『Freaks』

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mangaroyale

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『Freaks』  ◆hqLsjDR84w



――見つからない。

 地図の端を辿っていけば、いずれ参加者に会えると思っていたのだが。

――見つからない。

 ゴルフ練習場に潜んでいる輩がいるかもしれん、そう思って入ってみたのだが。

――見つからない。

 平賀才人との闘争によって受けた、全身へのダメージと火傷も。
 DIOとの戦闘によって受けた、頭部へのダメージも。
 スタンド使いの少女との戦闘で受けた、無数の裂傷と火傷も。
 いつしか以来、久々に味わえた疲労という感覚も。
 全て治癒し終えてしまうほどの間、闘争を求めて歩いたというのに。


――人も、狗も、化物も、見つからない。


 この舞台は少しばかり広すぎる。
 もっと狭ければ、完全に治癒が終わる前に、参加者に出会えたかもしれないというのに。

「裂傷や疲労により体の自由が利かない上での闘争、そんなものは久しぶりだったのだが……」

 まあ、治癒してしまった以上は仕方がない。
 『全力で以って、人間の相手をする』
 私は、それも大好きだ。

 この時、私は見つけた。
 この私に対して、勇敢にも正面から近づいてくるモノを。
 ククッ、楽しくなりそうだ。


「私の名は葉隠散! 貴様の名は?」

 勇敢にも私に正面から向かってきた男――葉隠散が私に尋ねてくる。
 雰囲気で分かる。
 この男は、人間で『いられなかった』存在――化物(フリークス)だ。
 それにしても『貴様』か。この私に向かって、『貴様』。
 ククッ、実に! 実に面白いぞ、フリークス!

「アーカードだ」
「そうか、アーカードか! アーカードよ、1つ尋ねてよいか?」
「……何だ?」
「何故、首に着いているべき物が着いていないのだ?」

 首……? ああ、アレか。

「首を千切って脱出しただけだ」
「何?」
「首に仕掛けた爆弾など、この私には至極無意味なものだ。この私を、吸血鬼を殺すには――」

 左胸をトンと小突いて、吸血鬼の弱点を教えてやる。

「心の臓腑を抉るしかないのだよ。主催者どもは理解していたようだ」
「つまり貴様には、首輪の代わりに心臓に爆弾を仕掛けられた……という訳か?」
「御名答。ところで、こちらも質問をさせてもらおう」
「1つ質問したら、相手の質問に1つ答える。それが礼儀! 王である私は、当然礼儀も持ち合わせている。いいぞ、言ってみろ」
「貴様、人間を止めているな?」

 一瞬の静寂の後、散が高らかに宣言をする。

「ああ、私は人間ではない。人間を超越した不退転の存在……言うなれば、現人鬼!」
「そうか、やはり貴様も化物か。フッ、フハハッ、フフハハハハッ!」

 ついつい笑みが零れてしまう。だが、もう止められない。
 嬉しい、嬉しい、実に嬉しい。
 闘争が始まるのだ。笑みを零さずにいられるはずがない。

 散も私の様子を見て、理解したのであろう。
 何やら奇妙な防護服を着用し、私から距離を取って奇妙な構えを取っている。
 私もフェイファー・ツェリザカを取り出す。

「貴様も化物。そして私も化物。つまりこれは、化物同士の闘争か。クカックカカカ……」

 抑えきれぬ笑みを浮かべながら、上空にフェイファー・ツェリザカを掲げる。
 闘争がついに始まる。待ちに待った闘争が、ついに。

「さあ闘争を始めよう、現人鬼」

――BANG!!


 銃声が鳴り響く。
 それを合図に散とアーカード、2人の人外が動く。
 アーカードは散を捕らえるため、銃口を散に向ける。
 一方、銃口を向けられた散の行動はというと……意外! それは直進ッ!
 その予想外の行動に、アーカードの口が弧を描く。

「面白い。実に面白いぞ、現人鬼! 何か策があるのか? それとも、ただの考え無しか?」

 質問を投げかけながら、アーカードが引き金を引く。
 銃口より発射された銃弾が、散の頭部を襲う……が霞の外殻に止められ、霞の内部にいる散にはまったく効いていない。
 霞の装甲にアーカードが驚愕している間も、散はひたすら地を蹴る。
 そして、散とアーカードの間の距離はほぼゼロとなる。
 当然、驚愕しているアーカードに迎撃の用意は無い。

「弾!!」

 その好機を散が逃す訳も無く、渾身の掌打をアーカードに浴びせる。
 腹に散の掌打を受けたアーカードは、その衝撃を耐えきれず民家へと突っ込んでいく。
 轟音が辺りに鳴り響き――突っ込んできたアーカードごと、民家は完膚なきまでに崩壊。

 一般人が見たら、アーカードは瓦礫の下敷きとなり死亡した。そう思うだろう状況。
 だが、散は霞を着脱しない。
 達人だからこそ気付いているのだ。
 アーカードの禍々しい気配が消えていないことに。

「パワー、スピード、技、何をとっても申し分のない1撃だ……」

 少し前まで民家だった瓦礫の山から、アーカードがゆっくりと顔を出す。
 表情も、服装も、足取りも、直接掌打を喰らったはずの腹も、戦闘前と何ら変わらない状態で。

「しかし私にダメージを与えるには至らない」
「フッ……、だが私には必滅の奥義がある。霞に銃が効かず、なす術のない貴様と違ってな」
「なす術が無い? そうかな?」

 そう答えるのとほぼ同時に、散の右肘に向かってアーカードが発砲。
 しかし霞の装甲を信頼している散は避けようともせず、そのまま銃弾を受ける。
 やはり散自身にダメージは無い……が、散の表情が曇る。
 何故なら霞の外殻が、銃弾によって削り取られてしまったから。

(銃程度で霞が……何故!? 右腕……はッ!!)

 散の脳内にフラッシュバックするのは、ホテルでの平賀才人との死合い。
 その際に銃剣での一撃を受け、霞の右腕部に亀裂が入っていたのだ。
 故に、右腕を狙えば銃でも、霞の外殻を削ることも可能だろう。

「貴様、いつ亀裂に気付――ッ!?」

 先程までアーカードがいた場所を見て、アーカードがいないことに気付いた散は反射的に跳躍。
 その直後。一瞬前まで散がいた場所に、轟音と共にクレーターが生まれた。
 散の背後に突如現われたアーカードが、地面を手刀で抉ったのだ。
 そのあまりに人間離れした威力に――そして気付かないうちに背後を取られていた事実に、さすがの散も驚愕する。
 土煙が立ち込めるクレーター中心で、攻撃を仕掛けたアーカードは笑う。
 まるで狂人の様に、ひたすらに笑う。

「『銃が効かず、なす術が無い』……か。クッ、フハハハハハ……。
 私は銃以外の戦力も所持しているぞ? 吸血鬼とはそういうモノだろう?」

 アーカードの言葉は終わらない。
 まるで新しい玩具をねだる子供のように、まくし立てるように言葉を続ける。

「防護服に亀裂が存在する以上、今までの戦法は使えまい。これで終わりではないだろう?
 さぁ、何かを見せろ。私を愉しませてみろ。
 さぁ!! HURRY! HURRY! HURRY! HURRY! HURRY! HURRY! HURRY!」
「確かに、確かに私は貴様を見くびっていた。貴様が銃を使っているのを見て、身体能力はたいした事がないのだろう……そう考えていた。
 しかしそれは思い違いだった。貴様は強い。私に気付かれずに背後を取り、攻撃を仕掛ける事が出切るほどにな。
 それは認めよう。だが!」

 散が声を荒げる。

「霞を傷つけた以上、貴様の死は決定事項だッ!」

 そう言って散は腰を低く落とし、左手を後ろに伸ばし、左螺旋の構えを取る。
 狙う技は無論――零式防衛術奥義、螺旋。
 何千、何万、何十万もの敵と戦ってきたアーカードも、始めてみる構え――左螺旋の構えに心底嬉しそうな表情を浮かべる。

「来い、回避はしないぞ。全力で以って、攻撃を放て!」
「その油断を後悔する時間すら、貴様には与えん! 螺・螺・螺……螺旋!!」

 散が渾身の掌打を放つ。
 それは先程アーカードに放ったもの――弾とは違い、ただの打撃ではない。
 螺旋状のエネルギーを、打撃とともに相手に叩き込む。必滅の名に相応しい奥義。
 その螺旋を腹に受けたアーカードは、勢い良く後ろに吹き飛んだ。


「……おかしい」

 散が呟く。
 散の目の前には、アーカードが横たわっている。
 その足は通常曲がってはならない方向に曲がり、全身におびただしい数の裂傷、口からは臓物を出している。
 誰が見ても、死んでいると判断するような惨状。
 それにもかかわらず、散はアーカードの気配を肌に感じていた。

「何故だ、何故ッ! 未だに奴の気配を感じているッ!?」
「クカカカカ……クハハハハハハハハ! 素晴らしい! こんな技が存在するとは!!」
「なッ!? 何故生きて――」
「最初に言っただろう? 私を殺すには、心の臓腑を抉るしかないと」

 散の目の前でフラフラと、だがどこか優雅にアーカードが立ち上がる。
 足が折れているので奇妙な体勢だが、螺旋を受けたその体で確かに『立って』いる。
 そして右手を口に突っ込み、口内の臓物をかき出す。

「それにしても現人鬼、お前は実に面白い。故に―――貴様を分類A以上の化物と認識する」

 全身がボロボロの状態で、辛うじて無事な両手を散に向け、人差し指と親指で長方形を作る。
 そこから覗き込むように散を見て、ほんの一言だけ呟く。

「拘束制御術式『クロムウェル』――第3号第2号第1号、開放」

 直後、アーカードの禍々しい気配がさらに増幅。
 辺りに噴出した血が、肉片が、かき出された臓物が、漆黒のコウモリとなり辺りを飛び交う。
 それらが騒々しい鳴き声を上げながら、アーカードを覆っていく。

「何ぃッ!?」

 目の前で起こっている現象に、散が驚愕する。
 コウモリが、辛うじて立てる状態のアーカードを覆っていた。
 確かにそうだったはずなのに――

「治癒している!? 村雨と同じような能力か!」

 アーカードの体に付いた数多の裂傷が、修復されているのだ。
 外傷だけではない。
 折れた両足も、千切れていた真紅のコートも、そして臓物も、全てが修復されていく。
 そしてアーカードの全身に、無数の瞳が浮かび上がる。
 それらはアーカードの瞳と同じく、血のように真赤な色をしていて、その全てが目の前の敵――散を睨みつけている。
 このあまりに異質な状況に、さすがの散も恐怖――していない。

「面白い! 村雨のように怪我を治癒出切るというのなら、治癒出来なくなるまで――完膚なきまでに滅するのみ! この散と霞なら可能!!」

 そう言って拳を握る。
 散の心に恐怖など微塵も無い。
 あるのは『星義』、ただ1つ。

「では、再開しよう。フリークス同士の闘争を!」

 アーカードが銃に弾丸を込め、再び上空に掲げる。


 何よりも闘争を愛する不定形の吸血鬼と、胸に『星義』を秘めた現人鬼。
 人でいられなかった彼等の闘争の第二幕、それが今――

――BANG!!


【A-7 ゴルフ練習場周辺/1日目 昼(放送直前)】

【アーカード@HELLSING】
[状態]:ダメージ中(自然治癒中)、気分高揚、『クロムウェル』第3号第2号第1号開放
[装備]:フェイファー ツェリザカ(4/5)
[道具]:支給品一式  フェイファー ツェリザカの予備弾24
[思考]
基本:殺し合いを楽しむ。
1:散との闘争を楽しむ。
2:満足させてくれる者を探し闘争を楽しむ。
3:DIO、柊かがみとも再度闘争を楽しむ。
[備考]

参戦時期は原作5巻開始時です 。セラスの死を感じ取りました。
・首輪は外れていますが、心臓部に同様の爆弾あり。本人は気づいてます。
・DIOの記憶を読み取り、ジョセフと承太郎及びスタンドの存在を認識しました。

柊かがみをスタンド使いと認識しました。
【葉隠散@覚悟のススメ】
[状態]:右腕負傷、全身に中程度の負傷、中程度の疲労、右腕と右太ももに浅い裂傷
[装備]:強化外骨格「霞」(右腕部分に亀裂、右肘・右掌部を破損、全身に小ダメージ)
[道具]:支給品一式(散&村雨。デイバック一つにまとめてある)、不明支給品1~3品(村雨&散。確認済み)
[思考]
基本:人類抹殺。
1:アーカードを完膚なきまでに滅する。。
2:エリアA~D全域を探索し、ついでに施設の有無の確認。
3:人間を殺す。しかし、村雨のように気に入った相手は部下にする。
4:村雨の記憶を必ず取り戻してみせる。
5:才人のマスターのルイズに興味有り。ブラボーに僅かな執着心。
6:マリアを殺すのは最後。
7:十二時間後(約零時)に消防署の前で村雨と落ち合う。
[備考]
※施設の確認はあくまでも『ついで』なのでそれほど優先度は高くありません。
 またどのような経路を辿ってゆくかも後の書き手さんにお任せします。


111:心に愛を 投下順 113:大切なもの――SOLDIER DREAM――
111:心に愛を 時系列順 113:大切なもの――SOLDIER DREAM――
082:不死王、一人 アーカード 128:『Freaks』Ⅱ
108:倒れるまで走るくらい、熱く生きてみたいから――DORAGON LOAD―― 葉隠散 128:『Freaks』Ⅱ



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