――扉の向こう――


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おや……?

私に客人とは、珍しい事も在るものだ


歓迎しよう、お客人……貴方は私のオペラの最初の観客だ



それにしても、自らの意思でこちら側に辿り着けるとは……
なるほど、よほど『力』をお持ちか、はたまた『運命』によってもたらされた必然か
この『遊戯』のような世界で、貴方という存在は紛うことなき本物らしい……


ようこそ、そして――はじめまして

私はこのオペラを提供するしがない道化

取るに足りない詐欺師の類

名は――そうだな、カリオストロとでも言っておこうか


それでは始めよう


うん?
「……何を」だって?



決まっている、『物語』を……だよ

貴方が数多くの物語の中から自らの意思で『コレ』を選び取り、『ここ』に辿り着いた

――その事に関して、私は一種の感動すら覚えているのだから

是非とも、客人として……そして私の『友人』として、このオペラを堪能してもらいたいものだ





さて、前置きが長くなったが……開幕の口上を創めよう――『彼』の物語の、馴れ初めをね





そもそも『彼』始まりは、単に運が悪いという一言ですまされるものだった

生まれというものは人を縛る
たとえどれだけの善行、悪行、愚考を積もうと、そう生まれただけの天然には誰も勝てない
これはつまり、そういう話――


とにかくその辺りの機微を理解せぬ者が多いゆえに、多少の愚痴から入ることを、まず謝罪しておこう


強者、狂者、あるいは弱者……なんでもいいが、突き抜けた個を見たとき、程度の低い者ほどその外れ具合に何らかの理由を求めるものだ

努力したから?

覚悟があるから?

または何らかのトラウマを持っているから?


くだらない


感情移入、自己投影
きっかけさえあれば、己もそうなったかもしれない

いや、なれるだろうという思い込み
異端を手の届く域に堕とし、理解できる場所に押し込めようとする醜悪な自慰行為
他者が自分と同じ理論で存在していると盲信せねば、人を愛でる事も出来ない蒙昧ども、

そういう輩は鏡と話していれば良い


君は『彼』の存在を苦々しく思うだろうが、その手の野暮を行うほど低俗な魂は持っていまい


この世には混じり気のない、特別というものが存在する
それが『彼』だ

その異常性は唯一無二
全て生まれつきのものであり、本当の意味で後天的に得たものは何も無い


私などでは及びもせぬほど、彼は奇跡のように外れていた


およそ『本来』の人という物は、これほどまでの存在なのかと――感動したことを覚えている

それは、後付で達することの出来ない境地――
魔道を極めても届かぬ地平
この世にあって、もっとも純粋な異物


徒刑のごとき我が人生で、唯一誇るべきは彼と出逢った事だろう
それは一つの敗北だったが、打ちのめされる挫折の味はなんと甘美であることだったか

我ら人類が誕生するより、遥か以前の『奇跡』が――目の前に現れたのだから




故に――私は『彼』を謳うのだよ


環の外に生まれ、環の外に在る者――『アダム・カドモン』を


これより物語が始まる――否、終わる



さあ、共にグランギニョル(恐怖劇)の幕を上げよう


演出は私――出演は『彼』


そして、主演は……もちろん『君』だよ