「戦火の中犯される娘達」SS保管庫

占領下の日常

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だれでも歓迎! 編集
~これまでのあらすじ~

縮れた黒い毛、黒い肌、黒い瞳を持つ『黒き民』と金髪、白い肌、青い瞳を持つ『白き民』とが住む世界。

若き皇帝の号令の下、30年ぶりに、『白き民』の土地への『征戦(西征)』を開始する『黒き民』の大軍勢。

皇帝は『白き民』と『黒き民』とが交わり、子を成した場合、『白き民』の形質がほぼ失われることに着目し、斬新な戦略を全軍に通達する。

『白き民を黒く染め上げよ』

破竹の勢いで侵攻する『黒き民』の軍勢は、街を陥す度に、子供が産める歳の『白き民』の女達を収容所に集め、兵隊達に女を『妻』として割り当てて、管理させるシステムを作りあげた。

『大陸』から険峻な山々で蓋をされた『半島』は、『征戦』の際にはいつも無視されていた土地だが、『黒き民』達は大陸を西に進む本隊とは別に、山脈を越え大軍勢を以って侵攻する。

『城門の鍵を明け渡せ。抵抗しないなら男だけは逃がす。抵抗すれば殺す』

『黒き民』の凄惨な殺戮に恐怖し、戦わずして城市を明け渡す男達。そして、取り残される女達。


『半島』の街という街で、女達を置き去りにして、卑屈な表情で城外へ逃れる男達と、反対に街の各地に設営された収容所へ歩かされる女達が列を成した。


半島でも有数の商家の娘であるクリスティンの住む街も例外ではなく、母、妹のシャーリー、侍女達数名達と共に、黒き民の兵達の『妻』として収容され、子を成す為に、夜な夜な犯されることとなる。

クリスティンの街が陥落して二ヶ月。
占領直後の混乱がほぼ収まりつつある収容所から、物語の続きを始めることとしたい。
『グリート様、昨日の晩は何回でしたの?』
『…五回です』
『五回!?』『それ一晩で?』『すごーい!』

女達が車座になり裁縫をしながら話し込んでいるのを、シャーリーは姉クリスティンと

半島産の茶を飲みながら眺めていた。

『うん…私の「旦那」は若いし…』
『そんなこと言ったら、みんなそうですよ』
『そうそう、やっぱグリート様はその胸よね』『痩せてるのに大き過ぎ!反則!』
『そんな…』
『そんなこと言う、アンはどうなの?』
『私は昨日の晩は二回。何か何もかもグリート様に負けてるみたいで悔しいなぁ』
『ちょっと!』
『嘘、嘘。嘘ですよ、グリート様。
それは置いておいて、グリート様。私達、観ましたのよ』

侍女達はクスクスと笑う。

『グリート様、この前、「旦那」さんのくわえていらっしゃったでしょ?』
『!?見てらっしゃったの?』
『えー!』『嘘!』『信じられなーい』

シャーリーの胸の中に、赤黒い感情が渦巻くのを感じる。

『黒き民』に占領されて二ヶ月。女達は街の中の複数の収容所に入れられ、昼間は労役、

そして、夜は兵隊達の慰みものにさせられている。

裕福な商家である自分の家に仕えていた侍女達は、既に何の意味も無いにも関わらず、

昔の関係のまま、自分と姉、母の分の労役もしてくれる。

グリートもシャーリーの家程では無いとは言え、街でも有数の商家の娘だったが、

シャーリー達と違って、『裁縫は好きだし、侍女達と話すと気が休まるから』と、
よく労役を手伝っている。しかし、それも格上のシャーリー達に気を遣って居ることくらいは、シャーリーも薄々気付いていた。
自分が労役もせずに、姉とお茶を飲んで居られるのも、グリートや侍女達の心遣いのお陰だ。
それでも、シャーリーは彼女達の態度が気に入らない。愛する者達を殺し、

自分達に悍ましい行為を強要する黒き民達。
そんな男達とのまぐわいを、まるで夫婦のむつみごと(黒き民は捕らえた女を『妻』と呼び、

特定の女としか性行為をしない)を自慢するように話す彼女達。
(まるで、淫売じゃない…!)

シャーリーは怒りを抑え切れず、勢い良く立ち上がるが、すぐに横に座っていた姉、

クリスティンが袖を掴み無言で制止する。

『お姉様!』
『…良いから座りなさい』
『だって、あの娘達…』

突然の怒鳴り声に不安そうにこちらを見つめていたグリートと侍女達を指差したその時、

部屋の扉がバタリと開き、口を手で抑え、脱いだ衣服で身体の前だけを隠した全裸の母が

飛び出してきた。

いつも、穏やかな動きしかしない母は自分達を一顧だにせず、汚物入れの置いてある

部屋の中に飛び込むと、激しく嘔吐している。

呆然とするシャーリー達の前に、母が飛び出してきた扉から、痩せた初老の黒き民の男が

頭をかきながら出てくる。

初老の男も全裸で、『萎びた』という表現が最もよく当て嵌まる真っ黒な身体に、
股間には太い蛇のような男性器がぶらりと垂れ下がっていた。
姉が怒りの表情で、黒き民の言葉を発しながら初老の男に詰め寄る。
【ボニ!お母様に酷いことはしないって約束でしょ!】
【知るかよ。たっぷり中に出して、一服してたら、あいつが急に飛び出していったんだ】

初老の男の名はボニ。姉とシャーリーの二人の娘を育て、なお美しい母を『妻』として、

毎日、抱いている男…。
シャーリーは黒き民の言葉はわからないので、姉とボニが何を話しているかはわからない。

しかし、そんなことよりも、未だ嘔吐を続けているらしい母を介抱しなければ、と思い立った。
黒き民の言葉で喚き散らす二人を放って置いて、シャーリーは母の下へと急ぐ。


部屋に入ると、母は全裸で身体を崩して床にへたりこみ、汚物入れに突っ伏して嘔吐を続けている。

母は齢40に近いが、その裸体は大理石で出来た彫刻のように滑らかで美しかった。

『お母様、どうされたの?あの男に酷いことをされたのですか?』

シャーリーは母の背中をさすりながら、話しかける。
母はしばらく嘔吐を続けたが、落ち着いたらしく、はぁはぁと息を切らしながら、

シャーリーの方に顔を向けた。

いつもの穏やかな母親の顔はそこには無く、まるで、何かに怯える少女のような顔が

そこにあった。

『お母様…お顔が真っ青ですわ。どうかされ…』

『出来たみたい…』

シャーリーの言葉を遮るように、母は呟いた。
『出来た、って何が…。 …!!』
母は再び口を抑え、汚物入れに嘔吐を続ける。しかし、シャーリーは今度は背中を
さすることは出来ず、呆然と、母の白い背中とうなじを見つめた。
シャーリーは立ち上がり、ふらふらと外へ向かって歩き出す。
部屋の外では、グリートや侍女達が心配そうに、中を見ている。
『シャーリー、顔が真っ青よ』
『…どいて、グリート』
『どうしたの?奥様に何が有ったの?』
『どけ、って言ってるでしょう!!』
シャーリーはグリート突き飛ばし、駆け出した。
姉は未だボニと言い争いをしているようだったが、目に涙を溜めて走り去るシャーリーを
見つけると、『シャーリー!』と声をかけた。
シャーリーはそれを無視して、ベッドの並ぶ『寝室』のクローゼットに隠れた。

暗いクローゼットの中で、母の美しい裸体と、部屋から出てきた初老の萎びた黒き民の男の姿が目に浮かぶ。
街が占領されて以来、母は二ヶ月間、ほぼ毎日、あの男の相手をさせられていた。
(お母様が…お母様が…あいつの子を…)
絶望で心が真っ白になり、シャーリーはクローゼットの中で膝を抱いて座り込み、目を閉じた。
コトコトコトという小さな音で目が覚める。おそらく、ネズミの走る音だろう。目が覚めても、
周りは暗闇で、シャーリーは一瞬、自分が何処にいるのか、わからなかった。
しかし、意識の覚醒と共に、徐々に記憶が鮮明になってくる。ここは『寝室』のクローゼットの中。

私はお母様を介抱していて…
汚物入れに嘔吐を続ける母の美しい裸体。心配そうに扉の前に集まっていた侍女達とグリート。
初老の黒き民の兵隊と言い争いをしていた姉。
初老の黒き民の男の萎びた全裸の姿が頭に思い浮かび、シャーリーは記憶を辿るのを止めた。
怒りと憎しみが身体の内側からシャーリーを満たす。
(お母様を…お母様を、よくも…)
シャーリーはボロボロと涙が頬を伝うのを感じた。
このように、暗い場所で一人で居ると、嫌でも思い出してしまうことがある。必死に押さえ付けようとすればするほど、それは膨れ上がった溺死体のように、深い沼から水面に現れ、心と身体を腐乱臭で満たす。
黒き民の兵隊が街を囲んだ時のこと。似合わない甲冑に身を包んだ肥満気味の父は、
行かないで、と泣き叫ぶシャーリーに微笑み、『必ずお前達を守る』と言い、屋敷を出た。

その数日後の花火を何十個も同時に爆発させたような音。石がガラガラと崩れ、
往来では『城壁が破られた!』と伝令が叫ぶ声が聞こえた。

ドタドタと屋敷の廊下を男達が走る振動。母と姉と侍女達数名で、屋敷の二階の部屋に
鍵をかけ、震えながら嵐が立ち去るのを待った。

扉を破る衝撃と共に、現れた真っ黒な兵隊達の黒い顔。そして、卑猥に自分達を見つめる
黒い瞳と赤く濁った白目。笑う口元に並ぶ異様に白い歯。

不気味な黒き民の言葉を喋りながら、近付く黒い兵隊達。シャーリーはいつの間にか、
肥満の兵士に組み伏せられていた。

ごつい手で服を引きちぎられる音と、突然、外気に曝された胸で感じた冷たさ。

はぁはぁと臭い息を吐きかける真っ黒な顔。

シャーリーは、やたらめったらに手を振り回して暴れたが、黒き民の、しかも、
兵隊に叶う訳がない。

シャーリーがいくら叩いても微動だにしなかった胸板の感触。
ガサゴソとシャーリーにのしかかる兵隊が動くと、突然、鼻を突いた激しい刺激臭。

その臭いの元を見ると、兵隊の股間から、真っ黒な皮に包まれた巨大な棒が、先端をシャーリーに向けられていた。
先だけ肉が剥き出しになったように、ピンク色の傘を広げたそれは、肉の棒というよりも、
鋭利な刃物を想わせて、黒い兵隊の肥満体の腹に張り付いていたのをシャーリーは鮮明に思い出すことが出来る。

再び布が引き裂かれる嫌な感触。股間が外気に触れる心細さ。


そして、次の瞬間の信じられないほどの激痛…
そう、この瞬間からは自分の記憶ではなく、誰か他人が黒き民の兵隊に犯されているのを、
眺めていたように記憶している。

振り回される腕、首筋を這う黒き民の舌の感触、無造作に捕まれた乳房の激痛、
耳障りな叫び声、全て自分のもの、自分の感じていることだとは理解していたが、
まるで現実味がなかった。

暴れる自分を眺める自分。眺めるだけでなく、暴れる自分に

『そこに手を持って行くと捕まれて押さえ込まれるから駄目』
『そこに歯を立てれば痛がるはずだよ』

と、冷静に指示し、黒き民の乱暴な交接をある程度防いでいた。

結局柱に手を括り付けられ、泣き叫ぶことしか出来なくなったけれど、
身体をよじり、黒き民の肥満体が、果てないように、妨害を続けた。
挿入したものの、上手く動けず、焦る黒き民の兵隊を、冷静な自分は笑いながら
見ていたような気がする。

しばらくすると、筋肉質な黒き民の兵隊が、シャーリーの上に乗る兵隊に話し掛けてきた。
傍らでは、服を破かれ、涙をボロボロ流して自分を見つめる姉の姿。
兵隊達が一言二言、言葉を交わすと上に乗る黒き民の兵隊は激しく腰を振り出す。

『激痛を感じること』を『理解』し、『激しい動きの目的』もわかったけれども、
冷静な自分は暴れる自分に抵抗しないように指示した。

『今、暴れたら殺されるよ』

次の瞬間、身体の奥が脈動し、暖かいものが下腹部に拡がるのを感じた。
姉がその場に脚を崩して、へたり込むのが視界の端に写る。

姉の口元の唾液が渇いた白い跡、首や胸に付けられた無数の赤い斑点、
そして、へたり込んだ太股に伝う赤い筋。

冷静な自分が思ったこと。

『お姉様、初めてだったんだ』

下腹部に感じる激烈な不快感よりも、姉への優越感の方が、シャーリーの心を満たしていた。

『私はこの前の新月祭で、ルイに初めてをあげたんだもの』

耳を突く叫び声が自分の声だということを『理解』はしていた。
のしかかる肥満の黒き民の兵隊が離れた後は、母や姉達と呆然と列を成して歩いた。
大通りの反対側では、男達が卑屈な格好で街の外へ向かっており、
情けない目で自分達を見遣り、目が合うとすぐに目を逸らす。

女達を置いて、街を立ち去る自分達に後ろめたさを感じているのではない、
と冷静な自分が気付く。

この期に及んで、男達は半裸の自分達の姿を盗み見ていた。
男達の視線はまず、胸の乳房に、そして、肢体に、そして、見定めるように顔に…

助けるでもなく、戦に敗けた悔しさを感じるでもなく、ただ、若い女の身体をコソコソと
卑しく見ているのだ。

男達の列から一人の男が飛び出す。そして、女の列の一人の女性に駆け寄る。
お互い抱き合い、涙を流しながら話す二人。シャーリーは純粋に美しいと感じた。
そして、他の男達もそれに続く筈と信じた。

しかし、二人の背後に黒き民の兵隊が近付く。そして、槍を男の背中に突き立てた。
黒き民の兵隊は、槍で乱暴に男を振り回した後、髪の毛を掴んで立たせると、
一言二言、言葉を交わした後に、瀕死の白き民の男の胸に短剣を、突き立てた。
黒き民の男が何を話したか、姉に聞いたような気がする。でも、そんなことはどうでも、良かった。

早く、早く私達を助けに来て。

大通りの向こう側の男達に必死に念じる。
しかし、男達は罵声を投げつけるだけで、動くことはなかった。

お前達は悪魔だと叫ぶあの男は、さっきまで、姉の半裸の姿をいやらしい目で見ていた。

いつか皆殺しにしてやる、と叫ぶあの男は、さっきまで、私の身体を見ながら、股間をさすっていた。

『今、叫ぶと殺されるよ』

冷静な自分が必死に諌めるが、叫ばずにはいられなかった。

『今、やりなさいよ…!!』

それからは、暴れる自分も冷静な自分も記憶が無い。
気が付くとベッドの上で、黒き民の兵隊が自分にのしかかり、
腰を打ち付けていた。
同じように、右のベッドでは姉が。左のベッドでは母が。

部屋の中は、肉を打つ音、ベッドの軋む音、女の泣き叫ぶ音で満ちていた。


一際響く大きな叫び声が自分のものだと気付くのに、しばらくかかった。
それから、黒き民の兵隊達は自分達を占領前は『病院』だったこの場所へ閉じ込め、
夜な夜な犯しにくるようになった。

黒き民の言葉を話せる姉から、自分達は黒き民の兵隊達の『妻』とされ、無駄な抵抗を
しない限り、衣食住が保障されると知った。

昼は労役、夜は黒き民の兵隊に犯される日々が続いたが、シャーリーは犯される度に、
冷静な自分が泣き叫び暴れる自分を眺めているのに気付いた。
そして、初めて犯された時のように、冷静に暴れる自分に指示を出し、自分の『旦那』が
果てるのを妨害していることにも気付く。

犯されて泣き叫ぶ自分と、犯されるのを防ぐ作戦を立て、それが成功すると喜ぶ自分。
激しく抵抗するシャーリーに、『夫』は寄り付かなくなった。
シャーリーは自分の勝利に密かにほくそ笑んだ。


しかし、犯される時、暴れる自分も、冷静な自分も、許せないことがあった。

身体が自然と快楽を感じてしまうこと。
激痛。
吐き気を催す肥満の黒き民の兵隊の体臭。
のしかかる体重。
下腹部に拡がる激烈な不快感。

それでも、シャーリーの身体は意志とは関係なく自分の膣内に出し入れされる
巨大な雄の生殖器に反応し、胎内に放出される生命の種を感じて、女としての、
いや、雌としての悦びに震えた。そのことが、何よりも、自分を攻め、精神を蝕む。

侍女やグリート達は誇りを忘れ、その快楽に身を委ねているとシャーリーは思っていた。
私達は白き民なのだ。黒き民に股を開き、快楽に溺れるようでは、淫売以下のゴミだと
信じていた。黒き民に犯された回数を報告しあうなど、信じられない。

だから、シャーリーは黒き民に犯される時のことを思い出したくない。絶対に…

しかし、雌としての本能は、必死の抵抗もものともせず、精神と身体を支配する。
クローゼットの中で、シャーリーは自分の股間に手を遣る。
そこは熱く湿り、分泌された液体で下着が尿を漏らしたように濡れていた。

『嫌…駄目…』

シャーリーの意志に関係なく、シャーリーの指は濡れそぼった膣内に侵入し、
侵入するだけではなく、少しずつ動かしてしまう。
ゆっくりと動いていたそれは、次第に早く力強く膣壁を擦る。
ピチャピチャと卑猥な音が響き、はぁはぁと息を荒げてしまう。


冷静な自分が現れ、虫けらを見るような目で自分を見つめているのを感じた。
『ねぇ、昨日は五回もしたじゃない?今日は良いんじゃない…?』
『駄目です、お嬢様。奴らに感づかれてしまいます』

外の物音にハッと我に帰る。クローゼットの扉の隙間から、外を見ると、
グリートと彼女の『旦那』がベッドの前で話しているようだった。

『えっと…ほら、あなたも一晩であれだけしたら、疲れたでしょう?私も疲れちゃって…』
『お嬢様、「あなた」などと勿体振った呼び名でお呼びにならないで下さい。
御館様からお付け頂いた名前で、この卑しい黒き民の奴隷をお呼び下さい』
『そんな…ゴキブリなんて名前…』
『良いのです、お嬢様。屋敷の下男と下女に産まれた私に御館様自らお付け頂いたのです。
その他にも御館様には感謝してもしきれぬほどの御恩を受けております』
『…』
『黒き民の兵隊が街に攻めて来た時、私は御館様に誓ったのです。
必ずやお嬢様を屈強な兵隊達からお守りする、と。
私は黒き民の奴隷ですが、御館様からの恩義を
忘れたことはありません、と。
黒き民である自分なら兵隊達も気を許すでしょう、と。
ですから、御館様はお逃げ下さい、と。

ですので、兵達に感づかれぬよう、このゴキブリが、身を削って夜な夜なお相手をしているのです』
『そんな…』
『さぁ、お嬢様、服をお脱ぎ下さい。話していては怪しまれます』
『やはり…その…昨晩も侍女達に私達のまぐわいを見られたそうですし…その…
シャーリーのお母様がいらっしゃるでしょう?どうやら、身篭られたようで…』

シャーリーはあっと声を出してしまいそうになり、慌てて口を抑えた。

『何と言うことでしょう!あのような美しく高貴なお方が、野蛮な兵隊の子供を宿すとは!』
『ちょっと!声が大きいわ…。それで、私も…怖くなって…』
『分かります、分かりますお嬢様。黒き民の兵隊は本国でも使い用の無いほどの荒くれ者達。
あのような者共とまぐわい子を宿すなど、白き民の婦女としては許し難きことでしょう』
『わかってくれるの?』
『勿論です、お嬢様。このゴキブリ、肌は黒くとも、白き民の世界で育ちました故、
兵隊達とは格が違います』『なら…』
『奥様の話を聞き、このゴキブリ、決意を新たに致しました。
決して、お嬢様に黒き民の兵隊達の子供を産ませぬ、と。
そのために、この白き民に先祖代々仕えてきたゴキブリの子を孕んで頂くしかない、と』
『ちょ…』
『さぁ、早く服をお脱ぎ下さい、お嬢様。ご覧下さい、このゴキブリの愚息を』

ゴキブリがズボンを下ろしたようだった。ベージュのズボンの下の黒い肌は
周りの闇に溶け込んでいたが、股間に屹立する生殖器は、付着する液体でテラテラと光っていた。

『!!』
『あの美しい奥様が野蛮な兵隊の子を孕まされたと聞き、怒りのあまり、ここまで
腫れ上がったのです』
『…』
『さぁ、もう、一刻の猶予もなりません。今晩はお嬢様が確かに孕むまで、
まぐわい続けます』
『いえ…やはり…その…』

暗闇に白い歯が浮かび上がる。笑っている…

『お嬢様、私はお嬢様に強制することも出来るのですよ』

グリートがハッとゴキブリの顔を見た。

怒りのあまり、我を忘れて飛び出そうとしたが、突然、冷静な自分が現れ、
シャーリーの拙速を諌める。
『わかったから、乱暴しないで…』

グリートが服の紐を解き、肌をあらわにさせていく。
暗い部屋に真っ白なグリートの身体がぼうっと浮かび上がる。
侍女達が話していたように、肋骨が浮き出た細い身体に、鞠のような乳房が乗っていた。

グリートが全裸になるのを見届け、ゴキブリも上着を脱ぎ、全裸になった。
グリートと対照的に、真っ黒で奴隷らしく不健康に痩せた肌が闇に溶け込む。

『お美しい…このようなお美しい方を兵隊達に与えるわけにはいきません』
『あまり、見ないで…』
『見ないわけには参りません。このようにお美しい白い肌を…』
『ひゃっ!』
『おぉ、申し訳ありませんお嬢様。首筋はゆっくりでしたね…』
『…』

シャーリーの位置からはグリートの何かに耐えるような横顔しかわからないが、
ピチャピチャとゴキブリがグリートの肌に舌を這わせる音が部屋に響いていた。

『はぁはぁ…あッ…はぁはぁ』
『お嬢様。顔が赤いですよ。気分が悪いのですか?』『…何でもありません』
『そうですか…では、首だけではなく、更に美しいこちらにも…』
『あッ…ひゃうッ!そこは…』
『はぁはぁ、青く血管の浮き出るほど白い乳房…美しい…それにこんなにも大きい…』
『はぁはぁ…お願い…言わないで…』
『こちらも、ゆっくり味わうこととします…』

再びピチャピチャと卑猥な音が部屋に響き、それに混じって、ゴキブリの息を荒げる音、
『あッ!あッ!』とグリートの喘ぐ声が聞こえる。
『わかったから、乱暴しないで…』

グリートが服の紐を解き、肌をあらわにさせていく。
薄暗い部屋に真っ白なグリートの身体がぼうっと浮かび上がる。
侍女達が話していたように、肋骨が浮き出た細い身体に、鞠のような乳房が乗っていた。

グリートが全裸になるのを見届け、ゴキブリも上着を脱ぎ、全裸になった。
グリートと対照的に、真っ黒で奴隷らしく不健康に痩せた肌が闇に溶け込む。

『お美しい…このようなお美しい方を兵隊達に与えるわけにはいきません』
『あまり、見ないで…』
『見ないわけには参りません。このようにお美しい白い肌を…』
『ひゃっ!』
『おぉ、申し訳ありませんお嬢様。首筋はゆっくりでしたね…』
『…』

シャーリーの位置からはグリートの何かに耐えるような横顔しかわからないが、
ピチャピチャとゴキブリがグリートの肌に舌を這わせる音が部屋に響いていた。

『はぁはぁ…あッ…はぁはぁ』
『お嬢様。顔が赤いですよ。気分が悪いのですか?』『…何でもありません』
『そうですか…では、首だけではなく、更に美しいこちらにも…』
『あッ…ひゃうッ!そこは…』
『はぁはぁ、青く血管の浮き出るほど白い乳房…美しい…それにこんなにも大きい…』
『はぁはぁ…お願い…言わないで…』
『こちらも、ゆっくり味わうこととします…』

再びピチャピチャと卑猥な音が部屋に響き、それに混じって、ゴキブリの息を荒げる音、
『あッ!あッ!』とグリートの喘ぐ声が聞こえる。

『お嬢様、乳首が勃っています…感じているのですか?』
『はぁはぁ…ちが…ひゃっ!ゴキブリ、もう、止めて…』
『分かりました…では…』
『ちょっと、待っ…んぐ…』

音と重なり合う影で、ゴキブリとグリートが唇を重ねているのが、分かる。
シャーリーは涙がボロボロと頬を伝うのを感じた。

『ぷはぁ…お嬢様、いつになれば大人しく舌を吸わせて頂けるのです?』
『…』
『…良いでしょう。では、まぐわいましょうか』

グリートはゴキブリから顔を背け、啜り泣いているようだった。

『濡れ具合は如何ですかな…』
『痛いッ!』
『…あまり、濡れていませんね。入念に準備させて頂きましたが…
そんなにも私が嫌なのですか?』

何も答えず、無言で啜り泣くグリートを見ながら、ゴキブリは『ぺっぺっ』と両掌に唾を吐くと、
自らのモノに塗りたくるように扱きはじめた。

『良いですよ、お嬢様。
それより、ご覧ください。お屋敷では、夜な夜なこのように唾をつけて、
愚息を扱いておりました。お嬢様のことを考えながらね』
『…』

それまでの慇懃な口調が消え、粗野で凶暴さを感じさせて、ゴキブリが語り出す。

『小さな頃からお嬢様を見ておりました。あのような美しい方と少しでもお話出来れば良いのに、と。
お嬢様をお見かけする度に胸が熱く苦しくなったものです。
…しかし、私は卑しい黒き民の奴隷。お嬢様に近付くことすら出来ません』

シュッシュッという、嫌な音が部屋に響く。

『私が初めて射精したのがいつか、ご存知ですか?』『そんなの…知らない…』

ゴキブリは静かに続けた。

『あれは10歳になった頃でしょうか。私が父の仕事を手伝っている時、
運んでいた荷物を床に落としてしまったのです。偶然通り掛かったお嬢様は
私に優しく微笑み、落とした荷物を拾って下さりました』
『…』
『その時、一緒に居た御館様に、私は顔の判別も出来くなるほど、繰り返し殴られました。
そして、お屋敷の地下室にろくな食事も与えられず三日間、閉じ込められました』
『…』
『激痛と空腹と暗闇、そして、汚物の臭い。そのような中で、お嬢様の微笑みだけを頼りに、
私は耐えました』
『…』
『私は地下室で何故このような目に合わねばならぬのか考えつづけました。
そして、悟りました。我々、黒き民は人間では無いのだと。白き民に仕える虫けらなのだと』
『もう、止めて…』
『止めません。お嬢様は私の「妻」なのです。夫の過去を知らねば』
『…』
『絶望の中、私の中で何かが変わりました。
私は白き方々とは違うと悟り、お嬢様と自分が全く違う生き物だと悟った瞬間、
靄がかかっていたような私の頭は晴れ渡りました。
美しく光輝いていたお嬢様の姿、汚してはならぬと感じていたお嬢様の微笑みを想像し、
愚息が激しく勃起しているのに気が付きました』
『そんな…』
『今までもそのようなことは有ったのです。しかし、その度に、激しい自己嫌悪と
罪悪感にかられ、泣きながら自分の獣欲を呪ったものです』
『…』
『しかし、その時、既に私は悟っていたのです。私はゴキブリ。人間のゴミを漁る
汚らしい虫けらであると。だから、このように、性欲に溺れるのも仕方ない、と』
『やめて…お願い…』
『最後までお聞き下さい。
私は地下室で愚息を激しく扱きあげました。余りにも強く激しかったために、
皮膚が破けそうになるほどに…。その際、唾液を掌に着けることを思い付いたのですよ。
こういう風にね』

シュッシュッシュッと先程と同じ、卑猥な音が部屋に響く。シャーリーは目を見開き、
暗闇に溶け込むゴキブリと、白い背中を晒すグリートを見つめるしかなかった。

『お嬢様の微笑み、お嬢様のお姿…頭の中がお嬢様のことでいっぱいになり、
遂に、私の愚息が爆ぜました』
『…』
『激しい快感が脳髄を貫きました。それと共に、信じられないほど、真っ白なものが
愚息の先端より飛び出したのです』
『…』
『その時の感激を、お嬢様はお分かり頂けますか?黒い肌、黒い目、黒い髪、黒い唇
しかない私の身体から、あんなにも白いものが飛び出すなんて!
それは雪のように白く、まるで、お嬢様の肌のようでした。
お嬢様のことを思い詰めた結果、このような美しいものを作り出すことが出来たのだと、
私は悟ったのです』
『…』

シャーリーは叫び出したくなるほどの嫌悪感を覚えた。しかし、また、冷静な自分が
それを抑え、ゴキブリの話を聞きつづけた。

『それから、部屋を出されるまで…いえ、部屋を出た後も私は愚息を扱き続けたのです。
お嬢様の想像だけでは足らず、お嬢様の持ち物、食べ物、お嬢様の肌に触れるものを使って…』
『なんてことを…』
『私達は残飯しか与えられませんでしたが、お嬢様の食べ残しと思えば、
私は喜んで口にしました』
『やめて…』

『お嬢様の洗濯前の御召し物を盗みだし、その香りを嗅ぎながら何度も何度も…』
『お願いよ…止めて…』
『お嬢様が食べる筈の菓子の生地の中に、私の体内から出されたものを…』
『止めて!!もう、聞きたくないわ!!このゴキブリ!!』

一瞬の静寂が部屋を包む。暗闇にゴキブリが笑う異様に白い歯が浮かび上がる。

『はは。そうです。私はゴキブリです』

ゴキブリは一拍、勿体振ったように間を取ると、囁くように言った。

『そして、お嬢様。あなたはゴキブリの子供を孕むのですよ』
部屋にグリートの絶望の嗚咽が響き渡る。ゴキブリは嬉しそうに話しかける。

『さぁ、そちらに寝てください。大丈夫です。愚息はゴキブリの唾まみれでヌルヌルですから』
『お願い…乱暴しないでぇ…』

泣き叫ぶグリートにゴキブリの影は容赦なくのしかかった。

『痛みが続かないように…一気に…貫きますから…ね!』

ゴキブリの影がグリートを一突きする。

『嫌ァァァッー!痛い!痛いぃ!』
『はぁはぁ…大丈夫です…いつもみたいに…すぐに慣れますよ…』
『あぁ…あぁ…お願い…抜いて…何でもするから…』

『はぁはぁ…では、口を開けて舌をお出しくださいお嬢様…』

グリートの泣き叫ぶ声が消え、代わりにくぐもったうめき声と、ピチャピチャと卑猥な
水音が再び部屋に響く。
シャーリーはクローゼットの端に膝を立ててうずくまり、目を固く閉じ、耳を手で塞いだ。
しかし、ベッドの上の音は、いくら耳を塞いでも防ぐことは出来ない。

『ぷはっ…はぁはぁ…お嬢様の舌、柔らかくて素敵ですよ…』
『はぁはぁ…嫌ぁ…離れて…』
『もう痛みは無いみたいですね…動かしますよ?
『ちょっと待っ…嫌ァッ!!痛い!!』
『はぁはぁ…あぁ…気持ちいい…』

ベッドのきしむ音、布のこすれる音、肉を打つ音、ゴキブリがはぁはぁと息を荒げる音、
そして、グリートの絶望の嬌声。
耳をいくら塞いでも、あらゆる音が、シャーリーの耳に入り、クローゼットの隙間から覗く、
グリートの白い肢体と、のしかかり、激しく上下するゴキブリの黒い身体から
『駄目よ、見ちゃ駄目。聞いちゃ駄目』

見る?聞く?嫌でも見てしまうし、嫌でも聞こえてくるの。

『違うわ。あなたが見たいと思うから見えて、聞きたいと思うから聞こえるの』

何を言ってるの?親友が黒き民に犯されているのなんて、見たくも聞きたくも無いわ。
こんなに涙が流れているのが分からない?

『そうよ。だからもう、そんなことは止めて』

そんなこと?

『自分の右手と左手を御覧なさい』

我に返り、自分の両手を見遣る。
左手は自分の形のいい乳房を揉みしだき、人差し指と親指でその赤い先端を強く摘んでいた。
右手は股間を探り、人差し指と中指は自分の膣壁を激しく擦りあげていた。

『そんな…』

自分の今していることに驚き、手を離そうとする。しかし、身体は全く言うことを聞かず、
自分の胸と膣壁を刺激し続ける。
目はクローゼットの隙間から覗く、グリートとゴキブリの交接から視線を離すことが出来ず、
耳は二人の奏でる淫らな音を少しも聞き漏らすまいとしているようだった。

『嫌…嫌…』

止めて、シャーリー。そんなことをしては、心が死んでしまうわ。お願い、止めて…
白き民の誇りを思い出して…


『嫌ァァ!止めてぇ!!お願いぃぃ!!』
自分のあげた声かと思い、心臓が跳ね上がる。しかし、それはベッドの上のグリートの声だと気付く。
死ぬほど驚いたとしても、身体は快楽を求める動きを止めない。

『はぁはぁ…駄目です…お嬢様!お嬢様!出します!!』
『嫌ッ!嫌ァァァァァッ!』

肉を打つ音とゴキブリの息を荒げる音が、更に大きく響く。

『はぁはぁ…もう駄目だ!お嬢様!ゴキブリの子を産みたいですか?はぁはぁ…』

『嫌ァ!絶対に、嫌だァァ!!』

『お嬢様!はぁはぁ…ゴキブリの種を、お嬢様の中に流し込んでも良いですか?』

『お願い!言うことを聞いて!嫌なの!黒き民のゴキブリの子なんて嫌なのォ!!』

『お嬢様!お嬢様!!この白く滑らかな美しい腹の中で…はぁはぁ…

ゴキブリの子供を何ヶ月も育ててくださいますか?』

『嫌ァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァッッッッッッ!!!!!!!!!!』

ゴキブリの鬼気迫る問いかけと、グリートの泣き叫ぶ声を聞き、シャーリーの右手が
一層、激しく動く。

『お願い、止めて!』

お願い、止めて

『嫌なの!産みたくない!黒き民の男なんかで!!』

嫌、私も親友の犯される姿を見ながら何て…

『駄目!!駄目!!駄目!!』

駄目!!駄目!!駄目!!

『駄目ェェェェェェェッ!!!』

肉を打つ音とベッドがきしむ音が突如として止んだ。
獣が吼えるような野太い声と絶望に満ちた悲痛な叫びが部屋に響くと同時に、
シャーリーの右手にビシャビシャと液体がかかる。

次の瞬間、股間から激しい快感が脳髄まで走った。
そして、花火が何十発も同時に爆発したような音と、
木の扉がぶち破られるような衝撃を感じ、頭が真っ白になった。



『死ね。汚らわしい』
シャーリーが目を開けると、今まで感じていたことが、何も心に残っていないことに気付いた。

今まで何を悩み、苦しんでいたのだろう。『理解』は出来るが、全く現実味が無い。

クローゼットの隙間から外を覗くと、ゴキブリがグリートの上で、はぁはぁと息を荒げていた。

『はぁ~、お嬢様…素晴らしかった…睾丸のものを、全て吐き出してしまったようです』
『嫌ァ…嫌ァァァ…』

グリートはゴキブリに射精されたようだった。
シャーリーはそれを驚くほど冷静に受け止めていた。

『はぁはぁ…泣き叫ぶ、お嬢様も美しい…』

『え?え?嘘?大きくなって…?そんな!』

『ええ、お嬢様の美しい姿を見て、ゴキブリの愚息はお嬢様の中で再び大きくなってしまいましたよ。
さぁ、このまま、二回目をいきますよ…』

『嫌ァァァ!!』

早く助けないと、グリートが妊娠してしまう、という考えは、一瞬で、
『もう、何百回もされてるんだから、一回くらいでは変わらない』
という考えに掻き消された。

クローゼットの隙間から部屋を冷静に見回す。ゴミを入れる陶器の壷と、外れてしまったまま
床に積まれている、金属の窓の格子が目に入った。
『あぁ…やめてぇ…』
『はぁはぁ…一度出しましたので、今回はゆっくり楽しめますね…お嬢様、後ろを向いてください…』
『!!何を…!!』
『後ろから貫いて差し上げます。この世のものとは思えぬ快楽をお与えしますよ!』
『嫌!そんな汚らわしいこと…!あ!嫌!止めて!離して!!』
『駄目です…そう、そういう風に四つんばいなり…お嬢様、暴れてはなりません。
穴を間違えてしまいますよ』
『嫌!嫌!あぐッ…アアアアッ!!』
『はぁはぁ…後姿も美しい…』

獣のように後ろから女を犯すなど、白き民の宗教では禁じられた行為だった。
以前までのシャーリーなら、怒りの余り我を忘れただろう。
しかし、今のシャーリーは驚くほど冷静だった

(二人とも後ろを向いた。好機だ…)

ゆっくりと音を立てずにクローゼットから出る。中に居た時よりも更に激しく、
グリートの叫び声が聞こえる。

『グリートを助けたい』ということを『理解』は出来る。

何もしない自分の代わりに、グリートや侍女、姉、母までもが頑張ってくれていたことも、
今では、『理解』出来る。素直に『感謝』もしている

しかし、まるで現実味が無い。今、シャーリーの心の中に有るのは、一つの思いだけだった。

シャーリーはゆっくりと壷を手に取り、ゴキブリとグリートの死角から、ベッドに近づく。
そして、ゆっくりと、壷を持ち上げ、快楽に溺れるゴキブリの後頭部めがけ、ただ一つだけ心に
残った思いをこめて、勢いよく振り下ろした。



『黒き民を皆殺しにする!』
グリートは、何かが割れる大きな音と、背中の上にのしかかったゴキブリが、どさり、
とベッドに横たわるのを感じた。

膣口からゴキブリの生殖器が外れると共に、激痛が消え、逆にぽっかりと胎内に穴が
開いたように感じられた。

『はぁはぁ…え?え?あれ…シャーリー?』

『静かに』

ベッドの周りにはゴミ入れの陶器の壷の破片が散らばり、ゴキブリが後頭部から血を流し、
倒れている。
シャーリーは作業をするように、ゴキブリを仰向けにすると、部屋の端へとスタスタと歩いていく。
仰向けになったゴキブリは完全に伸びてしまっており、巨大な生殖器が勃起したまま脈打っていた。
(あんな大きなものが、私の中に…)
今起こっていることよりも、そのことにグリートが驚愕していると、
シャーリーは外れたまま部屋に置きっぱなしになっていた鉄格子を手に戻ってきた。

『シャーリー、一体…』
『離れていて』

シャーリーは枕を手に取ると、ゴキブリの顔に強く押さえつける。
そして、折れて先端がとがった金属の棒を、ゴキブリの首に突き立てた。

『!!』
『ぐえっ…!』

ベッドに鮮血が飛び散る。しかし、シャーリーは何度も何度も金属の棒で、
ゴキブリの首を突き続けた。

ゴキブリは最初の一撃を加えた際に、少し痙攣したが、二回目三回目の突きでは、ぐったりとして、
全く動かなくなった。

顔を抑えていた枕を外すと、驚愕の表情のまま、ゴキブリは息絶えていた。
シャーリーは出血部に枕を押し当て、グリートに振り返る。

『心臓が止まるまで抑えていて。部屋が血だらけになると困るでしょう?』

グリートは呆然とシャーリーの言うことを聞き、枕を受け取る。
『シャーリー、なんてことを…』

グリートが声をかけると同時に、べちゃり、べちゃりと粘ついた音が床から聞こえてきた。

『見て、グリート。こいつ、死んでも射精してるわよ』

ゴキブリは勃起した生殖器から噴水のように精液を噴き出していた。べちゃりという音は、
勢いよく飛んだ精液が床に落ちる音だった。
そのおぞましい光景に戦慄するグリートに、シャーリーは声をかける。

『グリート、良いこと?黒き民に何か聞かれたら、こう答えて。
あなたが抱かれてる時に、あの窓から強盗が入ってきた。
ゴキブリを殺して、金目の物を奪い、私を攫って逃げたって。
あなたも犯されたことにしても良いわ。』

『そんな…』

『お姉さまには本当のことを喋っても良いわ。お姉さまは頭がいいし、
黒き民の言葉も使えるから、うまくやってくれるはずよ』
シャーリーは微笑みながらグリートに告げると、ゴキブリの衣服から、
金が入っているらしい袋を抜き取り、窓に足をかけた。

『シャーリー、あなた、これから、どうするの?』

『助けを呼んでくるわ。』
『助け、って…?』

『黒き民を皆殺しにするためのね』

シャーリーは微笑むと、窓から外に消えた。グリートはシャーリーの微笑みに宿る狂気に戦慄し、
シャーリーが消えた窓をしばらく呆然と見続けた。

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