ある剣客の日常


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大会も予選に入り、その数日後の公園。
普段様々な人間が武芸の訓練や惰眠を貪るこの場所に男が一人。
大きな太刀を右腕で囲うようにしながらベンチに座っている。

『・・・・・・・・。』

男性でありながら非常に長く伸ばされた金色の髪。
初冬の寒さにも負けなさそうな黒いロングコートを着て、隣にはやや大きな木箱が二つ。
物思いにでも耽っているのか下を向き目を閉じている。

    ―――――――――――

「――い、おい、このマヌケ」

いけない、まだ幼いとはいえ折角女性との二人きりの時間を過ごしていたのに。
        • とはいっても、ここは喫茶店でもなければ映画館や自慢の車中でもない。
ここは病院に併設されている公園だ、普通の公園より芝が多いのが個人的な印象。
そして今俺に少々キツイ言葉をかけてくれている身長1mのレディの名前は「マウス」。
11歳だと医者から聞いたが戸籍はないとか、謎を持つのはいいが追い出すべきだろうと思う。

「謝罪など別にどうでもいい、それより早く魔力を流してみろ。」
「ああそれと・・・流して循環させるのではなく、溜めるような感じでな。」

彼女は何故か俺、“シェン・ロンド”を知っているらしく食堂で俺を見るなり無理矢理引っ張ってこられたわけだ。
更に謎なのは身長・・・ではなく俺に言った最初の言葉が「技を教えてやる」だったこと、それも魔力関連の。
俺は魔力こそあるものの魔法が使えない。そのために遠距離は苦手になりがちだ。
それをマウスは何故か知っていてちょっとした解決策を指南してもうことになった・・・簡単にまとめるとこうなる。

「ん・・・・そうだ、刃に魔力を乗せるように、魔力に形を持たせるんだ。」
「そしてそれを振りかぶり、放つ―――上手いぞ、中々やるじゃないか。」
「お前は接近戦を狙うだろうが遠距離戦で対策がないのは不味いからな、感謝しろよ?」

謎に満ちた彼女の教え方は案外上手で言葉の割りに優しい物だった。
まあこうして連発は出来ないが遠くまで飛ばせる魔力の斬撃を使えるようになり・・・・。
取り合えず感謝の言葉を述べるとマウスの無表情としか言えない顔に小さな笑みが浮かんだ。
可愛いと言ったら傷口を殴られそうだからやめておいたがいつかお茶しようという約束はしておいた、やったな俺。

「それじゃあ私は部屋に戻るぞ、以前の礼はしたつもりだ・・・では。」

以前のって一体いつのだよ、心当たりと謎が多すぎるぜお嬢さん。
だがまあ・・・・詮索をするのは失礼極まりない、俺も病室に―――調度二人目の客が来た。

        ―――――――――――――

「いやー久しぶりだなー愛し・・・いや、かわいい弟に会うのも。」

来た客は馬鹿もといアホの姉貴だった。
さっきのマウスも小さいがこの人も三十路近いってのに140cmくらいしかないし胸もない、童顔だしな。
その癖弟である俺が195cmもあるから傍から見るとどう見ても親子なわけだ、抱きつくな畜生。
まあどうせまだ未婚だろうし彼氏もいないんだろうから場合によってはもらってやってもいいんだが姉弟――

「しかしまさか左手を無くしていたとは、あれか、ヤの付く人たちにやられたのか?」
「・・・・えっ、知り合いの少女を助けるために?お前らしいなうらやましいな」

本音と話の途中でも構わず飲む牛乳の入った水筒をしまえ。
まあ姉貴に説明したとおりだが俺はついこの間左腕を失っている。
色々と面倒なので説明は省くが流石にもう片方を姉貴にくれてやるつもりはない。
そういえば片手でも戦えるもんなのかと思いつつ、ふと姉貴が引きずっている大太刀に目を落とす。
姉貴の身長より少し長く、特に装飾なんかが凝っている訳でもないただのデカイ刀ってところだろうか。

「むー・・・・あ、そういえば近く大会が開かれるらしいんだが・・・・出てみるか?」
「何、肩慣らしとでも思えばいいじゃないか、この大太刀も使えるのなら貸してやろう。」
「なんでそんなことを?それは紫炎、世の“お姉さん”に巷で最強と称される弟を持つのが嫌な者はいないからさ。」

なるほどOK、どうやら俺たちはお互い気持ち悪いほどのブラコンとシスコンらしい。
さりげなくお姉さんを強調したのが気に入らないが言うことは確かだ、ここは従っておこうか。
やはり片手の戦いには慣れておくべきだし、もしかしたら優勝も―――ま、できればな。
それにしてもこの大太刀でさっきの斬撃を飛ばしたらどうなることやら・・・・・。

「さて、名残惜しいがそろそろ夜だ。お前も門限は守るのだぞ?」

さらば愛すべき馬鹿、我が姉蘭よ。
願わくば汝に帰宅まで地図の加護があらんことを。すぐ迷子になるからな。

       ―――――――――――

ここのところの連戦で疲れていたんだろうか、気付けばもう日が翳っている。
辺りを見回すと今時珍しく数人の少年がサッカーをしていた、ボールがこちらに転がってくる。
自分が子供であったころはサッカーよりドッヂボールのほうが人気だったなと回想しつつそれを拾う。
片手しか使えないのはもどかしいが案外楽しい、まあこれについては人それぞれだろうが俺は楽しい。
それとは逆にガキの相手は嫌いだ、喚くし、昔の情けない自分を見てるみたいだからな。

「おっさん、ボール早くちょうだい。」
『・・・・ボウズ、クリスマスを楽しめるやつと楽しめないやつの違いが分かるか?』
「・・・・知らないけど。」

なんでかは知らないがつい口が滑っちまった。
夢を見る前に考えていたことだが、確かこうだったな―――。

『いいか、まずお前らのような子供はクリスマスの真実を知らないから省くぞ。
世の中にはクリスマスを彼女や嫁さん、または子供と楽しむ大人とそれを妬む大人がいる。
てめーらにとっちゃプレゼントとケーキだけのイベントだが少々事情が変わるんだ。
ではここで問題、楽しい楽しいクリスマスで他人を妬む者はどんなやつ?
正解は七割がたパートナーのいない男だ、女性もいるにはいるが女性同士で楽しむ場合があるからな。
やつらはクリスマスを楽しむ者をこう呼ぶんだ―――“リア充”とな。
では何故彼らは楽しめないのか?二問目の正解は簡単だな、やはりパートナーがいないからだ。
何故いないのか?他人を妬むだけのヤツを魅力的と思う女性は少ないからだ。
ではどうすればパートナーを持てるのか!?“彼女にする”ではなく“なっていただく”という気持ちを持つことだ!
オトコとは本来女性を敬うべきであり奉仕の心がなければいけないんだ!
          • わかるか?例え容姿は醜くともそれを受け入れ心から愛すのが男だ。
逆に容姿端麗な美女を身体目当てで愛すのは男じゃない、畜生だ、殺していい。
いやまあつまりだ、ちょっとばかり長くなったし上手くまとまってないが―――』

ガキA「おい、あのおっさんテレビで見たぞ・・・」
ガキB「大会の・・・ほら、女の子踏みつけたり実況の人に女好きって言われてた・・・」
ガキ共「ヒソヒソ――――キメェ――――ヒクヨナ――――ヒソヒソ―――」

『男と言う生き物は女性に尽くすべきだと言いたい訳だ。
お前たちもそれを心がけて生きれば十年後絶対に損はし―――』
ガキ共「おっさんキモいな、髪切れよ」

これには流石の俺もカチンと来たね、頭にじゃなく擬音としてだから軽く石化したわけだが。
やつらは楽しそうにサッカーを続けてたよ?なんか姉貴っぽいのもいたけど多分気のせいだな。
さあ帰って次の戦いにでも備えようか、それとも久しぶりに“仕事”でもするか・・・・さて?