希望の砦 ◆1qmjaShGfE


灰原哀は高良みゆきを連れて駅を出る。
参加者の構成を把握した灰原は、他人と遭遇する確率を増やしたく無かったのだ。
何しろ状況整理すらまともに出来ていない状態なのだ。
何よりも今はゆっくり考える時間が欲しかった。
駅の構内から出ると、そこは住宅街の一角であった。
ここは地下鉄の駅なので駅前の構成は普通の駅のそれとは大分違っているようだ。
灰原はざっと周囲を見回した後、駅への入り口を視認出来る建物を探し、三階建ての高級住宅に目をつける。
高級住宅の敷地内に入ると、灰原は電器、ガスのメーター、ポスト等を確認する。
「どうやら、人は住んで無いみたいね」
しかし、みゆきは何故か躊躇している。
「えっと、それでも人の家に勝手に入るのはちょっと……」
少し呆れる灰原。
『礼儀正しい……ね。それでもTPOぐらい弁えて欲しいわ』
「緊急時よ、納得なさい」
ぴしゃっとそう言い放つと、いつの間に手に入れていたのか家の鍵を開けてドアを開く。
「この家の鍵、持ってらっしゃったんですか?」
「そこにあったのよ。この家の住人はもう少し防犯意識を高めるべきね」
灰原はポストを指差しそう言うと、さっさと家の中に入ってしまう。
みゆきもおずおずとその後に続く。
「お、おじゃましま~す」
みゆきが中に入ると灰原はドアの鍵を閉め、土足のままで家の中へと入っていく。
またも躊躇しているみゆきに、ため息をつく灰原。
「理由説明しなきゃダメかしら?」
みゆきはぶるんぶるんと首を横に振る。
「いえ、何かあった時すぐに逃げられるように、ですね」
思っていたよりもみゆきの理解力が高い事に安堵する灰原。これ以上こんな所でゴチャゴチャやっているのは大変よろしくない。
二人は三階の奥まった部屋に荷物を置き、すぐに屋内を探索する。
電気は通っている模様、ガスや水道も同様でその気になれば風呂にも入れそうだ。
また、三階から直接地上へ逃げ出す事の出来る災害時用脱出シュートを見つけたのは大きな収穫であった。
もちろん駅を監視出来る部屋もある。
申し分ない物件であった。
二人は家具を移動して三階一番奥の部屋は、明かりを点けても決して光が漏れないように細工をする。
一通りの作業が終わると、二人はその奥の部屋で一息ついた。
「ふう、これで後は私達がバカ騒ぎさえしなければ当面は安心ね」
「はい、明かりもランタンを使用すれば、メーターで確認する事も出来ませんし」
灰原は参加者プロフィールを開いてみゆきに見せる。
「とにかく、この参加者プロフィールに書かれている事が全て、いえ、半分が事実だとしてもあの時集まった人間で殺し合いに乗りそうな人間は多いわ」
「……はい」
みゆきは暗い表情になる。
「でも、そういった行為に乗らないどころか、乗った人間を倒しにかかるような人間も多いのよ」
「え?」
灰原は参加者プロフィールをぽんと叩く。
「話半分としても凄いわよ、吸血鬼に再生能力者、一子相伝の暗殺拳の使い手に、魔法使い、執事に代打ち遊び人女子高生……どういう基準よ一体」
みゆきもぱらぱらとページをめくるが、何とも返事のしようが無い内容ばかりであった。
灰原は次に地図を開く。
「で、この地図はこれしか範囲が書いてない。これはどういう意味か?」
みゆきは首をかしげて少し思案する。
「えっと、つまり、その地図の範囲より外の情報は私達にとって必要ではないと」
「と、いう事は?」
「あのおじいさんが言っていた事を本気で私達にやらせる気なら、何がしかの手段で地図より外への移動を阻害していると思われます」
灰原は頷く。
「おそらく、首輪を爆発させるって手段を用いるわね。だからその前提の下で話を進めるわよ」
「はい」
灰原の話はこうだ。
参加者には腕に覚えのある者が多い、つまり殺し合いに参加する、しないに関わらず序盤から戦闘が発生する確率が高いという事。
そしてこの地図の範囲内でこの人数、誰とも出会わずに居られる可能性は低い。
そんな状況で下手に外をうろつきまわったら、どんな事に巻き込まれるかわからない。
ならばここを拠点にしばらくは様子見に回る方が得策だと。
そう言う灰原にみゆきは反論する。
「でも、こなたさんや、つかささんや、かがみさんを見つけないと」
灰原も苦い表情になる。
「わかってる。それでも、もし誰かが私達を殺しにかかってきたら、貴女その銃でその人撃てる?」
もんの凄い勢いで首を横に振るみゆき。
「でしょ。なら、私達が動き回って良い事なんて一つも無い。貴女が彼女達を心配するように、彼女達も貴女を心配しているって事、忘れちゃダメよ」
しゅんとなってしまうみゆきに、灰原は笑みを見せる。
「でもね、この支給品のおかげで、少しぐらいは私達にも出来る事あるわよ」
灰原が参加者プロフィールを手に持って軽く振って見せる。
みゆきも気付いたようだ。
「そうですね、私達は見ただけで相手がどんな経歴の人かわかるんですから、安全な所に隠れながら人通りの多そうな所を見張って、大丈夫そうな人にだけ声をかければ……」
「そういう事。それも100%確実な手じゃないけど、そうやって少しづつ味方を増やしていけば、出来る事も自ずと増えていくはずよ」
灰原がこの家を拠点に選んだ理由も理解したみゆきは、嬉しそうにぽんと手を叩く。
「凄いです灰原さん。まだ小さいのに色々と考えてらっしゃって、私も年長者としてもっとしっかりしないといけませんね」
そこで灰原は複雑そうな表情をする。
「凄いといえば、みゆきも凄いわよ。普通、私みたいな小さい子供の言う事そこまで真剣に聞いたり出来ないわ」
変な話であるが、みゆきがあまりに自然に接してくれるせいで灰原もみゆきを呼び捨ての上、対等の相手として話をしてしまっている。
確かにコナンみたいに子供のフリをしてうまく誘導する、なんて真似をしてる余裕が無かったのも事実だが、それにしても灰原に対するみゆきの順応っぷりは少し異常だ。
みゆきはきょとんとした顔になる。
「なんでです? 灰原さんはとても理に適った話をされてますよ」
嫉妬とか、他人を卑下するとか、そういった感情とは無縁に育ってきたのだろう。
だからこそ目下の者の言う事も色眼鏡をかけずに内容で判断出来る。
頭の回転の速いウルトラ善人。
『初めに出会ったのがこの子ってのは、多分幸運な事なのよね』
灰原とみゆきはその後も相談を続け、屋内の仕掛け案やら、見張りの順番やらをぱぱっと決める。
「じゃあ最初は私が見張りにつくから、みゆきは休んでて」
灰原はそう言って見張り部屋に向かおうとするが、みゆきも立ち上がってノートとボールペンと取り出す。
「いえ、私は写本を作っておこうと思います」
「写本? ……そっか、プロフィールの写本ね。それは良い手よ、是非お願いするわ」
参加者全員のプロフィールを暗記するのが困難である以上、例え写真無しでも名前とプロフィールが書いてある文章を手元に置いておけるのはそれだけで武器となりうる。
「これから私達はたくさん味方を増やしていくんですから、これはたくさんあった方がいいと思うんです」
そう言って笑う頼れる相棒に、灰原は力強く頷いてみせるのだった。


みゆきはランタンの火を頼りにせっせと写本に精を出す。
紙もノートもボールペンも支給品ではなく、家を探索した時に見つけたものだ。
何冊かあった内でみゆきがコレと決めたノートは、淡いピンクでラインが引かれ、ノートの隅には可愛らしいキャラクターが描かれているものだ。
と、突然灰原が部屋に飛び込んでくる。
「急いでみゆき! 人が来たわ!」
そう言われたみゆきは、行儀良く机に突っ伏して既に夢の世界の住人であった。
ちなみに灰原が見張りに行ってからものの三十分も経って無い。
「……誰が頼れるって? よくもまあこの状況で寝れるものね」
灰原は急いでみゆきを揺り起こして状況を伝える。
みゆきは半分寝ぼけ眼であったが、大事とあって頑張って意識を起しにかかる。
「申し訳ありません。お恥ずかしながら、私いつもは十時には就寝しておりますのでつい……」
「まあ、寝る余裕があるのは悪い事じゃないけどね。急ぐわよ、次の地下鉄が来るまでもう間も無いわ」
二人は一足飛びに階段を駆け下り、玄関ではなく裏手の勝手口から飛び出す。
これは二人で申し合わせていた事で、家からの出入りは目立つ玄関を避けてちょうどブロック壁で外から死角になっている勝手口を使おうと決めたのだ。
急ぎながらも前後左右の確認は忘れず、道路に出る。
そのまま一気に地下鉄の構内へと駆け込み、ノンストップでホームへと向かう。

ちょうど地下鉄の音が遠くから聞こえてきたタイミング。
敢えて足音に気付き易いよう走ってきたのだ。電車のせいで相手が聞き損ったらバカみたいだ。
階段を駆け下りる音が構内に響く、あの二人がホームに居るのなら、どうとでも対処出来るポジションになるはずだ。
灰原が階段を降りきると、ホームには誰も居なかった。
すぐ後ろをみゆきが駆けてきている。
後少し、みゆきの姿を見れば……

「みゆき!?」

そう、ホームに居る柊かがみが精神的変調をきたしてなければそうリアクションする。
隠れていた自動販売機の影から姿を現したのは、写真で見るより少し顔色の悪い柊かがみであった。
「かがみさん!」
二人は僅かの間、その場に立ち尽くした後、どちらからともなく駆け寄り、お互いの手を握り合う。
「良かった! みゆき無事だったのね!」
「かがみさんこそ良くご無事で……」
二人共涙目になっている。灰原はそれを少し羨ましそうに見た後、何処へともなく語りかける。
「で、こうなっちゃったらもう疑って隠れてる意味無いわよね」
灰原の言葉に、桂小太郎は頬を掻きながら姿を現す。
「だな。俺は桂小太郎。言うまでもないと思うが、殺し合いには乗っていない」
「灰原哀よ、もちろん私達もね。詳しい話は後、とにかく私達の家に案内するからついてきて」
桂は頷くと、かがみ、みゆきを促して隠れ家へと向かった。


四人は注意深く隠れ家へと戻ると、そこでお互いの状況を交換しあった。
かがみがケンシロウという男に襲われた事、それを桂に助けられた事。
灰原とみゆきが地下鉄で出会い、味方を増やし危険を減らす為にこうして隠れ家を作った事。
そして灰原は自分の持つ写真プロフィール付き名簿を小太郎とかがみに見せる。
「これが、私が不注意とも取れる接触を試みた理由よ」
かがみも小太郎も得心する。
ある程度の人となりはこれで把握出来る。その上で相手の一人がみゆきの友人であるのなら、灰原がこういう行動に出たのも理解出来る。
「とにかく、家の外に出ている時間を少しでも短くしたかったの。今後も出来るだけこの方針は守っていきたいと思ってるわ」
残った三人は頷く。
灰原は続けた。

「みゆきと会えたおかげで、かがみが正常な精神状態を維持している限りその安全性はほぼ確実と思えたわ。後は桂さんがどう動くかだけ」
一人生き残った者のみ生還出来るというルールである以上、相手の信頼を得るためには些細な誤解や齟齬もあってはならない。
「それも、複数で行動している事、プロフィールにある人となりを鑑みるに安全であると考えるに足る情報は私の手元にあった」
だから説明する時間を取れる限り、自分の行動理由は仲間達に伝える。
「後は、あなた達二人に誤解を与えないよう接触する手段を考えれば良かった」
その為に必要ならばリスクも負う。賭けるのは命であって取り返すのつくものではないが、今は役割が違うのだ。
「私なりに勝算あってのこの行動よ。基本的に注意深く行動するのは大前提、でもしかるべき理由があれば大きく動くのも必要と私は考えるわ」
工藤新一がこの場に居ない以上、灰原に求められるのは不安材料の提示などのサポートではなく、どう行動すべきか自ら判断を下す事なのだ。
『元々こんなの私の役割じゃないのよ。さっさと合流して代わりなさい工藤君』


灰原はこのような感じでしょっぱなから存在感を示した為、みゆきもかがみも桂も自然と灰原の発言に重きを置くようになった。
おかげで灰原はその後の事がすこぶるやりやすくなった。
みゆきと二人で明かりが漏れないようにした部屋を、更に防音能力をあげるために窓の隙間に透明なテープを張ったりカーペットを二重にしたり、二階、一階に侵入者用の仕掛けを用意したりする。
三人とも文句一つ言わずに灰原の指示に従ってくれた。
協力者との合流からこの集団における自分の立位置まで、うまくいきすぎて恐いぐらいだが、これから先の困難を考えたらこの程度でつまずいていては脱出どころか生存すら危うい。
そう自らに言い聞かせて気を引き締める灰原。
一通りの作業が終わると、四人は防音室、通称『密談部屋』に集まる。
密談部屋とは言っているが、就寝も桂以外はみんなココであり、それ以外の生活の場もここである。
最初の内は他の部屋の使用も考えたのだが、一番安心できる部屋にみんなで居るのが一番良いとの結論であった。

桂小太郎は灰原のてきぱきとした作業指示に感心していた。
この手の段取りは自分も得意な方だが、彼女の指示はそんな自分からみても隙の無いものであった。
それどころか、時に桂が考える以上に深い思考を見せる。
桂は次にみゆきに目を移す、かがみと楽しそうに話をしている彼女は、おっとりしているように見えてこれでなかなかに頭の回転が速い。
かがみもここに来てまだ一、二時間程しか経っていないが、出会った時の印象とはまるで違う活発な言動をするようになった。
おそらくこれが本来の彼女の姿なのであろう。
「桂さん、ボールペン余ってません?」
かがみは出会ってまだ半日も経っていない自分によく懐いてくれる。
「桂さん、恐縮ですがそちらの写本の作業お願いしますね」
みゆきはそもそも自分を疑っていない、こんな場所での無条件の好意が大層快い。
後は、一つ解決すべき問題に手をつけるだけである。
桂は無言で灰原の隣に座る。
「何?」
問い返しておきながら、灰原は桂がこうする事を意外とは思っていない様子であった。
「幾つか確認しておきたい事がある」
「どうぞ」
桂はこほんと咳払い一つ。
「まず、俺達と合流しようとした時の話だ。君が言った通り、かがみが精神的に不安定だった時はどうするつもりだったんだ?」
「みゆきが自らの意思で私と一緒に居る、それが理解出来る状況でありながら隠れたままで居るようだったら、私は彼女がそうであると判断したわ。その上でも顔見知りに出会って一瞬の躊躇も無く攻撃を仕掛けてくるという可能性は低いと読んだの」
頷く桂。
「なるほど、階段を降りて何の反応も無かったらそのまま階段を上って逃げるつもりだったと」
「そういう事」
そうなっても構わないように、みゆきに誰が居たと伝えなかった。とは口にはしなかった。
「では次の質問だが……つまり、その……」
少し言いづらそうにする桂。
灰原はそれを察して桂の質問を推測した。
「あなたがかがみを騙している可能性?」
桂は少し驚いた顔をして、ばつが悪そうになる。
「ああ、侍の誇りに賭けてそんな事はありえないと断言するが、それでもその点には注意を払うべきだったと俺は思う」
灰原も苦笑する。
「確実な話じゃないのよ、ゲーム開始から大して時間が経ってないあの時にそこまで考えて実行に移せる人間は少ないはず。そう考えたの」
考え深げに顎を撫でる桂。
「リスクを負わずに確実な方法だけで突破出来る状況じゃない。確かに、君の判断は正しい。大したものだ、普通は大人ですらそんな判断を下しきれんものなのにな」
灰原は微笑を浮かべる。
「ありがと。そちらの疑問は解決したかしら?」
「ああ」
「なら私からも一つ質問。ケンシロウって本当にこの人であってるの?」
灰原はプロフィールと写真の入ったリストを桂に見せる。
リストにあった人物評が桂達の話と食い違っていると思ったのだ。
写真を見た桂は断言する。
「この眉毛は違う」
「眉毛? いや、顔の話を……」
「こんな眉毛してたらそれこそあのマスクの上からでもはみ出しているに違い無い。だからこいつは違う」
灰原は怪訝そうに桂を見る。
桂はとことん真顔である。
しょうがないので質問の方向性を変える。
「そのケンシロウはマスクをしていたの?」
「ああ、もしかしたらあの眉毛が恥ずかしくてスペシャルな眉毛隠しマスク、略してSMMをしていたのか。SMで言うならMだと? 被虐性の高い奴め」
どうあっても眉毛から離れたくないらしい。セクハラ発言はスルーで質問を続ける灰原。
「マスクを付けている参加者って……この人かしら?」
灰原がジャギの項を見せると、桂の目線は鋭くなる。
「こいつだ。なるほど、このSMMはこいつの愛用品だったか」
桂の戯言を全部無視して推理する灰原。
プロフィールにある北斗真拳の使い手という表記が二人共にある事から、おそらく二人は近しい関係であったと推察される。
その片割れは傍若無人な無法者との事、そしてもう一人、北斗真拳の表記のある人間は、開幕の際に居たラオウという金髪の巨漢。
一概には言えないが、残るケンシロウという人物も同様に好戦的、という印象を受けてしまう。
何故ジャギという男がケンシロウを名乗っていたのかも、二人の関係を知らない限りは推測の域を出ない。
色々と混乱する事が多い。
だがそれ以上にこの話し合いの収穫はあった。
「桂さん、もしかしてあなたこんな所に放り込まれて混乱してます?」
「何を言う。侍はいついかなる時でも沈着冷静をモットーに生きておる」
やはり真顔だ。
『頭は悪くないみたいだけど、素がコレなんだ……』
知らずにいきなりコレを喰らっていたら、桂小太郎という人物に関して致命的な誤解をしていたかもしれない。
落ち着いて話せる時にこれがわかってよかった。心からそう思う灰原であった。

桂はようやく安堵して少女達を見やる。
心優しい子達だ、それに礼儀も弁えている。
いきなり人の事を「ヅラァァ」とかぬかす無礼な奴も居ない。
しかし、こう、何というか、少し慣れていないというか。
いや、そう呼ばれたい訳では断じてない。だが様式美とでもいおうか、それを踏まえるのもまた礼儀なのではないのか?
「桂さんだけ別の部屋でお休みいただくというのも心苦しいのですが……」
「桂さん、支給品の食事にありあわせの調味料で少し味付けしてみました。食べてください、助けてもらったお礼代わりです」
桂さん、桂さん……お前達、もう少し空気を読め。
いや、この場には適切な人物が居る。この素晴らしく頭の回る灰原という幼女ならば、きっとこの空気に相応しい発言をしてくれるに違い無い。
「これはず……」
きたぁぁぁぁぁぁぁ!!
「いぶん濃い味付けね。そう思わない桂さん?」

「桂じゃないヅラだァァ!!」

突然の大声に三人は目をぱちくりさせる。
かがみは遠慮がちに言う。
「そ、そっか、桂さんいつもはヅラって呼ばれてたんだ。桂さんがその方がいいっていうんなら、私もそう呼ぶわね」
こらそこの小娘。何をわざわざ気を使ってまで俺をヅラ呼ばわりするか。
「申し訳ありません、気付きませんで。やはり呼びなれた名の方がよろしいですよねヅラさん」
ヅラさんって、嘗めるのか敬意を払うのかどっちかにしろ。
「了解、ヅラさんっと」
こらそこの幼女。何をプロフィールまで書き換えているか。というか貴様等俺に遠慮しながら俺を貶めるとは技が高度すぎるぞ。
かがみは少し遠慮しながら言った。
「えっと、ヅラさん?」
「ヅラじゃない桂だァァ!!」
みゆきは当惑している。
「う~ん、かつらさんじゃなくてヅラさんでもなくてヅラさんじゃなくてかつらさんですか?」
そこで耐え切れなくなったのか、かがみと灰原が同時に噴出した。
「桂さん、かつらとヅラって……その長髪でそれ言うの反則です」
失礼にあたるので笑うのを堪えようとしながら、結局笑っているかがみ。
灰原も隣で腹を抱えている。
「何言ってるの、バーコード頭でこれ言ってたら最初の一言で噴出してたわよ」
「ちょ、ちょっとこれ以上笑わせないでよ。桂さんに悪いじゃない……ぷっぷぷっ」
ちょっとした誤解が致命的な結果をもたらす。
桂はこのゲームの悪意を少しだけ理解出来た気がした。


ひとしきり笑った後、かがみが思い出したように言った。
「そういえば、今見張りって誰がやってるの?」

『あ』

この時、灰原が四人の中で一番落ち込んだそうな。
灰原は優れた知能の持ち主であったが、だから完璧な言動を行えるかといえばそういう訳でもないという事であろう。


【A-4 S6駅側の隠れ家 一日目 早朝】

【灰原哀@名探偵コナン】
{状態}健康
{装備}ルイズの杖@ゼロの使い魔
{道具}支給品一式 参加者顔写真&詳細プロフィール付き名簿
{思考・状況}
基本行動方針 殺し合いには乗らずに、脱出の方法を考える。
1:隠れ家を拠点にかがみ、みゆき、桂と力を合わせて協力者を増やし、脱出の方法を探る
2:コナン、小五郎、平次と合流
3:極力隠れ家の所在が見つからないよう注意する
4:桂小太郎は天然と認識した

{備考}
参加者顔写真&詳細プロフィール付き名簿は参加者全員の性格や特技などが細かく記載されています。
灰原は全てに目を通しました。
結果何名かを危険人物と認識しています。
アンデルセンと遭遇した際にはキリスト教徒のふりをすると考えています。
最初の爆発に関わった葉隠覚悟は危険では無いと考えています。
他の詳細な記述は次の書き手に一任します。


【高良みゆき@らき☆すた】
{状態}健康
{装備}イングラムM10サブマシンガン(32/32)@BATTLE ROYALE
{道具}支給品一式 イングラムM10サブマシンガンの予備マガジン10
{思考・状況}
基本行動方針 絶対に人を殺さない
1:灰原、かがみ、桂と共に協力者を増やし、脱出の方法を探す
2:こなたさん達(こなた、つかさ)に会いたい


【桂小太郎@銀魂】
{状態}全身に打撲(行動には支障なし)、若干の疲労
{装備}ライドル@仮面ライダーSPIRITS
{道具}支給品一式 スタングレネード×2@現実 不明支給品0~1(本人は確認済)
{思考・状況}
1:かがみ、灰原、みゆきを守る
2:銀時たちと合流する(そう簡単に死にはしないと思っているので、この目的を優先する気はない)
3:殺し合いには乗らないが、弱者を虐げるような外道には容赦しない
4:灰原達と協力して脱出の方法を探し、主催者に天誅を下す
※ライドルはライドロープ形態で懐にしまってあります。なお、Xの変身ベルトは支給されていません。
※ジャギを危険人物と認識しました。(何故ジャギがケンシロウを名乗ったのかは不明)


【柊かがみ@らき☆すた】
{状態}精神的に疲労。左足にかすり傷(応急処置済み)
{装備}無し
{道具}支給品一式 不明支給品1~3(中身は未確認)
{思考・状況}
1:友人(こなた、つかさ)を探したい
2:殺し合いのことは今は考えたくない
3:生きてみんなと一緒に帰りたい
4:灰原、みゆき、桂と協力して脱出の方法を探す
※ジャギを危険人物と認識しました(何故ジャギがケンシロウを名乗ったのかは不明)


045:ひとりぼっちのエスケープ 投下順 049:上がれ!戦いの幕
044:去るものは追わず 時系列順 048:主のために♪
027:TWINS GIRLS 防人衛 059:ダイ・ハード――大胆に命の術を磨け!――
027:TWINS GIRLS 劉鳳 059:ダイ・ハード――大胆に命の術を磨け!――
012:俺の名を 防人衛 059:ダイ・ハード――大胆に命の術を磨け!――
012:俺の名を 劉鳳 059:ダイ・ハード――大胆に命の術を磨け!――