弟 ◆WXWUmT8KJE



 ガタンゴトン……
 電車の揺れにハヤテは身を任せ、外を見つめる。
 次々と電柱が通り過ぎ、夜の街を映す。電車の窓に映る自分の顔は憂鬱そうだった。
 それもそうだろう。ジョセフとの約束どおり、ナギと合流して村雨を止めることができるのか、不安でたまらないからだ。
 ハヤテとしては、村雨に幾らか感情移入していることもあり、できれば助けてやりたい相手でもある。
 かがみに関しても、こなたを知っている身としては、どうしても助けてあげたい。
 村雨を悪者にしない。
 かがみを助け出す。
 二つを叶えるのは都合がよすぎるのかもしれない。
 しかし、ハヤテには『覚悟』がある。己が命をも厭わないほど、強烈な覚悟が。
 もともとはガモンに対する怒りだった。
 仲間を失った村雨に対する同情であった。
 アーカードに対する、大切な人を失うかもしれないという恐怖だった。
 それらを、自分だけの力ではないとはいえ、ハヤテは乗り越えて覚悟に変えていったのだ。
 拳をぎゅっと握って、村雨がいるだろう方向を見つめる。
(承太郎さんなら、村雨さんを有無を言わさずぶん殴って、気絶した状態で引きずるんだろうな)
 容易に想像ができ、ついぷっと吹き出す。
 かがみを誘拐するときの村雨を承太郎が見たのなら、確実にオラオラの対象だ。
 血縁であるジョセフと同様に怒りを示しただろう。もっとも、承太郎ならジョセフと違い、表面上は静かだろうが。
(けど、死なせるわけにはいかないよな……)
 ジョセフにも言ったように、なぜ自分が村雨に感情移入するのか分からない。
 自分にキスを迫ったため、嫌悪感を抱いてもおかしくないのに、不思議と村雨を嫌う気にはなれなかった。

 ―― 理解したいと思う。

 村雨の言葉がハヤテの耳に蘇る。
 羨ましそうに、寂しそうに呟いた彼の言葉をハヤテは信じたい。
 いや――――
(僕は裏切らない。たとえ百回騙されたとしても、百回裏切られたとしても――)
 自分を救ってくれて、共に戦った村雨を、ハヤテは裏切れるはずがなかった。
 パピヨンが知れば、偽善者と呼ばれたかもしれない。
 それでも構わないとハヤテは思って――前方にヒナギクと、一人の少年がいるのを目撃する。
 最初、光成に宣戦布告を行った少年、零の盟友葉隠覚悟。
 完璧超人にして、正義感の強い生徒会長、桂ヒナギク。
 駅の前に佇む二人を目撃して、電車は駅へと近寄る。
 ハヤテは慌ててドアの前に立ち、一刻も早くドアが開かないか祈る。
 やがて、電車の揺れは小さくなっていき、プシューという音と共にドアが開いた。
 ハヤテは焦る気持ちのまま、ドアに身体をぶつけながらヒナギクの下へと駆けていく。


 覚悟は地面に俯き、その身を震わせていた。
 本来なら、見るもの全てに本来の身長を超え、大きく広く見せていた背中は、年相応の広さへと変化して見えた。
 隣にいるヒナギクも、涙を流しながら無言。時々聞こえる嗚咽は覚悟自身を責めているように錯覚していた。
 ルイズの意思を汚し、川田やつかさ、ヒナギクを守ることを選択した。
 己の弱さだと思ったが、覚悟はその弱さを受け入れるつもりであった。
 しかし、結果はどうだ?
 つかさは殺され、川田は殺し合いに乗った。自分が選んだ選択は悪手以外何物でもない。
 守りたかった友。
 それを汚したのは、覚悟自身に他ならない。
 ルイズの意思を汚し、つかさの死を汚し、川田の誇り高き精神まで汚した。
 最早、自分を許せる範囲を超えている。
 覚悟は怒りを他人に向けることはない。
 常にその怒りは自分に向け、無力な人の牙となることに専念していた。
 それが――ただの一度、友のための牙となっただけで、全てを失う羽目になった。
(俺は未熟だ。どうしようもなく、愚かだ!!
己の願いを優先した結果、心を繋いだ友を失っただけではないか!!
すまぬ、零……。今の俺には、お前を纏う資格など…………ない!!)
 コンクリートの道路を覚悟の爪が削り、指先から血が滲み出る。
 葉隠覚悟、心も身体も、真の敗北が訪れようとしていた。


(つかさ……ごめん)
 力なく心のうちで呟くのは、桂ヒナギク。
 マリアが死んだ時も、本郷が死んだ時も、どうにか気丈に保っていた精神が今、打ちのめされていた。
(力に……なれなかった。つかさが死んで、一番辛いのは川田くんのはずなのに、私は何の力にもなれなかった……)
 この殺し合いで、心を許せる友達がいた。
 この殺し合いで、共に反逆を決意した友達がいた。
 今はもう、一人は死んで、一人は殺し合いに乗ることになった。
 何よりも辛いのは、
(川田くんの気持ちが、よく分かる。つかさ、いい子だったから――)
 涙が止まらない。想いが溢れる。
 共に過ごした時間は短くても、その関わりはとても濃く、変えがたいものであった。
 つかさの笑顔はもう見られない。
 本郷を失って、つかさが悲しい顔をした顔をもう見れない。
 川田と初々しい付き合いで見せた、可愛らしい恥じらいの顔はもう見れない。
 主催者の狙いを知った時、友達が弱者として死んだと知って、怒りを見せたつかさの顔はもう見れない。
 こんな時に限って、つかさとの思い出が鮮明に蘇り、胸が痛む。
 こんな思いをするのなら、いっそのこと死んだ方がマシかもしれない。
 自分でさえそう思うのだ。川田の心境は、もっと重い。
 簡単に理解ができる。それが何よりも、ヒナギクを苦しめていた。


 絶望を抱え、膝を折る二人。
 やがてぽつぽつと雨が落ちる。勢いは弱く、ただの通り雨だ。
 すぐに収まるであろう雨。しかし、二人を打つ冷たさは、身体の熱血を奪っていく。
 あんなに、打倒主催者に燃えていたのに。あんなに、悪を許せぬと吠えていたのに。
 ただ一人、友を失い、ただ一人、友が殺し合いに乗り、二人の心は折れかかっていた。
 しかし、風は吹く。
 二人に希望を乗せるかのように。


「ヒナギクさん!!」
 駅から飛ぶように駆け、ハヤテは声を弾ませながら、ヒナギクに声をかけた。
 思わず、声に喜色が浮かぶ。知人との再会はハヤテに心の余裕を持たせていた。
 なにせ、マリアが無残なことになったのだ。
 無事な姿を確認できたことは素直に嬉しい。
 そう思った。思っていたのだが…………
「ハヤ……テ…………くん?」
 振り向いたヒナギクは、泣いていた。
 いつもなら他人に涙を見せることを恥じ、すぐに拭うような少女だ。
 そのヒナギクが、ただ雨に打たれるまま、涙を流し続けていた。
 そして、彼女の隣にいる少年、葉隠覚悟。
 強化外骨格『零』から聞いた話から、正義感に溢れる頼もしい人だと思った。
 事実、光成に向かって殺されるかもしれないのに、恐れもせず反逆の意を真っ先に見せていた。
 しかし、今の覚悟の姿はどうだろう。
 最初に見かけた正義に溢れる姿とは違い、今は自分と違わない、年相応の少年がいるだけのように見えた。
 いったい何があったのか? ハヤテの脳裏に疑問が浮かぶ。
 その疑問を口にするのは、多大な勇気が必要であった。
 ハヤテは、唾を飲み込みながらも、二人に疑問をぶつけた。
「いったい、何があったんですか? 二人とも……」


 ヒナギクが力のない声でいきさつを全て話した。
 毛利小五郎という人に助けてもらったことを。
 本郷という正義の味方がいたことを。
 そして、川田とつかさと出会ったことを。
 本郷がラオウという男に負け、悲しかったことを。
 覚悟と出会い、安心したことを。
 四人で主催者について考察していたことを。
 その言葉を一つ一つ聞いて、かがみの妹でこなたの友達のつかさと、自分の友人であるヒナギクが出会っていたことにハヤテは世間は狭いと思った。
 無論、零とのことも。
 ヒナギクの話が進み、やがては川田とつかさが付き合ったことをハヤテは知る。
 嫌な予感がする。つかさらしき人物が、川田らしき人物がここにいないからだ。
 ヒナギクは拒否するかのように押し黙る。
 覚悟がやがて、低い声で後を継いだ。
「つかささんは……死んだ。俺の……俺の油断のせいでッ!」
 覚悟の拳がコンクリートにヒビを入れる。全身を震わせる覚悟の背中は、耐え難い痛みに耐えているように見えた。
 いや、事実そうなのだろう。ただし、痛いのは身体ではなく、心なのだろうが。
「そして川田は……つかささんを生き返らせるために……俺に愛想をつかしたのだ…………」
「違うッ! 川田くんは……本当に……つかさのことが好きなだけよ…………」
 二人の言葉が止まる。続きをいうのも辛いのだろう。
 ハヤテは少し前、刃牙が襲ってくる前の自分が居たところを思い出す。
 カズキ、承太郎、ナギ、自分。本当に僅かの間だけだったが、四人でいたころはよかったと思う。
 カズキを失っても、まだ承太郎やナギがいた。しかし、刃牙の襲撃でハヤテは二人に別れを告げる羽目になったのだ。
 承太郎とは死を通して、永遠の別れを。
 ナギとは、人殺しとなった負い目から、自ら別れの道を選んだ。
 そのおかげで村雨や零に出会えたことは幸運だとは思うが。

「俺の……俺のせいでッ!」

 一際大きく覚悟が叫んだ瞬間、ハヤテは地面を蹴った。
 考えた行動ではない。後で考えると、なぜ自分がそういう行動に出たのか疑問を持つ。
 それでも、その行為は間違いじゃないと信じ続けていた。
 ハヤテは覚悟を――――殴った。


 借金取りに追われ、それなり以上に身体を鍛えているハヤテの拳は、覚悟を吹き飛ばし、尻餅をつかせた。
 その行動にヒナギクの瞳に怒りが宿し、ハヤテをキッと睨む。
「何をするのよッ! ハヤテくん!!」
「……ふざけないでください!!」
 ヒナギクに負けない声量で、ハヤテは怒鳴る。
 その瞳には、彼には珍しいほど怒りに溢れていた。

「全力で頑張って……それでも想いが届かなかったのはあなただけじゃないんです!
誰もが全力で……全力で、頑張って、それでも、出来ないことや悔しいことがあったんです。
お嬢様を守って死んでしまったカズキさん……。 
僕たちを守るために、身体を張って死んでしまった承太郎さん……。
マリアさんだって、僕の前に……。
それに、あなたのお兄さん、葉隠散さんも、アーカードに無残に殺されて……それで村雨さんが傷ついて……。
誰だって、傷ついてきたんです」

 いつの間にか、ハヤテの目にも涙がたまる。
 自分は村雨や、目の前の覚悟とは違う。
 一般人より少し鍛えているだけの、ただの執事。
 他人から見ればハヤテの身体能力も並ではないが、少なくとも自分自身ではそう思う。
 その自分が、まだ折れていない。
 なのに、目の前の覚悟は折れかけている。
 今ハヤテが感じる怒りは理不尽かもしれない。でも、覚悟が折れてしまえば、他の無力な人たちはどうなる?
 たとえば、柊かがみ。たとえば、三千院ナギ。たとえば、泉こなた。
 ただ虚しく死んでいくしかないのか?
 ハヤテはそれをふざけていると考えている。

「僕は諦めません! たしかに、承太郎さんは僕のせいで死んだかもしれないけど……それでも!
諦めて、主催者に屈して、彼らが残したものを僕は無駄したくない!
覚悟さん……僕は進みます。今は休んでいても構いませんが……いつか、立ち上がってください」

 踵を返し、再び駅へとハヤテは足を向ける。
 ハヤテの気持ちは変わっていた。もう一刻の猶予も許されない。
 ナギとの合流ではなく、ジョセフを待つのでもなく、とっとと村雨の元にいき、無理矢理にでも仲間に引き戻す。
 ハヤテの興奮した頭は幾らか短絡的な結論を導き出した。
 そのハヤテに、覚悟の声がかかる。
「いや、休む必要はない」
「覚悟くん……?」
 ハヤテが再び振り返ると、そこには清々しい顔ですくっと立ち上がる覚悟の姿があった。
 ハヤテを射抜く視線には、感謝の情が浮かんでいる。


 ハヤテの拳が覚悟の頬を貫き、言葉が心を揺さぶった。
 怒りは冷えていった覚悟の血に、熱血を取り戻させていく。
 覚悟は正面からハヤテを見つめ、力強い笑みを浮かべる。
「数多の英雄が、志半ばで散っていた中で、まだ希望のある私が膝をついている場合ではない。
すまない、ヒナギクさん。すまない、ハヤテ。すまない、つかささん」
 覚悟は右腕を天に向け、月に微笑むつかさを重ねる。
 覚悟の表情が歪み、悲しみを一瞬だけ浮かばせるが、すぐに元の顔に戻る。
(川田……お前の身体と心に、引き裂くような痛みが走っているのだろう。
心を繋いだのだ。それくらい、俺にも分かる。されど――――)
 つかさは川田の行動を喜ばない。つかさは川田の行動を悲しむ。
 そんな言葉では川田を制止することは不可能。
 ただ、覚悟はつかさがそう思うと信じている。
 だから、自分の全力を持って、つかさを悲しませない。川田を堕とさせない。
 川田がその言葉に耳を貸さないなら、自分達以外その真実を持って行動する人間はいない。
(つかささんの、あの笑顔を汚すことだけは、友といえど許すわけにはいかない。
俺には零式防衛術しかない。だから――――俺は宣言しよう。俺の零式防衛術を持って、川田を救うと)
 決意と共に、息を大きく吸い込む。
 覚悟の瞳に宿る不退転の意思。

「当方に……川田の救済の用意あり!!」

 宣言は覚悟の意思を鋼に変え、拳をあらん限りの力で握る。
 天を見つめる覚悟の瞳に、光が取り戻されていく。

 ―― 覚悟完了

 万感を込めて、宣言がなされる。
 その覚悟の想いに答えるように、小雨はいつの間にか止んでいた。


 覚悟の宣言を耳にして、ヒナギクは立ち上がる。
 右手に握ったメモリーキューブを見つめると、本郷の優しい笑顔を思い出した。
 自分は小五郎、本郷に続いて、つかさを失ってしまった。
 いつもそうだ。核鉄を使いこなし、戦いに挑もうと思っても、手が届かない。
 目の前のハヤテも、多くの者を失ってきたみたいだ。
 だから、彼は叫んだのだろう。
 もう二度と、そんなことはごめんだと。
(つかさ、私はあなたを失って、とっても悲しい。でも――――)
 つかさの死からは逃げない。
 おそらく自分は一生彼女の死を引きずるだろう。
 だけど、立ち止まってしまっては、死んでいった彼らに失礼だ。
 それに、
(絶対に許さない。この殺し合いを仕組んだ主催者も、乗ってつかさを殺したあの女も、あのラオウって人も――――)
 自分が、命に代えても殺す。
 ヒナギクの瞳に、復讐の炎が宿り始めた。


 ハヤテはあらためて覚悟に自己紹介し、各々の状況を説明し始める。
 強化外骨格に関する考察と、BADANに関する情報を筆談で伝え、それぞれ驚き始めた。
 情報を整理しつつ、ついにお互いの接触した人物の話となる。
「そういえば……ハヤテくん。村雨さんとさっき言った?」
「ええ。僕はここに来る前、村雨さんと零さんと一緒だったんですよ」
「! 零……」
「それに村雨さんも……ねえ、その村雨さんがどこにいるか知らない?
届けないといけないものがあるの!」
 ハヤテの両肩を掴み、ヒナギクは揺さぶる。
 鬼気迫るヒナギクの表情にハヤテは押された。覚悟はヒナギクを宥め、揺さぶりから開放されたハヤテは一息つく。
「届けものですか?」
「このキューブ……本郷さんから託された、大切なものなの!
村雨さんという人に渡して……ベルトにセットすれば、私達の仲間になってくれるって……」
 ヒナギクの言葉を聞き、ハヤテは高速の反応を見せ、キューブをまじまじと見つめる。
 緊張をした表情のまま、キューブに恐る恐る触る。
「もしかして……それが村雨さんの記憶?
ヒナギクさんがそんなものを持っていたなんて……」
 ハヤテは徐々に興奮して、右手を握る。
 顔には喜色が浮かんでいた。
「これで村雨さんを問題なく連れ戻せる! 主催者の連中に一矢報いれる。
村雨さんと覚悟さん、それに零さんやジョセフさんがいれば、あいつらだって……」
「そうよ。あいつら、絶対に許さない。
私を、つかさを、みんなをこんな目に遭わせて……絶対に!」
 主催者の目的の考察と本拠地の情報を得、二人は反逆の芽が出てきたことに興奮を隠せない。
 二人の瞳に希望が宿る中、覚悟が声をかけてくる。
「探し人の居場所は分かった。ならば……ヒナギクさんはメモリーキューブを村雨さんに渡しに向かってくれ。
私は川田を説得に行く」
「覚悟くん!」
 ヒナギクの非難するような視線を受けても、覚悟は微塵も揺らがなかった。
 ここは譲れない。穏やかな表情であったが、たしかにそう主張していた。
「村雨さんにこれを届けてからじゃ駄目なんですか?
向こうには零さんもいますし……」
「それでは川田を見失うかもしれない。
探している間に川田に人を殺させるような真似はさせられない。
もう二度と、救済が間に合わないということは避けたいのだ。それに……」
「……それに?」
 ヒナギクが鸚鵡返しのように言い、一旦言葉を切った覚悟を見つめる。
「今の私に、零をまとう資格はない」
「なによ、それ!」
「そうですよ、零さんなら、覚悟さんの力に……」
「だからだ。ハヤテ」
 覚悟の声は、あくまでも穏やか。
 自虐の暗い雰囲気も、自戒ゆえの焦りも見られない。
「私がどんな状況でも、零は力を貸してくれる。だが、それでは私と零を友といえない。私は零と心繋いだ。
私が零の力となり、零が私の力となる。それが戦友という、私と零を繋ぐ絆。
私が零の力になるために、川田を、友を取り戻す。そのための戦いに向かう。
ハヤテ、君を戦士と見込んで頼みがある。村雨さんの記憶を取り戻す戦いは、ヒナギクさんと共に君が向かってくれ。
こちらは、私に任せて欲しい」
 しっかりと目を見据えられ、覚悟の力強い視線がハヤテを貫く。
 託されたものの大きさにハヤテは震えた。しかし表情に恐怖は無い。
 これは、武者震い。ハヤテは迷わず覚悟の手を取り、胸を張って答える。
「任せてください」
 新たな友と、覚悟は心を繋いだ。


 駅のホームで電車を待つハヤテとヒナギク。
 別れる予定の覚悟に、ヒナギクは不満を露にする。
「二人とも……私を置いて勝手に決めちゃって……」
「ああ、すいません! でもこれは……」
「大丈夫だ、ヒナギクさん。必ず、川田と共に戻る」
 どこかずれた、それでいて真剣な覚悟の答えに、ヒナギクは諦めたかのようなため息を吐く。
 眉を寄せた、厳しい表情のままゆっくりと覚悟に向き直る。
「一つ約束して。絶対、無茶はしないこと」
 覚悟はああ、と頷いて、正面を見つめている。
 もはや、頭の中は川田を説得することで一杯なのだろう。
 ヒナギクは覚悟が無茶をしなければいいのだがと心配をする。できれば覚悟についていきたかった。
 だが、本郷の想いを無駄にするわけにはいかない。
 ハヤテに任せようか、とも思ったが、ヒナギクは却下をする。
 できれば、本郷の遺志は自分が叶えたい。それに、村雨に会ってみたい。
 本郷が願いを託す相手。どういう人物なのか、知りたかった。
「覚悟くん、失敗しても、成功してもまたここで会いましょう。
時間は……放送前後でいいかしら?」
「問題ない」
 そっけなく答えているが、内心は暖かい人物だとヒナギクは知っている。
 だからこそ、無茶をしないか心配なのだが。
 やがて、電車が見えてきて、三人の前に停車する。
 ハヤテと共に電車に乗り込み、見送る覚悟を名残惜しそうに見つめる。
 そのヒナギクの表情に気づいたのだろうか。覚悟が微笑を浮かべる。
「別に仔細なし。我々は必ず再会できる。村雨さんともな」
 根拠はない。それでも、必ず再会できると信じる。
 覚悟の力強い言葉。それでも、ヒナギクの胸に不安は消えない。
 無情にも、ドアは閉まり二人を隔てる。
 電車が加速していき、笑顔で敬礼する覚悟が遠ざかる。
 たまらず、ヒナギクは窓から顔を出し叫んだ。
「絶対に! 絶対に再会するんだからね!! 覚悟くん!!」
「了解! それまでのしばしの間――去らば!!」
 徐々に覚悟の姿は小さくなり、やがては見えなくなった。
 希望を乗せた電車進む。二人の戦士を乗せ。


 去っていく電車を見送りながら、覚悟は名残惜しげに敬礼を解く。
 村雨と零と再会できるなら、彼らの危機はある程度回避可能だと判断した。
 それよりも問題は、川田の方だ。一人でいて、つかさを失って暴走する川田を救うため、覚悟は踵を返し進む。
 そして覚悟はハヤテが啖呵を吐いた時に、カズキという名前が含まれているのを聞き逃していなかった。
 ハヤテより、カズキがどんな人物か、先ほど尋ねてみた。答えは、覚悟の予想していた通りだ。

『勇敢で、お嬢様を守るために死んでしまった……優しい人です。
この殺し合いが行われているのを、怒っていた人です』

 斗貴子を通して知ったルイズの遺言が覚悟の耳に蘇る。
 許して、救う。覚悟はにやり、と笑った。
(さすがはルイズさんだ。零式防衛術は己を殺す技!
俺の説明を聞くまでも無く、偉大なる勇気で零式防衛術の技を実行したのだ。
すまない、一時でも、あなたの慈悲を無駄にしようとしたことを。
だから、俺は宣言をする。川田を説得する。津村さんを救う。
両方をやり遂げることこそ、俺の使命。あなたの遺志。覚悟――――完了!)
 そして、覚悟の思考は兄・葉隠散に移る。彼は村雨と共にし、彼の精神に影響を与えたそうだ。
 僅かな時間では詳しいことを知ることはなかったが、兄は誰かの心の支えとなった。
 さすがは、零式防衛術において自分の先を行く男。
 彼が村雨と出会っていて、よかったと思う。
(いつか、村雨さんとは兄のことで語り合いたい)
 そして、覚悟の瞳に炎が宿る。
 殺し合いに参加させ、つかさやヒナギクに苦痛を要求する悪鬼の群れ。
 その名は――――BADAN。
(悪鬼として、彼らを苦しめたBADAN!
お前たちは、俺たちが倒す。覚悟しておけ!!)
 力強く一歩一歩進める覚悟の瞳に、迷いはなかった。
 その一歩、ただの一歩ではない。
 正義を行う、白き光の軌跡なのだ。


【E-4 駅付近/1日目 真夜中】
【葉隠覚悟@覚悟のススメ】
[状態]:全身に火傷(治療済み) 胸に火傷、腹部に軽い裂傷
    胴体部分に銃撃によるダメージ(治療済み) 頭部にダメージ、
    両腕の骨にひびあり。
[装備]:滝のライダースーツ@仮面ライダーSPIRITS(ヘルメットは破壊、背中部分に亀裂あり)
[道具]:大阪名物ハリセンちょっぷ
[思考]
基本:牙無き人の剣となる。この戦いの首謀者BADANを必ず倒し、彼らの持つ強化外骨格を破壊する。
1:川田を説得する。
2:ルイズの遺言を叶え、斗貴子を救う。
3:全てを終えて、S7駅でヒナギクたちを待つ。

【備考】
※神社、寺のどちらかに強化外骨格があるかもしれないと考えています。
※主催者の目的に関する考察
主催者の目的は、
①殺し合いで何らかの「経験」をした魂の収集、
②最強の人間の選発、
の両方が目的。
強化外骨格は魂を一時的に保管しておくために用意された。
強化外骨格が零や霞と同じ作りならば、魂を込めても機能しない。
※2人の首輪に関する考察及び知識
首輪には発信機と盗聴器が取り付けられている。
首2には、魔法などでも解除できないように仕掛けがなされている
※2人の強化外骨格に関する考察。
霊を呼ぶには『場』が必要。
よって神社か寺に強化外骨格が隠されているのではないかと推論
※三村とかがみについて
三村の吹き込んだ留守禄の内容を共有しています。
かがみと三村に対してはニュートラルなら姿勢です。
とにかくトラブルがあって、三村がかがみを恨んでいると事実がある、
とだけ認識しています。

※ハヤテのDIOの能力についての知識と考察の情報を得ました。
目から弾丸を発射する能力(空裂眼刺驚)を持っている。
血を吸って仲間を増やすことができる(肉の芽については知りません。
一度DIOの仲間にされてしまった者は、救えないと考えています)

①時を操作する ②超スピードで動く+超高速の麻酔針発射装置、③その場にいる全員に集団幻覚を見せる。
DIOの力は、①~③のどれか、特に①が有力だと考えています。

※BADANに関する情報を得ました。
【BADANに関する考察及び知識】

このゲームの主催者はBADANである。
BADANが『暗闇大使』という男を使って、参加者を積極的に殺し合わせるべく動いている可能性が高い。
BADANの科学は並行世界一ィィィ(失われた右手の復活。時間操作。改造人間。etc)
主催者は脅威の技術を用いてある人物にとって”都合がイイ”状態に仕立てあげている可能性がある
だが、人物によっては”どーでもイイ”状態で参戦させられている可能性がある。
ホログラムでカモフラージュされた雷雲をエリア外にある。放電している。
 1.以上のことから、零は雷雲の向こうにバダンの本拠地があると考えています。
 2.雷雲から放たれている稲妻は迎撃装置の一種だと判断。くぐり抜けるにはかなりのスピードを要すると判断しています。
※雷雲については、仮面ライダーSPIRITS10巻参照。