運命のルーレット叩き壊して ◆d4asqdtPw2



「ユリア……」
それは油断だったのだろうか。
格下の相手だと、慢心してしまったのだろうか。
もしそうなのだとしたら、俺は……。

……いや、そうではない。
『そんな事は許されない』はずだ。
『負けた人間』が『そんなことを考えてはいけない』のだ。
その考えこそが、その『負けたのは油断のせいだ』と考えること自体が彼への侮辱なのだから。

負けたのは、単に彼が強かったから。
彼がこの俺を、1800年にも及ぶ歴史を倒し得る力を持っていたからだ。
それを油断や慢心などという言葉で片付けるのは、あまりにも無礼だ。

ただ気がかりなのは、彼女の事。
彼女は無事なのか……。
あの2人から逃げる事はできるのだろうか……。
もはや、俺にしてやれる事は何もない。

結局、俺は守ってやる事はできなかった。
彼女を活かしてやることが出来なかった……。
誓った、はずなのに。
北斗に、歴史に、誓ったはずなのに……このザマか。

ならば……この拳は……何のために……。


鳴り響いたのは、電子音。
彼の終わりを告げる甲高い波長。
あがく事を止め、目を瞑ってその刻を待つ。
一瞬の静寂。
それは本当に刹那であったが、全てのものが動きを止め、無音というハーモニーを奇跡的に創生した。
1つの終わりを見守るように。
血に塗れた、永き歴史の終わりを見守るように、自然が『空虚』で彼を包み込んだ。

轟音と、爆炎と、ほんの少しの苦痛。
あぁ、こんなものか。
俺の前で死に逝くものは皆、この世のものとは思えない奇声を発して死ぬ。
死に値するほどの痛みとは、それほどの苦痛なのだろう。
だから、この痛みの軽さには少し戸惑った。

そうか……これで済むのか。
文句は言わないさ。痛くないならそれでいい。
痛くないから、思考は正常に働く。
奇声も発することなく、穏やかに脳を回転させられる。
問題はと言えば、『考える事がない』という事だ。

走馬灯も見えないとはな。
どうしようか迷い、取り合えず目の前に上がった爆炎を見つめる。
その炎を元に、空っぽだった脳に浮かび上がってきたのは……。
文字通り『炎の記憶』。


          首輪が爆発し、彼の頭と胴体が分かれるまで、1秒あるかないか。
          これはその0と1の狭間に、彼の脳が行き着いた『答え』である。


その記憶の中で、俺は怒っていた。
炎を前にして、ただひたすらに。
『彼女』が天へと昇っていくのを見ながら、確かに怒り狂っていた。

そういえば、俺はこの時も救えなかったのだ。
全く……情けない。

なぜ『彼女』が死ななくてはならなかったのか……!
明るい、太陽のような少女であった。
ここに燃えている紅い柱よりも遥かに熱く、それでいて輝いていた。
そんな『彼女』を、キュルケを殺したあの女を許す事はできない。
この時、俺はそんな事を考えていた。
何の罪もないキュルケを殺したから悪だ。
己の内に沸きあがる怒りを、ただ信じて疑わない俺がいる。

だが、今にして思えばそれも仕方のないこと。
この時点では、俺はエレオノールの苦しみを何1つ知らないのだから……。

やめだ。
轟々と唸る熱を前に、ただ立ち尽くす。
エレオノールに対する恨みは今はやめにしよう。
今は天に昇っていくキュルケを見守ろう。
この怒りの感情はその邪魔になるから、やめにしよう。
炎はすぐ消えてしまうから。

そう、この炎は彼女を弔うために俺が……。

……。

……違う。
いや、違わない。違わないのだが……違う。
『彼女を弔うための炎』。それはその通りだ。
だが、この怒りの感情。その発生源が違う。

キュルケを殺したあいつが憎い。
確かにそうなのだが、このときの俺の怒りは『それ』に対してだけの怒りだったか?
俺の心の怒りは、純粋に『エレオノールへの怒り』だけで構成されていたのか?

違う。

キュルケが死んで、その後『何か』を思い出して、それによってエレオノールの他の『誰か』に何らかの怒りを抱いた。
そうだ。『何か』があったのだ。
俺に『許せない』と思わせる何かが。

あの時、俺はキュルケの仇を取ると誓い……その後……。
……そうだ。台所へ向かったのだ。
そこで火種となるライターを見つけた。
そして、リビングで彼女の杖を回収した。
この杖は、彼女の家族の元へ返したいと……。
俺が死んでしまった今では、それも叶わぬ事になってしまったのだが……。

そのときだ……!
その杖をしまうときだ。
そのとき、俺のディパックには何があった?!

『何か』があったのだ!

『思い出さなくてはならない何か』が!

そう……これは必要な記憶だ!
免れられぬ死を前に、俺の脳が俺の人生より選び出した最も重要な記憶。
大切な、何よりも大切な記憶だ。
思い出せ! そこには何があった?

杖をしまい、『何か』を見つけ、怒りを感じた。

その矛先は、エレオノールとそして……。

思い出した。主催者だ。

俺は主催者に怒りを感じたのだ。この悪夢の元凶に。
エレオノール以上に、怒りを感じたのだ。

なぜなら……彼らがふざけた物を支給したから……。
必死に戦う者たちを馬鹿にしたような物を支給したから。

そうか、そうだった!

全て思い出した。

あの時そこにあったのは……。


……希望の鍵だ!

この記憶は俺が思っていた通り、重要だったらしい。
希望はずっと我が手の中にあったのか。
そして、今もこの中に。

……あった。『コレ』だ。
あの時は『主催者が嫌味のために用意したアイテム』だと思っていた。
しかし、これは紛れも無く脱出の鍵となるもの。

なぜ、もっと早く思い出さなかった!

本当なら、目覚めたエレオノールから夢の話を聞いた時点で。
『器』に込められた『魂』を解放しなくてはならないと知った時点で。
思い出すべきだったんだ。

なぜ、なぜ思い出さなかった!

……その理由なら分かっている。
考えたくなかったのだ。
この記憶は、俺がエレオノールを憎んでいた時のもの。
決意を固めた彼女を前にして、そんな記憶を甦らせたくはなかったのだ。

全く、甘いな、俺は。
こんな大切な鍵を託されながら、最期の最期まで気付かなかった。
それどころか、こんな場所で死んでしまったら、誰もこれに気付く事はない。
とことん、情けない。
すまない、戦士たちよ。
エレオノールよ。


          死を悟ったその刹那に、常人ではあり得ないほど脳を働かせ……。
          その結果、彼が導き出した答えは『諦め』だった。


仕方がない。
俺が死ぬまで、あと何秒残されている?
ここがどこかも分からないのに、その僅かな時間で何が出来る?
出来るわけが……。

「で、諦めるのか? 天下のケンシロウ様はよォ……」


          声が聞こえた。
          強く、一直線に大地を駆け抜けるような声が。


お前は……。

「ちょっと情けないのではないか?」

カズマ……いや、似ているけど違う。
お前はまさか……。

「俺はこんなやつに一度殺されたのか?」

お前……何しに来た?
こんな俺を笑いに来たのか?

「随分と冷たいなぁ、オイ?」

……すまない。
少し、絶望的な状況にあるのでな。

「まぁいいさ。冷やかしに来たようなもんだからな」

冷やかし、か。
そうだろう。
この情けない様を見れば誰だって笑いたくもなるだろうな。

「まぁ正確には、自慢しに来たんだ」

自慢だと? 貴様に誇れるようなものがあるとでも?
それは是非とも訊いてみたいものだ。

「あぁ。あるな。とびっきりの自慢だ」

……変わったな。お前は。
以前と比べて随分と大きく見えるぞ。

「そいつは嬉しいな。
 ……あいつと一緒にいれば嫌でも変わるさ」

……カズマか。

「カズマだ」

そうだな。あいつからは生きる活力を感じた。
溢れ出さんほどの魂を感じた。
まさか、貴様をこうも変えるほどだとは思わなかったが。

「俺が一番驚いているんだがな」

だろうな……。
……それで、自慢と言うのは?

「あぁそうだった、そうだった。お前がガラにもなく挫けてるんで、自慢してやりたくなったんだ」

……。

「俺は諦めなかったぞ」

……。

「最期まで」

……だから、俺も諦めるな、と?
そうしたいのは山々なんだがな。

「そこまでは言ってないんだけどな」

だが、この状況でどうしろと?
流石にお手上げなんだが。

「知らんな」

なんだと?

「お前に分からんことが、俺に分かるはずないだろう」

偉そうに……。
確かにその通りだがな。
カズマならどうするんだろうな?

「結局、俺がカズマに教えてもらった事だって、そんなに多くはないぜ?」

あの後、すぐにカズマは死んだらしいからな。
そんなに長い間一緒にいたわけではないだろう。
それでもお前を変えたのは……。

「……今度は俺がお前に送ってやる。たった一言だ。よく聞け」

……。


「四の五の言わずに立ち上がれッ!!」


……ッ!!

「一言に纏めるとこういう事だ。それじゃあな。俺は先に帰るぞ。
 ……酒でも用意して待っててやる」

……なるほど。
あいつらしい。
そして、『貴様らしい』よ。

「だから、あと一踏ん張り、出来るよな?」

愚問だ!
そのための北斗神拳!
そのために積み重ねた歴史!

……まさか貴様らに教えられるとはな。
礼を言う。ありがとう。

そうであった!
出来るとか! 出来ないとかは! 余裕のある奴の科白だ!

俺はそんな状況にはない。もっと絶望的さ。
だが、こんな状況だからこそ……やるしかない!
俺がやらなきゃ、みんな死ぬ。エレオノールも。

もう一度、立ち上がれ!

エレオノールに、彼女の両手に……。

愛を取り戻せ!


意識を取り戻したときには首輪の爆発が、ケンシロウの首の肉を抉っていた。
もう助からない。それは決定事項。
辛うじて繋がっている神経を伝って、脳から肉体に命令を送る。
たった一つの言葉を。
何度も何度も送り続ける。

走れ! 走れ! 走れ!

例え頭を失っても、この命令が届かなくなっても。
朽ち果てるその瞬間まで、走り続けろ!


          刹那が終わる。
          首輪から電子音が発せられてからキッカリ1秒。
          その0と1との狭間で彼が出した答えは……見ての通り。


爆発によって首が完全に破壊され、頭が地面に転がる。
そこで彼の思考は完全に停止した。

しかし肉体は止まらない。
脳から発せられた命令を忠実に守り、首のない肉体が走り続ける。
走って走って、肉体が停止するまで走って。
それでも稼げた距離は数メートル。
倒れながら右手を伸ばす。
その手には一枚の紙が握られていた。
コレを、もっと、もっと遠くに。

ゴキリという鈍い音と共に、右肩の関節、右肘の関節が外れた。
これで数センチは稼げただろう。

ドサリと地面に倒れ伏す。

俺に出来るのはここまでだ。
あとは……頼んだ。


そして数時間後。放送直前まで時間は進む。
彼の死体の横に立つ人物がいた。
「ケンシロウか……」
まさかこの男が脱落するとは。
禁止エリアにて死亡……彼にしては間抜けすぎる。
誰かに嵌められたか……あるいはあの男。可能性は低いが。
「これは……?」
死体の親指と人差し指に挟まれた紙を見る。
死後硬直でなかなか動かない指をこじ開け、紙を手に取った。
そこに書かれていた文字は……。
「なるほど。これが……!」

銀色の髪が朝日を反射して、鋭く輝く。
世紀末の戦士の残した希望は、静かに受け継がれた。


◆     ◆     ◆


「ちょぉっとおおおおおおおおお! スススストォップゥゥゥゥゥッッッッ!!!」
え? 何コレ? どういう状態?
激しい揺れと向かい風に思考を邪魔されながらも、私は必死に状況を把握しようと努めた。

えっと、まず、覚悟くんに抱え上げられたのよね……。
うわ、お姫様抱っこじゃないコレ! 嬉し……じゃなくて恥ずかし!

それで『何でいきなり……?』とか思ってたら、いきなり覚悟くんが走り出して……。
って何この速度! おかしいってコレ! この速度と揺れはおかしいって!

なんとか状況を把握する事に成功した私だったが、ここで更なる問題が……。
「うぇっぷ……!」
ヤバイ、吐きそうになってきた……。
先ほどの戦闘で倒れるまで疲労した体に、この揺れは余りにもつらい。

えっと……あっちに空があるのね。だから、私は上を向いているのよ、うん。
つまり、このまま吐いたら……覚悟くんの顔に、私のゲロが以下省略ってわけね!
なるほどなるほど……ってそれだけは駄目! 絶ッ対に駄目よ、桂ヒナギク!
そんなことしたら……完全に嫌われるわ!

と! に! か! く! この状況を打開しなければ、桂ヒナギクに明日はない!

「ど……どまっで……かく、ご……うぇっぷ」
「すまない! もう少し大きな声で言って貰えるか?」
聞こえないのは風圧のせいよ! アンタの足がアホみたいに速いせいよ!
減速すれば済むことでしょうが!
もう本当にやばい……私の声は覚悟くんには届かないみたいだし……あぁもう仕方ない!

「ぶ、ぞう……れ、んぎ……ん」
握り締めた六角形が砕けて、私の太腿にて再構成。
処刑鎌の武装錬金、バルキリースカート。
今となっては、こいつは私にとって最も使い慣れた武器となった。

「ヒナギクさん?! 何を?!」
驚く覚悟くんを無視して、4本の鎌を地面に突き刺す。
そしてそれらを足の代わりにして、カエルのように空高くジャンプ。
これでなんとか覚悟くんの腕から脱出することには成功したわ!

「おぅっぷ……!」
やばい、急浮上したら吐き気が臨界点に……。
このままじゃフライング嘔吐を披露してしまうわ!
着地してから、どこかに隠れて吐こうと思ったけど……これじゃあ間に合わないわね。
(それならば!)
辺りを見渡し、電柱の位置を確認する。


(……いける!)
近くの電柱にバルキリースカートを刺し、すぐに跳躍。
次の電柱へ。更に跳躍。
電柱から電柱をバルキリースカートで飛び移りながら空を翔る。
それはラオウとの戦いで、本郷が木々の合間をこの戦法で移動したときと同じくらいのスピードだった。

(バルキリースカートが……軽い?! まさか……)
その秘密は彼女が持っている木刀にある。
この木刀には、持つ者の潜在能力を引き出す力がある。
それの効果で、ヒナギクの身体能力は綾崎ハヤテと同じレベルまで引き上げられていた。
だが、それだけではない。
彼女の剣士としての能力は、元々常人のそれを遥かに凌駕する。
さらに、彼女とバルキリースカートとの相性が良かったことが大きい。

『覚悟よ! これは……』
「早い……そして正確な動き!」
覚悟の目から見ても相当なスピード。
4本の鎌のその動きは、本来の持ち主である津村斗貴子が扱うそれと比べても大差ない。

シュタ……シュタ……と少女は朝の空を駆けて行く。
電柱から電柱へ、時にはビルの壁面へ。
「これなら……よしっ!」
ヒナギクの眼光が鋭く尖る。
その視線が貫くのは、ヒナギクが最初に飛び立った電柱。
この電柱からスタートした彼女は、数十個に及ぶ電柱ツアーを経て、またここに戻ってきた。
始まりの電柱を破壊するために。

「ハラワタをッ!」
空気が張り詰める。
その中を、カマイタチが突進する。

空を裂いて突き進む。それはまさに……

「ブチ撒けろォッ!!!!」

疾風の如く!

少女はスピードを落とすことなく電柱へと突き進み、すれ違った。
もちろん、ただすれ違っただけではない。
交差するその一瞬で、確実に斬撃を与えていた。
着地予定地は目標の電柱のあった場所より1メートルほど過ぎたあたり。

「見事だ」
ちょうどそこには葉隠覚悟が立っていた。
黒い装甲に身を包んで、少女を笑顔で迎える。
跳んできたヒナギクを覚悟が受け止めるのと同時に、切り裂かれた電柱が音を立てて崩れ落ちた。

「ちょ……ちょっと覚悟くん?!」
着地するつもりだったのに。
まさか抱きとめられるとは思っていなかった。
ヒナギクの顔が見る見るうちに真っ赤に染まる。

「綺麗な切り口。なるほど、これがバルキリースカートの本来の使い方」
「う、うん。なんか必死でやったら出来たみたいね」
照れながらもヒナギクは満面の笑みで答える。
この武器を使いこなせたことが余程嬉しかったのだろう。

「それで、なんでいきなり飛び出したのだ?」
「それはもう吐きそうで吐きそうで…………あ……」
「……え?」

空気が凍った。笑顔も凍った。
覚悟の背に緊張が走る……。
恐る恐る胸元のヒナギクを見やると……。

「うぅっぷっ!」
もう遅い。思い出してしまった。
せっかく収まったはずの彼女の吐き気は、再び臨界点まで引き戻された。

「ちょっと待つんだヒナギクさん!」
焦りからか、密着状態から免れたい一身か。
覚悟がヒナギクを持ち上げた。ちょうど「高い高い」のポーズ。
急に持ち上げられたものだから、ヒナギクの吐き気はさらに加速する。
「ぼほぉぅ!」

「しまった!」
『何をしてるのだ覚悟よ! それでは……』
自らの過ちに気付いたのは、零の激高する声が聞こえるのとほぼ同時。
この姿勢はまずい。
覚悟の頭上にヒナギクの顔がある。
つまり、「上から降り注ぐ」形になってしまった。

『早く彼女をどかすのだ覚悟よ!』
「だめだ……もう遅い。遅いのだ、零」
『何?!』
覚悟が全てを悟ったような目で頭上の爆弾を見上げる。

「うぷ……ぷ、ぷ」
フグのように頬を膨らませ、もはや決壊は時間の問題。
彼女をどかそうと思っても、動かした瞬間に爆発する。
この状態を人は「万策尽きた」と言う。

「当方に、迎撃の用意……無し!」
『何を言うか! お主が我らを身に纏ってる以上、実際にアレに直撃するのは我らなのだぞ!』

「致し方ない。後で一度装着を解除でもすれば、汚れは自動的に落ちるではないか」
『そういう問題ではない!
 それに……下手をするとお主、何かに目覚めてしまうやも知れんぞ!』
世の中には「そういうコト」で非常に悦んでしまう人も存在するのは事実。
覚悟に限ってそんな事は無いとは思うが、この極限状態ではもはや何が起こってもおかしくはない。
万が一にでもそうなったら、いろんな意味で「最悪の事態」だろう。

しかし、覚悟はヒナギクを抱えたまま微動だにしない。
起こり得る全てを受け入れるというつもりで、曇り無き瞳をもって彼女を見つめる。
「覚悟、完了」
『待て、待つのだ! 私の覚悟は未完了だ! 覚悟落ち着いて話し合おうぞ! 覚悟!!!!』

「う……ぷ、お、お……」
彼女は限界など、とうに過ぎ去っているわけで。
そして、運命の刻がやってくる。

「うげ……ぇ……」
『か……覚悟……覚悟ォォォォォ!!』

降り注ぐ、絶望。
零の叫びもむなしく『ソレ』は彼らを包み込んでいった。

「……ぅヴォォォオオオオォォォォオオオオウゥゥオオオオオ…………!!!!」
『うおおおおおおぉぉぉぉぉぉ!! お……のれ、かくごぉぉぉぉぉぉぉッ!!』

無残。余りにも無残な光景。
惨劇の真っ只中で、覚悟だけが1人冷静に事を見つめていた。
「……これは酷い」


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