銀の意志  ◆ga/ayzh9y.



(そう……全ての鍵は、あの時だ……!!)

考察を進めるにあたり、アカギは最初に集められた広場の事を思い出した。
思い起こしてみれば、あの時の光成は余りに不自然。
言動の中に、怪しすぎる点が幾つか見られた。
それに関しては、少なからず考えていたが……
主催者が変わったに違いない今、全てがはっきりと分かった。

―――じゃが、わしも知らされておらんかったじゃ。勘弁してくれんか


―――この闘いには、ワシの命がかかっとるじゃぁ!! 勝手なことをせんといてくれぇぇ!!

(あの老人は、俺達と同じだ。
主催者に選び出された一人に過ぎない……それが、遅かったか早かったかだけ……!!
奴は、参加者になりえたかもしれなかった一人……!!)

光成の正体は、自分達と全く同じ。
主催者によって、知らぬ間に呼び出された一人に過ぎない。
首輪こそしていなかったものの、主催者に命を握られている事には代わりのない、ゲームの駒の一つだ。
光成は自分達よりも早く呼び出され、そして己の役割―――ゲームの司会者としての役割を聞かされた。
逆らえば殺すという、暴力を背景にした脅し付きでだ。
そして、それ以外は……必要最小限な事以外に関しては、恐らく聞かされていない。
そう考えれば、彼が自分達の呼び出し方について言及出来なかった事も、説明がつく。

(光成が主催者として選ばれた理由も、極めて簡単だ。
光成が首輪をしないということは、奴には少なからず自由はある。
主催者への反逆とて、不可能じゃない筈だ。
しかし、それをしなかった……出来なかったんだ……!!
奴はあの広場でも、己の死の恐怖に怯えていた。
そう、奴には抗う力も覚悟も無い……非力なのだ。
主催者は、自分達に決して逆らう事の出来ない、優秀な駒が欲しかったに過ぎない……!!)

決して自分達には逆らわぬ、それでいて優秀な手駒。
そして……真なる主催者である自分達の正体を、隠してくれる存在。
その条件に当てはまるのが、正しく光成だった。
光成は広場において、躊躇うことなく一人の少女を爆殺した。
そしてその後も、平然とした態度でい続けていた。
それが意味する事は一つ……光成は、人の死ぬ様に慣れているのだ。
これが、例えば平山なんかだったらどうなっただろうか。
あの男の事だ……爆殺した女性の首無し死体を前にして、きっと動揺するに違いない。

(それじゃあ台無しだ……仮の主催者として、参加者を多少なりとも圧倒できる凄みが必要なんだ。
参加者に深く、悪党としての印象を植え付けられる凄みが……!!)

光成=極悪人という印象が強ければ強いほど、その影に隠れるものの存在は薄くなる。
そして光成は、見事その役割を演じきっている……格好の囮だ。
御蔭で、真の主催者の存在は、まだ殆どの者が気付いていないだろうが……
さて、重要なのはここ。
何故真の主催者は、自分達の正体を隠す必要があったのか。
あの勇次郎さえも盤上の駒に出来るだけの力を持っておきながら、何故堂々と姿を現そうとはしないのか。
そう……堂々と出来ない、何か理由があるに違いないのだ。

(真の主催者には、自分達の存在を俺達参加者に知られるとまずい、何かがある。
恐らくは、参加者の誰かが……真の主催者と関わりを持っている。
真の主催者が、恐れている存在……天敵がいる……!!)

核鉄、スタンド能力、人形、ホムンクルス。
このいずれか、もしくは複数か、それともまだ見知らぬ未知の力か。
この中に、主催者が恐れている存在がある可能性が高い。
首輪に使われている技術に関連しているのか、それとも単に、主催者の苦手な能力を持っているのか。
考えられる可能性は、幾らでもあるが……確実なのは一つ。
主催者の正体が露見しては……何かしら、不利が生じるということだ。

(……くくく。
どうやら、真の主催者とやらも……ゲームを支配し切れていないようだな……!!)

アカギは内心、真なる主催者を嘲笑っていた。
そんなに恐れている存在がいるのならば、最初からゲームに参加させなければいい。
しかし、それをしなかったのは何故か……理由は二つある。
まず一つ目は、このゲームの参加者を、主催者が全員任意で選び出したという訳ではないという可能性。
参加者のうち何人かは、ランダムに選び出され……その中に、主催者の天敵たる存在がいてしまったという事。
主催者自身、ギリギリになるまで参加者が分からなかったというパターン。
そしてもう一つは……その天敵たる存在が、必要でもあったという可能性だ。
呼ばなければいい相手を、呼ばなければならない理由があったいう事である。
はたしてどちらかは、まだ現時点での断定は出来ないが……どの道、主催者の恐れる存在がいるのは、まず間違いない。
それだけ分かれば、十分すぎる。
尤も、既にその天敵たる存在が死亡なりしている可能性もあるが……これも保留だ。

(さて……後の問題は、二つだ。
この首輪の解除と……どうやって、俺達があの広場に呼び出されたかの特定だ。
どちらも、主催者に戦いを挑むのには必要不可欠な要素……)

前者は勿論、主催者の手の上から逃れる為。
首輪をしている以上、主催者へと戦いを挑むのは不可能だ。
まずは、命を握られているという状況から逃れ……対等の立場に立たなくてはならない。
そして、後者はというと……これも、主催者へと戦いを挑む為だ。
主催者が、自分達をあの広場へと飛ばした方法の特定。
それは逆に言えば、主催者がいる場所へと乗り込む方法の特定である。

(こちらから、絶対に乗り込めないという場所ではない筈だ。
それだと、向こう側も何かと不自由が生じる……一方通行とは思えない。
あるはずだ……この会場内に、移動の為のヒントが必ず……ん?)

アカギが更なる考察を進めようとした、その時だった。
彼の視界に思わぬものが入り、その思考を中断させてしまった。
それは、吉良吉影との激闘の末、川へと落ち込み流されてしまった斗貴子であった。
アカギは彼女の姿を見るやいなや、迷うことなく陸地へと引き上げた。
所々破けた、すすけたセーラー服。
酷く焼け爛れた肌に、痛々しい断面図をした右手首。
そして……左手に握られている核鉄。
戦闘で傷ついたというのは、見るからに明らかだ。
アカギは、彼女が流れてきた方へと視線を向ける……病院側だ。

(……向こうは病院か。
この様子を見るに、どうやら爆弾やら火炎放射器やらでやられたようだが……勇次郎の本領は、明らかに素手だった。
こいつをやったのは、別の奴に違いないな……
病院か、それとも更に向こう側かは知らんが……いずれにせよ、やった奴が勇次郎と鉢合わせる可能性はある。)

勇次郎を差し向けておいて、やはり正解だった。
病院側には、恐るべき力を秘めた参加者がいる。
そいつと勇次郎が潰し合いをしてくれれば、大いにやりやすくなる。
目論見が上手くいってくれたことに、アカギは微笑を浮かべた。

その後、アカギは斗貴子の手から核鉄を没収し、そして彼女のデイパックを押収する。
アカギが彼女を引き上げた理由は、大きく分けて三つある。
まず一つ目は、今行ったとおりに支給品を得る事。
このゲームを乗り切り、そして破壊する為には、支給品の存在は必要不可欠だ。
二つ目は、情報収集。
彼女が生きているのであれば、知ってる限りの事を聞き出したい。
自分には幸い、傷薬も包帯もある……治療を代価にして、聞き出す事は可能だ。
そして三つ目は、彼女が死んでいるのであればだが……首輪を手に入れる事が出来る。

(さあ……どっちだ?)

アカギは斗貴子の腕を取り、脈を取った。
微かではあるが、動いている……まだ、息がある。
ならばと、アカギはデイパックから包帯を取り出し、そして彼女の体を縛り始めた。
もしも彼女がゲームに乗っているのならば、襲われるのは確実。
身動きを完全に封じ、何も出来ない状況にした上で、彼女とは接する必要がある。
両腕を胴体にしっかりと巻きつけ、そして足首も両方とも強く縛った。
そして、最後の仕上げとして……目隠しを施す。
少々悪趣味ではあるが、これならば抵抗の仕様は無いだろう。
後は、目が覚めるのを待つのみ……それまでの間、アカギは彼女の支給品をチェックする事にいた。

(小薄汚い本に、精々小学生サイズの靴、宝石……それに、銃の予備弾薬か。
肝心の銃が無いのは気になるが、どの道この弾は使用不可能だ。
水に濡れて、使い物になりそうにない……一見すれば、核鉄以外は完全に外れだ。
だが、靴と弾は兎も角……本と宝石は、何か価値がありそうだな。
後で集まった連中に、聞いてみることにするか……)

核鉄の様な、未知の支給品が存在するこのゲームだ。
一見無意味に見えるものでも、何かがある可能性は否定できない。
役に立つかもしれないと思って、アカギはそれらの支給品を自分のデイパックに移した。
そして、その後……斗貴子が持っていた核鉄を手に取り、発動させてみる。

「武装錬金。」

掛け声を聞き、核鉄がその姿を変える。
アカギは、その手に出現したサンライトハートをしばし監察した後、軽く素振りをしてみた。
見たところはただの槍……しかし核鉄の武器である以上、何かしらの機能があるに違いない。
そう思いつつ、真っ直ぐに槍を突き出してみると……

「何……!?」

光を放出しながら、槍先が伸びた。
この光景を目にし、アカギは思わず声を出してしまった。
彼が驚かされたのは、サンライトハートの性能そのものではない。
サンライトハートが放った、光の色にあったのだ。
これは確か、先程喫茶店で見たあの光と同じ。
執事服の男が言っていた、カズキとやらの武器によるものだ。

(そういえば、名前が放送で呼ばれていたな……こいつが殺したのか?
それとも、単なる火事場泥棒か……)

武藤カズキという名前を、先程の放送で聞くことができた。
恐らくは、あの光―――確か、B-3の辺りから発せられていた―――を発した戦いの中で、命を落としたのだろう。
だが……斗貴子が流れてきたのは、病院のあるF-4側。
B-3からF-4まで、距離がそれなりにある。
それに、最低でもF-4……もしかすると、もっと遠くから流れてきた可能性だってある。
あの光が発せられた時点からでは、時間的に移動が可能とは思えない。
だが、現にこうして彼女はここに……このサンライトハートを持って、流れ着いている。
モーターギアの様な、高速での移動を可能とする何かを使ったのだろうか。
それとも、自分が最も欲している手段―――ワープの類を使ったのだろうか。
もし後者だとするならば、主催者のいたあの場へと乗り込む方法が、分かるかもしれない。

(くくっ……!!
いいぞ……ツキは今、俺にある……!!)
「うっ……」
「お……気がついたか。」
「これは……!?
くそ、体が……!!」
「悪いな……暴れられちゃ面倒なんだ。
こちらの質問が終わるまで、大人しくしててもらうぜ。」

ここで、斗貴子が目を覚ました。
彼女は己の置かれている状況を即座に理解し、何とかしようと体を捩らせる。
だが、どうにもならない……斗貴子は大きく歯軋りし、アカギの声がした方向へと目を向けた。

「貴様……!!」
「そう、怖い顔をするな……質問が全部終わったら、解いてやらないこともない。
それじゃあ、早速だが単刀直入に聞くぞ……お前はゲームに乗っているか?」
「……そういうお前は、どうなんだ?」
「あんたが答えるなら、教えてやるよ。」
「……分かった。
私は……このゲームには、乗っていない。」
「乗っていない、か……」

斗貴子はアカギの質問に対し、自分は乗っていないと答えた。
そう答えなければ、この拘束は決して解かれないだろうという事ぐらい、誰だって理解できる。
だから、嘘をついた。
しかし……アカギは、その言葉を信用しなかった。
斗貴子は嘘をついている……彼女はゲームに乗っていると、分かっていたからだ。
そう判断した理由は大きく分けて二つ。
一つは、ずばり直感だった。
先程、斗貴子は酷い怒りの形相で此方を睨んできた。
あの表情を見て、アカギは直感したのだ……斗貴子は、ゲームに乗っていると。
アカギとて、博打打ちとして様々な死線を潜り抜けてきた身。
かつて、市川に拳銃を向けられた時の様に、チキンレースの報復に合わされた時の様に、鷲巣の狂気を相手にした時の様に。
対する相手に、明確な殺意があるかないか……それを感じ取るのは、アカギには容易な真似だった。
だが、それ以上に決め手となったのは、二つ目の理由。
彼女は自分の問いに対し、即座に答えようとしなかった。
少しばかり、間を置き……それからやっと答えた。
本当にゲームに乗っていないのであれば、躊躇う必要がどこにあろうか。

「安心しろ、俺も同じだ……ゲームには乗っていない。
俺は赤木しげる……あんたは?」
「……津村斗貴子だ。」
「分かった……じゃあ津村、次の質問に移らせてもらうぞ。」

しかしアカギは、すぐに言おうとはしなかった。
ここで彼女の嘘を暴いても、得など何もありはしない。
自棄になって口を紡がれたりしては、全てが台無しだ。
だが……あまり焦らし過ぎても、逆に話そうとしなくなるかもしれない。
だから、聞きたいことは早いうちに聞く……聞かなければならない。
アカギは早速、自身が最も気にしていた事について尋ねてみた。

「この核鉄……サンライトハートって呼んでいたな。
こいつの持ち主は、武藤カズキって奴のはず……あんたはこれを、どうやって手に入れた?
俺は、そいつがB-3の辺りにいたのを確認している……あんたが流れてきた場所から、かなり離れているぞ……?」
「―――!!」

アカギの言葉を聞き、斗貴子は大きく目を見開いた。
何故この男が、カズキの事を知っているのか。
しかも……サンライトハートの存在に加えて、その位置情報まで。
ここまで詳しいことを知っている理由は何か。
この時、斗貴子の脳裏に浮かんだのは、最悪のケース。

(この男が……カズキを殺した……!!)

カズキを殺した人物が、目の前にいる。
斗貴子は、愚かにもそう判断してしまったのだ。
もしも彼女に、少しでも本来の冷静な判断力があれば。
憎悪と殺意に心を支配されてさえいなければ、別の可能性を考慮できていただろう。
だが……今の斗貴子には、それは無理な事であった。


―――殺す。

―――殺す、殺す、殺す。

―――殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す……!!

―――カズキを殺した、この男を……殺す……!!


「アアアアァァァァァァァァァァッ!!!」
「っ!?」

斗貴子は雄叫びを上げ、全身へと渾身の力を込めた。
彼女を突き動かすは、どす黒い殺意。
何があろうともアカギを殺そうという、異常なまでの執念。
ぶち、ぶち、と音を立て、包帯の拘束が解かれようとしている。
しろがねと化し、身体能力が向上したからこそ成せる芸当。

「武装錬金!!」

とっさにアカギは、もう片方の手で握っておいたモーターギアを発動させ、自分の足へと装着させた。
拘束を解かれるという事態は、十分予想していた。
だからすぐに臨戦態勢に入れるよう、モーターギアを常にその手で握り締めておいたのだ。
そして、その直後……斗貴子の、両腕と両足の拘束が解かれた。

「貴様が、貴様がカズキをぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!」

斗貴子は人間離れした瞬発力で、アカギに急接近。
その拳を、彼の顔面へ向けて突き出した。
しかし、アカギは即座に後方へと下がり、ギリギリのところで回避する。
斗貴子はアカギにも聞こえるほどの大きな舌打ちをした後、目隠しの包帯を剥ぎ取り、怒りと殺意の色に染まった瞳を彼に向けた。
この時、彼は知る由もなかっただろうが……既にその瞳の色は、しろがね特有のそれに変化していた。

「殺す……殺す……!!」
(くく……成る程、そういうことか……!!)

斗貴子の先程の一言で、アカギは全てを悟った。
彼女は武藤カズキの関係者であり、彼が死んだからゲームに乗った。
彼を蘇らせる為、狂気と殺意に身を任せているのだと。
その為、錯乱して自分を殺人犯と誤認してしまっているのだと。
そして、彼女がこうした反応を見せてくれた御蔭で、この核金がサンライトハートであるという確証が取れた。
見間違えかもしれないと、先程は少しばかり考えていたが……その可能性は、今消えた。
そして……もう一つ、最も重要な事を知ることが出来た。
実はアカギのここまでの推理には、一つだけ穴があった。
それは、サンライトハートが『複数』存在している可能性である。
カズキにサンライトハートが支給され、そして斗貴子にもサンライトハートが支給された場合、全てがぶち壊しになるからだ。
だが……その可能性も、今消えた。
斗貴子のこの反応は……カズキがサンライトハートを持っていたということを、知っていなければありえない。
カズキの持っていたサンライトハートを手にしたのでなければ、ありえない反応だ。
そうでなければ、幾ら冷静さを欠いているとはいえ……いきなり発狂するのは妙である。
アカギはこれで確信した。
斗貴子の中には、カズキ=サンライトハートという図式が出来上がっている。
だから、発狂に至れた……彼女は確実に、カズキの死体からサンライトハートを押収したのだと。
ならば彼女は、押収後に何らかの方法で長距離を短時間で移動したということになるが……

(……いや、断定するにはまだ早い。
考えを一つに縛っていては、真実には辿り着けやしない。
そうだ……逆に考えろ……!!)

アカギは、ここで発想を逆転させてみる。
結果、面白い考えが浮かび上がってきた。
そう……斗貴子がサンライトハートを持って移動したのではなく、サンライトハートの方が彼女の元へと移動してきたとしたら。
それはつまり、自分自身がワープ『する』のではなく、任意の対象をワープ『させる』力という事になる。
考えてみれば、あの広場からこの会場へと、自分達を瞬時に移動させたあの技術。
あれはまさしく、その力ではないか。
そして……恐らく、核鉄はカズキの死体ごと彼女に送られたに違いない。
そうでなければ、サンライトハートがカズキに支給されたということを彼女は知れない。
ならば、誰が斗貴子の元へと核鉄を送り届けたのか。
武藤カズキを殺害した、ゲームに乗っている人物か?
否……核鉄という強力な力を持つ支給品を、態々マーダーが手放すわけがない。
彼と一緒にいたというナギお嬢様とやらか、その現場に駆けつけた執事服の男と承太郎か?
確かに、あの執事服の男は甘ちゃんに見えた。
その主がどんな者かまでは分からないが、カズキの遺品を届けたいと願い、そして何らかの方法で実行した可能性はある。
だが……承太郎は違う。
あの男は、かなり頭が切れる……こんな危険なゲームで、態々強力な武器を溝に捨てるような真似をする筈がない。
なら、二人が駆けつける前に、ナギお嬢様とやらが独断で行ったのか?
否……その可能性も、極めて薄い。
執事服の男は、そのお嬢様とやらを守るためにカズキが戦っているかもしれないといった。
つまり、そのお嬢様自身には戦う力なんてものはない……非力な存在という事になる。
そんな者が、残された強力な武器をみすみす捨てるとは考えにくい……これは命の取り合いなのだ。
自衛の為の手段は、最低限確保しなければならない。
まあ、余程のお人よしという可能性もゼロではないが……この考えが限りなく低い可能性なのは、確かだ。
いや、そもそもそれ以前に、死体ごと送りつけるというのは悪趣味すぎる。
そんな事をしても、悪い結果しか起こらないのは目に見えている……彼等に限って、絶対にありえない。
ならば……彼女の元に、誰が核鉄を送り届けた?
他にカズキの事を知る、見知らぬ第三者が行ったのか?
確かに、その可能性はあるにはある……だが。
もう一つ……それよりも、遥かに大きな可能性のあるケースが残されている。

(簡単だ……この女は、ジョーカーだ。
主催者が、殺し合いを円滑に進めるべく選んだ……奴等の鬼札……!!)


アカギは、この斗貴子は主催者が選び出したジョーカーだと考えていた。
先程の放送で、向こうは優勝賞品の話を持ち出してきた。
そうした目的は、先程も考えたとおり、主催者達が思っていたほど殺し合いが起こらなかったからだ。
だから、殺し合いを促進させる為に優勝賞品の話を持ち出してきた。
しかし……主催者が果たして、これだけの介入で事を済ませるだろうか。
答えは否……殺し合いを促進させたいのならば、もっと効果的な手段がある。
凶悪な殺人鬼―――ジョーカーを用意し、ゲームに波乱を巻き起こさせる。
精神的揺さぶりをかけて、殺し合いに乗らざるを得ない心理に持ち込む。
これこそが、もっと効果的な手段……そして、目の前にいる斗貴子が、今まさにその役割を果たしている。
こう考えれば、全てに納得がいく。
わざわざ死体ごと核鉄を送りつけたのは、彼女をジョーカーに仕立て上げる為。
その精神を粉々に破壊し、殺人鬼へと変貌させさせる為だ。

(そしてこの女は、その事実を知らない。
主催者にいいように踊らされていることに気づかない、哀れな傀儡……!!
だが、こうなっては説得はもはや無駄だ……力ずく以外、止める方法はない……)

アカギは今、ここで斗貴子と戦うか否かを考えていた。
一見、丸腰で重傷という、とてもじゃないが戦える状態ではない。
戦えば、まず間違いなく勝てる相手に見える。
だが……ジョーカーとして選ばれた以上、彼女には何かがある様にアカギには感じられたのだ。
先程の、拘束を解かれた時なんかがいい例である。
ならば、ここで引くか。
それが賢明な判断なのは、間違いないだろう……だが。

(この女が仕留められれば、主催者は確実に動く。
鬼札が止められたとあっては……何かしらのリアクションを起こさずにはいられない……!!
新しいのを補給しに、別の参加者と接触するか。
それとも、俺の前に直接現れるか……いずれにせよ、何かしら起こる可能性は高い……!!)

斗貴子を倒すというのは、かなりのメリットがある行為。
少なくとも、主催者の目論見を一つ打ち砕くことができるのは確実。
願ってもない幸運……ツキが巡ってきているのだ。
この流れ、ここで手放す訳にはいかない……!!

「いくぞ……!!」

アカギはサンライトハートを核鉄に戻し、そしてグリモルディに持ち直す。
彼は敢えて、戦う道を選んだのだ。
逆に、自分が殺される可能性も十分ありえる……この状況下においてである。
傍から見れば、不合理な行動としか思えない。
だが……それこそが、アカギの真髄。

「不合理こそ博打……それが博打の本質……博打の快感……!!
不合理に身をゆだねてこそギャンブル……!!」

人間業を超えた、まるで悪魔が如き天賦の才を持つアカギ。
人間を捨て、しろがねと成り果てた斗貴子。
主催者の打倒を目論む博打打ちと、主催者の思惑通りに動くジョーカー。
銀色に輝く髪を持つ、対極にあるようで、しかし似ている二人。

二人の意志が……銀の意志が、今交錯する。

【F-3 北東部/1日目 午後】
【赤木しげる@アカギ】
[状態]:健康
[装備]:基本支給品、グリモルディ@からくりサーカス 、核鉄(モーターギア)@武装錬金
     核鉄(サンライトハート)
[道具]:傷薬、包帯、消毒用アルコール(学校の保健室内で手に入れたもの)
ヴィルマの投げナイフ@からくりサーカス (残り9本)、 始祖の祈祷書@ゼロの使い魔(水に濡れふやけてます) キック力増強シューズ@名探偵コナン
水のルビー@ゼロの使い魔
[思考]
基本:対主催・ゲーム転覆を成功させることを最優先
1:斗貴子を打ち倒し、主催者達の目論見を破壊する
 (殺害・生け捕りのどちらでも大丈夫と考えている)
2:対主催を全員説得できるような、脱出や主催者、首輪について考察する
3:1が終わったら、病院にいく
4:強敵を打ち破る策を考えておく
5:このバトルロワイアルに関する情報を把握する
(各施設の意味、首輪の機能、支給品の技術 や種類など。)
6:鳴海たちと合流するため、8時前には学校に行く

※光成を、自分達同様に呼び出されたものであると認識しています。
※参加者をここに集めた方法に、
スタンド・核鉄・人形のいずれかが関係していると思っています。
※参加者の中に、主催者の天敵たる存在がいると思っています
(その天敵が死亡している可能性も、考慮しています)
※斗貴子は、主催者側の用意したジョーカーであると認識しています。


【津村斗貴子@武装錬金】
[状態]:アカギに対して、酷く激怒。
    しろがね化 精神崩壊、判断力低下(本人は極めて正常だと思っている)、右手消失、全身大火傷
    非常に危険な状態であり、早急に処置しなければ死ぬ可能性もある。
[装備]:無し
[思考・状況]
基本:最後の一人になり、優勝者の褒美としてカズキを蘇らせる。
1:カズキを殺したアカギを、この手で殺す。
2:強者との戦闘は極力避け、弱者、自動人形を積極的に殺す
3:吉良、勇次郎、軍服の男(暗闇大使)は最終的に必ず殺す。

※本編終了後、武装錬金ピリオド辺りから登場
※全身に酷い火傷を負っており、右手も消失と、かなりの重傷です。
 今は気力で持ちこたえてますが、早急に処置をしなければ、命の危険があります。
※セーラー服はボロボロに焼け焦げており、所々に穴が空いています。
※軍服の男(暗闇大使)は参加者の一人だと勘違いしています
※斗貴子が飲んだ液体は生命の水(アクア・ウィタエ)です
また斗貴子は生命の水の事は知らず、只の治療薬の一種かと思っています
※カズキの死体は暗闇大使に掘り起こされました。
また暗闇大使は大首領の力を借り、ワープ能力を使いました
今後暗闇大使が介入するかは不明です
※しろがねとなったため、身体能力、治癒力が向上しています
また斗貴子はまだその事に気付いていません
※核鉄の異変に気づきました
※アカギがカズキを殺した張本人だと、思っています。


144:らき☆すた 第X話 あるいはこんな日常 投下順 146:更なる舞台(ステージ)へ
144:らき☆すた 第X話 あるいはこんな日常 時系列順 146:更なる舞台(ステージ)へ
135:ありったけの憎しみを胸に 津村斗貴子 149:大乱戦
129:大切なのはゲームのやり方 赤木しげる 149:大乱戦