新しい夜が来た、闘争の夜だ ◆uiAEn7XS/.



日が落ちる。
真っ赤に染まった太陽がその下にあるすべてを紅く染める。
遠くに見える町並みから風が吹き、人気のない林と鉄塔とアスファルトだけの風景を駆け抜けていく。
そしてその先に建つ飾り気の無い変電所、そこにたたずむ男が一人。
男はその風を吸い込み、空を仰いだ。

――懐かしいにおいがする。

打ち倒される男のにおい、突き刺される女のにおい、撃ち殺される子供のにおい。
血にまみれた死のにおい。
いくさのにおい。
さあ征こう。その死の、そのいくさの真っ只中へ。

「――だが、その前に」
男はおもむろに傍らの金網の支柱を素手で、しかも片腕で引っこ抜いた。
邪魔な金網をやはり素手で引きちぎり、そのままがりがりと地面にこすりながら、歩いていく。
目指す先は男がはじめて目にする場所だ。だがその景色を、その男は知っている。
そこに何があるのか、その記憶を「食った」から知っている。
アスファルトの道路を外れて、木々が林立する林の中へ、そしてやがて土を掘り起こしたような形跡のある場所で足を止める。
ざくり、とそこの地面に引きずっていた鉄柱を深々と突き刺した。
「ゴールド・エクスペリエンス」
その声と同時に、何の前触れも無く黄金のヒトガタが出現する。
人とは思えぬ、だが機械とも思えぬそれが、地面に突き刺さった鉄柱をビシリと拳で打つと、何の変哲も無い鉄の塊が見る間に枝を広げ、一本の木へと姿を変えた。
そして、その木は地面に突き刺さった部分からも枝を広げていき、その周りの土を掘り起こしていく。
やがてその枝によって持ち上げられ、土の中から姿を現したのは、ひどく傷ついた少年の無残な死体だった。
男はその少年に会ったことは無いが知っている。
その記憶を持つ者を「食った」から知っている。
男は血液という命の貨幣を媒介として食った人間のすべてを受け継ぎ、永遠の時を生きる呪わしき化け物だからだ。

「はじめまして。そして、また会ったな」
そう言って笑う男は、吸血鬼アーカード。
物言わぬ少年の遺体は生前、桐山和雄と呼ばれていた。

桐山の死体は死後数時間を経た今、あちこちに死斑が浮かび、凄まじい血の臭いが鼻につく。
だがアーカードはそんなものを一切気にせず、死体を抱え上げてその顔をゆっくりとなで、そして顔を近付けてそっとささやいた。
「お前は死んだ。お前の望むままに。この殺戮遊戯を盤ごとひっくり返す逆転劇のために。
お前には何があった?防人には化け物を打ち倒すほどに研き抜かれた力と技があった。
DIOには、私とは別種の吸血鬼としての能力と、スタンドという超常の能力があった。
散には零式という技と、強化外骨格「霞」があった――ではお前は?」
桐山の死体が答えるはずも無く、だがアーカードは構わず次の言葉を紡ぐ。
「お前には何も無い。何故ならお前は人間だからだ。
私は体を変化させ、使い魔を使役し、力をふるい、心を操り、再生能力を持ち、生き血をすすり己の命の糧とする。
だがお前は何もできない。この殺し合いの場で、鬼札ぞろいの鉄火場の中で、手にあるのは己の命という名のちっぽけなチップ一枚。
それでもお前は勝利を目指した。己の命すらも捨て駒に使い、防人という手持ちの中で最大の切り札を温存した。
お前は正しい。防人は私の心臓を掴み出す、手の届くあと少しのところまでたどり着いた。だが――」
アーカードの手にわずかに力が入り、桐山の頬にその指が食い込む。
血はすでに流れきっており、赤い肉の断面がわずかに覗いただけだった。
「届かなかった。その原因はお前が防人を温存したことにより、結果として私に食われた散の持っていたDISCだ。
皮肉だな。まったくもってお前は正しい。これ以上ないほどに。だが、ゆえに私は勝利した!敗れることはできなかった!!」
それはささやきではなくもはや慟哭のようであった。風が木々を揺らす音はそれすらも運び去っていく。
「不死というものはあまりに強大だ。強大な力はあまりにも眩しい。何も見えなくなるほどに。
だがそれでも、だがそれゆえに、それゆえに化け物を倒すのは――人間でなくてはならないのだ!!」

やがて日は沈み、影は伸びていく。風はいつのまにか止んでいた。
静まり返った林のなかで、命の音は何一つとして聞こえない。
「くくくくく…………はははははははははははははは」
アーカードは笑う。いつものように傲岸不遜に笑う。
鬼は泣かない、化け物は泣かない。そのために「そう」なったのだから。
だから笑うのだ。次の戦いのために、戦いを楽しむために笑うのだ。

「ゴールド・エクスペリエンス、首輪を蛇に変えろ!」
アーカードの命じるままにスタンドの拳が桐山の首に巻きついた金属のフレームに触れる。
首輪がぐにゃりと形を変え、そして蛇となって桐山の首から外れ――なかった。
バチバチと生命エネルギーがショートするように火花が飛ぶ。
歪んだ首輪の形が伸びたり縮んだり、むちゃくちゃに変形を繰り返し、やがて爆発。
爆発の衝撃で舞い上がった桐山の首をアーカードが器用に片手でキャッチする。
彼の手を離れた胴体から下はそのまま地面に崩れ落ちた。
「…………はん。やはりな。そう単純なことにはならんか」
爆発に巻き込まれたもう片方の手を再生させながらアーカードはつまらなそうに呟いた。
この首輪は見るからに機械としか思えない。
だが、DIOの『世界』や、ジョセフの『隠者の紫』、さらにはこの『G・E』といったスタンド能力を考えれば、ただの機械では簡単に外されてしまう。
『G・E』は生物を変化させることはできない。ならばこの首輪は生きているのか。
いや、むしろ他のスタンド能力による解除を防ぐならば、これ自体がスタンド能力であるほうが――

そこでアーカードは考えるのをやめた。それは自分の目的ではない。
自分の目的、それは闘争だけだ。
殺し、殺されるために。倒し、倒されるために。ただそのためだけに。
ならば敵に塩を送るのも、戦いを楽しむためには悪くないかもしれぬ。ふと、そう思った。
「……余興のうちだ。ただの下らん、普通のな」
核鉄。そしてスタンド。
どちらも人間が生み出した、化け物を倒すための力であり、化け物を生み出す力でもある。ならば、すでに化け物である自分には不要のものだ。

「ゴールド・エクスペリエンス。この首を梟に変えろ」

桐山の首が2倍ほどの大きさに膨れ上がり、大型の梟に変化する。
そしてアーカードは自らの頭部からDISCを抜き出した。
梟はそれを核鉄とともに、その爪で掴み上げて夕焼けの空へ舞い上っていく。

梟ならば夜目も利くだろう。
いけ。
この殺戮の狩場で怯えて震えるものが運よく拾ったのなら、その力で足掻くがいい。
もし力を持つものが拾ったのなら、この私を打ち倒してみせるがいい。
化け物でもいい。狗でもいい。人間ならば素晴らしい。
だが自らの無力を嘆き、諦めを踏破することのできない者は必要ない。
絶望に染まったものは生きながらにして死人と同義だ。ならば死ね。
諦めるな。
その瞳に希望の炎を宿せ。


そして―――この私を打ち倒してみせろ。


梟が夕闇の彼方に消えていくのを見届けてから、アーカードは次なる行動に移ることにした。
村雨はこの会場の東部にいる。
DIOはあれからだいぶたってはいるが、北部へ向かったはずだ。
まだ見ていないエリアはこれらの方角と一致しており、さらに線路沿いの施設にはまだ見ぬ他の人間、もしくは化け物がいるかもしれない。
どちらもここからは距離がある。
――ならば、これを使うか。
そして一枚の紙片を取り出した。
その紙片を指先で器用に開くと、アーカードの目の前に一台のバイクが飛び出す。
そのことに今更驚く風でもなく、口の端をわずかに歪めて、そのバイクにまたがった。
「……む」
アーカードの体格は軽く190cmはある。偉丈夫といっていいだろう。
だがそれは50ccのいわゆる原付バイクであり、さらに元の持ち主と比べると、西洋人系のアーカードの体格に合っているとは言い難い。
どこがというと…………体格全体、特に足の長さとか。
アーカードは顎に手を当てて、視線をどこかに定めるでもなく宙を仰いだ後、ぐるりと周りを見渡した。
変電所、アスファルト、鉄塔、夕闇の林、所々にぽつんぽつんと建っている民家に車やバイクといった類のものは見えない。
この原付バイクを使うしかないとなれば――

「……まあいい。ならばこちらの体を合わせるまでだ。姿形など私にとっては何の意味もない」

ぺけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけ……

軽快なエンジン音を響かせながら、一台の原付バイクが夕闇迫る道路を疾走する。
そのバイクに跨る人影はつやのある長い黒髪をなびかせ、それが地平線に落ちる寸前の夕日にきらめいていた。
小さな背中に荷物をまとめたデイパック。そこから飛び出したショットガン。
コートの上から首にかけたマフラーをなびかせて、美しい黒髪の少女――アーカードは目的地目指してさらにスピードを上げる。

新しい夜が来る。闘争の夜が来る。
パーティが始まる。お相手はよりどりみどり。
人をやめた化け物共、そいつらを打ち倒すために研き抜かれた戦士達。
何の武器も技も持たず、だがそれでも足掻く人間たち。
一木一草ことごとく、立ちふさがる敵を朱色に染め上げよ。
見敵必殺。見敵必殺!

王立国教騎士団『HELLSING』所属ゴミ処理係、吸血鬼アーカード――――出撃。原チャリで。


ぺけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけ……


【A-8 変電所周辺/1日目 夕方】

【アーカード@HELLSING】
[状態]:原チャリで移動中。ロリ状態(外伝および9巻参照)。
全身にダメージ中、特に頭部、胸部、腹部にダメージ有り(吸血鬼による能力で自然治癒中)、

[装備]:フェイファー ツェリザカ(0/5) 、レミントンM31(4/4) 、銀時の原チャリ(@銀魂)、
[道具]:支給品一式、スタングレネード×4、
色々と記入された名簿×2、レミントン M31の予備弾22、 お茶葉(残り100g))
[思考]
基本:殺し合いを楽しむ。
1:戦いの相手を探す(行き先は次の書き手さんに任せます)。
2:満足させてくれる者を探し闘争を楽しむ。
3:DIO、柊かがみ、劉鳳、アミバ、服部とも再度闘争を楽しむ。
[備考]
・参戦時期は原作5巻開始時です 。
・首輪は外れていますが、心臓部に同様の爆弾あり。本人は気づいてます。
・DIOの記憶を読み取り、ジョセフと承太郎及びスタンドの存在を認識しました。
・柊かがみをスタンド使いと認識しました。
・散、ブラボーの記憶を読み取り、覚悟・マリア・村雨・劉鳳・タバサ・服部・アミバ・斗貴子・パピヨンの情報を得ました。
・首輪そのものがスタンドではないかと推測。

ゴールド・エクスペリエンスのDISC、核鉄(シルバースキン)を持った梟(桐山の首)が会場をさまよっています。
ゴールド・エクスペリエンスは人体を創る事は出来ません。
変電所周辺に桐山の首なし死体が放置されています。
またその傍に名簿を抜いた支給品一式が入ったデイパック×2が放置されています。


153:一歩進んで 投下順 155:万事屋銀ちゃんの店仕舞
153:一歩進んで 時系列順 155:万事屋銀ちゃんの店仕舞
138:遥かなる正義にかけて アーカード 162:三村信史は砕けない