ない。  致命傷ではなかったという事か。しかし、どうして、胸に一撃を喰らっても生きていられたのか。  疑問に思うナギをよそに、カズキはフェイスレスを投げ飛ばす。  そして、ナギに駆け寄ってくる。 「ゴメン、ナギちゃん。俺が遅かったせいで、怪我をさせちゃったみたいだ」 ■  かつて早坂秋水と戦ったときと同じように、武藤カズキは武装解除で敵の攻撃を防いだ。  左脇から、胸元にかけての攻撃は、核鉄が防いでくれる事をカズキは経験上知っていたのである。  あの時、ジャック・オー・ランターンがカズキに鎌を振り下ろしたとき、とっさのことで防ぐ事がままならなかった。  けれど、核鉄はそんなカズキに最後の防衛手段を用意していたのである。  誤算があったとしたら、数分間気絶していたという事か。けれど、もう気絶しない。  これからは本気を出して、フェイスレスを倒す。  ナギを怪我させた以上、アイツを許しておく理由はどこにもない。 「行くぞフェイスレス。今度は俺が相手だ」 「また、本気を出せないなんて言うつもりはないよね?」 「ない!!」  強く断言し、突撃する。  サンライトハートによる突き。日本刀による切り払いと異なり、この突きは点の動き。  フェイスレスへと向けて、一本の光柱が伸びる。  見慣れない動きに、動揺したのか、フェイスレスはそれをよけるだけで、何もしないまま距離をとる。 「その光の柱が君の力かい? こりゃ『分解』出来そうもない」  カズキは何も応えないまま、エネルギーを全開にしサンライトハートで攻め立てる。  伸縮自在の槍は、フェイスレスによける場所をほとんど与えない。  後方によけても、確実にぶつかるため、彼はしゃがむか、飛ぶかしかよける手段がないのだ。  そのため、攻撃のいくつかは確かな手ごたえをカズキに残していく。  だが、フェイスレスは体を何度切り刻まれても、そのスピードを落とさない。 「言ったろ、僕の体は機械製だって」  機械化されているため、体のどこを切り落とされても痛みを感じない。  そのため、切り落とされたり、怪我をしたりしても、身体の機能低下はほとんど起こらないのだ。  左腕をなくしているため、左腕分の機能は低下しているが、それ以外フェイスレスの体は全く無事といっていい。 「ならば、足を切るまで」  地面すれすれの所をサンライトハートが切りかかる。  飛び上がって、よけるフェイスレス。高い空中、よける場所はない。  今度こそ、とカズキはフェイスレスの足元めがけ、光の柱を叩きつける。  だが…… 「バブル・ザ・スカーレット。これで三度目だよ」  粉々になった人形から、粘着液が発射される。  もう動かなくなったと思っていた、その人形の動作にカズキは驚かされたが、それ以上に驚いたのは粘着液の発射先。  粘着液は、プラットフォームの天井めがけて発射されたのだ。  そして、フェイスレスは、手袋を填めたその手を粘着液につけ、体を固定し、光を避ける。  さらに、手袋を外し、そのまま着地。カズキとの距離を縮める。 「っく」  後ろに下がるカズキ。追いかけるフェイスレス。  だが、後ろ走りのカズキより、追いかけるフェイスレスのほうが速い。 「分解」  フェイスレスの左腕が、カズキの右腕を分解せんと動く。  カズキの右腕は、それを避けるように動く。  けれど、間に合わない。スピードではカズキが上回るはず、力でも上回るはず、なのにフェイスレスの分解は止まらない。  実はここにバトルロワイアルという演目の盲点がある。  フェイスレスと武藤カズキ、身体能力で言えばカズキが上だ。  けれど、総合的な戦闘能力で言えばフェイスレスはカズキと互角である。  そこに盲点がある。  バトルロワイアルでは、参加者全員に首輪が填められ、その首輪により全員の能力が制限されている。  この制限の目的は、強い参加者と弱い参加者の格差をなくす事。  決して、強い参加者を弱い参加者の下に置くことが目的ではない。  従って、制限下においても戦闘力の序列は変わらず、強い者は強いままということになるはずであり、 互角の2人は互角のままであるはずなのだ。  けれど、それは主催者の狙いであって現実ではない。  制限というのは、全ての力に均等にかかるものではないのだ。  スタンドやアルターといった特殊能力には強く。強大な身体能力にも強く働く。  だが、一つだけ、全く制限のかからない能力がある。それは知力だ。  東西の高校生探偵も、人の心を妖怪のように見抜く雀士も、その知力は制限されていない。  当然フェイスレスの『分解』のように、知識ベースの技は制限がかけにくくなるのである。  フェイスレスは知識として、人間のどこをどうすれば、分解できるかを知っている。  この知識がある限り、どれ程身体能力を制限されたとしても、それこそ、小学校高学年の児童並みに制限されたとしても、 彼の分解は機能する。そのことは、才賀勝が示したとおりである。  逃げ惑うカズキの右腕を、フェイスレスの左手は追い詰め、分解していく。  指、手首、肘……と確実に分解を進めていく。だが…… 「スパイスガール!」  突如現れたスタンドにより、それは叶わないものとなった。  最後の力を振り絞ったスタンドにより、フェイスレスは弾き飛ばされた。 「カズキよ、確かに敵は強い。だが、負けるな。お前には負けてはならない理由があるはずだ。斗貴子の顔を思い出し必ず勝て」  力弱い少女からの、何より力強い励ましをもらう。  カズキの右腕は肘から先が機能していないが、それでも負けない。  この日何度目か分からない覚悟を決め、カズキはフェイスレスに突撃する。  左手にランスを、心に決意を持ち、相手を倒す。確実に。  利き腕でないカズキの攻撃。だが、それは先ほどと微塵も見劣りしない。  むしろ、強くなったぐらいだ。  カズキは以前、秋水と共に剣道の稽古をした。  剣道では、左手がきわめて重要であると教わる。ある道場では、左手一本で素振りをさせるほどに、左手の動きを重視する。  左手の小指と薬指の引き付けにより、剣を振るのが剣道というものだ。  そして、右手は軽く添えて、左手が振る剣を操作するのである。  カズキは足りない右手の分を体の捻りによって補い、剣道の基本切り替えし左右面でフェイスレスを攻め立てる。  サンライトハートの諸刃は、日本刀と異なり、振り上げるときにもダメージを残していく。 ■  フェイスレスの眼前に文字通りの剣林が迫り来る。  単純な振り上げ運動は、カズキのスピードを最大限に高め、フェイスレスに反撃の隙を与えない。  左右斜めの袈裟切りを、器用に避けるフェイスレスではあるが、分解する時間はない。  だが、分解する時間がないからと言って何も出来ないわけではない。  カズキが槍を振り上げたその瞬間、フェイスレスは右正拳をカズキの横隔膜めがけて打つ。  分解に比べて単純なその動きは、カズキを止めるのに役に立つ。  カズキは一瞬止まった後に、同じ動きを繰り返す。  フェイスレスはそれにあわせて、胸と腹部の間を打っていく。  単純な動き、2人とも同じように動きつつ、ダメージだけが蓄積されていく。  フェイスレスに注がれる斬撃は、その肩と上腕に切り傷を与えていく。  けれど、フェイスレスの動きを止めるには至らない。  一方、横隔膜を殴打されているカズキは違う。少しずつ、動きを弱めていく。  機械人間フェイスレスと、生身の人間カズキとの違いである。  フェイスレスは徐々にカズキに与える正拳の数を増やしていく。  医学知識のあるフェイスレスには、分かっているのだ。この動作を繰り返していけば、いつか人間は止まると。  かつて、ディーン・メーストル(外科医)の偽名を名乗った彼は、錬金の知識だけでなく医学の知識にも長けている。  ここで誤解を恐れずに言おう、フェイスレスつまり白金(バイジン)は天才であると。  甲子園に行けば毎年いるという名前だけの、『10年に一人の逸材』とはレベルが違う。  1750年ごろ、中国の田舎に生まれたこの男は、掛け値なしの才能を持っていた。  兄、白銀(バイイン)と共に煉丹術・錬金術の道を目指し、プラハに到着。  プラハはかつて神聖ローマ帝国の首都であり、白金が生きた頃も、黄金のプラハと形容されるほど繁栄を誇っていた町である。  そんな大都会に、名も知らぬアジアの村から2人の兄弟がやってきて、そして、錬金術を身に着けていった。  このこと一つとっても、並々ならぬ才能が伺えるというものだ。  無論、それだけではない。  彼は、プラハを出た後フランスのキュベロンで、自動人形の作成に成功している。  自動人形、現代風に言い換えればロボットの存在は我々にとってもまだ身近な存在とは言いがたい。  その存在を、白金は今から200年以上前に出現させていたのである。  ゆえに、彼は紛れもない天才なのだ。それも、他の参加者を圧倒するほどに。  その天才が取った行動は、何よりシンプルなもの。単なる横隔膜へのボディーブロー。  だが、この効果は絶大だった。 ■  攻撃を喰らいつつ、武藤カズキは考えていた。  自分はどうして、老人に攻撃しているのだろうと。ほんの少しボケた事を考えていた。  ブラボーの声が聞こえる。 『善でも悪でも、最後まで貫き通せた信念に偽りなど一つもない』 (俺が最後まで貫き通したい信念ってなんだっけ?)  戦士として、ブラボーや斗貴子と共にすごした日々を思い出す。  あの頃、自分が学んだものは一体なんだったのか。 (教えてくれ斗貴子さん。俺の信念って一体なんだっけ)  鳩尾を中心に、体中に痛みが走る。  斜めに振るう剣腕は、既に限界に近いほど疲れを感じている。 (どうして、俺こんなになってまで動いてるんだっけ……)  頭によぎる疑念のと共に、次第に遅くなるカズキの動き。  しばらくして、それは完全に止まってしまった。 「動きの止まった君なら、『分解』できる」  フェイスレスの姿がすぐ目の前に迫ってくる。彼はカズキの左手を取り、分解を始める。  不意に、カズキの視界が崩れ始めた。 『命を諦めてくれないか?』  かつて、上司キャプテンブラボーが自分に投げかけた言葉。  あの時、自分が貫いた思いはなんだったか…… 『大事なものを死守せんとする強い決意』  それこそが、カズキの持っていたものではなかったのか。  フェイスレスの手が、カズキの左拳にかかる。そのときだ。 「諦めるなカズキ。斗貴子を守るんだろ、死ぬな!!」  ナギの声が聞こえてきた。そうだ。俺は斗貴子さんに会う。  この思いこそ、俺が今貫くべき信念だ。  動かなくなった右腕を上腕二頭筋だけで、振り回しフェイスレスへとぶつける。  激痛が走るが、そんなもの知らない。それは信念ではない。ここで貫くのは、信念だけだ!  動かないと思っていた右腕の攻撃に、フェイスレスは一瞬とまる。  その一瞬のうちに、カズキはフェイスレスを蹴り飛ばし、サンライトハートにエネルギーをためる。 「俺は再び、斗貴子さんに会う。彼女を傷つける全ての敵から彼女を守り通すために!!」  愛の決意を槍に込め、武藤カズキ最期のチャージ。  フェイスレスにそのまま体当たりをきめ、彼の体を………… ■  三千院ナギが戦いの最後に見たシーン。  それは、サンライトハートが、フェイスレスを貫くシーン。 「やった、カズキが勝った」  戦闘の勝利者に、ナギは駆け寄っていく。  だが…… 「お、おいカズキ、どうした……勝ったのだぞ。返事をしろ」  よく見れば、カズキの足元には夥しいほどの出血がある。  彼は胸元を切り裂かれた状態で、今まで戦闘していたのだ。  さらに言えば、フェイスレスにより、鳩尾に何度も拳を殴打されていた。  呼吸困難と出血多量により、その体は既に限界を超えていたといっていい。  そこへ、エネルギー全開のサンライトハート。 「どうして、どうして……」  どうして、などと言わずとも分かっている。  カズキは自分を、そして斗貴子を守るために闘っていたのだ。 「お前は馬鹿だ」  立ったまま動かない武藤カズキ。  その肉体は、これからも動くことがない。 &color(red){【白金(フェイスレス)@からくりサーカス:死亡確認】} &color(red){【武藤カズキ@武装錬金:死亡確認】} &color(red){【残り41人】} 【B-3 駅プラットフォーム 一日目 昼】 【三千院ナギ@ハヤテのごとく!】 [状態]右腕の骨が完全に分解されている。全身に打撲。 [装備]首輪探知機@BATTLE ROYALE、スパイスガール@ジョジョの奇妙な冒険 [道具]支給品一式、不明支給品0~1(本人は確認済。核鉄の可能性は低い) [思考・状況] 基本:殺し合いはしない 1:ハヤテとジョジョを待つ。 2:ハヤテ、マリア、ヒナギク、ジョセフと合流する。 3:カズキを供養する。 4:カズキの恋人という『斗貴子』とやらに会って、カズキの死を伝える。 参戦時期:原作6巻終了後 ※スパイスガールは疲労のため、しばらく出せません。 |110:[[バトルロワイヤルの火薬庫]]|[[投下順>第101話~第150話]]|112:[[『Freaks』]]| |115:[[LOVEサバイバー]]|[[時系列順>第2回放送までの本編SS]]|112:[[『Freaks』]]| |096:[[真赤な誓い]]|&color(red){武藤カズキ}|&color(red){死亡}| |088:[[徳川光成! きさま! 聞いているなッ!]]|&color(red){白金}|&color(red){死亡}| |096:[[真赤な誓い]]|三千院ナギ|121:[[君には花を、いつも忘れないように]]| ----
**心に愛を  ◆DO.TxVZRzg 「まったく。カズキよ、お前は何をやっておるのだ」  ナギは130cmにも満たない小さな体で大きく手を振り上げつつ、怒りをあらわにした。  同行する男が突然光の槍を天高く掲げ、とてつもなく目立つ行為をとったのだから、当然のことだ。 「もしも危ない奴…… 「いや、ゴメン」 ……が来たらって、いきなり謝るな!」 「まったく……とにかくだ、我々は今お前のせいで危険な状況に立たされている。 早急に安全のための策を考えねばならん」  ナギとカズキは、地下鉄の駅舎に戻る。  ここは地下鉄とは言っても、ホームが地上にある一風変わった駅だ。  横浜市などの地下鉄にこのような駅があるのだが、 つい最近まで地下鉄は●武を運ぶものと思い込んでいたナギには知る由もない。  そんな特殊な駅の構内で、ナギが選んだ場所は駅員の入る事務室であった。 「しばらく、ここで隠れているぞ。ハヤテたちが戻ってきたら、すぐにでも離れるがな」 「いや、でもここじゃ狭くて戦えないし、逃げ場だって……」 「心配するな、逃げ場ならある」 「え、どこに……」  事務室はほぼ完全な密室である。入り口は一つで窓はない。  だからこそ、ここには優れた逃げ場があるのだが、カズキはそれに気付いてないようだ。 「よいか、この部屋は窓を含めて入り口が一つしかないのが特徴だ。 従って、危険人物は入り口からしか入れん」 「で、でもナギちゃんだって入り口からしか出られないよ。俺なら壁を壊して逃げられるけど……」 「心配するなカズキ、私には力がある。JOJOとパピヨンの戦闘後、使い方に気付いた支給品がな。 これを使えば……」  そういってナギはデイパックから支給品を取り出そうとする。しかし。 「って、おいJOJOとパピヨンが闘ったって? どういうことだよ」 「あれ、言ってなかったか。一度パピヨンとJOJOが闘ってな。だが心配無用だ、もう戦闘を続ける雰囲気ではなかったぞ」 「そっか、まぁパピヨンは気まぐれなやつだし……」  カズキは、JOJOとパピヨンが再び戦闘をしないかと心配しているのだろう。  しかし、心配しているとはいえナギの身を守る必要がある以上、何も出来ないのも事実だ。  なので、このことは無視して話を進めていくことにする。 「でだ、話を元に戻すぞ。私の支給品は一見するとただのCDだが…… 「いや、それCDにしちゃでかすぎない?」 「どこまで人の話を折れば気がすむのだお前は!」  拳骨を一撃カズキにお見舞いする。そして、続きの話をするためにCDを頭に入れた。 「すっげーー、CDなのに頭に入ったよ」 「驚いたかカズキ。これは精神の力をそのまま戦闘力に反映させるという代物でな。 私のような全宇宙が期待する新人漫画家にとって、まさにうってつけの支給品なのだよ」 「使ってみてくれよ」  必要以上に驚くカズキに、ナギは気をよくしてCDの力を見せようとした。 「よく見ておけよ、これが私のス……って、この駅に近づいてくる者がおるぞ!」  またも話の腰を折られた。こいつはJOJOの持っているものとは一味違うというのに…… ■  フェイスレスはジャギの首輪を得るためS5駅まで戻ってきていた。  S5駅での戦闘で、彼はジャギをS6駅行きの電車に轢かせて殺した。  とすれば、首輪は若干S6駅よりの所にあるのか。いや、ジャギの死体の位置、電車の速度から考えて、 S5駅プラットフォームにあるのだろうか。 「もっとよく見ておくべきだったよね」  あの時は、盗聴や監視を警戒して首輪をとらなかった。それどころか、首輪に関することは一切口にしなかった。  しかし、あれから放送を経て、考えも変わった。  当時とは逆の結論だが、ジャギの首輪を手に入れようと思ったのだ。  そして、原点に帰り首輪を『分解』するのである。  ここで言う『分解』とは、もちろん単なる分解を意味するのではない。  この『分解』はフェイスレスの得意技だ。人形や機械など彼の知識が及ぶもの全てを、一瞬で解体する技である。  もちろん、知ってさえいればできるのだから、医学知識を持つ彼にとって人間も例外ではない。  また、この技には知られざるバトルロワイアルの盲点まである。  バトルロワイアルという演目が想像もしていなかった事柄が隠れているのだ。  だが、その事は後で述べるとして、ここで重要な事は『知ってさえいれば』、『何にでも』適用できるという事実だろう。  そのため、彼は首輪を知ろうと思っているのだ。 「どこだったかな……」  プラットフォームから線路を見下ろせば、あたり一面にどす黒い液体が散布されている。 「不純物が多いとこうなるんだよね」  化学合成、錬金生成の際にできる不純物だらけの溶媒は、様々な物体が交じり合い、 結果として幅広い周波数帯の光を吸収する。  そのため、溶媒は真黒い液体になるのだ。今、枕木の上にある液体は正にそれと同じ色をしている。  もちろん、静脈血の黒と溶媒の黒は原理が異なっている。  しかし、この黒さはジャギという人間の腹黒さを物語っているようだった。 「それにしても、どこを探してもないじゃないか……」  全身が散らばっているので、単に見つかりにくいだけかとも思ったが、数分ほど探しても見つかる気配がない。  誰かが持っていったのだろうな。そんな事を感じ始め、フェイスレスはその場を去ろうとした。 ■ 「アンタだったのか……」  カズキはナギと2人でプラットフォームに出ていた。  首輪探知機で、何者かの接近に気付いてはいたが、それがまさかフェイスレスだとは思わなかった。  フェイスレスはちょうど、プラットフォームの階段を降りているところだった。  軽い気持ちで、会ってみたいと言ったのはカズキ。  慎重な考えで、隠れていようといったのはナギ。  2人で議論した結果、カズキの考えが通り、接近者との邂逅となったのだ。  けれど、ふたを開ければ接近者はカズキの知りうる限り最悪の人物。  パピヨンならいい、強いし怪しい雰囲気もあるが危険ではない。  女道化師は危険だが、フェイスレス程の奥深さを感じなかった。  だが、こいつは、この男だけは…… 「最悪だ、ナギちゃん。俺の後ろへ」 「なぁんだ、ちょっと見ないうちに随分かわいい彼女を作ったじゃないか」 「わ、私はカズキの彼女ではない!」  激昂したナギが、カズキの前へと出ようとする。  ハヤテという存在がある以上、彼女の気持ちも理解できるが、この場では控えるべきだ。 「抑えてくれ、ナギちゃん。あいつはただの老人じゃない」  フェイスレスは、顔を縦横斜めに引っ張りながら、器用に変形させている。  時折、カズキの顔になったりするあたり、この老人の遊び心が伺える。  顔を変形させるという珍妙な特技を無視すれば、目の前にいる遊び心豊かな老人は単なるボケ老人と見ることさえ出来なくもない。  けれど違う。ここにいる男は最上級の危険人物だ。 「武装錬金」  心臓から、闘うための槍を取り出す。  その異常な行為を目の当たりにしても、「やっぱスゲーー!」と手を叩いて驚くだけ。  余裕から来る発言であろう。なにせ、彼はカズキの本質を瞬時に見抜き戦闘中に背を向けるという荒業をやってのけた玄人だ。  さらに言えば、老人離れした身体技能でサンライトハートを分解しようとした実績も持つ。  カズキの額に汗が滲む。もし戦闘になったら、自分はこの男に勝てるのだろうか…… 「おい、お前。こんな所に来て一人で何をしておる」  いや、抑えてって言ったじゃないか。  ナギはカズキが静止するのも聞かず、フェイスレスを刺激する発言をする……いや、違うか?  よく考えてみれば、確かにフェイスレスが駅に来た理由は重要だ。  探知機によれば、彼は別の駅からではなく、北側からやってきた。  ここから別の駅に行くのか。いや、それにしてはプラットフォームから出ようとしているのは不自然だ。 「あぁ、ちょっと首輪を取りに来たんだよ。でも、もうなかったなぁ」 「なんで、ここに首輪があるって思ったんだ?」 「だってぇ、僕が殺したんだもん。ジャギ君をさ」  瞬間、フェイスレスのいた場所に一筋の光が走る。 「おぉ、怖い怖い」  カズキの攻撃をフェイスレスがかわす。突然の事態に焦ることなく対処した。  この男はやはり危ない。 「ナギちゃん、隠れてて。これ以上のものは、君に見せたくない」  戦闘する、倒すという行為は、敵を殺す事も有り得るという事だ。  もちろん、殺さずに無力化するだけで済めば、それに越した事はない。  だが、相手の実力から考えて、それは不可能に近い。恐らく、殺す覚悟で行かなければ倒せない。 「お、おいカズキ。この私には闘う力があると見せたばかりだろう」  確かに、ナギのCDは見せてもらった。けれど、戦闘とは単に力だけでやるものではない。  相手が傷つき血を流す姿を見ても行為を止めない覚悟と、自分が死ぬかもしれない覚悟の二つが必要になる。  だから、CDの力を得たばかりのナギに戦闘行為は不可能だ。  それ以前に、カズキはハヤテに約束した。ナギを守ると。だから彼女を闘わせるわけには行かないのだ。 「殊勝な心がけだねぇ。でも、本当に彼女の助けは要らないのかな? カズキ君一人で僕に勝てるって思ってるのかい」 「勝てるさ!」  ナギに「逃げろ」とつぶやき、カズキはフェイスレスに向けて突撃する。  フェイスレスは、カズキに向かい銃口を向ける。  引き金を引く寸前、カズキはそれを切っ先で弾き飛ばした。 「ヒュゥ、やるぅ!」  フェイスレスはあくまで余裕を見せている。その油断が命取りだ。  カズキはサンライトハートを両手に持ち、突き、袈裟切り、胴切り。  あらゆる攻撃を16歳の身体能力を全開にして、肉体年齢的には60を超えているであろう老人に繰り出していく。  けれど、その攻撃はことごとく当たらない。あるときはかわされ、あるときは防がれる。 「言い忘れたけど、カズキ君。僕は素手でも強いよ。手加減したままだと勝てないんじゃないかなぁ」  そんなことは既に分かっている。だが、カズキには全力を出せない理由があった。  背後でナギが見ているのだ。  どれ程、決意を固めたとしても、穢れを知らぬ少女の前で老人を叩きのめすわけには行かない。  早く逃げろと思っているのだが、ナギはその場から動こうとしない。  恐らく、自分の力でカズキを支援するつもりだろう。 「はぁっ!!」  掛け声で誤魔化しつつ、フェイスレスを威嚇する。  だが、そのような手段が通用する相手ではない。全てが見透かされている。 「こっちはそろそろ、本気を出すよ」  フェイスレスのスピードが一段アップする。同時に、カズキはその拳を数発浴びる。  重い、そして、硬い。やはり、フェイスレスは一味違う。 「効くだろ、僕の拳は。僕の体は大半が安っぽい機械で出来てるのさ。だから、強いぜぇ」  そうか、それが分かれば……  西遊記の孫悟空よろしく、サンライトハートを回転させ、その遠心力でもって斬りつける。  スピード、パワー共に先ほどの比ではない。けれど、フェイスレスはどこか詰まらなさそうだ。 「なぁんだ。やっぱり、実力を隠してたんじゃないか…… 大方、僕の強さがわかって、これぐらいの力なら殺さなくても済むって思ったんだろ? だから、そんだけ力を出したのさ。 でもね、君の顔に書いてるよ。『俺の実力はもっと上だ』ってね」  確かにカズキは、フェイスレスを殺さない、大怪我をさせない範囲でしか力を出していない。  けれど、それを見抜く態度は癇に障る。 「今から本気を見せる!」  再度、掛け声と共に突撃する。せめてナギに見えないように、ホームの端でこの男を倒す。 「もう、飽きたよ」  フェイスレスは、落ちた銃を拾い上げ、再びカズキへとその口を向ける。  横一線、サンライトハートの一撃が、またも銃を叩き落とす。 「こんなときだけ速いんだから……で・も・ね」 「カズキ、後ろだ!」  ナギの甲高い声が突然響き渡る。後ろ? 後ろに何がいるって言うんだ。  首輪探知機では一人しかいなかっただろ。疑問に思うカズキが振り返るとそこには、死神の鎌を携えたかぼちゃが一匹。 「な、いつの間に……」 ■  三千院ナギは見ていた。見ているだけで、何も出来なかった。  2人の戦いには入り込む隙がほとんどなかったのだ。  老人が銃口をカズキに向ける。  猛スピードでカズキがそれを切り払う。  そして、そのまま老人を蹴り飛ばそうとした瞬間。  線路下に隠れていた、かぼちゃの化け物が、突然現れてカズキに切りかかってきたのだ。 「ば、馬鹿な……っく」  かぼちゃの攻撃を、カズキはかわす。そして、距離をとろうとした瞬間…… 「バブル・ザ・スカーレット」  かぼちゃから吐き出された粘着液により、カズキの動きが止まる。  そして再び、そこに鎌が振り下ろされた。 「まずい、武装か……」  カズキは何かをしようとしたが、時既に遅し、死神の鎌はそのまま彼の胸元を切り裂き……そして。 「肉も断った、骨も断った。もう、終わりだよカズキ君」 「か、カズキ……」  人体の急所、胸を引き裂かれたカズキの体はそのまま横たわり、起き上がることはない。 「詰まらない戦いになっちゃったねぇ……本気を隠すから、こういう目にあうんだよ」 「もしかして、私のせいなのか。私のせいで、カズキは力を出し切れなかったのか……」  カズキの死体に駆け寄り、ナギはその体を抱き寄せる。 「どうして、全力を出さなかったんだ。私は別に、あんな奴が死んでも何とも思わんぞ」 「君に、そんな風な考え方を持たせたくなかったんだろう。優しかったんだよ。そして、弱かった」 「カズキは弱くない。本気さえ出せたら、お前に負けたりしなかった」  フェイスレスが、カズキに近づいてくる。 「近寄るな、この馬鹿者が……お前のせいで、このカズキは死んだんだぞ」 「ナギちゃん、だっけな。お嬢ちゃんにも死んでもらおうと思ってね」  かぼちゃの化け物を傍らに、老人はゆっくりと歩いてくる。  鎌を携えたその姿は、古来より言い伝えられている死神の姿そのものだ。  怖い。  普段のナギなら、そう思ったであろう。人殺しの瞬間を目撃し、死神が目の前にやってきて。  怖くないはずがない。けれど…… 「この私は死なんぞ、私と闘え、このボケ老人が!」  今のナギは怖がらない。 「強がっても、体が震えてるよ。僕の夢のために死んでくれよ」 「貴様の夢の事など知らんわ。この三千院ナギにも夢があるのだ、ハヤテと結ばれる夢。漫画を一兆部売る夢がな!」  死神老人の歩みは止まらない。 「貴様がどうしても私を殺すというのなら、私は貴様を倒さなければならん」  ナギが死神を怖がらない理由。それは…… 「スパイスガール!」  スタンド能力を身に着けたからだ。  突然、顕在したスパイスガールに死神老人は歩みを止めた。 「凄いじゃないか!」  そして惜しみない拍手を送る。この行動だけをとってみれば、やはりどこかずれたボケ老人だ。 「その余裕が命取りだ!」  スパイスガールを使い、ナギから攻撃を仕掛ける。  この破壊力とスピードはスタンドの中でも最上級。  ナギという操演者のせいで多少乱雑ではあるが、一撃でも喰らえば、ジャック・オー・ランターン(ジャコ)は致命傷を受ける。 「バブル・ザ・スカーレット」 「その技はもう見た!」  スパイスガールの身体能力を使い、すばやくガムをかわす。  そして、距離をため再び、老人に突撃する。  スパイスガールによる連続攻撃。単純な拳の連打だが、その一撃一撃は強烈。  ジャコを使いよけつつも、僅かながら攻撃を受けてしまうフェイスレス。  一旦、彼はナギとの距離を開けた。 「なるほど、自動人形と繰り人形の中間といったところか。自分の思い通りに動かせる人形。 けれど、操演者の思いがなければ動かない? 違うかなナギちゃん」 「そうだと言ったら?」 「だとしたら、僕はもうそれの弱点を見つけちゃったなぁ」  2人の距離は10mほど。ここからだとスパイスガールは届かない。  弱点とは、その事を言っているのだろうか。いや、文脈から見てそれはない。  だとしたら一体……ナギは頭の中でフェイスレスの言っている事を考えている。  もしかしたら……  対峙する2人の頭上から、スピーカーの音が聞こえる。 『まもなく、1番線に電車が参ります。白線の内側にお下がりください』  放送終了後に、またもナギが動く。 「行くぞ!!」  フェイスレスはジャコを高く上げ、自身の上でホバリングさせる。  そして、あろうことか、迫り来るスタンド相手に己が肉体をもって格闘戦を仕掛けてきた。 「な、なんだと!」 ■  フェイスレスはスパイスガール、否スタンドの弱点に気付いていた。  スタンド(彼は名前を知らない)は、操演者の思念によって動くものである。  しかし、忘れてはならないことが一つ。  操演者はあくまで人間だという事だ。  元々、人間は同時に複数の事を考えられるようには出来ていない。  そして、当たり前だが同時に四本の腕を操られるようにも出来ていない。  人形繰りを200年以上続けたフェイスレスには経験がある。  つたない人形師が人形を操ると、自分も人形に釣られて動いてしまうという経験だ。  彼自身、幼い頃には何度かそんな事をやってしまった。  現代の子供たちが興じるテレビゲームに喩えて言えば、レーシングゲームをやっている子供が、 レースカーと一緒に左右に揺れ動く現象がそれにあたる。  これは、人間という生き物の本質に他ならない。  どの人間も、生まれたときから、一つの脳と二本の腕、二本の足を持って暮らしてきているのだ。  従って、それ以上のものを操ろうと思った場合には、それなりの訓練が必要である。  だからこそ、自動人形破壊者(しろがね)たちはフランスのキュベロンで人形繰りの練習をやっているし、 フェイスレスだって、幼い頃白家で人形繰りの基礎を学んできたのである。  そう、目の前の少女が持っている弱点とは、自分とスパイスガールを別の生き物のように操れないという事。  そして、自分はその弱点を既に克服している。これは大きなアドバンテージだ。  目の前の似非自動人形と格闘戦を繰り広げるフェイスレス。  同時に、ジャコを彼女の後ろに移動させていく。気付かれないようにひっそりと。  少女は、フェイスレスに集中していて背後の事には気付かない。  そりゃそうだ。彼女の頭は目の前にいる対戦相手で一杯になっているのだから、他の事は処理能力を超えて溢れてしまう。 「終わりだよぉん」  ジャコの糸にほんの少し力を入れればそれで終わる。その瞬間であった…… 「終わるのはお前だ」  少女がいきなり、前に走り出したのである。  決して速くない。だが、スタンドとは連動しない形で走り出した。 (馬鹿な、読み違えたか……)  己の予想を超える出来事に、フェイスレスの動きが一瞬止まった。 「コノ腐レジジイハ ブッ壊ス!」  一撃、二撃と、スパイスガールの攻撃がヒットする。 「WAAAAAAAAAAAAAAABEEEEEEEEEEEEEEEEE!!!」  容赦ないスタンドの攻撃が、流れるように全弾あたった。 「さ、最初からオートマトンだったというわけか……」 「スタンドだ、間違えるな。そして、こいつは自我を持って動いておる。そうだろ、スパイスガール?」 「ソノトオリデス」  してやられた。  まさか、自動人形を繰り人形に見せかけて攻撃していたとは思いもよらなかった。 「やるねぇ……」  フェイスレスの顔から、戦闘中始めて余裕がなくなる。  そして、そのまま、これまでとは逆に自分から相手に突撃する。ジャコを引き連れて。  少々驚かされたが、要は、運動神経の鈍い女の子と、自動人形が一体いるだけの事。倒し方はいくらでもある。  女の子は、自分が近づくと後ろに向かって走る。それにあわせて、自動人形はバク転で付いて行く。  まずは、自動人形から倒す。そして、自分を甞めた女は、後でいたぶって殺す。 「いくよ、ジャック・オー・ランターン!!」  フェイスレスが少女まで、あと5Mと迫ったとき、突然、床が変形し始める。 「言い忘れたが、その床は柔らかくなっておる」  そこは、カズキ戦の時フェイスレス自身がジャコを隠していた場所。  線路下にある緊急退避場所の天井が、なぜか一枚のゴム板のように柔らかくなっている。  その床は、フェイスレスの体重を支えきれず、くにゃりと曲がる。  足場を失った彼は線路に転落し、その目の前からは列車が迫ってきた。 「ま、まさか……うぉあああ!」 ■ 「やった……勝った、勝ったぞ!!」  身体能力で明らかに上回る相手を倒してのけた。  スタンド能力、スパイスガールの力は本物だ。  もちろん、少々不意打ちに近い事を二度もやったことが勝因なのだろうが、 何にせよ、最終的に勝ったのは自分だ。  ナギは1番線に停車した電車を見つめる。  恐らく、あの電車の下には粉々になったフェイスレスとかぼちゃの化け物がいるのだろう。  ナギは勝利の興奮と、戦闘の余韻に浸り気付いていないが、粉々になったという事は 死んだということであり、彼女が人殺しをしたという事だ。  8年前、彼女の両親が死んでしまったときと同じように、その死を悲しむ者がいるかもしれないのだ。 「ま、まぁ私は悪くないからな。だって、アイツ……」  少しずつ、罪悪感が沸いてくる。  本当に殺さなければいけなかったのか。それ以外に手段はなかったのか。 『1番線から、普通S6行きが発車致します』  駅から、電車が離れていく。  ナギは疲れた体を押して、最後の確認をしなければならない。  本当にフェイスレスは死んだのかという確認をだ。  走り去った電車のした、二本のレールの間には、かぼちゃの化け物が原型をとどめない姿で転がっていた。 「う、うむ……これでよかったのだな……」  しかし、よくないことが一つ。フェイスレスの死体がないということ。  死体はかぼちゃの化け物(スタンドかな?)だけで、本体のものがない。  どこにいるのかと、ナギが探し始めたとき…… 「いやぁ、よくよく考えたものだったと思うよ」  ナギの背後から老人の声。 「……生きていたのか……」  不思議な気分だ。  人殺しをしなくて済んだという気持ちと、老人を殺せなかったという気持ちが半分半分で ごちゃ混ぜに入り混じっている。  振り返ると、老人は左腕をなくしているものの出血はなく、 痛みすらないといった表情で立っていた。 「生きていたのなら、今すぐこの場を立ち去る事だな。もう分かっただろ、お前では私に勝てない」 「何か勘違いしているんじゃないかな?」  刹那、フェイスレスの体が消える。  そして、次の瞬間、ナギは腹部に激痛を感じた。 「僕が本気を出していたとでも思っていたのかい」  見えなかった。スタンドの発現すらままならないスピードでフェイスレスは攻撃してきたのだ。  その攻撃が右手によるものか、足によるものかすら、ナギには分からなかった。 「この僕が、カズキ君ならともかく、君みたいなお嬢ちゃんに本気を出すわけないだろ」  また攻撃。  今度は見えた、右拳が顔面にぶつかった。 「っく、スパイスガール」  「遅い」  発現させたスパイスガールもろとも、フェイスレスは前蹴りでナギを弾き飛ばす。 「柔らかくする能力は厄介だからねぇ、今すぐ分解させてもらうよ」  片腕を失ったというのに、フェイスレスのスピードは遅くなるどころか速くなっている。  そういえば、体が機械化されているといっていた。  そんな体だから、左腕を失っても、痛みによる動きの低下が見られないのだろうか。 「スパイスガールよ、防いでくれ」  自身のスタンドに最後の望みを託す。スパイスガールが攻撃を防げなければ、自分は殺される。  けれど、フェイスレスの動きは止まらない。 「分解」  右手一本で、スタンドの右腕を解体し始める。  はじめは指から、手首、肘、肩。そこまで分解したところで、再び蹴り飛ばす。 「…………がぅ」  声にすらならない痛みが、右腕に走る。  スタンドが傷ついたせいで本体にまで、同じダメージが来る。  まずい、まずい、どうしたらいい。  自分はここで死ぬのか……そんな思いが頭の中をよぎる。 「私はまだ、死にたくない。ハヤテに再会していない。ハヤテと結ばれていない。死にたくないぞ」  夢はかなわぬまま終わるというのか。  漫画すら賞をとれず、ハヤテとは再会できた後に別れたまま。  けれど、そんなナギの考えをよそに無常にも死神フェイスレスは迫り来る。  ナギは諦め、そのまま目を瞑った。その時だった…… 「ナギちゃんから離れろ!!」  聞きなれた少年の声がする。  死んだはずの少年の声がする。  ナギが目を開けるとそこには…… 「カズキ!!」  武藤カズキがいた。 「フェイスレス、ナギちゃんに手を出すな!」  カズキの胸からは血が流れている。けれど、その量は少ない。  致命傷ではなかったという事か。しかし、どうして、胸に一撃を喰らっても生きていられたのか。  疑問に思うナギをよそに、カズキはフェイスレスを投げ飛ばす。  そして、ナギに駆け寄ってくる。 「ゴメン、ナギちゃん。俺が遅かったせいで、怪我をさせちゃったみたいだ」 ■  かつて早坂秋水と戦ったときと同じように、武藤カズキは武装解除で敵の攻撃を防いだ。  左脇から、胸元にかけての攻撃は、核鉄が防いでくれる事をカズキは経験上知っていたのである。  あの時、ジャック・オー・ランターンがカズキに鎌を振り下ろしたとき、とっさのことで防ぐ事がままならなかった。  けれど、核鉄はそんなカズキに最後の防衛手段を用意していたのである。  誤算があったとしたら、数分間気絶していたという事か。けれど、もう気絶しない。  これからは本気を出して、フェイスレスを倒す。  ナギを怪我させた以上、アイツを許しておく理由はどこにもない。 「行くぞフェイスレス。今度は俺が相手だ」 「また、本気を出せないなんて言うつもりはないよね?」 「ない!!」  強く断言し、突撃する。  サンライトハートによる突き。日本刀による切り払いと異なり、この突きは点の動き。  フェイスレスへと向けて、一本の光柱が伸びる。  見慣れない動きに、動揺したのか、フェイスレスはそれをよけるだけで、何もしないまま距離をとる。 「その光の柱が君の力かい? こりゃ『分解』出来そうもない」  カズキは何も応えないまま、エネルギーを全開にしサンライトハートで攻め立てる。  伸縮自在の槍は、フェイスレスによける場所をほとんど与えない。  後方によけても、確実にぶつかるため、彼はしゃがむか、飛ぶかしかよける手段がないのだ。  そのため、攻撃のいくつかは確かな手ごたえをカズキに残していく。  だが、フェイスレスは体を何度切り刻まれても、そのスピードを落とさない。 「言ったろ、僕の体は機械製だって」  機械化されているため、体のどこを切り落とされても痛みを感じない。  そのため、切り落とされたり、怪我をしたりしても、身体の機能低下はほとんど起こらないのだ。  左腕をなくしているため、左腕分の機能は低下しているが、それ以外フェイスレスの体は全く無事といっていい。 「ならば、足を切るまで」  地面すれすれの所をサンライトハートが切りかかる。  飛び上がって、よけるフェイスレス。高い空中、よける場所はない。  今度こそ、とカズキはフェイスレスの足元めがけ、光の柱を叩きつける。  だが…… 「バブル・ザ・スカーレット。これで三度目だよ」  粉々になった人形から、粘着液が発射される。  もう動かなくなったと思っていた、その人形の動作にカズキは驚かされたが、それ以上に驚いたのは粘着液の発射先。  粘着液は、プラットフォームの天井めがけて発射されたのだ。  そして、フェイスレスは、手袋を填めたその手を粘着液につけ、体を固定し、光を避ける。  さらに、手袋を外し、そのまま着地。カズキとの距離を縮める。 「っく」  後ろに下がるカズキ。追いかけるフェイスレス。  だが、後ろ走りのカズキより、追いかけるフェイスレスのほうが速い。 「分解」  フェイスレスの左腕が、カズキの右腕を分解せんと動く。  カズキの右腕は、それを避けるように動く。  けれど、間に合わない。スピードではカズキが上回るはず、力でも上回るはず、なのにフェイスレスの分解は止まらない。  実はここにバトルロワイアルという演目の盲点がある。  フェイスレスと武藤カズキ、身体能力で言えばカズキが上だ。  けれど、総合的な戦闘能力で言えばフェイスレスはカズキと互角である。  そこに盲点がある。  バトルロワイアルでは、参加者全員に首輪が填められ、その首輪により全員の能力が制限されている。  この制限の目的は、強い参加者と弱い参加者の格差をなくす事。  決して、強い参加者を弱い参加者の下に置くことが目的ではない。  従って、制限下においても戦闘力の序列は変わらず、強い者は強いままということになるはずであり、 互角の2人は互角のままであるはずなのだ。  けれど、それは主催者の狙いであって現実ではない。  制限というのは、全ての力に均等にかかるものではないのだ。  スタンドやアルターといった特殊能力には強く。強大な身体能力にも強く働く。  だが、一つだけ、全く制限のかからない能力がある。それは知力だ。  東西の高校生探偵も、人の心を妖怪のように見抜く雀士も、その知力は制限されていない。  当然フェイスレスの『分解』のように、知識ベースの技は制限がかけにくくなるのである。  フェイスレスは知識として、人間のどこをどうすれば、分解できるかを知っている。  この知識がある限り、どれ程身体能力を制限されたとしても、それこそ、小学校高学年の児童並みに制限されたとしても、 彼の分解は機能する。そのことは、才賀勝が示したとおりである。  逃げ惑うカズキの右腕を、フェイスレスの左手は追い詰め、分解していく。  指、手首、肘……と確実に分解を進めていく。だが…… 「スパイスガール!」  突如現れたスタンドにより、それは叶わないものとなった。  最後の力を振り絞ったスタンドにより、フェイスレスは弾き飛ばされた。 「カズキよ、確かに敵は強い。だが、負けるな。お前には負けてはならない理由があるはずだ。斗貴子の顔を思い出し必ず勝て」  力弱い少女からの、何より力強い励ましをもらう。  カズキの右腕は肘から先が機能していないが、それでも負けない。  この日何度目か分からない覚悟を決め、カズキはフェイスレスに突撃する。  左手にランスを、心に決意を持ち、相手を倒す。確実に。  利き腕でないカズキの攻撃。だが、それは先ほどと微塵も見劣りしない。  むしろ、強くなったぐらいだ。  カズキは以前、秋水と共に剣道の稽古をした。  剣道では、左手がきわめて重要であると教わる。ある道場では、左手一本で素振りをさせるほどに、左手の動きを重視する。  左手の小指と薬指の引き付けにより、剣を振るのが剣道というものだ。  そして、右手は軽く添えて、左手が振る剣を操作するのである。  カズキは足りない右手の分を体の捻りによって補い、剣道の基本切り替えし左右面でフェイスレスを攻め立てる。  サンライトハートの諸刃は、日本刀と異なり、振り上げるときにもダメージを残していく。 ■  フェイスレスの眼前に文字通りの剣林が迫り来る。  単純な振り上げ運動は、カズキのスピードを最大限に高め、フェイスレスに反撃の隙を与えない。  左右斜めの袈裟切りを、器用に避けるフェイスレスではあるが、分解する時間はない。  だが、分解する時間がないからと言って何も出来ないわけではない。  カズキが槍を振り上げたその瞬間、フェイスレスは右正拳をカズキの横隔膜めがけて打つ。  分解に比べて単純なその動きは、カズキを止めるのに役に立つ。  カズキは一瞬止まった後に、同じ動きを繰り返す。  フェイスレスはそれにあわせて、胸と腹部の間を打っていく。  単純な動き、2人とも同じように動きつつ、ダメージだけが蓄積されていく。  フェイスレスに注がれる斬撃は、その肩と上腕に切り傷を与えていく。  けれど、フェイスレスの動きを止めるには至らない。  一方、横隔膜を殴打されているカズキは違う。少しずつ、動きを弱めていく。  機械人間フェイスレスと、生身の人間カズキとの違いである。  フェイスレスは徐々にカズキに与える正拳の数を増やしていく。  医学知識のあるフェイスレスには、分かっているのだ。この動作を繰り返していけば、いつか人間は止まると。  かつて、ディーン・メーストル(外科医)の偽名を名乗った彼は、錬金の知識だけでなく医学の知識にも長けている。  ここで誤解を恐れずに言おう、フェイスレスつまり白金(バイジン)は天才であると。  甲子園に行けば毎年いるという名前だけの、『10年に一人の逸材』とはレベルが違う。  1750年ごろ、中国の田舎に生まれたこの男は、掛け値なしの才能を持っていた。  兄、白銀(バイイン)と共に煉丹術・錬金術の道を目指し、プラハに到着。  プラハはかつて神聖ローマ帝国の首都であり、白金が生きた頃も、黄金のプラハと形容されるほど繁栄を誇っていた町である。  そんな大都会に、名も知らぬアジアの村から2人の兄弟がやってきて、そして、錬金術を身に着けていった。  このこと一つとっても、並々ならぬ才能が伺えるというものだ。  無論、それだけではない。  彼は、プラハを出た後フランスのキュベロンで、自動人形の作成に成功している。  自動人形、現代風に言い換えればロボットの存在は我々にとってもまだ身近な存在とは言いがたい。  その存在を、白金は今から200年以上前に出現させていたのである。  ゆえに、彼は紛れもない天才なのだ。それも、他の参加者を圧倒するほどに。  その天才が取った行動は、何よりシンプルなもの。単なる横隔膜へのボディーブロー。  だが、この効果は絶大だった。 ■  攻撃を喰らいつつ、武藤カズキは考えていた。  自分はどうして、老人に攻撃しているのだろうと。ほんの少しボケた事を考えていた。  ブラボーの声が聞こえる。 『善でも悪でも、最後まで貫き通せた信念に偽りなど一つもない』 (俺が最後まで貫き通したい信念ってなんだっけ?)  戦士として、ブラボーや斗貴子と共にすごした日々を思い出す。  あの頃、自分が学んだものは一体なんだったのか。 (教えてくれ斗貴子さん。俺の信念って一体なんだっけ)  鳩尾を中心に、体中に痛みが走る。  斜めに振るう剣腕は、既に限界に近いほど疲れを感じている。 (どうして、俺こんなになってまで動いてるんだっけ……)  頭によぎる疑念のと共に、次第に遅くなるカズキの動き。  しばらくして、それは完全に止まってしまった。 「動きの止まった君なら、『分解』できる」  フェイスレスの姿がすぐ目の前に迫ってくる。彼はカズキの左手を取り、分解を始める。  不意に、カズキの視界が崩れ始めた。 『命を諦めてくれないか?』  かつて、上司キャプテンブラボーが自分に投げかけた言葉。  あの時、自分が貫いた思いはなんだったか…… 『大事なものを死守せんとする強い決意』  それこそが、カズキの持っていたものではなかったのか。  フェイスレスの手が、カズキの左拳にかかる。そのときだ。 「諦めるなカズキ。斗貴子を守るんだろ、死ぬな!!」  ナギの声が聞こえてきた。そうだ。俺は斗貴子さんに会う。  この思いこそ、俺が今貫くべき信念だ。  動かなくなった右腕を上腕二頭筋だけで、振り回しフェイスレスへとぶつける。  激痛が走るが、そんなもの知らない。それは信念ではない。ここで貫くのは、信念だけだ!  動かないと思っていた右腕の攻撃に、フェイスレスは一瞬とまる。  その一瞬のうちに、カズキはフェイスレスを蹴り飛ばし、サンライトハートにエネルギーをためる。 「俺は再び、斗貴子さんに会う。彼女を傷つける全ての敵から彼女を守り通すために!!」  愛の決意を槍に込め、武藤カズキ最期のチャージ。  フェイスレスにそのまま体当たりをきめ、彼の体を………… ■  三千院ナギが戦いの最後に見たシーン。  それは、サンライトハートが、フェイスレスを貫くシーン。 「やった、カズキが勝った」  戦闘の勝利者に、ナギは駆け寄っていく。  だが…… 「お、おいカズキ、どうした……勝ったのだぞ。返事をしろ」  よく見れば、カズキの足元には夥しいほどの出血がある。  彼は胸元を切り裂かれた状態で、今まで戦闘していたのだ。  さらに言えば、フェイスレスにより、鳩尾に何度も拳を殴打されていた。  呼吸困難と出血多量により、その体は既に限界を超えていたといっていい。  そこへ、エネルギー全開のサンライトハート。 「どうして、どうして……」  どうして、などと言わずとも分かっている。  カズキは自分を、そして斗貴子を守るために闘っていたのだ。 「お前は馬鹿だ」  立ったまま動かない武藤カズキ。  その肉体は、これからも動くことがない。 &color(red){【白金(フェイスレス)@からくりサーカス:死亡確認】} &color(red){【武藤カズキ@武装錬金:死亡確認】} &color(red){【残り41人】} 【B-3 駅プラットフォーム 一日目 昼】 【三千院ナギ@ハヤテのごとく!】 [状態]右腕の骨が完全に分解されている。全身に打撲。 [装備]首輪探知機@BATTLE ROYALE、スパイスガール@ジョジョの奇妙な冒険 [道具]支給品一式、不明支給品0~1(本人は確認済。核鉄の可能性は低い) [思考・状況] 基本:殺し合いはしない 1:ハヤテとジョジョを待つ。 2:ハヤテ、マリア、ヒナギク、ジョセフと合流する。 3:カズキを供養する。 4:カズキの恋人という『斗貴子』とやらに会って、カズキの死を伝える。 参戦時期:原作6巻終了後 ※スパイスガールは疲労のため、しばらく出せません。 |110:[[バトルロワイヤルの火薬庫]]|[[投下順>第101話~第150話]]|112:[[『Freaks』]]| |115:[[LOVEサバイバー]]|[[時系列順>第2回放送までの本編SS]]|112:[[『Freaks』]]| |096:[[真赤な誓い]]|&color(red){武藤カズキ}|&color(red){死亡}| |088:[[徳川光成! きさま! 聞いているなッ!]]|&color(red){白金}|&color(red){死亡}| |096:[[真赤な誓い]]|三千院ナギ|121:[[君には花を、いつも忘れないように]]| ----

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