"最悪な夜"vsグッドな奴

真夜中の住宅街───…
家の灯りは消え、しんと静まり返っている。

そのど真ん中に、

【白髪のロンゲ、そして整った顔立ちの、所謂イケメンの男が、ニヤニヤと笑っている】

ギギギギ……どこもかしこも安らかに眠っているようだな……げっへっへ……

そこへ現れたのは、

【茶髪ロンゲでイケメンの男がふらふらとやってきた】

「……俺は……誰だ……?なぜ…ここにいる……?」

白髪のイケメンは茶髪のイケメンに目もくれず、

ギギギギ…変身!!

謎の掛け声と共に、白髪の男の体が変化する。
イケメンだった容姿は変わり果て、二足歩行する蚊のような姿に変身した。

俺様の名は、安らかなる夜を混沌の地獄に導く者!悪行蚊怪人、≪最悪な夜≫の名を持つ者、バッド・ナイト・ホッパー!!

茶髪の男はその姿に驚愕する。

「!?何だ、これは!」

ん…?げっへっへ…こんな時間に人間がいるとはなァ…
そこで指をくわえて見ていろッ!安らかなる眠りが地獄に変わる様子をな!ギギギヒャヒャヒャ!!!

バッド・ナイト・ウィング!!

ぷう────…ん。

「うっ!?」

耳障りなモスキート音を奏でながら、バッド・ナイト・ホッパーは上空へ飛び立つと。

ギギギッギギヒャhyヒャヒャヒャハヤアアアアアアアアアアアアアアア!!
バッド・ナイト・ウィング、サウンド・エヴォリューションッッ!!

バッド・ナイト・ホッパーがそう叫ぶと、羽を高速で振動させ…モスキート音を広範囲に撒き散らす。

『ど、どこ!?』『か、痒い…!』

ぽつぽつと住宅に光が灯り、それと共に住民の悲痛な叫びが聞こえる。

ギギギ……俺様の羽が繰り出す美しいメロディは、人々の眠りを妨げるとともに、神経に作用して指の間や掻きたくてもかけないような位置に強烈な痒みを与えるのだ!苦しめ、苦しめェ人間共!悲痛な叫びをこだまさせ、俺様を喜ばせろォオオオオオ───!!!

「な、なんてことを……くっ、痒い……!」

痒みに身を捩らせながらも、茶髪のイケメンは石を拾い、バッド・ナイト・ホッパーに目掛けて、人とは思えないほどの勢いで飛ばした。

ギギャッ!?

いきなりの攻撃に、バッド・ナイト・ホッパーはバランスを崩して落下する。

き、貴様ァ…何をする!?そしてその力────何者だァ!!

茶髪の男は、とん、とん、と地面を靴の先で叩きながら。

「俺が何者かだと?俺が一番知りたい事だ、俺は自分が誰だが、知らないし、何でこんな事をしているのか、よく分からん、勝手に体が動いた」

な、なんだと…?だったら邪魔をするな!この偽善者が!

「だがな、不思議とはっきりと分かる事がある……記憶は無くとも、俺の魂に刻まれた想いが、戦友達との絆が、俺に語りかけるのだ!!」
「貴様のやっている事は…《悪》だとッ!そしてそれを打ち砕こうとする俺の想いこそ───正義だとなッ!」

ギギギッ……いいだろう、名も無き戦士よ……
貴様が俺様を正義の名の下に打ち砕かんとするならば、相手になってやらない理由は無いッ!

俺様の名は、安らかなる夜を混沌の地獄に導く者!悪行蚊怪人、≪最悪な夜≫の名を持つ者、バッド・ナイト・ホッパー!!

現れよ…≪最悪な夜≫の眷族、バッド・ナイト・バットッ!!

背中の羽を揺らして不快なモスキート音を放つ。
すると、周囲からその音に釣られてか、蝙蝠が大量に集まってくる。

「……ッ!?」

往けぇ!吸血蝙蝠どもぉ!!

[キキィ───ッ!]

蝙蝠が一斉に茶髪のイケメンに襲いかかる。

「クッ…!ハァ!うらっ!くっ────卑怯な!直接俺と戦え!!!」

拳や蹴りで次々に蝙蝠を撃ち落として行くが無尽蔵にやってくる吸血蝙蝠に少しずつ、そして確実に血や体力を奪われていく。

卑怯……?卑怯だとぉ……?
最高の褒め言葉をありがとう、名も無き戦士よ───ギギギギギギャハハハハハげっへへへへへへぇ──!!

言ったよなぁ?貴様は、俺様が悪だと…その通りだ!俺は悪事を働くためだけに、人々の安らかなる眠りを妨げるためだけに…生まれてきた…
安らかなる夜を混沌の地獄に導く者!悪行蚊怪人、≪最悪な夜≫の名を持つ者、バッド・ナイト・ホッパー!!

さあ、早くなんとかしないと、死ぬぞ?もっと俺様を楽しませろぉ─────!!

血を吸われるだけではない、蝙蝠達の放つ超音波を受け続け、体の感覚もじわりじわりと狂い始め……。

「ぐおおおおあああああああああああああああああ───!!」

絶叫する、体が思うように動かず、戦いたくても戦えない、無力な自分に。

ギギヒャヒャヒャヒャヒャ──────ッ!最高だぜぇ、貴様はよぉ!!

満身創痍で、命の灯火が消えかかっている茶髪のイケメンは走馬灯を見ていた。
それは、善と悪が交錯する、バッタ怪人の戦いの歴史───────

────今まで戦っていた者達は、こいつより、弱かったのか?
バッド・ホッパーは叫ぶ「ギギギッ…ありえねぇ話だ」
────俺様がこんな屑に負ける事が、許されると思うのか?
グッド・ホッパーは叫ぶ「許されるはずがない、分かりきった事を聞くんじゃねェ…!」
────だが、事実、負けそうだ。そこんところ、どうなのよ?
バッド・ホッパーV2が叫ぶ「否!否!それは否ァ!何故ならな…」

─────俺様の名は…!


茶髪のイケメンは倒れ吸血蝙蝠が群がり、何も見えない状態だった。

げっへっへ…そろそろ終わった頃かねぇ?

バッド・ナイト・ホッパーは勝利を確信し、ほくそ笑んでいた。

≪ グ ッ ド ・ ハ リ ケ ー ン ≫

その刹那、閃光と共に、竜巻が生まれ、蝙蝠を全て引きちぎった。

なああああああああああああああ!?

蝙蝠の血液を体に纏わせ、男は立つ。

「思い出したぜ……」

そこにいたのは、茶髪のイケメンでは無かった。
光沢する緑色の肉体。
ギザギザの両手。
強靭な、両足。
ピンと張った触角。
気持ち悪い複眼。

「俺の……俺様の名は───」

そこにいたのは、二足歩行するバッタのような化け物。
その者は右手を真っ直ぐにし、親指を軽く曲げ、Jの文字を作り出し。

「正義の名を持つ、闇の番人……グッド・ホッパー…J≪JUSTICE≫!」

グッド・ホッパーJだぁ……!?

「バッド・ホッパーV2は破れた、そしてバッド・パワー、バッド・デス・パワー、グッド・パワーの三種のエネルギーは反発しあい…俺様の復活を妨げていた」

バッド・ナイト・ホッパーを指差し。

「だが、蘇ったッ!今なら分かる…貴様のふざけた悪事を砕くためにだッ!」

正義……ねぇ…ギギギギギギギ……ッ!
上等だ……その存在、不愉快極まりないぜ…!俺様直々にぶち殺してやる!!

「ギギギギッ!往くぞ!グッド・ジャンプJッ!」

バッタの凄まじい瞬発力によって、とてつもない速さでバッド・ナイト・ホッパーの上に飛び上がる。

「グッド・キック!」

高速大ジャンプからの飛び蹴りをバッド・ナイト・ホッパーに向けて繰り出す。

遅いッ!バッド・ナイト・ウィング!

ぷう────…ん。
蚊とは思えない高速飛行でジャンプの軌道から逃れる。

ギギギギャハハハハッ!俺様のバッド・ウィング・サウンド・エヴォリューションの効果は切れていない!
周囲の住宅の嘆き、苦しみが、バッド・ナイト・パワーとなり、俺様の力となるのだあああああああッ!!

「かかったな…げっへっへ…」

何ッ!?

≪空中二段ジャンプ≫

グッド・ホッパーJは地面を蹴り、方向転換した。
さらに─────

「グッド・ウィング!」

羽を広げ、速度を上げる。
その速度は実に3倍。

「喰らえッ…………!」

≪ グ ッ ド ・ キ ッ ク ・ J ≫

ボカンッ!バッド・ナイト・ホッパーはその3倍の破壊力を持った蹴りによって、真っ二つに引きちぎられる。

グギャアアアアアアアアッ!

「勝ったッ…」

なーんてなぁ…

「!?」

真っ二つになった、バッド・ナイト・ホッパーはグジュグジュと気持ちの悪い音を立て、再生。
恐ろしいことに、二人に分裂した。

グッド・ナイト・パワーを舐めるんじゃねぇ…ギギギギャハハアハハ!!
〈ギギャハハハハハハハ!!!!〉

「…………」

バッド・ナイト・ホッパー1号が、その針をグッド・ホッパーJに向けると。

ギギギ…喰らいなッ≪サウザンド・パニッシャー≫!

無数の針がグッド・ホッパーJに向かって飛んでいく。
その数、おおよそ千。

「(この数……避け切れな…)ぐああああああああああッ!」

針が次々に刺さり、その勢いで押されていき、壁に激突、磔のようになってしまう。

「……」

〈まだまだいくぜええええええええええええええええギギギギギギ───z__!〉

バッド・ナイト・ホッパー2号がどこからともなくヴァイオリンの弓のようなものを取り出し。
羽を高速振動させ、その音波を弓に収束すると、高速で振動して、チェーンソーのようになった。

〈ギギギッギッ!≪ハウリング・ブレード≫!!〉

その弓で磔になったグッド・ホッパーを切り裂く。

「ガッ────…」

緑色の血液が、吹き出す。
その複眼には、生気が感じられない。

〈終わったようだな、兄者〉
そのようだな、弟者

つかつかと二人のバッド・ナイト・ホッパーが近寄り。
二人でグッド・ホッパーJを足蹴にしながら。

ギーギャハハハハ!何が正義の名を持つ、闇の番人だァー!
〈何がふざけた悪事を砕くためにだァ!〉

あっけねぇなあ、おい、げっへっへっへっへ
〈げっへっへっへっへェ──z__!〉

不愉快な笑い声が響き渡る…。
ギュンッ!と複眼に光が戻り、右手で足蹴にしていたバッド・ナイト・ホッパー1号の足を掴む。
そのギザギザした手は、細いバッド・ナイト・ホッパー1号の足をいとも簡単に真っ二つにした。

…!?

「……考え事を───していたんだ、ギギギ」


♪どこかちょっと なんかずっと感じてる あと少し ひと欠片 探してるパズル


真っ二つになった足と1号の足は瞬時に再生。
恐ろしい事に3体になった。

〈考えごとだぁ…?俺様達の攻撃を避けきれなかった言い訳か?正義の味方が言ってくれるゼ、ギギャガガガハハハハ!〉
〔こんなのただの戯言ですぜ、大きな兄者、小さな兄者!〕

「ギギギ…げっへっへ…考えていたのは……貴様らをまとめて再生出来ないほどにぶち壊す方法だ…ッ!」


♪ココロ的カラダ的 隙間を埋める 刺激的Effect Something let me change


とてつもない気迫を見せ、立ち上がる。
3体のバッド・ナイト・ホッパーは、思わず後退してしまうほどに。
全身に針が刺さり、身体を切り裂かれて、血を流す男に、だ。性格には飛蝗の化け物だが。

「う、おおおおおおおおおおおッ!≪バッド・ハリケーンJ≫ッッ!」

その羽根を超高速振動させるこそで、竜巻を正面に向けて発生させる。


♪この街に吹き込む風のPower 自分の中 取り込み 動き出す力へトランスして 運命を変えていこう


イギギギギッ!?
〈ゲゲーヒャヒャァー!?〉
〔ウギェエエエエエエエエエ!?〕

脆弱な足腰を持ったバッド・ナイト・モスキート3匹はいとも簡単に竜巻にのみ込まれる。


♪Cyclone Effect Don't stop it  君は一人じゃない yeah…


「3体に増えた所で、俺様には何の関係ない…3匹まとめて消し炭にしてやるッ!!!!」

竜巻は3匹のバッド・ナイト・ホッパーの身体を刻むと同時に一箇所に拘束する。

「往くぞッッッ!!!」


♪Cyclone Effect Don't stop it  かならず行けるさ


飛び上がり、竜巻の中に突入、高速で回転を始める。
空気との摩擦により、グッド・ホッパーJは発火し──…

その蹴りは炎の槍と化すッ!!!!!!!!!!!


♪Cyclone Effect Don't stop it  風の向こう未来 woh…


≪ ホ ッ パ ー 穿 孔 キ ッ ク ≫!!!!!!!!!!!!!!

炎と槍と化したグッド・ホッパーJの蹴りが、3匹のバッド・ナイト・ホッパーを貫き、焼き尽くす。

─────!!!!!!!!!

断末魔さえ残らず、3匹のバッドナイツは燃え塵──


♪Find someone that you want 2人で


「昔から言っただろう?汚物は…消毒だってな、ギギッ」


爆発した。


からん、と2号が持っていた弓が落ちる。
それを拾い、

眠れぬ夜を過ごした人々へのため、その羽を震わせ、美しきメロディを奏でつづけたという...


【後日談】

ああ、あの夜ですか?
なんかどこにいるのか分からない蚊がどっか行ったと思ったら、ヴァイオリン弾く馬鹿が現れて…。
いや、ヴァイオリン、嫌いじゃないんですよ?でも、時と場所と時間を考えてもらいたいものです。

煩いにもほどがありましたよ。

まったく、迷惑な話です!



ヒーローとは、孤独なものだ。
たとえ、理解してもらえる事が無くとも、彼は戦い続ける…。


  • スペシャル・サンクス-

情報提供に協力いただいた
当時、近所の公園で寝ていた、リロード・ザ・マジシャンさん【無職(自称奇術師)】。

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最終更新:2010年03月20日 05:02